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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻3号

1985年03月発行

雑誌目次

図譜・509

Necrobiosis Lipoidica

著者: 佐々木哲雄 ,   中嶋弘 ,   新井裕子

ページ範囲:P.178 - P.179

患者39歳,女性
初診昭和57年7月29日

原著

第VIII型と思われるEhlers-Danlos症候群の1例

著者: 山蔭明生 ,   前田秀文 ,   内山安弘 ,   北畠雅人 ,   石川英一

ページ範囲:P.181 - P.187

 Ehlers-Danlos症候群は皮膚過伸展,関節の過動性,組織の脆弱性を主徴とする遺伝性結合織疾患である.我々はEhlers-Danlos症候群の第VIII型と診断すべき臨床所見を有する1症例を経験し,皮膚結合織を電顕的・生化学的に検討した.臨床像:55歳男子.次女が外傷部に紫斑を生じ易い以外は家族内に同症をみない.7,8年前より皮膚の過伸展,菲薄化,擦過時の疼痛出現,その後,罹患部位の拡大と共に皮下出血斑を伴う様になった.著明な歯肉炎を合併しており,顎骨X線像にて歯周囲炎を認めた.関節の過伸展はない.検索:生化学的にI型コラーゲンの減少,デルマタン硫酸の減少,ヒアルロン酸の増加を,免疫組織学および電顕学的に線維間基質でのプロテオグリカン凝集体構造の欠如を認めた.これらの検索結果はプロテオグリカンないしプロテオグリカン凝集体構造の形成異常がコラーゲンの凝集阻害を来し,臨床的異常を招来している可能性を示唆する.

先天性表皮水疱症における血清および水疱液のCarcinoembryonic Antigen

著者: 田崎理子 ,   橋本功 ,   花田勝美 ,   佐藤静生 ,   三橋善比古 ,   帷子康雄

ページ範囲:P.189 - P.193

 先天性表皮水疱症10例(単純型2,萎縮型1,優性栄養障害型3,劣性栄養障害型4),類天疱瘡4例,水疱型薬疹1例について,血清および水疱液のcarcinoembryonic anti—gen (CEA)を測定した.血清CEAは単純型2例中1例,劣性栄養障害型4例中3例で高かった.本症の血清CEA上昇について,①重症度との相関,②病的劣性遺伝子との連鎖,あるいは,③同遺伝子の多面効果などの機序が考えられている(Rochman,1979)が,今回の成績からは②,③が否定され,①の機序のみが妥当と考えられた.水疱液CEAは優性および劣性栄養障害型で高値を示した.水疱液CEAは症例の重症度や血清CEA量との間に相関はなく,水疱採取部位のエクリン汗腺密度との間に有意の正相関を示すとともに,真皮内(電顕的基底膜の直下)に水疱を形成する病型において高値傾向が認められた.

Infantile Acropustulosis

著者: 生野麻美子 ,   羽田俊六

ページ範囲:P.197 - P.199

要約 1歳男児に生じたinfantile acropustulosisを報告した.生後7カ月より四肢末梢部に激しい瘙痒を伴う2〜4mm大の小膿疱を繰り返し生じ,2歳1カ月で治癒した.秋から冬にかけては皮疹は消褪した.組織では好中球と少数の好酸球を入れた角層下部膿疱を認めた.DDS 2mg/kg/日で皮疹は速やかに消褪し新生も抑制された.本症の概念・鑑別診断に触れ,特に疥癬罹患乳幼児にみられる掌蹠の膿疱性皮疹との異同について述べた.

掌蹠疹を伴ったHyperkeratosis Lenticularis Perstans Flegel

著者: 木村俊次 ,   禾紀子 ,   増田光喜 ,   倉持正雄

ページ範囲:P.203 - P.207

 78歳,男子,足趾・足背・足関節伸側・下腿伸側下1/3・手背に2年来,対側性に皮疹を多発したhyperkeratosis lenticularis perstans(HLP)を報告した.皮疹は粟粒大〜小豆大,類円形〜不整形,赤褐色〜飴色,扁平降起性の角化性丘疹で,多くのものは周囲に白色鱗屑を伴い,足背のものは軽度の痛痒さを伴う.また掌蹠には,中央部に白色鱗屑を伴い,やや陥凹する点状角化性皮疹が認められた,足背の皮疹は組織学的に,錯角化を伴う角質増生,マルピギー層非薄化,表皮基底層の部分的変性,真皮上層の小血管拡張と中等度の小円形細胞浸潤を示した.20%尿素軟膏と吉草酸ベタメサゾン軟膏との併用療法がかなり奏効した.掌蹠に点状皮疹を併発したHLP症例を検討し,palrnoplantar pitsを呈する疾患群の1つにHLPも加えられるべきことを指摘した.また,HLPの治療についても検討を加えた.

Erythropoietic Protoporphyriaの1例

著者: 寛島保 ,   上田正登 ,   長谷井和義 ,   市橋正光

ページ範囲:P.209 - P.213

 6歳男子のE.P.P.の1例を報告した.3歳時発症.5歳頃から日光曝露部の瘢痕と色素沈着が著明となった.血液検査でGOT, GPTの軽度上昇あり.組織所見では真皮上層および乳頭層の血管周囲に著明なPAS陽性物質の沈着あり. UVBおよびUVAによるphoto testでは正常皮膚反応を示したが,赤血球螢光現象陽性,光溶血試験で溶血度高度であり,血中,糞便中のprotoporphyrinは異常高値を示したのでE.P.P.と診断した.患者血清補体はin vitroで日光照射後低値を示した.本症の皮疹発症に補体の関与が考えられた.治療には日光曝露の制限とカバーマーク外用が有効であった.兄はproto—porphyrin高値であるにもかかかわらず皮疹がないことから遺伝的保因者と考えられた.

頻回輸血後の超未熟児に生じたGVH Diseaseの1剖検例

著者: 角谷廣幸 ,   佐藤勇一 ,   高橋伸也 ,   後藤良治 ,   上坂佳敬

ページ範囲:P.215 - P.219

 頻回の輸血後に発症した超未熟児のgraft-versus-host disease (GVHD)を報告した.全身に網状ないし樹枝状の紅斑の多発,四肢の浮腫,肝・脾腫,無顆粒球症,敗血症などの症状がみられた.組織学的には基底細胞層の液状変性,リンパ球浸潤を伴う表皮細胞の好酸性壊死(satellite cell necrosis)がみられた.剖検によって骨髄の著明な低形成,胸腺・脾・リンパ節におけるリンパ球系細胞の著しい減少,肝細胞の巣状壊死,出血性肺炎が認められた.未熟児においては輸血の合併症にGVHDを考慮する必要があることが示唆された.

皮膚扁平上皮癌を併発した臀部慢性膿皮症—1剖検例の報告と文献的考察

著者: 長尾貞紀 ,   佐藤紀夫 ,   薗田紀江子 ,   高橋若子 ,   飯島進 ,   浅野重之 ,   若狭治毅

ページ範囲:P.221 - P.226

 皮膚扁平上皮癌を併発した腎部慢性膿皮症の1例を剖検所見を含め報告し,簡単な文献的考察を行なった.症例は58歳,男.40歳頃より臀部に硬結・膿瘍・瘻孔・肥厚性瘢痕を生じ,18年後瘻孔部にgrade 2の扁平上皮癌を併発した.59歳時死亡し,剖検にて両肺と右鼠径リンパ節に転移巣を認めた.同様の症例は文献的にいろいろな標題で報告されているが,これまでに本例を含めて男22,女1,合計23例が数えられる.その平均年齢は53歳で,癌の組織型はすべて高分化型の扁平上皮癌を示しており,癌発生までの臀部膿皮症の罹病期間は平均23年であった.転移のあったものは4例(17%)で原発性皮膚扁平上皮癌の転移率(3%)に比し高率であった.

黒色調丘疹を呈した尖圭コンジローム—PAP法所見も含めて

著者: 木村俊次 ,   岩本昭雄

ページ範囲:P.227 - P.231

 33歳,男子.陰茎に8カ月来黒色調丘疹の形で3個生じた尖圭コンジロームの1例を報告した.臨床的にbowenoid papulosisを疑診したが,組織学的には尖圭コンジロームの定型像を示し,有棘層上層の表皮細胞核周囲に顕著な空胞化をみた.病変部のメラニン色素増加は臨床的色調と対応すると思われた.また乳頭腫ウイルスに対するPAP法をパラフィン包埋切片について行なったところ,顆粒層の表皮細胞核に一致して陽性所見を得た.尖圭コンジロームの特異な臨床型について文献的に考察し,ウイルス学的検索を応用した,尖圭コンジロームの概念の再検討の必要性を指摘した.

皮膚平滑筋肉腫

著者: 広瀬寮二 ,   神田源太 ,   堀真 ,   三好紀

ページ範囲:P.233 - P.238

 80歳,男性.左前腕伸側に浸潤性硬結性紅斑局面を形成.その中央部に連珠状紅褐色結節が多発し,発症後約3カ月で来院.組織学的に真皮上層から皮下脂肪織にかけて,腸結状の核を有する紡錘形細胞の増値を認めた.腫瘍細胞はvan Gieson染色で黄染し,Mallory-Azan染色では赤染した.また鍍銀染色では箱入り像を呈したため,皮膚平滑筋肉腫と診断した.さらに電顕的観察を行ない,本症の特徴的所見は,myofilament, dense body,cytoplasmic process, marginal density, pinocytotic vesicles, basement membraneなどが存在することであると思われた.また自験例の発生母組織としては,立毛筋が考えられた.

臍瘻孔を呈したPseudomyxoma Peritonei

著者: 山崎正博 ,   山崎玲子 ,   川崎洋司 ,   長廻錬

ページ範囲:P.239 - P.242

 51歳,家婦.半年前から臍部より分泌物の漏出をみていたが,同部に潮紅を生じ疼痛を伴うようになったため受診.臍窩に硬結を認め,その中央には瘻孔を形成し,jelly状物質の排出を認めた.開腹所見と既往歴から,3年前に摘除術を受けた卵巣のmucinouscystadenomaに続発したpseudomyxoma peritonciと診断した.臍部の硬結と瘻孔というきわめて特異な臨床像を呈した本症の1例を報告した.

Multicentric Reticulohistiocytosisの1例

著者: 進藤泰子 ,   御子柴甫 ,   秋山純一 ,   斉木実 ,   浦野房三

ページ範囲:P.243 - P.248

 15歳女子のmulticentric reticulohistiocytosisの1例を報告した.手指を中心とした多数の小結節と指趾骨の辺縁びらんがあり,結節の病理組織では,組織球性細胞の増殖像を示した.自験例は8歳より発症し,本邦最年少例であり,関節破壊が強いにもかかわらず,炎症症状が少ないことに特色がある.原因的因子か結果表現か判定できないが,組織球性細胞の電顕所見で,lamellar structureと渦巻状のライソゾーム由来物質が認められたことも特徴といえよう.

飼ネコが感染源と考えられたTrichophyton mentagrophytes白癬の家族内発生例

著者: 西沢慶昭 ,   高橋伸也

ページ範囲:P.249 - P.254

要約 生後1カ月の雑種仔ネコを飼い始めて1,2週間たった頃より,飼主(21歳,女性)の顔に瘙痒性紅斑が出現し,徐々に体幹・四肢に増数,同居している母親,叔母にも同様の症状が出現した.3人の患者の紅斑部鱗屑よりT. mentagrophytesを培養・同定し,飼ネコを調べたところ明らかな皮疹を認めなかったが,頭毛をKOH法で鏡検したところ毛外性類小胞子菌寄生を認め,培養にてT. mentagrophytesと同定した.ネコのT. mentagrophytes感染は稀であり,ヒトへ感染させたとの症例報告は本邦で自験例を含め5例であった.動物のT. mentagrophytes感染では,動物の種類によって自験例のごとく明らかな皮膚病変を示さないこともあるので,感染源として動物を検査する場合にはこのことを念頭に入れておくことが大切である.

皮膚顎口虫症

著者: 出光俊郎 ,   相沢晴美

ページ範囲:P.255 - P.260

 皮膚顎口虫症(creeping disease型)の1例を報告し,併せて本邦における最近5年間の顎口虫症31例につき若下の統計的観察を試みた.症例は64歳,男.胃潰瘍治療の目的で約1カ月半にわたりドジョウを生食したところ,躯幹に線状紅斑ならびに蕁麻疹様皮疹が出現した.病理組織学的には著明な好酸球浸潤を認め,免疫血清学的検査では顎口虫抗原と患者血清との間に沈降線が得られた.従来,感染源としてはライギョが重要視されていたが,近年ドジョウの生食による本症の報告が相次ぎ,また,病型に関しても従来の長江浮腫型に代わってcreeping discasc型が増加してきている.わが国における食生活の変遷とともに感染源の多様性が示唆され,淡水魚の生食を禁止するなどの公衆衛生学的対策が必要であると考える.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.213 - P.213

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・44

表皮水疱症(VIII)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.262 - P.268

 図96劣性真皮型表皮水疱症光顕的にhazyにみえる分離した真皮乳頭層を拡大すると水疱形成の初期の変化がみられる.即ち表皮基底細胞(B),lamina lucida(矢尻),基底板(B)には変化がない.膠原線維の分解による間質の浮腫が著明であり(*),この部位には細い線維が多数あるにもかかわらず,典型的なanchoring fibril(矢印)はかなり減少している.優性型でanchoring fibrilの先天的欠損,形成不全があるとする者1,2)と二次的な変化であると考える者がある3).劣性型でも一次的欠損説3)と二次的変化説4)がある,Collagenaseが増加し,膠原線維やその他の線維成分を融解すると考える者がある5,6)一方,それに反対の意見の研究者もいる7).私の経験ではanchoring fibrilが病巣部に皆無という例は,むしろ稀である,新生児の場合には全く新しい水疱を採取できるので,瘢痕形成と水疱形成を繰り返した成人の病巣と異なる初発の変化をみることができる.本図はその例で,新生児の背部の水疱より採ったものである,最も顕著な変化はやはり膠原線維の消失であろう.この部位には,正常では多数の大小の膠原線維が交錯しているはずであるが,この図では2,3本(C)の残存をみるのみで,他は無構造なモヤモヤした物質に変化している.更に変化の進んだ部位では空隙の形成がみられる(*).所々に基底板の増殖が起こり(BL),それにanchoring fibrilが付着している.更に弾力線維の構成成分であるmicrofibrilあるいはelastofibrilと呼ばれる線維の束が基底板より伸びている(E).これらはoxytalan fiberといわれる弾力線維の最も細いものに相当する.以上の所見より劣性遺伝型の真皮型では膠原線維の破壊が最も顕著で,anchoring fibrilもかなり影響を受けることがわかる.一方,弾力線維の線維成分であるmicrofibrilにはあまり変化がなく,基底板,表皮基底細胞には一次的な変化はないといえる.
×30,000

これすぽんでんす

無毛部に生じたPost-traumatic Fibromaか?

著者: 菊池一郎

ページ範囲:P.269 - P.269

 特異な組織像を呈した乳輪部のFibrous Papule (玉田康彦,池谷敏彦:臨皮,38;1089-1091,1984)を興味深く読みました.同氏らはこの疾患がirritation fibromaに近い疾患であろうと推察しています.私達は無毛部に生じたpost-traumatic fibromaの症例を検討し,1983年に下に示す表を作成しましたが,そのなかでnippleとperianalにも生じるのではないかと予想しました.最近,大山1)も同様症例を発表しています.
Post-traumatic fibromaの形はさまざまで,色々奇抜な形容詞がつけられています.らっきょう線維腫,真珠様陰茎丘疹,毛深いニンフ,指状線維腫などがあります.これらの形態発生morphogenesisはどうなっているのでしょうか?

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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