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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻8号

1985年08月発行

雑誌目次

図譜・514

橋本病患者にみられた脛骨前部粘液水腫の1例

著者: 石倉多美子 ,   北村憲次 ,   中源雅俊 ,   松本俊彦

ページ範囲:P.640 - P.641

患者41歳,女性,店員
初診昭和58年6月15日

原著

イチョウ皮膚炎

著者: 中村雄彦 ,   古田島昭五

ページ範囲:P.643 - P.646

 イチョウ皮膚炎の4例を報告した.患者はすべてイチョウの果実(ギンナン)の外種皮である外側の黄褐色の果肉を手で取り除く作業を行った後に皮膚炎を生じたものである.貼布試験は,ギンナンの外種皮,内種皮と内乳,イチョウの雌木の葉,10%イチョウの葉の抽出物,ウルシオールの5種で行った.その結果,外種皮では全例に陽性であったが,対照者にも陽性例が多く,イチョウ皮膚炎の中には外種皮による一次性刺激による場合があることが考えられる.また葉で陰性であっても,内種皮と内乳で陽性の例があり,必ずしもイチョウ皮膚炎を否定することはできないという結果を得た.

小児類天疱瘡の1例

著者: 徳橋至 ,   碇優子 ,   山本百合子 ,   千葉紀子 ,   下田祥由

ページ範囲:P.647 - P.650

要約 4歳,女児の水疱性類天疱瘡と思われる症例を報告する.初診の約1週間前より顔面,腋窩,陰股部,手掌,足底に瘙痒のある緊満性の水疱および紅斑が出現してきた.組織学的に表皮下水疱を示し,直接螢光抗体法で表皮基底膜部にIgG,C3の線状の沈着を認め,IgG抗基底膜抗体陽性であった.小児類天疱瘡と診断し,治療としてcorticosteroid内服を行った,小児非遺伝性水疱症は比較的稀であり,症例を報告するとともに若干の文献的考察を試みた.

Benign Neonatal Hemangiomatosis

著者: 麻生和雄 ,   小幡仁子 ,   高木博徳

ページ範囲:P.651 - P.653

 1カ月男子,全身に34個の小苺状血管腫がみられ,生後4〜6カ月までそれらの数と大きさが増し76個に達したが,以来血管腫が漸次消褪した症例をbenign neonatalhemangiomatosisに一致する症例として報告した.

良性血管内皮細胞腫の1例

著者: 田中均 ,   幸田衞 ,   植木宏明 ,   谷太三郎

ページ範囲:P.655 - P.658

 40歳,女性.半年前より右前腕伸側の5×6mm大の単発結節に気付く.淡青黒色調,軽度隆起した軟らかい皮内〜皮下結節で,増大傾向や自覚症状はない.組織像:ムチン様の均質な結合織に囲まれ,血管内皮細胞様細胞が巣状に増殖し,大小の亀裂状の管腔を有した,増殖細胞は単調で異型性はなく,好銀線維は輪状,網目状構造を呈した.自験例は大草らの良性血管内皮細胞腫の1例や松本らのlobular capillary hemangiomaの2例と臨床像,組織像とも類似しており同一疾患と考えた.

骨病変を伴ったPseudo-Kaposi Sarcoma

著者: 稲垣安紀 ,   幸田衞 ,   武井洋二 ,   難波泰樹 ,   植木宏明

ページ範囲:P.659 - P.662

 14歳,女性.右足背に外傷を受けた後発症したpseudo-Kaposi sarcomaの1例を報告した.右下肢の軽度の発達障害を認め,右足背に腫脹,静脈の拡張,青褐色色素沈着と皮下に小指頭大までの有痛性の結節の集籏がみられた.また,右下腿中部も腫脹しており,皮膚の色素沈着を伴う,圧痛のある手拳大で境界不明瞭な皮下腫瘤を認めた.骨X線上,右腓骨の膨化と右第Ⅱ〜Ⅴ中足骨の萎縮等の著明な骨病変を認め,病変部の血管造影で動静脈奇形が確認された.組織学的には両部とも同様の所見で,大小の血管の増生や血管の海綿状構造がみられ,血管内皮細胞の腫大や赤血球血管外漏出,ヘモジデリン沈着も認めた.しかし,いずれの部にも悪性像は認めなかった.

Etretinateの奏効した粘膜部上皮性腫瘍の3例

著者: 荒川謙三

ページ範囲:P.663 - P.667

 Retinoidはvit.Aの誘導体であり,抗腫瘍作用を有することが知られているが,etretinateは抗腫瘍作用よりもantikeratinizing agentsとして広く臨床に利用され高い評価を得ている.今回は抗腫瘍作用に注目し,口腔内に生じたoral florid papillomatosis,verrucous carcinomaの各1例,陰部に生じたleukoplakia verrucosaの1例にetretinateを使用し有効であったので,この3症例の独立性について述べると共に,その治療法,reti—noidの作用機序について文献的に検討する.

Proliferating Trichilemmal Cystの1例とTrichilemmal Cystの4例—外毛根鞘性腫瘍の中の位置付け

著者: 石田明美 ,   飯塚一 ,   大河原章

ページ範囲:P.669 - P.673

 典型的なtrichilemmal cystの1例,嚢腫壁の増殖を伴うtrichilemmal cystの3例,壁の増殖は比較的少ないがindividual cell keratinizationや多少の細胞異型性を備えたproliferating trichilemmal cystの1例を報告した.これらの詳細な組織学的比較検討および文献的考察から,外毛根鞘性腫瘍のtrichilemmal cyst, Proliferating trichilemmal cystならびにtrichilemmomaは,その分化度と発生母地に多少のvariationがあり,各腫瘍間には移行型が存在すると考えた.

Lichen Planus-like Keratosisの3例—多発例の1例を含めて

著者: 増田光喜 ,   禾紀子 ,   倉持正雄 ,   木村俊次

ページ範囲:P.675 - P.679

 Lichen planus-like keratosisの3例を報告した.2例は顔面に単発し先行病変としていわゆる「しみ」が存在し,うち1例には臨床的,組織学的に病変の周囲に老人性色素斑の所見が残存した.残る1例は先天性白皮症を有し,先行疹なしに前腕に夏期より2個の病変が出現した.前2例は先行病変に続発した型,残る1例は先行病変なしに多発した稀な型で,後者は広義のactinic keratosisの1型と考えられた.

Human Papillomavirus抗原を証明したBowenoid Papulosisの1例

著者: 服部瑛 ,   中島孝

ページ範囲:P.681 - P.684

 26歳,男性のbowenoid papulosisの1例を報告した.病変部では,酵素抗体法にて,表皮上層部のケラチノサイト核内にpapillomavirus抗原を認めた.さらに陰茎部の疣贅患者4例中2例でも同一陽性所見を得た.以上のことからbowenoid papulosisはhuman papillomavirusをこより引き起こされ,尖圭コンジロームを含めた疣贅ときわめて近縁な疾患と思われる.

背部に生じた乳房外Paget病の1例

著者: 稲田修一 ,   功野泰三 ,   酒井伊勢子 ,   島本順子 ,   木下三枝子 ,   高石雅敏 ,   横山寧恵

ページ範囲:P.685 - P.691

 未だ記載をみない背部に生じた乳房外Paget病の1例を報告した.患者は69歳,女性.5〜6年前,背部左側に紅斑性局面が生じ次第に周囲に拡大した.初診時9×7.5cm大皮膚面よりやや隆起した紅斑性局面であり腫瘤形成はなかった.全身諸検査で他臓器に悪性腫瘍は認められなかった.組織学的にはシアロ粘液産生能を示すPaget細胞が明らかな管腔を形成し,主に表皮内,しばしば表層の皮膚付属器内,一部真皮上層に増殖しており,真皮には原発巣と見做し得る増殖巣はなかった.電顕的にはPaget細胞に非分泌型細胞と分泌型細胞とがあった.Paget細胞の起源に関して若干の考察を加えた.

悪性線維性組織球腫の1例

著者: 奥知三 ,   深水秀一 ,   井上邦雄 ,   滝川雅浩 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.693 - P.697

 左大腿部に初発し,肺・縦隔洞への転移のために死亡した悪性線維性組織球腫(MFH)の1例を報告し,文献的考察を加えた.また,MFHの性状を組織培養を使って電顕的・酵素化学的に調べた.この結果,MFH細胞は培養期間中,生体と同様に細胞の異型性を保持していた.また,培養初期には類円形の異型組織球が出現し,徐々に線維芽細胞様に変化していく像がみられたが,これらの紡錘形細胞には多数のphagosome, lysosomeを細胞質にもっていた.これらのことから,MFHは組織球に由来する腫瘍のように思えた.

von Recklinghausen病患者に生じた悪性神経鞘腫の1例—とくにNeurofibrosarcomaと考えられる症例

著者: 安田秀美 ,   熊切正信 ,   吉田哲憲

ページ範囲:P.699 - P.704

 40歳,男性,von Recklinghausen病患者に生じた悪性神経鞘腫の1例を報告した.36歳時,頭頂部に腫瘤が初発,切除したが2度再発を繰り返した.40歳時,脊髄にも同様の腫瘍の発症をみ,42歳で死亡した.S−100蛋白酵素抗体法では,大部分の腫瘍細胞は陰性であり,その中に陽性細胞が散在してみられた.電顕でみると,前者はfibroblast様細胞,後者はSchwann細胞様細胞であった.広義のmalignant schwannomaには,Schwann細胞が主体となり悪性増殖を示すもの(狭義のmalignant schwannoma)と,本症例の如く,fibroblast様細胞が主に悪性増殖を示すもの(neurofibrosarcoma)の2種類があるのではないかと考えた.

慢性侵蝕性膿瘍性膿皮症(加藤)を主病像とした全身広汎性慢性膿皮症の1例

著者: 西嶋攝子 ,   黒川一郎 ,   和泉宏 ,   菱川秀夫 ,   朝田康夫 ,   佐々木富美子

ページ範囲:P.705 - P.709

要約 臀部における慢性侵蝕性膿瘍性膿皮症(加藤)を主症状とし,項部,頸部に軽症ではあるが膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎,項部乳頭状皮膚炎を,胸背部には集簇性痤瘡を,また四肢,躯幹に大小多数の上皮性嚢腫を生じた37歳,男性例を報告した,種々の検索を行ったが明らかな免疫学的異常,内分泌因子の異常は特に認められなかった.生体側の因子として上皮性嚢腫,面皰形成などにおける先天性の奇形も一因ではないかと考えられた.局所からは再三にわたりSt. aureusが分離され,嫌気培養ではPeptococcus,Bacteroidesが検出された.真菌,結核菌培養は常に陰性であった.分離された細菌が直接の原因か否かに関しては決定することが難しいが,皮疹増悪の一因にはなり得ることは当然推定し得た.治療は抗生物質の内服,点滴,局所洗浄を主として行い,aromatic retinoid(etretinate Ro 10-9359)内服,ステロイド内服,局所の瘻孔切開,開放,切除術を適時行い皮疹のかなりの改善をみた.

汎発性白癬菌性肉芽腫の1例

著者: 宮川幸子 ,   太居英夫 ,   餅忠雄 ,   渡辺昌平

ページ範囲:P.711 - P.714

 Trychophyton rubrumを原因菌とする汎発性白癬菌性肉芽腫の1例を報告した.基礎疾患なし,遅延型トリコフィチン反応,ツ反応,DNCB感作試験陰性.グリセオフルビンとフルシトシン内服およびリンパ節病巣の外科的切除により,約1年後に完治した.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.691 - P.691

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

印象記

第84回日本皮膚科学会印象記

著者: 植木宏明

ページ範囲:P.716 - P.719

 第84回日本皮膚科学会総会および学術大会は昭和60年4月12日から3日間にわたり,岡山大学皮膚科・野原望教授を会頭(図1)として,桜花満開の後楽園に隣接した岡山プラザホテルで開催された.日本皮膚科学会は勤務医,開業医,若手研究階.レジデント,その他合わせて約5,000人の会員を擁するが,その内1,500人を越える会員の参加による盛会であった.総会では,このように大勢力となった会員の卒後の臨床教育や研修を今後如何に発展させ,維持して行くかが大きな問題の一つとなり,皮膚科専門医制度についても再検討し,早急に改革することになった.
 さて,学術人会は会頭によるプレジデンシャルアドレスに始まり,皆見賞受賞者記念講演,国際皮膚科学交換溝座,特別講演,招待講演と続き,教育講演11題,シンポジウム3(19題),CPC11題,一般演題187題,症例供覧125題,学術展示70題にのぼった(図2).

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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