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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻2号

1985年02月発行

雑誌目次

図譜・508

Borderline Lepromatous Leprosyの1例

著者: 花田勝美 ,   菅原光雄 ,   帷子康雄 ,   荒川巌

ページ範囲:P.88 - P.89

患者58歳,女性
初診昭和56年2月13日

原著

モノクロメーターによる全身性エリテマトーデスの最少紅斑量の測定

著者: 二瓶義道 ,   石川治 ,   石川英一

ページ範囲:P.91 - P.99

 Monochromatorを用いて,全身性エリテマトーデス(SLE)患者の最少紅斑量(MED)を測定した.正常人63名について,各波長域ごとに,照射エネルギー量に対する紅斑反応の累積陽性率を求め,プロビット変換してMEDの正常値を求めた結果,285,295,305,315nm域で類似したMED値を示した.SLEでは,最低1波長域におけるMED低値例は,被験症例46例中19例(41%)の高率にみられ,とくに,いわゆるeffectivespectrumである295nmおよび305nm中心域で低下が顕著であった.MED低値は,臨床的光線過敏性と有意に関連性を示し,また低値例では,DLE様皮疹を呈する例が多い傾向がみられた.なお,MED低値は,皮膚筋炎でも高率にみられ(42%),汎発性鞏皮症でも28%に認められた.このことから,MEDの低下で表現される,いわゆる光線過敏性は,膠原病に共通した所見の1つであると考えられた.

5-Fluorocytosineによる日光過敏症の1例

著者: 林部一人 ,   長谷井和義 ,   市橋正光

ページ範囲:P.101 - P.104

要約 62歳,男,左第4指爪郭部に原発するリンパ管型スポロトリコーシスに罹患.ヨードカリ内服を開始したが,全身に毒麻疹が生じた為,5-fluorocytosine(5-FC)内服を試みた.6.0g/日より漸増し,48日後,総量344g投与時,日光曝露部に瘙痒を伴う,びまん性浮腫性紅斑が生じた,また,手背には米粒大小水疱の発生もみた.Phototestの結果,MEDはSE lampで15秒(30mJ/cm2)以下と低下し,BLB lamp 5分間照射(1.5J/cm2)で紅斑が生じた.5KW xenon lampを光源とするモノクロメーターによる作用波長検索では300〜370nm領域に連続してMEDの低下をみた,5-FC内服中止7日目に皮疹消褪し,MEDも正常に回復した.皮疹完治後,誘発試験のため遮光下にて2日間,5-FC 4g/日服用,次いで日光に曝露させたところ,5〜6時間後に,曝露部に瘙痒性浮腫性紅斑が発生,約7日間持続した.以上の経過より,本症例をphotoallergicな機序に基づく5-FCの日光過敏型薬疹と診断した.

尋常性乾癬におけるPUVA療法とステロイド密封・PUVA療法の比較

著者: 田村敦志 ,   山蔭明生 ,   石川英一

ページ範囲:P.105 - P.108

 1977年1月から1983年12月まで当科で入院加療した50例の汎発型尋常性乾癬患者につき,PUVA療法の前処置としてコルチコステロイドODTを行なった群と,PUVA療法単独で治療した群とで,皮疹消失までに要した治療日数,UVAの総照射量,再発までの期間の3点を比較検討した.その結果,治療日数,再発までの期間には両群で差は認めなかったが,UVAの総照射量はそれぞれ60.9±50.9J/cm2,99.7±66.3J/cm2でODT併用群で有意に少なく,ODT前処置の有効性を示した.

Cetraxate Hydrochloride起因蕁麻疹型薬疹

著者: 西澤芳男

ページ範囲:P.109 - P.112

 Cetraxate hydrochloride内服後発症した蕁麻疹型薬疹に関して検討を加えた.5症例(23〜58歳,男:女=3:2)全例において,モルモットを用いたpassive cutaneousanaphylaxis test陽性であり,また健常者recipientを用いたPrausnitz-Kustner反応(PK反応と略す)においても患者血清は全例共陽性反応を示したが,患者血清を56℃,4時間処理後Prausnitz-Kustner反応を行なうと反応は陰性であった.また健常者血清を用いても同反応は陰性であった.さらに,cetraxate hydrochlorideを用いた皮内反応provocationtest共に患者全例に陽性反応を認めた.以上の結果から,cetraxate hydrochlorideによる薬疹の代表例が蕁麻疹様の薬疹であること,これにcetraxate hydrochloride特異的IgEクラス抗体が関与している可能性が強く示唆された.

Mixed Connective Tissue Disease(MCTD)の皮膚の病理組織像について

著者: 沢井高志 ,   佐藤紀子 ,   京極方久 ,   三友紀男 ,   竹松英明

ページ範囲:P.113 - P.119

 MCTD患者5例の手指の皮膚について組織学的に検討した.診断は厚生省MCTD班の診断の手引きに従ったが,罹病期間は3カ月から15年に亘っている.正常例のほか,13例のPSS例を対照とした.その結果,MCTD患者の皮膚の組織学的特徴は,1)表皮,皮膚付属器の軽度萎縮,2)真皮膠原線維の膨化と増生,3)血管の内膜肥厚などである.これらの組織学的像は対照としたPSS例に比較すると,所見としては類似するものの,その程度においては遙かに軽く,特に同じ罹病期間で比較した場合,硬化像および萎縮像は殆どみられなかった.

古典的結節性動脈周囲炎の1例

著者: 北畠雅人 ,   渡辺剛一 ,   石川英一

ページ範囲:P.123 - P.128

 25歳,男.初診2カ月前より,微熱,両下腿の筋肉痛とともに両下肢に圧痛のある紅色結節が出現した.検査で赤沈亢進,末梢血白血球数,血小板数増多を認めた.左腓腹筋の生検像で,血管を中心に肉芽腫性病変と弾性板の部分的な破壊を,また腎血管造影にて両腎弓状動脈に微小動脈瘤を認め,結節性動脈周囲炎と診断した.プレドニソロン30mg/日投与にて一時軽快するも,減量にて再び発熱し,筋肉痛が再燃した.アザチオプリン,サイクロホスファマイドを投与したが軽快せず,プロスタグランディンE1を点滴静注し,さらにアスピリンの併用で再び解熱傾向を認めた.

潰瘍性大腸炎を合併した壊疽性膿皮症

著者: 足立功一 ,   足立柳理 ,   須藤学 ,   三浦正次 ,   佐竹良夫

ページ範囲:P.129 - P.134

 14歳,男児の潰瘍性大腸炎を合併した壊疽性膿皮症の1例を報告した.皮疹は急速な全身状態の悪化に伴って急激に潰瘍化したが,コルチコステロイド,サラゾピリンの内服にて約1カ月で瘢痕治癒し,消化管潰瘍も同時期に完全寛解した,皮疹の変化と消化管潰瘍との間には同時的変化がみられ,同一の病因によって起こった疾患であることが考えられた.本症の原因として種々の要因が挙げられているが,本例ではその悪化因子として免疫異常が強く関与していることが推察された.

Blastomycosis-like Pyoderma

著者: 大島茂人 ,   神永時雄 ,   倉田幸夫 ,   福井米正

ページ範囲:P.135 - P.138

要約 69歳,男.前立腺肥大による排尿障害のため恥骨上部に膀胱瘻を作成後約1年8カ月目に,痩孔周囲に膿疱が発生,急速に増加,融合して増殖性局面を形成した.その後,頭,顔,腋窩,腰殿部,下肢にも膿疱と増殖性局面が生じた.病巣よりS. aureus(⧺)を反復検出,その生検標本は表皮突起の著しい延長を伴う表皮肥厚,好中球と好酸球を含む表皮内膿瘍および真皮上層における好中球と好酸球のびまん性浸潤を示した.免疫螢光法直接法も間接法も天疱折抗体陰性であった.本症例をblastomycosis-like pyodermaと診断し,その診断基準について考察を加えた.

腰背部に局在し多発した表在性基底細胞上皮腫の1例

著者: 戸倉新樹 ,   深水秀一 ,   井上邦雄 ,   吉国好道 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.139 - P.143

 41歳,女性.4,5年前より,下背部正中に自覚症状のない皮疹がみられ,徐々に拡大し,円形の局面を作るようになった.患者は自覚していなかったが,その他に,その円形の局面を中心として,多数の丘疹,あるいは点状小丘疹ないし点状褐色斑が腰背部にみられていた.組織学的には,円形局面も,その周囲の丘疹も表在性基底細胞上皮腫であったが,円形局面からより離れた場所の点状皮疹はlentigo様であった.砒素摂取歴,放射線照射歴はなく,多発性基底細胞母斑症候群にみられる様々な異常も認め得なかった.多発型表在性基底細胞上皮腫の既報告例と比較し,皮疹数,皮疹の分布様式において相違点を有すると考えられた.

Arteriovenous Hemangiomaの2例

著者: 伊藤隆 ,   吉江治彦

ページ範囲:P.145 - P.148

 74歳男性の前腕および38歳女性の鼻部に生じたarteriovenous hemangiomaを報告した.ともに極めて徐々に増大し,自覚症状や圧痛を伴わない赤色調小腫瘤で,臨床的には血管腫と診断した.病理組織学的には真皮内に限局する血管腫で,構成する血管には狭い内腔と線維筋性の比較的厚い壁を有する動脈様血管と,拡張した内腔と薄い壁を有する静脈様血管とが含まれていた.GirardらおよびCarapetoらの報告を要約して本症の特徴を概説した.また本腫瘍の発生には動脈成分の関与が推測されることより,venoushemangiomaとするよりarteriovenous hemanglomaとする方が診断名としてより妥当と考えた.

Mucous Cyst of the Skinの3例

著者: 大山克巳

ページ範囲:P.149 - P.153

 Mucous cyst of the skinの3例を報告した.症例1は左足背に生じ,米粒大の小結節が集合して1つの結節をなし,部位および臨床像が特異であった.症例2は右第I趾外側に2個の水疱様外観を呈する嚢腫を認め,部位および個数が比較的珍しいものと思われた.症例3は右第Ⅲ指爪根部に圧痛強度の結節をみ,結節出現2カ月前より爪甲に縦溝を認めた.現在まで指趾の嚢腫様病変はmucous cyst of the skinとガングリオンの一型と考えられるdorsal distal interphalangeal joint ganglionの2疾患が含まれており,両者を比較検討した結果,両者は組織学的な位置付けの違い以外には鑑別出来なかった.Mucouscyst of the skinの成因に関してsynovial lining cellの存在を考慮するならば,化生説およびsynovial origin説が推察された.

Cysts of the Penile Rapheの3例

著者: 荷見圭子 ,   柴田敦子 ,   徳田安章

ページ範囲:P.155 - P.160

 26歳,17歳および57歳男子の陰茎に複数発生した3例について報告した.さらに,本邦症例について整理した.また本症の発症要因について,発生学的に検討し,外尿道側管由来,胎生11週から12週頃の尿道壁の癒合時に嚢腫を形成しやすいものと考えた.

特発性陰嚢石灰沈着症の2例

著者: 井上俊一郎 ,   青木重信 ,   鈴木正之 ,   加藤英行 ,   北島康雄 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.161 - P.164

要約 37歳,23歳の男性にみられた特発性陰嚢石灰沈着症の2例を報告した.発症はそれぞれ4年前,5年前で,陰嚢の小結節がしだいに増大かつ増加した.それぞれ陰嚢湿疹,瘙痒感を伴っている,2例とも血中カルシウム,リンは正常範囲内.真皮内に大小の石灰沈着巣が多数認められ,その中には組織化学的にヘパリチン硫酸の存在が考えられた.また,その周囲には嚢腫壁は認められず,脱顆粒した多数のマスト細胞と異物巨細胞を伴う異物反応とが認められた.異物反応は初期と思われる顆粒状ないし結晶状の石灰沈着部位に多く,完成された均質な塊状物周囲にはほとんど認められなかった.すなわち,何らかの修飾によって沈着物の異物性が失われるものと推察された.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.119 - P.119

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・43

表皮水疱症(VII)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.166 - P.168

 図95真皮型表皮水疱症"Epidermolysis"のいろいろな型の中には,simplex型のように確かに表皮の解離を起こすものもあるにはあるが(図85-88),図89-92に亘って観察したletalis型のようにlamina lucidaで解離の起こるものや,これから解説するdystrophic型のように真皮上層で分離の起こるものもあるので,この名称は適当でない.Dystrophy (異栄養症または栄養障害症)なる概念はAschoffが,細胞あるいは組織の形態学的変化を起こす原因が,それらの物質代謝障害に基づくと考えられた時代に使用した.なるほど筋ジストロフィーなどの場合には,筋細胞の萎縮の起こる病型もあるので,この名称は現在でも(特に原因不明の場合)都合良く使われている.Dystro-phic typeでは電顕的に基底板直下の真皮乳頭層の解離が先ず起こるのでdermolytic typeとも呼ばれているが,epidermolysisにdermolyticでは話が混乱する.このように学問の進歩と共に病名がおかしくなる例は沢山あり,本症もその1例である.Epidermolysisなる病名は文献に浸透しているし,人口に膾炙しているので一応残すとして,epidermal type, junctional type,dermal typeに分類するのがよかろう.
 さて,dermal typeの中で劣性遺伝をする型で,全身性に水疱形成のみられるもの(図95A)が一番重症である,爪(図95B),歯(図95C),頭髪(図95D)が凡て脱落し,深い難治な潰瘍を作る(図95E).一般に劣性遺伝をする病気は優性遺伝をするものより重症であるが,本症も例外ではない.水疱形成と糜爛が繰り返し起こっているうちに棘細胞癌が発生することもある.優性遺伝を示すdermal typeには主に四肢に限局している型(Cockayne-Touraine型)があり(図95F,G),爪,歯,頭髪の異常は極く軽度か欠如する.他の優性遺伝を示すdermal typeには躯幹,上腕などに多数の白い丘疹または小局面を作ってくるalbopa-puloid型(Pasini型)があり(図95H),この型は時として劣性型に近い重症な皮膚症状を示す.多数の丘疹はalcian blueに染まる酸性ムコ多糖類からなる(図951)(図95IはPAS-alcian blue染色).

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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