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原著
皮膚爬行症様外観を示した毛髪の皮内潜行例
著者: 滝野長平1 車地祐子1
所属機関: 1九段坂病院皮膚科
ページ範囲:P.1031 - P.1035
文献購入ページに移動 31歳男性.毛深く,アトピー性皮膚炎加療中.右鼠径部に気付いた約5cmの皮疹が4日間で比較的速やかに腸骨稜下方を臀部方向に横走し,約12cmの自覚症のない軽度隆起性線状紅色皮疹となった.皮膚爬行症を疑い先端部の3cmを切除したところ,その一端に標本内に連続する1本の硬毛の一部が露出した.また組織標本でも真皮深層に1本の硬毛の断面が連続してみられた.以上の諸事項から本症と診断した.類似例の報告は米国からの1例と少ないが,両例から知りえた事実に基づき発症機序を推測した.外来性硬毛はその特有の硬さ・弾撥力・毛小皮の付着の様式などの特性から,適当な外力が加わることにより皮内に穿入し,さらに罹患部位に影響を及ぼす関節の活発な動きは埋没した毛に対し一定方向に推し進める力を与える.この毛の動きに対する生体反応により本症が生じるものと考えた.なお診断に当たっては本症の存在を念頭におくことが最も重要であることを述べた.
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