原著
伴性遺伝性魚鱗癬および尋常性魚鱗癬の非典型例—Steroid Sulfatase活性による両者の鑑別
著者:
吉池高志1
小川秀興1
所属機関:
1順天堂大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.327 - P.332
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伴性遺伝性魚鱗癬あるいは尋常性魚鱗癬と思われる21例につき,まず従来通り,遺伝形式,発症時期,皮膚症状,眼科的所見,病理組織学的所見を検討して臨床診断を下した.次いで,個々の症例で白血球,角層のsteroid sulfatase活性を測定することにより最終診断を下した.そして,この最終診断をもとにふりかえって症例を検討すると,臨床所見病理学的所見,遺伝形式なども非典型例が少なくない.そこで従来の診断方式と酵素学的診断結果を対比しつつ論述し,次いで21例の中から伴性遺伝性魚鱗癬の典型例および伴性遺伝性魚鱗癬,尋常性魚鱗癬の非典型例を選び,それらにつき誤診されやすい点について詳述した.初回および最終診断の食い違いを検討すると,尋常性魚鱗癬や診断のつかぬものには伴性遺伝性魚鱗癬が含まれ,定型的な伴性遺伝性魚鱗癬として診断したものは酵素学的にもやはり伴性遺伝性魚鱗癬である,という結果を得た.即ち,伴性遺伝性魚鱗癬は本邦に於ては決して稀な疾患ではなく,欧米に於て確立されたかに思えた鑑別診断法は不確かな点が多い.