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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻12号

1985年12月発行

雑誌目次

図譜・518

陰茎縫線嚢腫の1例

著者: 滝野長平 ,   古井良彦

ページ範囲:P.1004 - P.1005

患者23歳,男性,公務員
初診昭和48年5月9日

原著

Etretinate内服療法が奏効したErythrokeratodermia Variabilis(Degos)

著者: 中田園子 ,   八木茂 ,   西山千秋 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.1007 - P.1011

 Etretinate療法が奏効したerythrokeratodermia variabilis(Degos)の28歳,男性例を報告した.自験例で興味あることはetretinate減量あるいは中止によって生じた再発疹の観察から初発疹が帽章状紅斑であり,これらが互いに融合して連圏状落屑性紅斑局面に変ずることを確認しえたこと,etretinateの服用量は1日20mgで十分であったこと,etretinateと血清ビタミンAとは競合的阻害を起こさないことを確認しえたことなどである.

神経刺激症状を呈した血栓性静脈炎の1例

著者: 沢田幸正

ページ範囲:P.1013 - P.1016

 点滴注射がきっかけと思われる左肘窩の血栓性静脈炎の1例を報告した.本症例では,注射部位の皮下腫瘍と共に,その末梢の知覚異常,疼痛も訴えられたが,これは血栓が皮神経と交差する部位に生じたため,静脈の炎症が神経に波及して生じたものと推察された.

Diffuse Fasciitis with Eosinophiliaの1例

著者: 村松勉 ,   宮川幸子 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.1017 - P.1021

 25歳,男性のdiffuse fasciitis with eosinophiliaと考えられる1例を報告し,併せて本邦報告例24例につき若干の統計的検討を加えた.本症はステロイドの投与に対し反応は良好であるが,皮膚の硬化性病変に対しては反応しない例も多数あり,また,レイノー現象や内臓病変のみられる症例もあることより,PSSとの異同については,なお検討すべき点があるものと考えた.

DDSが著効を呈した若年性類天疱瘡の1例

著者: 藤岡彰 ,   馬場俊一 ,   柿沼寛 ,   鈴木啓之

ページ範囲:P.1023 - P.1028

要約 3歳,男子.既往歴,家族歴に特記すべきことなし.現病歴:昭和58年5月に顔面,陰股部,口腔を含むほぼ全身に拇指頭大までの緊満性水疱多発して出現.瘙痒あり.病理組織所見は表皮下水疱.螢光抗体直接法で基底膜部にC3の線状沈着を認める.間接法,補体法は陰性.HLA抗原はB8,Dw3を認めない.小腸生検で粘膜絨毛萎縮なし.ステロイド剤内服の効果乏しく,DDS25mg/日内服で著効を認めた.小児の慢性非遺伝性水疱性疾患の概念の変遷,またDDSの水疱性類天疱瘡(成人,若年性共に)に対する治療効果に関して,過去の報告例,薬理機序の面から若干の文献的考察を行った.

皮膚爬行症様外観を示した毛髪の皮内潜行例

著者: 滝野長平 ,   車地祐子

ページ範囲:P.1031 - P.1035

 31歳男性.毛深く,アトピー性皮膚炎加療中.右鼠径部に気付いた約5cmの皮疹が4日間で比較的速やかに腸骨稜下方を臀部方向に横走し,約12cmの自覚症のない軽度隆起性線状紅色皮疹となった.皮膚爬行症を疑い先端部の3cmを切除したところ,その一端に標本内に連続する1本の硬毛の一部が露出した.また組織標本でも真皮深層に1本の硬毛の断面が連続してみられた.以上の諸事項から本症と診断した.類似例の報告は米国からの1例と少ないが,両例から知りえた事実に基づき発症機序を推測した.外来性硬毛はその特有の硬さ・弾撥力・毛小皮の付着の様式などの特性から,適当な外力が加わることにより皮内に穿入し,さらに罹患部位に影響を及ぼす関節の活発な動きは埋没した毛に対し一定方向に推し進める力を与える.この毛の動きに対する生体反応により本症が生じるものと考えた.なお診断に当たっては本症の存在を念頭におくことが最も重要であることを述べた.

Pilonidal Sinusの1例

著者: 村松勉 ,   小松満知子 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.1037 - P.1039

 19歳,男子の尾骨部に生じたpilonidal sinusの1例を報告した.発生病理に関し,本症は病巣部周辺に存在する硬毛に対する長時間の機械的刺激とともに,そこに細菌感染ならびに異物反応性の炎症が加わって生ずると考えられ,いわゆるtraumaticあるいはacquired theoryによって説明できるものと考えた.

Pilonidal Sinusに合併した皮膚限局型クリプトコックス症の1例

著者: 久保等 ,   藤井理 ,   大河原章 ,   金田孝道 ,   芝木秀臣

ページ範囲:P.1041 - P.1045

要約 皮膚限局型クリプトコックス症の1例を報告した.症例は29歳,男.初診の1年前から左尾骨部に痤瘡様皮疹があり,滲出液の墨汁鏡検でクリプトコックス菌体を認めた.また生検時,皮下に数本の硬毛も認められた.病理組織像は慢性肉芽腫様病巣を呈し,PAS陽性の菌要素が散在性に認められ,毛の断面像もみられた.尿,脊髄液,血液からはCryptococcus neoformansは分離されず,肺X線写真にも異常はなかった.以上から,pilonidalsinusに合併した皮膚限局型クリプトコックス症と診断した.本症例はpilonidal sinusから菌が皮内に取り込まれ病変を生じたもので,皮膚限局型クリプトコックス症は菌が経皮的に侵入して発症し得ることを示唆するものと考えた.

頸部異所性唾液腺による唾液瘻の1例

著者: 徳橋至 ,   神田秀一 ,   土屋雅則 ,   鰺坂義之 ,   高桑俊文

ページ範囲:P.1047 - P.1049

 7歳,女児の頸部右鎖骨上部に生じた異所性唾液腺による唾液瘻の1例を報告した.組織は唾液腺様の腺房構造を形成し,その腺細胞に酵素抗体法によってアミラーゼの局在を証明することにより診断した.

猫疥癬虫によるヒト皮膚炎

著者: 前田健 ,   姉小路公久 ,   野崎喬生

ページ範囲:P.1051 - P.1054

 イヌ,ネコ等のペット飼育戸数の増加が原因として考えられる動物寄生性疥癬が近年増加しているという.今回我々は虫刺症を疑ったが,当初ネコ疥癬虫による皮膚炎とは気付かず,持参させた家屋塵よりネコショウセンコウヒゼンダニを証明した症例を経験した.

Lymphangioma Circumscriptumの発症病理について

著者: 浅野翔一 ,   羽田妙子 ,   相模成一郎

ページ範囲:P.1055 - P.1062

 我々が組織検索を行ってlymphangioma circumscriptumと診断した14例中,皮膚深層までの観察が可能であった11例を検討した.その結果,真皮表層に於ける拡張リンパ管の他に,真皮皮下境界部から皮下組織にかけて肥厚したリンパ管が全例に認められた.これら両リンパ管の変化は,いずれも管内リンパうっ滞による一連の変化として生じ,しかも両者の形態的病変の差は,それぞれを構成する管壁の解剖学的相違によるものと推察した.従って,lymphangioma circumscriptumは我々が検討した限りではlymph—angiectasiaと同一機序により発症するものと考えた.

Pseudo-Kaposi Sarcomaの1例

著者: 石田明美 ,   大熊憲崇 ,   飯塚一 ,   大河原章

ページ範囲:P.1063 - P.1066

 35歳女性の左足背に生じたpseudo-Kaposi sarcomaの1例を報告した.動脈造影所見および局所の静脈血酸素飽和度の上昇等から,左足に多発性の動静脈瘻が存在することが確かめられた.組織学的に真皮内の拡張,増加した毛細血管と肥満細胞の増加がみられた.本症の発生機序について,動静脈瘻より末梢の部位における慢性の虚血と肥満細胞の増加が関係していると推定した.

眼瞼に発生したClear Cell Hidradenomaの1例

著者: 佐藤俊次 ,   新井克志 ,   比留間政太郎 ,   石橋明

ページ範囲:P.1067 - P.1071

 50歳,女性の右上眼瞼内側に発生したclear cell hidradenomaの1例を報告した.約4年前に気づいた時は小豆大の大きさであったが,その後徐々に増大し7×8×5mmの半球状の隆起した結節となった.表面は正常皮膚に覆われ,下床と癒着のない皮下結節で,自覚症状および圧痛を認めない.腫瘍は真皮上層から下層にかけて存在し,周囲は線維性結合織で囲まれており,大小の管腔様構造を含む充実性胞巣と2個の大嚢腫とからなる.腫瘍細胞はclear cell,類上皮細胞およびその移行細胞より構成され,また,グリコーゲン顆粒も多数認められた.以上より本腫瘍をclear cell hidradenomaと診断した.また,青柳ら14),生冨ら15)の本腫瘍に関する統計を参考にし1978年より6カ年の報告を集計した.

腋窩に生じた基底細胞上皮腫

著者: 村松勉 ,   斎藤宏治 ,   松本博仁 ,   高木圭一 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.1073 - P.1076

 68歳,男性の左腋窩部に生じた基底細胞上皮腫の1例を報告した.組織学的には表在型と充実型の胞巣が混在していた.当教室において昭和41年から昭和59年までの19年間に,組織学的に基底細胞上皮腫と診断された62例について若干の統計的検討を加え,併せて文献的考察を行った.

趾に生じた表在拡大型悪性黒色腫—スタンプ螢光法および病巣中5-S-cysteinyldopa測定による悪性黒色腫の術中迅速診断法について

著者: 森嶋隆文 ,   兼松秀一 ,   深田栄俊 ,   長島典安 ,   花輪滋 ,   佐々木憲孝

ページ範囲:P.1077 - P.1081

 右第1趾という稀な部位に発症した表在拡大型悪性黒色腫の47歳,男性例を経験し,以下の興味ある知見を得た.1)病巣割面からのスタンプ螢光法が悪性黒色腫の術中迅速診断法として極めて有用であること,2)小潰瘍面からの擦過標本に対するスタンプ螢光法が黒色腫の術前診断に役立つこと,3)病巣中5-S-CDの測定による黒色腫の生化学的迅速診断法が可能であることなどである.

皮膚に原発した小児の悪性リンパ腫の1例

著者: 広川政己 ,   大熊憲崇 ,   水元俊裕 ,   大河原章 ,   佐久間進 ,   佐藤利宏

ページ範囲:P.1083 - P.1088

 生後4カ月,女児.生後3カ月頃から左下腿腓腹筋部に自覚症状のない赤褐色の腫瘤が出現し,その後,右季肋部,左大陰唇,左下眼瞼にも同様の腫瘤が出現した.臨床検査成績では,67Ga-citrateシンチグラムで右季肋部腫瘤に一致して異常集積像が認められる以外に異常所見はなく,骨髄像も正常であった.皮膚生検により悪性リンパ腫(LSG分類:diffuse lymphoma, lymphoblastic type)と診断した.化学療法を施行したところ,腫瘤は消失した.経過観察中に白血化および髄膜浸潤を来したが治療には良好に反応し,初診後2年5カ月経過した現在,再発の徴候は認められない.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.1054 - P.1054

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

これすぽんでんす

背部に発生したPaget病の報告はないか?

著者: 橋本謙

ページ範囲:P.1089 - P.1089

 アポクリン汗腺由来の腫瘍の異所性発生に関心を持っておりますので,稲田修一・他の「背部に生じた乳房外Paget病の1例」(本誌,39(8);685,1985)を興味深く読みました.背部はPinkus1)が図示しているように成人ではアポクリン汗腺が存在しない部位ですが,胎生期には著者らも言及しているように,その原基は存在します.
 しかし,引用しておられるWeiner (1936)の文献中にある背部に発生した5例についての検討が不充分ではないかと愚考しましたので筆を執りました.

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臨床皮膚科 第39巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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