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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻4号

1985年04月発行

雑誌目次

図譜・510

臭素疹

著者: 中村準之助

ページ範囲:P.278 - P.279

患者41歳,男,ジャズ・バンドマン
初診昭和56年4月10日

原著

日光蕁麻疹の3例

著者: 斉藤祐子 ,   望月明子 ,   水口美知 ,   肥田野信

ページ範囲:P.281 - P.285

 20歳男,30歳男,38歳男の日光蕁麻疹3例を報告した.1)モノクロメーターテストを行った2例では,作用波長は症例1で419〜492nm,症例3で327〜507nmであった.2)全例でプロジェクターランプ照射中に膨疹を生じたことから,抑制波長はないか,あるいはごく弱いと考えた.3)症例1,3にin vitro照射患者血清皮内注射を試み,2例とも陽性を呈した.4) CH50の低下が症例1,2に,上昇が症例3に認められた.5)症例3に閾値以下の反復日光照射を試み,有効であった.

日光蕁麻疹の1例

著者: 山本泉

ページ範囲:P.289 - P.292

要約 症例は42歳の女性で,約1年来,昼頃にガラス越しの日光に15分位あたると瘙痒と膨疹形成をみる.初診時には,右上肢,頸部,顔などの露出部に限局し,びまん性に紅斑と膨疹を認めた.BLBランプの照射試験で膨疹を誘発しえたが,Y43フィルターを装着したスライドプロジェクターによる可視光の照射では膨疹を誘発しない.SEランプ照射では4MED照射しても皮疹は誘発されない.以上より本症例の作用波長はUVA域にあると考えた.RoC社のサンスクリーン剤(7A+B)無色の外用により,皮疹の出現を予防できた.なお,被動転嫁試験は施行できなかった.

葛根湯による薬疹の1例

著者: 太田みどり ,   津谷喜一郎 ,   戸田浄

ページ範囲:P.293 - P.296

要約 26歳の男性.躯幹,上肢,下肢に瘙痒のある出血性の丘疹が多発.7日後には出血斑を中心に浸出傾向の強い紅斑が地図状に不規則に融合し,広範な局面を形成した.臨床検査所見には,特に異常を認めなかった,皮疹出現前より内服していた葛根湯,およびその成分の一つである麻黄の誘発試験で,皮疹の再現をみたため,本症例を葛根湯による薬疹と診断した.

潰瘍性大腸炎に併発した結節性紅斑

著者: 大草康弘 ,   長島正治

ページ範囲:P.297 - P.301

 潰瘍性大腸炎に併発した結節性紅斑の41歳,女性例を報告した.急激な腹部症状の出現に一致して両下腿伸側に結節性紅斑の多発を認めた.消化管の精査にて潰瘍性大腸炎が見出され,潰瘍性大腸炎に併発した結節性紅斑と診断された.両症状は現在sulfasala—zineあるいはprednisolone内服併用で軽快している.
 潰瘍性大腸炎に併発した結節性紅斑について若干の考察を加えるとともに,この場合の結節性紅斑は潰瘍性大腸炎患者の血中にみられる免疫複合体が一過性に血管壁に沈着して生じたtransient immune complex vasculitisと考えられることを述べた.

直腸癌を合併したProgressive Systemic Sclerosisの1例

著者: 嘉月博 ,   工藤昌一郎 ,   前川嘉洋

ページ範囲:P.303 - P.306

 46歳,女性.初診2年前,手足のレイノー症状.顔面・四肢の浮腫性硬化が出現した.1年前より軟便.4カ月前より血便に気づいた.3カ月前より全身の皮膚硬化が出現,当科に入院後,全身性進行性強皮症(PSS)と診断され,精査により直腸癌(腺癌)が見出された.肝右葉に転移巣が認められたが,本院外科にて直腸切断術と肝動脈チュービングを施行した.術後も皮膚硬化は持続し,むしろ萎縮傾向を呈した.
 PSSと悪性腫瘍の合併率の欧米での報告は3〜5%であるが,1971年以降の本邦例は自験例を含め10例で,肺癌6例,消化器癌5例(重複例2例),肝癌1例で,肺と消化器系に偏っているうえ,2例に重複が認められたのは興味あることと思われる.PSSの中のある患者においては発癌機序に対する抵抗力の著明な減弱,腫瘍免疫能の低下が存在することを示唆する症例と考えられる.

Mixed Connective Tissue Disease(MCTD)患者の皮膚にみられた血管病変

著者: 沢井高志 ,   佐藤紀子 ,   京極方久 ,   三友紀男

ページ範囲:P.307 - P.312

 Mixed connective tissue disease(MCTD)患者5例を対象に,皮膚にみられる血管病変を光顕的,電顕的に観察した.その結果,血管病変としては,1)真皮層上部にある毛細管の拡張,周囲の浮腫および炎症性細胞の浸潤,2)真皮層深部にある小動脈の硝子化,線維化,3)真皮層深部から皮下組織にみられる静脈の硬化像が特徴的であった.電顕的にはvcsicular transportの旺盛な賦活化された内皮細胞と周囲にマクロファージ,リンパ球,線維芽細胞が認められている.また肥厚した小動脈壁ではmyointimal cellの増殖とプロトコラーゲンや基底膜様物質の沈着が認められた.しかし,これら血管病変に関して免疫複合体の関与は全く認められなかった.MCTDの血管病変の発生機序は未だ不明な点が多いが,内皮細胞を通して何らかの物質が血管壁あるいは外膜側に出て,中膜筋細胞の傷害,賦活化と共にリンパ球,マクロファージを動員して線維化へと発展していく可能性を示唆している.

診断の困難であった水疱性類天疱瘡の1例

著者: 森美智留 ,   粟田修子 ,   月永一郎 ,   熊切正信 ,   三浦祐晶

ページ範囲:P.313 - P.316

 58歳,女性.臨床像,組織像からは多形滲出性紅斑,水疱性類天疱瘡,ジューリング疱疹状皮膚炎の鑑別が困難であった症例で,初発から4カ月後に螢光抗体直接法でIgG,C3が基底膜に線状に沈着し,8カ月後に間接法でIgG抗基底膜抗体が20倍と陽性になった例を経験した.ステロイドの大量投与にもかかわらず反応が悪いため,加えてDDS100mgの長期投与を行い,皮疹の改善をみた.

Chylous Refluxの1例

著者: 大郷典子 ,   村井隆 ,   土井顕 ,   宗義朗

ページ範囲:P.317 - P.319

 32歳,男.16歳頃および32歳時に一過性に右大腿内側皮膚より乳糜の漏出を見,20歳頃乳糜尿を指摘された.右大腿浮腫状で,粟粒大乳白色水疱多数散在し,真皮乳頭層,真皮下層から皮下脂肪との境界付近にリンパ管の拡張があり,血中リン脂質,βリポ蛋白,コレステロールおよびIgAの低値も認む.リンパ管造影にて右大腿部での造影の遅延,右大腿から腸骨リンパ管さらに骨盤腔リンパ管に網目状,静脈瘤様拡張,蛇行がみられた.認むべき既往症がなく,lymphedema praecoxに伴うchylous refluxと思われた.Primarylymphcdemaに伴うchylous refluxの報告例は少ないが,皮膚症状としては,リンパ浮腫,小水疱,乳白色の小丘疹,皮膚からの乳糜の漏出,xanthomatosis, lymphangioma circum—scriptumおよびcapillary hemangiomaがあげられる.

Buschke-Ollendorff症候群

著者: 堀内保宏 ,   梅澤明

ページ範囲:P.321 - P.325

 親子三代にわたり,骨斑紋症と一種の結合織母斑とを合併するBuschke-Ollendorff症候群の一家系を報告した.発端者は29歳主婦.左臀部に腫瘤局面があり,患者の父と3歳息子にも臀部に腫瘤がみられた,腫瘤組織は真皮膠原線維間に弾性線維の増生と異所性に真皮内脂肪織を認める一種の結合織母斑.患者とその父には,骨硬化性斑"osteopoikilosis"が認められ,息子には明らかな骨病変は認められなかった.

伴性遺伝性魚鱗癬および尋常性魚鱗癬の非典型例—Steroid Sulfatase活性による両者の鑑別

著者: 吉池高志 ,   小川秀興

ページ範囲:P.327 - P.332

 伴性遺伝性魚鱗癬あるいは尋常性魚鱗癬と思われる21例につき,まず従来通り,遺伝形式,発症時期,皮膚症状,眼科的所見,病理組織学的所見を検討して臨床診断を下した.次いで,個々の症例で白血球,角層のsteroid sulfatase活性を測定することにより最終診断を下した.そして,この最終診断をもとにふりかえって症例を検討すると,臨床所見病理学的所見,遺伝形式なども非典型例が少なくない.そこで従来の診断方式と酵素学的診断結果を対比しつつ論述し,次いで21例の中から伴性遺伝性魚鱗癬の典型例および伴性遺伝性魚鱗癬,尋常性魚鱗癬の非典型例を選び,それらにつき誤診されやすい点について詳述した.初回および最終診断の食い違いを検討すると,尋常性魚鱗癬や診断のつかぬものには伴性遺伝性魚鱗癬が含まれ,定型的な伴性遺伝性魚鱗癬として診断したものは酵素学的にもやはり伴性遺伝性魚鱗癬である,という結果を得た.即ち,伴性遺伝性魚鱗癬は本邦に於ては決して稀な疾患ではなく,欧米に於て確立されたかに思えた鑑別診断法は不確かな点が多い.

胎盤性Sulfatase欠損症とX-Linked Ichthyosis

著者: 村野早苗 ,   小野木淳 ,   板橋光司郎

ページ範囲:P.333 - P.337

 胎盤性sulfatase欠損症は極めて稀な疾患であり,胎児に異常を認めないにもかかわらず,妊娠末期の尿中estriolが極めて低値を示す.出生児はすべて男子であり,X—linked ichthyosisの発症をみる.近年X-linked ichthyosisの発症には,sulfatase欠損が関与していることが徐々に明らかにされてきた.われわれは,典型的な母子例を経験したが,本邦皮膚科領域では未だ報告をみないので,文献的考察を加えて報告する.

Sjögren-Larsson症候群

著者: 五十嵐美保 ,   森下美知子 ,   伊藤雅章 ,   鈴木恵 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.339 - P.344

 5歳,女児.黒色表皮腫類似の皮疹がほぼ全身にみられる.IQ83,明らかな痙性麻痺はない.組織学的には角質増殖,乳頭腫症が著明,電顕的に角層細胞内に層板状構造を認める.Sjögren-Larsson症候群の本邦報告例のうち,組織学的所見の明らかな10例の皮膚症状につき検討したところ,黒色表皮腫類似の症例が多いことが示された.自験例の皮疹はこれに合致すると考える.

慢性関節リウマチ,シェーグレン症候群に合併した多発性滑液包炎の1例

著者: 大山克巳 ,   籏野倫 ,   西海正彦 ,   横井秋夫 ,   松田章宏 ,   徳永信三

ページ範囲:P.345 - P.349

 51歳,女子.RA,シェーグレン症候群に合併した,四肢および背部に多発かつ巨大化した滑液包炎の1例を報告した.皮疹は20×21mmから77×120mmの種々の大きさの嚢腫であり波動を触知した.切開を加えると,黄白色,多量の滲出液とともに米粒大から小豆大,淡黄色の小物質が多数出現し,嚢腫内壁には暗赤色絨丘状の滑膜増殖が著しく深部へと連続していた.組織学的に,RAによる滑膜炎と同一の所見を示し,大高の分類による第2型と第3型に該当する.その他興味ある組織学的変化として,泡沫細胞の増殖およびリウマチ結節を思わせる所見も認められた.自験例のように滑液包炎が巨大化した理由として恒常的な機械的刺激の関与が考えられた.

脊髄髄膜瘤に合併した先天性皮膚洞の1例

著者: 沢山幸正 ,   渡辺真史 ,   西沢修一 ,   渡辺正人 ,   森修一 ,   佐藤勇 ,   佐藤進

ページ範囲:P.351 - P.354

 生後13日女児の腰仙部にみられた脊髄髄膜瘤に合併した先天性皮膚洞の1例を報告した.本症は放置により重篤な神経症状を呈してくることが知られ,可及的早期の診断,治療が必要である.また本症の好発部位である腰仙部は,比較的中枢神経に関する奇形が多発するが,これらは神経症状とともに皮膚症状を呈することが多く,日常皮膚科診療でも目にふれることがあると思われ報告した.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.292 - P.292

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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