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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻9号

1985年09月発行

雑誌目次

図譜・515

テグレトールによる薬疹を合併した遠心性丘疹性環状紅斑の1例

著者: 金和子 ,   西岡清 ,   佐野榮春

ページ範囲:P.730 - P.731

患者56歳,男
初診昭和58年2月9日

原著

Generalized Essential Telangiectasia—その免疫組織化学および電顕的検索

著者: 鈴木裕介 ,   浅井俊弥 ,   浅井範子 ,   堀内保宏 ,   神崎保

ページ範囲:P.733 - P.737

 汎発性本態性毛細血管拡張症は後天性,一次性の微小血管拡張を特徴とするが,なおその本態は不明である.我々は本症の2例を経験し,その皮膚組織に,レクチン酵素抗体法,アルカリフォスファターゼ染色,電顕を用いて,その生物学的性状および組織学的検討を行った.同様の形態を有する臨床像でも,組織学的には,増殖性変化を主とし拡張の著しくないものと,拡張を主とし増殖性変化を伴わない2種類がみられた.この違いは,患者別のみならず,同一患者組織においてもみられた.レクチン酵素抗体法により,病変部脈管は陽性を示し,本症はすべて血管のみが関与するものと考えられた.また電顕的には,microfilamentの多少が血管拡張と関係すると思われた.

特異な臨床像を呈した毛細血管拡張症の1例

著者: 木花いづみ ,   山崎雄一郎 ,   籏野倫

ページ範囲:P.741 - P.745

 49歳,男.約2年前より躯幹,上肢に,色素沈着を伴うびまん性の毛細血管拡張の局面を認める.手掌紅斑および軽度女性化乳房を伴い,軽度の肝機能低下と血中エストロンの上昇を認めた.著者らは,臨床的に本症をBeanの記載したpaper money skinに近い症例と考え,その周辺疾患,成因について若干の考察を試みた.

著明な肺高血圧を来し死亡したMixed Connective Tissue Diseaseの2例

著者: 滝脇弘嗣 ,   榎本充邦 ,   武田克之 ,   溝淵茂樹 ,   小林英香 ,   大塚俊夫

ページ範囲:P.747 - P.751

 著明な肺高血圧を来し死亡したmixed connective tissue diseaseの2症例を報告した.症例は33歳と24歳の女性で,共にレイノー現象と手指の浮腫性硬化を初発症状として発症し,心・肺症状が比較的早期に現われ進行し,全経過は約5年であった.肺病変に対するステロイドの治効は少なかった.1例は剖検で高度の高血圧性肺血管病変を認めたが,間質の線維化は極めて軽微であった.

Total Lipodystrophyの1例

著者: 大和谷淑子 ,   尾松美代子 ,   川津友子 ,   岡田三徳

ページ範囲:P.753 - P.757

 51歳女性の後天性total lipodystrophyの1例を報告した.患者は48歳で発症し,全身皮下脂肪織消失,糖尿病,肝腫大,高トリグリセライド血症,基礎代謝亢進等の典型的な症状の他に,膜性増殖性糸球体腎炎,四肢ニューロパシー,レイノー現象,指趾背の黒色表皮腫,環状肉芽腫と特異な合併症を呈した.Total lipodystrophyの腎合併症報告例は少なく,数例が散見されるにすぎない,本報告例では膜性増殖性糸球体腎炎,抗核抗体陽性所見より,自己免疫疾患の可能性も含め考察した.

Collodion Babyの同胞例

著者: 吉岡晃 ,   米澤郁雄 ,   家城晃

ページ範囲:P.759 - P.762

 Collodion badyの同胞例を報告した.症例1:2カ月,女児.生下時より全身が光沢のある薄い膜でおおわれており,眼瞼,口唇の外反が認められた.その後,この膜に亀裂が生じ亀裂部は潮紅を示していた.出生10日目頃より膜は消失し,全身を細かい鱗屑がおおう状態となり10歳の現在まで続いている.身体および知能の発育には遅延がみられ,発汗不全があるため夏期には高熱を呈することが多い.組織学的には角層および表皮の肥厚を呈する以外,特記すべき所見はなかった.症例2:生後1日,男児.症例1の弟.症例1同様,生下時に薄い半透明膜におおわれていたが,その後膜に亀裂が生じ,全身を細かい鱗屑がおおう状態となる.組織学的にも症例1と同様である.なお家系調査の結果,患者達の両親の2代祖先が同胞であったことが判明している.

Rudimentary Polydactylyの1例

著者: 渡辺富美子 ,   岩津都希雄 ,   小林まさ子 ,   保坂瑛一

ページ範囲:P.763 - P.766

 1歳6カ月,男児.生来存在していた右第5指基部尺側の2.5×2×2mmの小結節を摘出した.病理組織学的に真皮乳頭層に多数のMeissner小体が存在し,真皮には多数の血管と多数の神経束を認め,rudimentary polydactylyと診断した.母親の左第5指基部尺側に3×2×0.5mm赤褐色の小結節を認め,少なくとも小学生の頃には存在していたという.患児は一卵性双生児の第1子で,第2子には両側第5指に多指症があった.興味ある家族歴を有していたので,ここに報告した.

限界線照射による放射線潰瘍の1例

著者: 佐藤俊次 ,   志水達也 ,   関根るみ子 ,   早稲田豊美 ,   藤田恵一

ページ範囲:P.767 - P.769

 約20年前に両手爪白癬に対して,1回約200Rの限界線を総量2,000R照射後,爪白癬は軽快した.その後は特に異常なく経過していたが,20年後に外傷等の誘因なく右手第2指背側にびらんが出現,さらに潰瘍へと進行し難治性を示したため,腹部有茎皮弁移植にて治癒せしめた.病理組織学的所見より,これは慢性放射線皮膚炎および潰瘍と診断した.

Nodular Fasciitis—A型肝炎およびAngioimmunoblastic Lymphadenopathyを伴った1例

著者: 石倉多美子 ,   網谷茂樹 ,   松本俊彦

ページ範囲:P.771 - P.776

 66歳,男.A型肝炎とangioimmunoblastic lymphadenopathy (AIBL)を合併したnodular fasciitis (NF)の1例を報告した.39℃前後の発熱が数日続いた後に,右大腿に蜂窩織炎様の発赤と腫脹を生じ,7日後に37℃に解熱すると共に発赤・腫脹は減少し,そこの皮下にしこりが残った.しこりの組織像では,皮下脂肪組織内に膠原線維と異型性の強い線維芽細胞の増殖からなる細胞集団があり,一部に毛細血管増生と出血像がみられた.第25病日頃から右の顎下部やリンパ節腫脹を生じ,それらの組織像はAIBLに一致するものであった.臨床検査成績の異常としては白血球増加,肝機能検査値の異常,IgG, IgAの増加,赤沈亢進,CRP6(+)などがみられた.組織学的にNFとAIBLは異なるが,両者ともpseudomalignancyと考えられており,前者は炎症後の,後者は抗生剤投与後の強い組織反応によるものと考えられ,興味深かった.

皮膚症状により発症したB細胞性リンパ腫

著者: 亀山孝一郎 ,   堀内保宏 ,   竹崎伸一郎

ページ範囲:P.779 - P.784

 皮膚症状にて発症し表皮角化細胞がHLA-DR抗原陽性を呈したB細胞性リンパ腫の1例について報告する.症例は82歳男子で昭和58年2月より右頬部に淡紅色の結節が出現した.腫瘤組織像にて腫瘍細胞は比較的大型のnon-cleaved cellで酵素抗体間接法ではB1陽性,S-IgM (λtype)陽性,HLA-DR抗原陽性を呈しB細胞性リンパ腫(lym—phoblastic type)と診断した.当初,表皮角化細胞はHLA-DR抗原陰性であったが,後に右額より採取した組織では陽性を呈した.放射線療法および化学療法施行し,一過性に皮疹消褪するも速やかに再発し,発症後約1年で肺炎にて死亡した.剖検所見上,舌,右唾液腺,胃,空腸,結腸,脾門部への臓器浸潤と右頸部および両側鎖骨窩リンパ節での腫瘍細胞の増殖を認めた.

悪性黒色腫におけるびまん性色素沈着

著者: 長尾貞紀 ,   丹野和穂 ,   鈴木正夫 ,   佐藤紀夫 ,   飯島進 ,   皆川禎子

ページ範囲:P.785 - P.790

 びまん性色素沈着を併発した悪性黒色腫の1例を報告し,色素沈着の発症機序を考察した.症例は57歳,男.右下肢の黒色腫転移巣のため受診し,10カ月後右心耳を初めとして全身諸臓器に播種状の転移を来して死亡した.死亡約1カ月前よりmelanin尿陽性となり,徐々に上半身に暗褐色びまん性色素沈着を生じた.これは組織学的に表皮melaninの増加と多数の真皮melanophageによるものであった.電顕的には真皮melano—phageにあるmelanosome complex (m.—c.)は黒色腫転移巣にみられるm.—c.と区別できないものであり,同様のm.—c.は真皮の血管内皮細胞・細胞間隙にもみられた.こうした所見から真皮のmelaninは黒色腫転移巣から血行性に流入してきたものと思われた.また表皮turn overの低下によるmelanosomeの表皮内の蓄積とcolloid小体を介した組織学的色素失調による真皮melaninの増加も推察された.

悪性血管内皮腫の1例

著者: 小林まさ子 ,   長谷川隆 ,   若林正治 ,   築藤玲子 ,   藤田優 ,   宮本忠昭

ページ範囲:P.791 - P.794

 73歳,男性.頭頂部を打撲後,腫瘤を形成し,3回の切除再発を繰返したのち当科受診した.3×3cmの暗紫紅色,中央に潰瘍を伴った腫瘤であったが,手術時すでに頭蓋内に浸潤を認めた.頭蓋内に残存した腫瘍に対し,放射線照射を総計9,000rads施行し,併せてpeplomycin, vinblastineによる化学療法を行った.術後1年5カ月経過するが,再発,転移の所見はない.本症に対しては早期の広範囲な切除とともに,放射線照射,化学療法を併せた集学的治療が必要と考えた.また経過中peplomycin筋注により,激しい呼吸困難を伴う急性蕁麻疹様薬疹を起こしたので併せて報告する.

Interferon-α局注の奏効した有棘細胞癌の1例

著者: 羽田妙子 ,   小野雅平 ,   森田秀樹 ,   浅野翔一

ページ範囲:P.795 - P.798

 87歳,男性.頭頂部左側に発症した有棘細胞癌(gradeⅠ)にヒト培養リンパ芽球由来Interferon-α(IFN-α)の局注を行った.1回量3×106IU,連日13回.合計39×106IUで腫瘤の縮小率は91.8%と著効を見た1症例を記述した.

Sebaceous Epithelioma—電顕的観察

著者: 山路和彦 ,   進藤泰子 ,   高橋省三 ,   諸橋正昭

ページ範囲:P.799 - P.803

 66歳,男.約10年前より後頭部に腫瘤があり,漸次増大.組織学的,電顕的所見から,腫瘍細胞が脂質形成能を有することが確かめられ,腫瘍はsebaceous epitheliomaと診断された.電顕的検討では,脂質合成能は正常脂腺より低下しており,未分化な傾向の強い症例であった.さらに興味深い所見として,脂腺導管部にみられる角化と同様の角化態度が認められ,この腫瘍が脂腺細胞への分化だけでなく,脂腺導管部への分化の傾向をも示していた.これらの電顕所見から脂腺上皮腫は,脂腺腺腫,脂腺への分化を伴った基底細胞上皮腫,未熟な基底細胞上皮腫とは明らかに異なったentityをもつ脂腺腫瘍と考えた.

ヒト乳頭腫ウイルス感染が証明された広汎な黒褐色脂漏性角化症様皮疹の多発した1例

著者: 池川修一 ,   早坂健一 ,   石原和之 ,   中島孝

ページ範囲:P.805 - P.810

 71歳,女.約20年間にわたり,陰股部・肛門周囲を中心に,広汎に黒褐色脂漏性角化症様皮疹の多発した1例を報告した.組織学的には,hyperkeratosis, acanthosisおよびpapillomatosisよりなる病変で,軽度に異型性を伴いmelanocyteの増生を伴っていた.またABC法を用いた免疫組織学的染色により,表皮上層の空胞細胞の核内に一致して,papillomavirus genus-specific common antigenを証明した.自験例は,尋常性疣贅,epidermodysplasia verruciformis, giant condyloma acuminatum, Bowenoid papulosisなどと共通点はみられるものの,どの疾患とも異なり,過去に報告をみないヒト乳頭腫ウイルス感染症のひとつと考えられた.

疣贅状表皮発育異常症(Epidermodysplasia Verruciformis, Lewandowsky-Lutz,1922)の同胞例

著者: 谷垣武彦 ,   欠田良児 ,   田代実 ,   佐藤健二 ,   松本和雄 ,   生塩之敏 ,   渡辺信一郎

ページ範囲:P.811 - P.814

 ヒトパピローマウイルス14型(HPV−14)が分離されたEV患者,27歳男(兄,EV1OS)の家系調査を行った.両親は近親結婚で同胞は姉弟の計3人で,その同胞3人共,疣贅状表皮発育異常症(EV)であった.尋常性疣贅様皮疹(VV)は同胞3人の他,母にもみられた.HPV易感染の存在がこの家系に窺われた.従って免疫,HLA抗原の検索を行った.その結果,姉兄に末梢リンパ球の機能異常がみられ,HLA抗原のうちDR4が同胞3人に存在した.それは母由来であった.その他兄姉何れもIQは小学校低学年のレベルで精神発達の遅延が観察された.この家系はHPVの水平感染によってEVが発症したと考えられたので報告した.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.784 - P.784

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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