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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科40巻1号

1986年01月発行

雑誌目次

図譜・519

Leukocytoclastic Vasculitis

著者: 浦上更三 ,   武井洋二 ,   幸田衞

ページ範囲:P.6 - P.7

患者62歳,女性
初診昭和58年8月1日

原著

コルチコステロイド外用により生じた稗粒腫について

著者: 格谷敦子 ,   辻卓夫 ,   田中律子 ,   幸野健 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.9 - P.14

 症例は高齢者(平均72歳)ばかりの9例で,種々の皮膚疾患のため,様々なコルチコステロイド外用剤を使用していた.稗粒腫が出現するまでの期間は約1〜9年(平均5.6年)である.小さな表面平滑な白色丘疹が数個〜多数,主として前頸部〜上胸部に出現した.なお全例において皮膚萎縮と毛細血管拡張が先行していた.組織学的には真皮上層〜中層に存在するepidermal cystで,cyst壁と毛嚢が連続する像や内腔に毛が存在することより,生検した16個の稗粒腫のうち14個(87.5%)が毛嚢由来であることが明らかにされた.今回の稗粒腫はretention cystであることが示唆され,発生に老人皮膚とステロイド外用剤長期使用の2条件が関与すると考えられた.またcystの発生機序として,①萎縮皮膚への機械的刺激による表皮剥離とその再生による毛嚢開口部の閉塞,あるいは②毛嚢周囲の結合織が変性し,疎になることによる毛嚢上部の開大と毛嚢開口部の閉塞の2つの可能性を考えた.

Acne Aestivalis

著者: 柳原誠 ,   藤広満智子 ,   加藤文明 ,   森俊二

ページ範囲:P.15 - P.20

 昭和59年の猛暑の夏に経験したacne aestivalisの5例について報告した.皮疹は充実性孤立性丘疹で,膿疱は殆どなく,主として前胸部,肩および上肢に存在した.丘疹の辺縁には閉鎖面皰を形成する皮膚色の小さな角栓を認めた.組織学的には毛包頸部が嚢状に拡大し,一部毛包壁の穿孔を来し,毛包壁には真皮から毛包内腔に向かう弾力線維の侵入を認めた.穿孔部における炎症性細胞浸潤は軽く,むしろ毛包周囲に存在する血管周囲にリンパ球,組織球を主体とする細胞浸潤を中等度に認めた.発症の一因として高温環境下での強い日光照射を考えた.

カプトプリル,チオプロニン,スピロノラクトンおよびシアナマイドによる苔癬様皮疹

著者: 池澤善郎 ,   金秀沢 ,   正岡敦嘉 ,   黒沢伝枝 ,   宮本秀明

ページ範囲:P.21 - P.27

要約 カプトプリル,チオプロニン,スピロノラクトンおよびシアナマイドによる苔癬様皮疹の1例を経験した.患者は48歳の男性で,高血圧症,肝障害,糖尿病,うつ病,不眠症および飲酒癖に対して14種類に及ぶ多種薬剤を服用していた.約3カ月半位して左下腿より瘙痒性の紅色皮疹出現,漸次全身に拡大,口腔内に粘膜疹を併発した.肉眼的,組織学的に典型的な扁平苔癬様皮疹であった.投与薬剤の中止により皮疹は徐々に軽快,誘発試験により上記4薬剤が原因薬剤であることが判明した.苔癬様薬疹の発症までに3カ月半以上の原因薬剤の服用を必要としたにもかかわらず,誘発試験では4薬剤のどれも24時間以内に古い皮疹の再燃ないし新しい皮疹の出現がみられた.さらに貼布試験でも,これら薬剤に対して接触過敏反応が認められた.苔癬様薬疹の発症機構に遅延型過敏反応が関与していることを示唆する興味ある症例と考え,若干の考察を加えて報告した.

制癌剤の投与された急性骨髄性白血病患者におけるPiperacillin疹の3例

著者: 川口博史 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.29 - P.34

 制癌剤の投与された骨髄系の急性白血病患者における発疹症型piperacillin (PIPC)疹の確定例1例と疑診例2例を経験した.これらの3症例ではいずれも白血球が著明に減少(500/μl以下)したもとで薬疹が発症しており,薬疹のeffector T細胞は使用した制癌剤に対して強い抵抗性があることが考えられる.このような薬疹をJones-Mote型反応として捉える立場から若干の考察を加えた.

油性フェルトペンインクのPhenol-folmaldehyde樹脂によるアレルギー性接触皮膚炎の1例

著者: 高橋仁子 ,   菅野与志子 ,   菅野聖逸 ,   栄枝重典 ,   松尾聿朗 ,   大城戸宗男

ページ範囲:P.37 - P.40

 35歳,女性.肝炎で当院内科に入院中,油性黒色フェルトペンで記名した病衣を着て約2週間後に,記名部が接触する項,上背,腹部に紅斑,浮腫,小水疱が発生した.フェルトペンインクによる接触皮膚炎と診断した.パッチテストでは,患者が使用した,phenol-folmaldehyde樹脂を含有する黒色と赤色インクおよびインク中の成分であるphe—nol-folmaldehyde樹脂にアレルギー性陽性反応を呈した.樹脂成分を天然樹脂に変更した黒色,赤色インク,folmaldehydeおよびphenolには陰性であった.以上より,アレルゲンはphenol-folmaldehyde樹脂と判明した.

著明な心病変を伴った汎発性強皮症の1例

著者: 滝尻珍重 ,   佐野栄紀 ,   浅田秀夫 ,   橋本公二 ,   西岡清 ,   堀正二 ,   金奉賀

ページ範囲:P.41 - P.44

 著明な心病変を伴った汎発性強皮症(以下PSSと略す)の1例を経験した.34歳,女性.20歳時Raynaud症状が出現.23歳より指趾尖端の潰瘍の出現とともに四肢末端より体幹部へ進行する皮膚硬化を来した.33歳時にはRaynaud症状の増強,皮膚硬化の急激な進行を認め,同時に呼吸困難,前胸部痛,失神発作などの心不全症状をみるようになった.入院後,胸部X線,心電図,心エコー図,心臓核医学検査等により,うっ血性心不全および心嚢液貯溜が示され,PSSに随伴して生じた心筋の線維化が示唆された.治療としてコルチコステロイド投与にて心嚢液の減少をみ,アンギオテンシン変換酵素阻害剤を併用することにより,心不全症状およびRaynaud症状の改善をみた.本症例を通じ,一般にPSSに合併する心病変は,著明なRaynaud症状および皮膚硬化の急激な進行と関連して生じている可能性が示唆された.

シェーグレン症候群を合併したCRST症候群の1例

著者: 三田哲郎 ,   安江厚子

ページ範囲:P.45 - P.48

 シェーグレン症候群(以下SjSと略記)を合併し,かつ原発性胆汁性肝硬変(以下PBCと略記)の合併も疑われたCRST症候群の1例を報告した.症例は64歳の女性.昭和44年頃よりレイノー現象が,また昭和56年より眼乾燥症状,口腔乾燥症状が出現した.昭和59年,SjSを合併したCRST症候群と診断されたが,総ビリルビン値の上昇は認められなかったものの,抗ミトコンドリア抗体(以下AMAと略記)の高値陽性や胆道系酵素の上昇からPBCの合併も疑われた.患者のHLAの検索にて,DR抗原がDR−2,およびDR−3であったことより,CRST症候群,SjS,PBCの3疾患の発症の背景に共通の免疫学的遺伝素因が存在することが示唆された.

栄養障害性先天性表皮水疱症の1例

著者: 平本力 ,   狩野俊幸 ,   小堀幸子 ,   片山洋 ,   北島康雄 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.49 - P.53

 先天性表皮水疱症の1例とその治療を報告した.症例は20歳,男性で,出生以来水疱の出現を繰り返している.臨床症状(瘢痕形成,稗粒腫形成,爪喪失,手変形など)および光顕的電顕的組織所見(dermolysis,anchoring fibril不明瞭化など)から,Hallopeau-Siemens型栄養障害性先天性表皮水疱症(generalized type,mutilans型)と診断した.本症例を,ジフェニルヒダントインおよびアスコルビン酸の投与で治療したが,前者は薬疹のため,後者は無効のため中止した.次いで,プロピオン酸クロベタゾール含有軟膏(デルモベート®軟膏)で治療し奏効を得た.対照とした白色ワセリン,ジプロピオン酸ベタメサゾン含有軟膏(リンデロンDP®軟膏),酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン含有軟膏(パンデル®軟膏)は臨床的に有効とはいえなかった.

巨大脾腫を伴い,脾摘により軽快したサルコイドーシスの1例

著者: 谷口恭子 ,   梶谷ゆかり ,   井上成史 ,   塚田篤子 ,   野田れい子 ,   古谷達孝

ページ範囲:P.55 - P.61

 30歳,女性.昭和51年に発症し,臨床的にBHL,肺野病変,各所リンパ節腫脹,眼病変(虹彩癒着,網膜血管周囲炎),皮膚病変(紅色結節),巨大脾腫などを有し,組織学的に定型的サルコイドーシスの所見を呈した症例で,パルス療法を含む各種治療に抵抗し,かつpancytopeniaを併発したため脾摘術を施行した.摘出脾は重量2,420gで本邦最大,組織学的にも類上皮細胞性肉芽腫所見を呈し,サルコイドーシスによるものと診断した.脾摘後,pancytopenia, ACE, lysozymeを初めとする諸検査所見の正常化,肺病変,リンパ節腫大等の改善がみられた.脾腫を主症状としたサルコイドーシスの報告例は本邦では比較的少なく20例を数えるにすぎないが,それらについても若干の考察を加えた.

Relapsing Polychondritisの1例

著者: 大郷典子 ,   土井顕 ,   宗義朗 ,   段野貴一郎

ページ範囲:P.63 - P.66

 41歳男性の,上強膜炎から始まり,関節炎,耳介軟骨炎,さらに感音性難聴を呈した典型的なrelapsing polychondritisの1例を経験した.β-methasoneにて軽快するも漸減と共に再燃を繰り返した.本邦では自験例を含め57例の報告をみる.初発症状としては呼吸困難,咳嗽などの呼吸器系症状が最も多く,次いで耳介の発赤・腫脹・疼痛があげられ,好発部位は耳介軟骨,鼻軟骨,気管,喉頭,眼の順であった.また,皮疹を伴うことは少なく,滲出性紅斑,持久性隆起性糸紅斑,scleredema adultorumを伴った各1例をみるにすぎない.病因に関し,螢光抗体法にて血中に抗軟骨抗体が証明された例も散見された.

Davis紫斑—感染症による紫斑を伴った例

著者: 浅井俊弥 ,   斉藤隆三

ページ範囲:P.67 - P.70

 発熱,咽頭痛を伴った紫斑を主訴に来院した33歳の女性.個疹は単一な点状紫斑で組織学的に血管炎の所見なし.約1週間で跡形もなく消失.初診時赤沈42mm/h,CRP2+が2週後には赤沈7mm/h,CRP-となり,全身症状と皮膚症状が平行したことから感染症に伴う紫斑と診断した.同じ患者に誘因なく再発性に生ずる深在性の紫斑が認められた.個疹は類円形で1週間ほどで跡形もなく消失するという.そして患者の8歳の長女,2歳の次女にも同様の紫斑が確認され,Davis紫斑と診断した.検査成績では母,2歳の次女で抗核抗体が認められ,また部分トロンボプラスチン時間の延長,血中フィブリノーゲンの低下が共通してみられ,自己免疫的病態や広義の出血傾向と関連があると思われた.

四肢に多発した深在性皮膚カンジダ症の1例

著者: 久保等 ,   藤井理 ,   大河原章 ,   岸山和敬 ,   芝木秀臣

ページ範囲:P.71 - P.75

 深在性皮膚カンジダ症の1例を報告した.病例は51歳,女. Cushing症候群と糖尿病が併存し,抗生剤の投与,中心静脈栄養,インシュリンの皮下注射を長期間受けている.昭和58年4月1日から左上腕外側部に20×10cmの板状硬結局面が出現し,その中に直径2cmまでの皮下膿瘍が数個散在している.その後,右足背・右下腿・右上腕にも同様の病巣が出現した.組織学的には皮下脂肪組織に脂肪壊死巣があり,PAS染色で仮性菌糸と胞子を多数認めた.培養により,Candida albicansが得られた.5—FC,アンホテリシンBの内服を約8週間行い治癒した.本症例のように四肢の皮下脂肪組織に散在性に発症した深在性皮膚カンジダ症は稀である.

脂腺腫(Sebaceoma)—脂腺分化を伴う良性附属器新生物

著者: 三原一郎

ページ範囲:P.77 - P.82

 脂腺腫(sebaceoma)は,脂腺新生物の分類の混乱を踏まえAckermanらにより提唱された,良性の組織構築を示し脂腺への分化を伴う新生物に対する新名称である.本論文では56歳,女性の頭頂部に生じた脂腺腫の1例を報告すると共に,在来の脂腺新生物に対する種々の見解,上皮腫という用語の混乱,著者らの考える良性,悪性新生物の組織学的鑑別について述べ,敢えて新病名を採用したことの見解を述べた.

Cutaneous Fibrous Histiocytoma—電顕的に馬蹄型および棒状胞体内構造物がみられた1例

著者: 木内一佳志 ,   三橋善比古 ,   橋本功 ,   真家興隆

ページ範囲:P.83 - P.87

 60歳,女性の背部皮膚に生じたfibrous histiocytomaの1例を報告した.光顕的に腫瘍細胞はほぼhistiocytic cellのみからなり,異型性,多型性に乏しく,特定の配列は示さなかった.電顕的には,腫瘍細胞の胞体内に幅80〜150nmの馬蹄型および棒状構造物がみられた.この構造物はnodular cutancous reactive histiocytosis, papular histiocytomaおよびmulticentric reticulohistiocytosisにおいてみられており,皮膚組織球増殖症の電顕的マーカーの1つと考えられるが,疾患特異性は低いものと思われた.

多発性Bowen病,Malignant Trichilemmomaを伴った砒素角化症の1例

著者: 佐々木憲孝 ,   岡本竹春 ,   外島清臣 ,   柴田明彦 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.89 - P.95

 家族性に生じた多発性Bowen病を伴った砒素角化症の75歳,男性例を報告した.自験例で興味あることは掌蹠角化病変出現22年後左第2指に右棘細胞癌,26年後左膝窩,28年後左前胸部,29年後右第1指にmalignant trichilemmomaを次々と生じたことである.臨床像疣贅様腫瘤〜乳頭腫状紅色腫瘤であり,体幹にみられたBowen病のそれとは異なっていた.Etretinateの内服療法はBowen病病巣には効果はなかったが,掌蹠角化症には有効であった.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.87 - P.87

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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