icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻7号

1985年07月発行

雑誌目次

図譜・513

いわゆる皮膚混合腫瘍の1例

著者: 石津謙治 ,   吉村政章

ページ範囲:P.540 - P.541

患者65歳,女性
初診昭和58年4月12日

原著

2カ月半の乳児に発症したJuvenile Bullous Pemphigoid

著者: 八木英一 ,   佐藤勇一 ,   高橋伸也

ページ範囲:P.543 - P.547

 2カ月半男児に発症したjuvenile bullous pemphigoidと思われる症例を報告した.皮疹はジューリング疱疹状皮膚炎様で,組織では表皮下水疱と多数の好酸球の浸潤をみた.螢光抗体法直接法で基底膜部にIgG,C3の沈着をみたが,間接法はステロイド内服中に行い2回とも陰性であった.電顕的検索ではbasal laminaと表皮細胞間に水疱の存在を認めた.ステロイド投与により比較的速やかに皮疹は消褪し,中止7カ月後再発をみない.

Lupus Erythematosus Profundus

著者: 稲垣安紀 ,   幸田衞 ,   岡大介 ,   植木宏明

ページ範囲:P.549 - P.554

 当科で経験したlupus erythematosus profundus (LEP)の11例を報告した.そのうち,SLEに生じた,いわゆる第1型LEPは4例であり,LEP単独例つまり第3型LEPは7症例であった.組織学的には病変の中心は真皮深層から皮下脂肪織にあり,主にリンパ球性の血管炎の像と種々の程度の非特異性脂肪織炎および葉間結合織のnecrobiosis様変化,ムチンの沈着を伴っていた.螢光抗体法では11例中4例の真皮の血管壁に免疫グロブリン(主にIgM)と補体の沈着を認め,本症の発症機序における自己抗体の関与を推測した.治療にはステロイド剤が最も有効と考えられ,特に全身投与を早期に開始した症例と,すでにSLEと診断され,ステロイド剤の全身投与をLEP発症時に受けていた症例では比較的,経過が早く,治癒後のcup-shapedの陥凹も少なかった.

全身性エリテマトーデスに合併した尿酸沈着症の1例

著者: 坪井良治 ,   木村太紀 ,   種田明生 ,   小川秀興 ,   津田裕士

ページ範囲:P.555 - P.558

 全身性エリテマトーデス(SLE)の経過中,痛風発作を伴うことなく,四肢に多量の尿酸沈着を認めた25歳,女性例を報告した.SLEの経過中,腎機能低下や利尿剤等の使用により高尿酸血症を来すことは時にあるが,痛風を合併することは非常に稀である,その理由として,2疾患の発症年齢・性差の違いや,SLE経過中の痛風関節炎の診断の難しさだけでなく,SLEにおける補体の低下や白血球の機能障害等の免疫学的異常が,痛風の急性.炎症の発生を抑制しているものと考えられた.

Hypereosinophilic Syndromeの2例

著者: 松本和彦 ,   伊藤隆 ,   進藤泰子 ,   御子柴甫 ,   中野武 ,   斉木実 ,   吉江治彦

ページ範囲:P.559 - P.563

 57歳女性,45歳男性のhypereosinophilic syndromeと思われる2例を報告した.2例とも気管支喘息発作,発熱,全身倦怠感,関節痛,皮疹,筋力低下,感覚障害などを生じ,検査所見でも末梢血の白血球増多と著明な好酸球増多,血沈の亢進,低タンパク血症,免疫グロブリン値の上昇およびリウマチ因子陽性などの血清免疫学的異常を示した.第1例は皮膚生検組織において血管周囲性に稠密な好酸球の浸潤を認めたが,血管炎の所見はなかった.ステロイドによく反応し,臨床症状,検査値は改善した.第2例は皮膚生検組織において血管周囲の好酸球浸潤が中等度であり,壊死性血管炎の像を示した.ステロイドに対する反応は不良であり死の転帰をとった.剖検にても全身諸臓器の細小血管に壊死性血管炎の像がみられた.好酸球の機能,動態が充分解明されていない現在では広い疾患概念であるhypereosinophilic syndromeとして,2症例ともまとめるのが適当である.

壊死性遊走性紅斑を伴ったグルカゴノーマ症候群

著者: 藤本亘 ,   仁熊三葉子 ,   赤木芳文 ,   小玉肇 ,   野原望 ,   高倉範尚

ページ範囲:P.565 - P.570

 44歳,男性.壊死性遊走性紅斑を初発症状としグルカゴノーマ症候群と診断し得た1例について報告した.昭和51年頃より顔面,下腿に紅斑が出没するようになり,徐徐に拡大.皮疹は陰股部,腎部,両下肢,顔面に多発し,辺縁に鱗屑,痂皮を付着する環状ないし地図状紅斑が主体で,びらん,小水疱,紅色丘疹なども認められた.皮膚組織学的検索にて壊死性遊走性紅斑と診断.血中グルカゴン高値,低アミノ酸血症あり,アミノ酸輸液にて皮疹の消褪を認めた.本院第一外科に転科し膵glucagonomaを摘除後,血中グルカゴンおよびアミノ酸の正常化をみ,皮疹は完全に消褪した.グルカゴノーマ症候群の本邦報告例をまとめ,皮疹発生機序について文献的考察を行った.

著名なElimination現像を示したNecrobiosis Lipoidicaの1例

著者: 清島真理子 ,   桑原まゆみ ,   米田和史 ,   森俊二 ,   北島康雄

ページ範囲:P.571 - P.575

 51歳,男性,初診の約8カ月前から右下腿伸側に大豆大の結節が生じ,中央が崩れて浅い潰瘍となり,寛解,悪化を繰り返していた.皮疹は19cm×10cmの黒褐色,萎縮性の局面で,辺縁の一部に堤防状隆起と小潰瘍がみられた.また,境界型糖尿病を伴っていた.組織学的に真皮全層に膠原線維の軽度の染色性の低下がみられ,また血管周囲にリンパ球,組織球,形質細胞の浸潤がみられた.血管壁の肥厚は軽度であった.一部では,弾力線維を含む変性した膠原線維の経表皮排出像がみられた.インスリン湿布によって皮疹は軽快した.Necrobiosis lipoidicaの本邦既報告例66例中に本例のようにelimina—tion現象を伴った報告はなく,本例は興味深い症例であると考えられた.

抗けいれん剤による薬疹—Carbamazepine"Tegretol"による自験例を中心に

著者: 尾立冬樹 ,   渥美令子 ,   南光弘子

ページ範囲:P.577 - P.581

 22歳,男性.18歳より側頭葉てんかん.1年前より各種抗てんかん剤にて加療中であったが,カルバマゼピン(テグレトール)に変更約1カ月後に紅斑性丘疹が出現し紅皮症様症状となった.皮疹軽快後,リンパ球刺激試験,patch testの両検査にてカルバマゼピン陽性を示す.自験例を中心に種々の抗てんかん剤による薬疹について,その臨床型,発生機序に考察を加えた.

スポロトリコーシスの小児例

著者: 高瀬孝子 ,   中桐昭 ,   美誉志康 ,   高橋秀東 ,   馬場徹 ,   上野賢一

ページ範囲:P.583 - P.587

 最近の2年間に筑波大学皮膚科において観察されたスポロトリコーシスは計15例であり,そのうち小児例は3例であった.これら3例の病変は全て顔面にあり,病型はいずれも固定型であった.3例とも局所温熱療法を施行,満足すべき効果が得られた.

Nail-Patella症候群—腎症を伴った1例

著者: 堀内保宏 ,   小林豊 ,   西山茂夫

ページ範囲:P.589 - P.594

 発端者は34歳,男.血液型O型.Triangular lunulae (三角形爪半月)を伴う爪の栄養障害と,肘関節・膝蓋骨形成異常にiliac hornの四徴候を認めるNail-Patella症候群の1例を報告した.軽度の蛋白尿があり腎生検により,糸球体基底膜にcollagen様物質の沈着するlucent areaを認める腎症を確認し得た.さらに,本邦における報告例を集計し若干の考察を加えた.

アポクリン汗嚢腫の1例

著者: 山本百合子 ,   松井新 ,   下田祥由

ページ範囲:P.595 - P.600

 53歳女の左眉毛部直上に約5年前より小結節が生じ,徐々に増大してきて13×18mmの皮膚色の小結節となった.光顕で,真皮中層から下層にかけて数個の嚢腫あり,典型的なapocrine cystadenomaと思われた.腫瘍の一部はPAS反応陽性で,ジアスターゼに消化された.電顕では,小さな微絨毛をもつ細胞,ごく少数ではあるが分泌顆粒をもつ細胞がみられ,細胞間嵌合および細胞内分泌細管がみられた.筋上皮細胞は認められなかった.これらの所見からeccrineの導管あるいは屈曲部からの起源が示唆された.

リンパ本幹系異常に基づく皮膚リンパ管拡張症

著者: 浅野翔一 ,   宮崎孝夫 ,   遠藤秀彦 ,   津田道夫

ページ範囲:P.601 - P.607

 40歳,男性.約20年前,陰嚢部打撲後,同部の皮膚に白色調の小水疱様皮疹が生じ,その後,皮疹は増数,増大し,破れると乳ビ様液が漏出するようになった.また,いつしか四肢末端部皮膚に軽度の角化性肥厚が出現した.リンパ管造影により後腹膜のリンパ管ならびにリンパ節の増加が確認された.この所見はlymphographicalにcentrallymphatic hyperplasiaと称されるものである.以上の所見から本症例は先天的なリンパ管系の異常に基づく潜在的なリンパの還流障t害が想定され,陰嚢部にリンパ管拡張が生じたのは打撲が一つの契機になった可能性が推察された.

悪性黒色腫に腎細胞癌を合併した症例

著者: 安斎真一 ,   渡辺修一 ,   穂積豊 ,   近藤慈夫 ,   麻生和雄 ,   渡辺博幸

ページ範囲:P.609 - P.613

 39歳男性の左下腿原発悪性黒色種に右腎細胞癌を合併して死亡した症例を経験したので報告した.剖検で悪性黒色腫は肺・胸膜・肝・胸骨・脊椎・副腎に転移がみられ,腎細胞癌も胸膜に転移がみられた.さらに,本邦における悪性黒色腫と他の原発性悪性腫瘍の合併例の報告を検索したところ16例報告があったが,腎細胞癌との合併例はなかった,自験例も含め,これらの報告例に対しても若干の文献的考察を加えた.

血中CEAの著明な高値を示した外陰Paget病の1例

著者: 木内一佳志 ,   三橋善比古 ,   三上英樹 ,   河村葉志子 ,   橋本功

ページ範囲:P.615 - P.619

 65歳,男性にみられた外陰Paget病の1例.初診時,すでに左大腿部皮膚に赤褐色小結節が多発散在,血清CEA値は著明な高値(670ng/ml)を示した.その後,血清CEA値は病巣の拡大とともに上昇(1079ng/ml)し,治療により病巣が縮小するのに伴って低下(500ng/ml)した.酵素抗体法により,腫瘍細胞内にCEAの存在が証明されたことから,著明な高値をみた血中CEAは,主に本腫瘍細胞に由来し,その増減は病巣の消長および腫瘍細胞の活動性を反映したものと考えた.同時に検索した病巣部におけるkeratin,S−100蛋白,lysozymeおよびα—fetoproteinでは,keratinが腫瘍細胞に弱陽性であったほかは,すべて陰性であった.また,同一の一次抗体を用いたPAP法による汗器官の染色態度と比較すると,Paget細胞はエックリン汗腺の導管部,分泌部の表層細胞およびアポクリン汗腺の導管部のそれと同じであった.

筋肉痛と眼球突出を主訴とした悪性リンパ腫の1例

著者: 森美智留 ,   月永一郎 ,   村本文男 ,   三浦祐晶 ,   桜田恵右 ,   斉藤博哉 ,   大屋隆介

ページ範囲:P.621 - P.625

 34歳,女性.四肢近位筋の疼痛,左側額部の腫脹と眼球突出を主訴として受診した.腫脹している側額部皮膚および眼輪筋を生検したが確診が得られず,Gaシンチグラムで全身にmultiple uptake,眼窩部CTで眼窩内外にmassを認めたため,側頭筋生検を行い,初めて悪性リンパ腫と診断された症例について報告し,若干の考察を加えた.

臍石の元素分析

著者: 安田秀美 ,   熊切正信

ページ範囲:P.627 - P.629

 67歳および60歳女性の臍部に生じた臍石の2例を経験した.元素分析を行ったところ,角質構成元素であるS,Clに加えて,Mg,Caなどの生体構成成分中の微量金属の沈着がみられた.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.607 - P.607

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmcrican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?