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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻6号

1985年06月発行

雑誌目次

図譜・512

Osler病

著者: 古川隆 ,   高木伸也 ,   蝦名博

ページ範囲:P.452 - P.453

患者73歳,男
初診昭和56年12月2日

原著

Sjögren症候群とAmyloidosis Cutis Nodularis Atrophicans(GOTTRON)の合併例

著者: 稲垣安紀 ,   幸田衞 ,   中川定明 ,   松尾久美子 ,   植木宏明

ページ範囲:P.455 - P.460

要約 51歳,女性.四肢体幹に軽度瘙痒を伴う柔らかい丘疹,結節および拇指頭大からメガネレンズ大までの萎縮性被覆表皮をもつ黄色調で透明感のある結節を計80個以上散在性に認め,Sjögren症候群の合併したamyloidosis cutis nodularis atrophicans(GOTTRON)の1例を報告した.全身状態は良好で,他に多発性骨髄腫等の基礎疾患は見出せなかった.病理組織学的に舌,口唇,直腸,骨髄にアミロイドは認めず,皮膚では真皮上層から皮下組織まで塊状にアミロイドの沈着を認め,その中に巣状に形質細胞および一部リンパ球よりなる細胞浸潤を認めた.PAP法および螢光抗体法により沈着アミロイドと形質細胞にIgG,IgA,免疫グロブリンL鎖(κ,λ)の存在を確認した.抗AA抗体,抗ケラチン抗体,抗IgM抗体,抗C3抗体,抗C1q抗体,抗フィブリノーゲン抗体,抗プラスミノーゲン抗体ではすべて陰性だった.また局所的治療として液体窒素凍結療法が有効であった.

環状紅斑を伴った皮膚筋炎の1例

著者: 横山愛子 ,   安田和正 ,   平野京子

ページ範囲:P.461 - P.464

 49歳,女性.顔面,両上腕の発赤,腫脹に始まり四肢の筋力低下出現.血中筋酵素の著明な上昇や筋生検所見と筋電図による筋原性の変化などより皮膚筋炎と診断したが,背部に持続性環状紅斑を伴う.持続性環状紅斑の原因と考えられるものとして悪性腫瘍,薬剤,感染,免疫異常があげられるが,前3者に対しては確認されず,皮膚筋炎に伴ったものと考えた.

Erosive Pustular Dermatosis of the Scalpの1例

著者: 中村雄彦 ,   金子博

ページ範囲:P.465 - P.468

要約 Erosive pustular dermatosis of the scalpと考えられる15歳女の1例を報告した.初診20日前より右側頭部に瘙痒を伴う紅斑を生じ,頭頂から後頭にかけて次第に拡大,膿疱,結痂,糜爛,脱毛も生じてきた.局所から常在ブ菌が培養されたが,真菌,結核菌は陰性.一般検査,免疫学的諸検査は異常なく,皮膚組織は表皮は肥厚,基底層正常,真皮上層の小円形細胞浸潤あり,毛包はほぼ正常.プレドニゾロン軟膏の外用5日目頃より症状は改善し始め,3カ月後には皮疹,脱毛は著明に軽快した.
本症は1979年Pyeらの報告以来,追加例が次々と発表され,本邦でも栗原らの症例を第1例としていくつかの記載がみられる.しかし病因を初めとして,未だ解明されない部分もある.自験例は今迄記載されることの乏しかった本症の若年例の初期像と考える.

Piebaldismの2例

著者: 石井則久 ,   佐々木哲雄 ,   川口博史 ,   内山光明 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.469 - P.473

 Piebaldismの2例について報告した.第1例(1歳,男児)は前額部の髪際に白斑と白髪,腹部と下肢に白斑があった.第2例(4歳,男児)は前額部の髪際に白斑と白髪腹部と四肢に白斑があった.組織学的には2例とも白斑部にメラノサイトとメラニン顆粒を認めず,Fontana-Masson染色,S−100蛋白染色はいずれも陰性であった.2例とも経過とともに白斑の縮小,白斑内の色素斑の増大と数の増加がみられた.また本邦におけるpiebaldismの統計的観察を行った.

アトピー性皮膚炎患者の頸部にみられたさざ波状色素沈着

著者: 稲垣安紀 ,   中川昌次郎 ,   植木宏明 ,   真鍋俊明 ,   中務晶弘 ,   三村茂 ,   三好薫

ページ範囲:P.475 - P.478

 頸部を中心にさざ波状の色素沈着を来したアトピー性皮膚炎の3症例を報告した.3例とも組織学的に主として表皮基底細胞の液状変性と色素失調,真皮上層の血管の増殖と血管周囲の小円形細胞浸潤が観察され,アミロイドの沈着は証明されなかった.臨床的・組織学的所見からアトピー性皮膚炎に伴う炎症後色素沈着と考えた.

予防接種により惹起された反応性皮膚症の3例

著者: 船井龍彦 ,   久志本東 ,   青木敏之

ページ範囲:P.479 - P.482

 予防接種という抗原刺激により反応性に惹起されたと思われる皮膚症を3例報告した.
 第1例.11歳男子.ジフテリア・破傷風の混合トキソイドを接種してから約3時間後より発熱および紅斑が注射部位より始まり四肢に拡大した.翌日,紅斑は全身に及び紅皮症を呈し,一部は膿疱化してきた.
 第2例.6歳女児.1回目のインフルエンザ予防接種を受けその23日後,2回目のインフルエンザ予防接種を受けたが,その翌日より全身に蕁麻疹が出現した.
 第3例.12歳男子.日本脳炎予防接種を受けた4日後より前腕に小水疱が出現し,翌日には発熱とともに皮疹は口唇,口腔内,陰茎,四肢に拡大し水疱化し,重症多形滲出性紅斑様を呈した.

上肢の運動麻痺を併発した帯状疱疹の1例

著者: 松本吉郎

ページ範囲:P.483 - P.486

 比較的稀と思われる,55歳男性の帯状疱疹に合併した左上肢の運動麻痺の1例を報告した.臨床症状および帯状疱疹ウイルス抗体価の変動から帯状疱疹と診断し,臨床的な神経学的症状と筋電図により,神経原性変化による運動麻痺と考えられた.皮疹の発生後,約10日で麻痺が出現し,3カ月後に軽快した.

悪性変化を来したGiant Condyloma Acuminatumの剖検例

著者: 村井博宣 ,   真家興隆 ,   高橋伸也

ページ範囲:P.487 - P.490

 72歳,女子の外陰に発生し,悪性変化を来し,遠隔転移にて死亡したgiant con—dyloma acuminatumの症例を報告した.4年前に右大陰唇部に小指頭大のカリフラワー状結節が生じ,徐々に増大し手拳大となり小出血,排膿をみるようになった.生検にて多数の組織標本を作製するも,悪性所見を認めないため本症と診断した.ブレオマイシン静注,油性ブレオ局注,凍結療法を併用するも腫瘤が増大するため,腫瘤を含め外陰切除術を施行した.術後2カ月にて再発,再手術を施行.この時点で初めて,組織の一部に有棘細胞癌の像を認めた.術後3カ月にて両肺野に転移を思わせる陰影を認めた.再発腫瘤に二次感染を生じ,敗血症,DICにて死亡した,剖検にて深鼠径,腸骨,勢大動脈,労気管支各リンパ節および両肺,胸膜に有棘細胞癌の転移を認めた.

Acromegaly様外観を呈したNevoid Basal Cell Carcinoma Syndromeの1例

著者: 平井さと子

ページ範囲:P.491 - P.496

 55歳男性のnevoid basal cell carcinoma syndrome(NBCCS)の1例を報告した.全身に約130個の,大部分は表在型,一部は結節潰瘍型基底細胞腫がみられ,多発性顎嚢腫,肋骨異常,異所性石灰化,外反拇趾,acromegaly様外観を伴っていた.掌蹠pitsはみられなかったが,他の主症状はすべて備えており,典型例と思われた.36歳の時acromegalyと診断されていたが,内分泌学的検査,X線所見,臨床経過よりacromegalyは否定的であり,NBCCSの症状としての骨格異常と考えられた.いわゆるbasal cell neviというべき皮疹が背部に存在したが,その発生時期は不明であった.しかし,自覚症状のある皮疹は50歳ころから発生しはじめ,骨異常,顎嚢腫,石灰化などよりかなり遅れて出現した.

悪性化(ボーエン状態)した汗孔角化症の1例

著者: 向井秀樹 ,   鶴町和道 ,   木村康隆

ページ範囲:P.497 - P.501

 71歳,男.40年前より四肢に汗孔角化症がある.10年前より,右下腿内側部の皮疹が黒色調となる.同部の組織像にて,病巣辺縁部にcornoid lamellaを認め,中央部は表皮内癌の所見がみられた.しかし,明らかなclumping ccllsや空胞化細胞は認められず,汗孔角化症より生じたボーエン状態と考えた.汗孔角化症の悪性化は,我々が調べえた限り現在まで19例の本邦報告例がある.そこで,これらをまとめ若干の統計的考察を加えた.さらに,下肢の汗孔角化症および表皮内癌の組織像にて,真皮上層に多量のアミロイドの沈着をみた.このアミロイドは,DAKO社の抗ケラチン抗体およびDACM染色によるS-S結合が陽性となったことより,表皮細胞由来のものと考え,続発性皮膚限局性アミロイドーシスと診断した.

Malignant Histiocytosisの1例

著者: 高橋祥公 ,   小林仁 ,   磯部宏

ページ範囲:P.503 - P.507

 64歳,男性.初診の約4カ月前から四肢に紅斑が出現し,次第に拡大して結節,潰瘍を伴ってきた.同時に全身倦怠感,発熱が出現してきた.諸検査で汎血球減少症,肝脾腫が認められ,初診の1カ月後にDICを併発して死亡した.組織学的には腫瘤形成のない組織球様の大型の異型性に富む細胞がびまん性に浸潤しており,電顕でそれらの細胞はlysosome, phagosomeが存在し,細胞内小器管が豊富であり組織球由来であることが確認された.以上の所見より,malignant histiocytosis (MH)と診断した.最近,MHはT-zone組織球由来(S−100蛋白陽性)であると報告されているが,本症では陰性であった.MHは類似する症状を呈する一群の疾患を独立した疾患単位として提唱したものであり,単一の疾患とするには今なお問題が多いと思われる.

血管芽細胞腫(中川)—その自然治癒傾向と発汗異常の推移について

著者: 村野早苗 ,   藤田優

ページ範囲:P.509 - P.512

 4カ月,男児の右足関節内側部に発症した血管芽細胞腫(中川)の1例を報告した,本症例では局所多汗が認められ,ヨード・デンプン反応にて確認,約1年後の自然治癒まで経過を追った.

乳癌の皮膚転移—組織学的に稀な浸潤性小葉癌型の2例について

著者: 相沢晴美 ,   相場節也 ,   酉抜和喜夫 ,   高橋正昭

ページ範囲:P.513 - P.517

1)組織学的に稀な浸潤性小葉癌型の乳癌の皮膚転移2例を報告した.2)昭和49年から昭和58年まで10年間に東北大学皮膚科で経験した乳癌の皮膚転移11例につき,原発巣と転移巣の病理組織学的検討を行った.3)本邦における乳癌の皮膚転移について文献的集計,考察を加えた.

爪郭部より侵入したと思われる皮膚リンパ管型スポロトリコーシスの1例

著者: 清水弘美 ,   平野京子

ページ範囲:P.519 - P.522

 52歳,女性の右上肢に生じた,リンパ管型スポロトリコーシスの1例を報告した.初診時所見として,右第3指爪郭部に,外傷によるささくれ様のびらん面,および右前腕にほぼ指頭大の列序性配列をとる表面鮮紅色の硬結を6個認め,この硬結部分の組織培養よりSporothrix schenkiiを分離同定し,リンパ管型スポロトリコーシスと診断した.ヨードカリ内服および局所温熱療法にて,2カ月の経過にて瘢痕治癒した.誘因として明らかな外傷の既往があり,ここからの菌の接種が考えられ,接種に際し,菌が受ける温度による影響と宿主の防禦機構による影響について若下の考察を加えた.

続発性皮膚クリプトコッカス症の1例

著者: 池内恒雄 ,   武田克之

ページ範囲:P.523 - P.528

 症例は78歳女性.下腿の点状出血を主訴として昭和57年1月25日に来院し,アナフィラクトイド紫斑と診断されて入院.ステロイド治療で皮疹の出没を繰り返したが,2月中旬頃より呼吸器症状が現われ,喀痰排出困難のため気管切開し,種々の抗生剤を併用した.発熱,血痰,胸部X線陰影などの改善はなく,5月より髄膜刺激症状が現われ,同月中旬,右前腕に小豆大までの小結節が出現.生検の結果,クリプトコッカス症と診断.髄液,喀痰,皮疹分泌物の墨汁標本からも胞子を証明.同月末,アムホテリシンBと5FCを投与したが同日死亡した.剖検で全身各臓器にCryptococcus neoformansの菌体が証明された.本邦の皮膚クリプトコッカス症およびその髄膜炎の近年の動向,予後,治療などにつき若下の考察を加えた.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.460 - P.460

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

これすぽんでんす

Recreationally Associated Pseudomonas aeruginosa Folliculitis

著者: 中村雄彦

ページ範囲:P.529 - P.529

 1975年McCauslandら1)が,モーテルのwhirlpoolに入った後に瘙痒症,咽喉痛を生じ,Pseudomonas aer—uginosa(以下P. aと略す)を検出した症例を報告して以来,欧米においてwhirlpool,hot tub,swimming Poolに入水した後,P. aによる膿疱を初めとする種々の皮膚症状,眼痛,耳痛,咽喉痛,乳房炎,腹痛,頭痛,発熱といった症状を呈する症例がいくつか報告されている2〜5)
 本邦では,筆者の見聞する限り未だに,その報告例はみられないようである.筆者は市営の屋内プールに入水後4日目に水着に覆われていた部位に皮疹を生じ,皮疹よりP. aを検出した症例を経験した.症例を述べ,若干の考察を試みたい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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