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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻5号

1985年05月発行

雑誌目次

図譜・511

恙虫病

著者: 日野治子 ,   北島拓弥 ,   西脇宗一

ページ範囲:P.364 - P.365

患者35歳,男性,建築技師
 家族歴・既往歴特記すべきことはない.

原著

胸肋鎖関節(骨化)症を伴ったAcute Generalized Pustular Bacteridの1例

著者: 高橋千恵 ,   今村貞夫 ,   伊藤裕

ページ範囲:P.367 - P.372

 66歳男性に突然激烈な胸部〜左肩甲部痛が出現し,発熱,白血球増多,赤沈亢進とともに,上肢,躯幹には軽度浸潤性紅斑,両下腿には紫斑性紅暈をもつ膿疱が散発した.整形外科にて胸肋鎖関節(骨化)症を指摘され,手掌足蹠にも水疱,膿疱の乾燥した跡と思われる落屑が認められたことから,本症例を胸肋鎖関節(骨化)症を伴ったacute gene—ralized pustular bacteridと診断し,若干の考察を行った.

非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の治験例—鱗屑の酵素学的分析も含めて

著者: 吉池高志 ,   今井龍介 ,   坪井良治 ,   山田裕道 ,   小川秀興 ,   大槻典男

ページ範囲:P.373 - P.377

 症例は11カ月男児.生下時より全身に潮紅落屑をみた.入院時,全身のびまん性潮紅と葉状または脂漏性の鱗屑を付着する.限瞼外反軽度.神経学的に異常なし.一般臨床検査異常なし.病理組織学的には定型的.鱗屑におけるacid phosphatase,β—glucuronidase,arylsulfatase A,B,cathepsin D,neutral protease,steroid sulfatase,transglutaminase,sulf—hydryl oxidase活性を測定したところ,β—glucuronidase活性の著明な上昇をみた.Steroidsulfatase活性は正常であった,治療は外用のみで著効を奏した.外用療法としてはdithranol,urca-betamethasone propionate,betamethasone valerateを用い効果を比較したところ,urea-betamethasone propionateが著効を示した.

Subclinical Sjögren's Syndromeを呈したAuto-immune Annular Erythemaの2例

著者: 香曾我部幸 ,   水田栄一 ,   長尾洋 ,   小玉肇 ,   野原望

ページ範囲:P.379 - P.383

 臨床症状,検査所見がauto-immune annular erythemaに一致する37歳男性,18歳女性の2例を報告した.この2例は乾燥症状は自覚しなかったが,耳下腺造影および小唾液腺生検所見からsubclinical Sjögren's syndromeと診断しえた.シェーグレン症候群とauto-immune annular erythemaの関連について過去の報告例も加えて若干の考察を試みた.

小水疱性類天疱瘡の1例

著者: 一木幹生 ,   久永雅穂 ,   笹井陽一郎

ページ範囲:P.385 - P.387

要約 71歳,男性.約3カ月前より瘙痒を伴う紅斑,丘疹が躯幹,四肢に出現した.一部の紅斑上には小水疱もみられた.組織学的,免疫組織学的検索では,類天疱瘡に一致し,無疹部における吸引水疱中に好酸球遊走因子が認められた.皮疹はステロイド外用のみで消失し,以後再発を認めない.

表皮嚢腫の骨化と皮膚骨腫を伴った偽性偽性副甲状腺機能低下症

著者: 安井伸代 ,   西村素 ,   山下典子 ,   佐藤幹二

ページ範囲:P.389 - P.393

 17歳,女.3〜4年前から頭頂部に硬い角化性腫瘤あり増大した.組織学的には内容に石灰化と骨化を伴った表皮嚢腫と皮膚骨腫を認めた.低身長,短指趾症があるが血清Ca,P,PTHは正常.性染色体に異常なく,Ellsworth-Howard試験でも正常反応を認めたため偽性偽性副甲状腺機能低下症(Albright's osteodystrophy)と診断した.

悪性黒色腫—スタンプ螢光法・病巣中5-S-cysteinyldopa測定による迅速診断法並びにEumelanin・Pheomelanin含有量について

著者: 森嶋隆文 ,   兼松秀一 ,   深田栄俊 ,   長島典安 ,   花輪滋

ページ範囲:P.395 - P.399

 右踵部に原発し,短期間に大腿部〜腹部の皮下脂肪組織内に播種状に小転移巣をみた結節性悪性黒色腫の81歳,男子例を報告した.自験例で知りえた興味ある所見は以下の如くである.1)病巣割面からのスタンプ螢光法がmelanoticの黒色腫例でも迅速診断法として有用であること,2)尿中5-S-cystcinyldopaの測定が病期や予後の判断に有力な情報をもたらしてくれること,3)病巣中5-S-cysteinyldopa測定による黒色腫の生化学的診断が可能であること,4)日本人の黒色腫病巣内にeumelaninとpheomelaninとが形成されていることなどである.

Malignant Hemangioendotheliomaの剖検例

著者: 狩野俊幸 ,   瀬野寿理 ,   青木重信 ,   加藤英行 ,   北島康雄 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.401 - P.405

 73歳,男性.頭部を薪で打撲後4カ月目に,頭頂部に暗紫紅色で柔らかい大豆大の腫瘤が出現.漸次増数増大し易出血性となった.組織学的にmalignant hemangioendo—theliomaと診断.PAP法により第Ⅷ因子染色は陽性であった.入院時より肺転移を疑わせる気胸が存在したが,原発巣切除後も血気胸が難治性に進行し,呼吸不全のため全経過7カ月で死亡した.剖検上,肺・肝・脾・右腎・左副腎・胃粘膜・後頸部筋肉内に原発巣と同様の腫瘤が認められ,組織学的には心・膵にも転移巣が認められた.脈管系悪性腫瘍の分類,血管肉腫ないし悪性血管内皮細胞腫の統計,第Ⅷ因子染色などについて若干の考察を行った.

紅皮症から菌状息肉症へ移行した患者に有棘細胞癌が併発した1例

著者: 土屋雅則 ,   久保和夫 ,   橋爪鈴男 ,   徳橋至 ,   鰺坂義之 ,   石原和之 ,   早坂健一

ページ範囲:P.407 - P.412

 紅皮症にて経過観察中の53歳,男性が,右前腕伸側を蛇口にぶつけ潰瘍を形成.潰瘍は急速に拡大して辺縁に有棘細胞癌が発生.全摘し遊離植皮術を行うも,植皮片周囲より右上腕にかけて原病巣からの転移と考えられる小結節が次々と新生.種々の治療を行うも反応悪く,国立がんセンターに転院後死亡した1例を報告した.剖検は施行し得ず.紅皮症部位の組織検索では,真皮上層から中層に帯状の稠密なリンパ球様細胞浸潤を認めるも異型細胞は殆ど見られなかったが,国立がんセンターに転院後に施行したmonoclonal抗体を用いた酵素抗体法で,真皮の浸潤細胞がherpcr/inducer T細胞であることが確認された.また電顕で核に深い切れ込みのある細胞が認められたこと等を考慮すると,紅皮症から菌状息肉症への移行が考えられ,そこに有棘細胞癌が併発した稀有な症例と思われる.

Trichotillomaniaの1例

著者: 足立柳理 ,   白取昭 ,   工藤達也

ページ範囲:P.413 - P.417

 11歳,女児.両眉毛部の不完全脱毛斑を主訴に受診.初診の約1年半前から抜毛するようになり,その癖は一向に直る気配がなく殆ど両眉毛がなくなった.Trichotillomaniaの診断のもとに患児の性格や心理的背景を探る意味で心理テストを行った.その結果をもとに面接治療を行ったところ好結果を得たので報告する.

Bowenoid Papulosisの2例—本邦例の統計的観察

著者: 近藤靖児 ,   車地祐子 ,   角田克博

ページ範囲:P.419 - P.424

要約 Bowenoid papulosisの2例を報告した.症例1:20歳女.2週間前から肛囲,大陰唇に軽い瘙痒感を伴う半米粒大までの黒褐色扁平丘疹が多発した.症例2:74歳男.1年半前から陰茎左側面に米粒大までの灰黒色丘疹が集籏し,小指頭大の隆起性局面を形成.自覚症はない.両例ともボーエン病類似の組織像を呈した.症例1では,電顕的検索を行ったが,ケラチノサイト核内のウイルス様粒子は認められなかった.治療:液体窒素療法にて症例1は治癒,症例2は略治.
本邦報告例は自験2例を加えて現在までに52例を数える.それらについて統計的観察を行った結果,本症に対しては積極的に治療すべきことを強調した.

甲状舌管嚢胞の1例

著者: 大澤幸一郎 ,   小野田進

ページ範囲:P.425 - P.428

 39歳,男性の胸骨上部にみられた甲状舌管嚢胞の1例を報告した.本症は胎生期における甲状舌管の遺残による嚢腫で,別名正中頸嚢胞とも呼ばれる.通常は舌骨を中心に認められるが,自験例のように胸骨上部にみられる例も少数報告されている.組織学的に本症は重層扁平上皮あるいは多列線毛上皮より成る嚢腫で,その細胞間にアルシャンブルー陽性物質を含んだ粘液細胞の介在をみる.甲状腺組織の迷入や自験例のようにリンパ濾胞様構造を認めることもある.甲状腺組織迷入例では乳頭状腺癌の発生が報告されており,全摘出術を施行することが望ましい.

局所性銀皮症の1例

著者: 徳橋至 ,   土屋雅則 ,   橋爪鈴男 ,   鰺坂義之 ,   下田祥由

ページ範囲:P.429 - P.434

 78歳,男性の限局性銀皮症の1例を報告した.患者は約20年前に右下顎の皮膚腫瘍を切除し,創部を鋼線で縫合した.初診2年前より同部に黒褐色の色素沈着が出現,徐徐に増強したため来院した.皮膚生検を施行し,鋼線を数本摘出した.組織所見として真皮中層から下層,汗腺および脂腺周囲,血管壁に黒色顆粒が沈着していた.暗視野鏡検により顆粒は光輝を呈し,X線微小部分析法にて組織内顆粒の分析を行ったところ銀が証明された.きわめて稀と思われる局所性銀皮症ならびにその電顕所見について報告し,若干の考察を加えた.

Phialophora verrucosaによるクロモミコーシスの1例

著者: 伊藤美香 ,   岩津都希雄

ページ範囲:P.435 - P.439

 39歳,家婦の背部に生じたPhialophora verrucosaによるクロモミコーシスの1例を報告した.病巣内における菌の寄生形態は,sclerotic cells,胞子連鎖および菌糸であったが,治療によりsclerotic cellsのみとなった.P.verrucoaはFonsecaea pedrosoiに比して,病巣組織内においてsclerotic cellsという一種の耐久形で寄生に適した形態に変換しにくいのではないか,それが要因のひとつとなって,前者は後者と比べて,人体皮膚に感染することが困難なのではないかと推論した.また,黒色真菌感染症の病型分類にあたっては,原因菌の組織内寄生形態ではなく,臨床像に主眼をおくべきであると考え,若干の考察を加えた.

イヌ疥癬虫によると思われる疥癬の1例

著者: 林正幸 ,   小清水満 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉 ,   赤尾信明 ,   近藤力王至

ページ範囲:P.443 - P.445

 50歳,女性におけるイヌ疥癬例を報告した.発疹は融合傾向のない紅暈を伴う膿疱が主体であった,患者の発疹から虫体を見出すことはできなかったが,ペットのイヌの痂皮からは虫体が発見された.ヒト疥癬と動物疥癬,ことにイヌ疥癬について若干の考察を試み,後者の臨床診断がきわめて困難であること,また人畜共通感染症においては関係者間の協力体制が必要であることを強調した.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.372 - P.372

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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