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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科40巻11号

1986年11月発行

雑誌目次

図譜_532

水疱様外観を呈した石灰化上皮腫

著者: 出光俊郎

ページ範囲:P.964 - P.965

患者11歳,男児
初診昭和60年3月20日

原著

Fabry病の1例—酵素活性および電顕的観察

著者: 山中克二 ,   井上邦雄 ,   山田瑞穂 ,   佐野勉 ,   鈴木春見 ,   中川嘉洋 ,   清水貴子 ,   溝口功一

ページ範囲:P.967 - P.971

 15歳,男.幼少時より発汗が少なく,10歳前後より,運動時に両下肢の疼痛が出現した.疼痛は徐々に増悪し,某病院にて,肢端紅痛症の診断のもとに治療をうけたが軽快せず当科を受診した.胸部,陰嚢に被角血管腫が存在することから,Fabry病を疑い検索を行った.皮膚光顕像では真皮乳頭層に拡張した毛細血管を認め,電顕像で血管内皮細胞,周細胞,線維芽細胞,末梢神経周鞘上皮に特徴的な顆粒が認められた.酵素学的に血漿,白血球のα-galactosidase A活性が欠損しており,尿中に多量のCTH(ceramidetrihexoside),CDH(ceramide dihexoside)を検出した,また,水晶体,角膜の車輪状混濁も認められた.以上の所見より本症例をFabry病と診断した.

B型肝炎ウイルス感染に伴った多形紅斑

著者: 林宗伸 ,   服部泰子 ,   大島洋子 ,   池谷敏彦

ページ範囲:P.973 - P.976

 患者は63歳,男性.2週間前から全身の関節痛,筋肉痛,四肢の紅斑を訴える.検査所見ではGOT,GPT,ALP,LDH,γ—GTPの軽度上昇,HBs抗原定量値がR-PHA法にて5,120倍陽性を示した,皮疹部の生検像は多形滲出性紅斑型の組織反応であった.B型肝炎の診断に基づきHB抗原抗体値,GOT,GPT値,発疹を経時的に追った.その結果,発疹出現から消失まで18日間であり,ピーク時を過ぎると2〜3日で発疹は消褪し,発疹ピーク時より血清トランスアミナーゼ値が上昇し始め,第60病日頃には最高値となった.HBsおよびHBe抗原は初診時より陽性であったが,抗体は第80病日においても陰性であった.

Hyperkeratosis Lenticularis Perstansに併発したPellagraの1例

著者: 西川千香子 ,   藤岡範子 ,   池谷田鶴子 ,   小川秀興

ページ範囲:P.977 - P.981

 76歳,男性.偏食の後に生じたpellagraの症例を報告した.また本症例では両手背および足背部に十数年前より発症したと思われるhyperkeratosis lenticularis perstans(HLP)の皮疹が認められた.患者は極端な偏食傾向を有し,特にその食事内容では蛋白質が極度に不足していたほか,玉蜀黍類のスナック製品を好んで摂取していた.Pellagraの治療のほか,従来難治性とされているHLPに対しては冷凍凝固療法を試みたところ経過良好であったので,簡便な治療法として報告した.なお,角化異常を伴う素因のある患者にpellagraが生じたことに関して,それぞれの発生要因を述べた上で考察を行った.

皮下型サルコイドーシスの1例

著者: 武村聡 ,   鈴木啓之

ページ範囲:P.983 - P.987

 53歳,女性.初診3カ月前より飛蚊症,同2カ月前より咳嗽,労作時息切れを訴える.初診時,臀部左右にそれぞれ鳩卵大の皮下硬結1個ずつを触知する.組織像では皮下に限局した中心部に壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫の集塊を認め,さらに経気管支的肺生検にても同様に類上皮細胞肉芽腫の存在を確認した.BHL (+),両眼の虹彩毛様体炎および硝子体混濁(+),ツ反(—),血清リゾチーム値高値,血清アンギオテンシン転換酵素(ACE)値正常.ステロイド内服により諸症状は軽快,血清リゾチーム値,血清ACE値は著明な低下を認めた.なお,過去10年間の報告例について臨床的な比較検討を行い,血清ACE値の変動,由来についても若干触れた.

遮光化粧料と紫外線防御(IV)

著者: 川田暁 ,   佐藤吉昭 ,   車地祐子 ,   折田正人

ページ範囲:P.989 - P.993

 アメリカの代表的なサンスクリーン剤,PreSun 15("Creamy")(Westwood Pharmaceut. Inc.,U. S. A.)(以下PreSunと略)について,健康人男女10名を対象に室内および屋外実験によって,その紫外線防御効果を検討した.被験試料はすべて塗布量2μl/cm2で実験を行った.まずsandwich法で波長別透過率を測定し,その実用性を確認した.室内実験では,デルマレイM-DMR-1型のSEランプに対するSPFを検討したところ,SPFは8から20で平均は12.5であった.また,真夏の伊豆下田白浜海岸で測定した自然光に対するSPFは5.7以上であった.以上よりPreSunはUVB域に極めて有効で,実用性も優れていることが分かった.したがって.このサンスクリーン剤は光線過敏症患者にも十分応用できると思われた.

結節性紅斑様白癬疹を伴ったケルスス禿瘡の経験

著者: 佐々木憲孝 ,   外島清臣 ,   岡本竹春 ,   西山千秋

ページ範囲:P.995 - P.998

 4歳,男児.ケルスス禿瘡に続発して,両下肢に結節性紅斑様皮疹が病巣の病勢の最盛期に生じ,その衰えに伴って全経過2週間で消褪した.その経過より結節性紅斑様白癬疹と考えた.なお起因菌はT.Mentagrophytes,トリコフィチン反応は陽性を呈した.

アミロイド沈着を伴ったBowen病

著者: 佐久間満里子 ,   今川重彦 ,   馬場徹 ,   上野賢一

ページ範囲:P.999 - P.1003

 60歳,女子.左下腿伸側に生じたBowen病に広範囲にアミロイド沈着を伴った1例を報告した.皮疹部の光顕所見で,表皮はBowen病の典型を示し,コンゴ赤,Dylon,チオフラビンT染色にて陽性物質を,表皮直下,真皮乳頭層全域,一部は真皮膠原線維間に認めた.また,新しく開発されたpagoda red中の色素direct fast scarlet4BS (DFS)を使用し,良好な染色結果を得た.Bowen病を含む腫瘍続発性アミロイド症について若干の文献的考察を加えるとともに,DFS染色がアミロイドの検出に有用な染色法となる可能性について述べた.

Amyloidosis Cutis Nodularis Atrophicans(Gottron)

著者: 村松勉 ,   山科幸夫 ,   白井利彦 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.1005 - P.1010

 60歳,女性の恥丘部に生じたamyloidosis cutis nodularis atrophicans(Gottron)の1例を報告した.組織学的には,真皮上層から皮下組織にダイロン染色陽性の均質無構造物質を認めた.同物質は血管,汗腺周囲にもドーナツ状に沈着し,過マンガン酸カリ前処理により染色性の低下を示さず,その近傍に形質細胞の著明な浸潤を認めた.電顕にて沈着物質をアミロイドと同定し,PAP法にてアミロイド沈着部位に抗AL(λ)抗体弱陽性の所見を得た.以上の所見および本邦報告例を検討し,本症は原発性皮膚限局性アミロイド症であるにとどまらず,全身性アミロイド症への移行も十分考えられると推察した.

Atypical Fibroxanthomaの1例—Malignant Fibrous Histiocytomaとの異同について

著者: 行木弘真佐 ,   星野稔 ,   斎藤義雄

ページ範囲:P.1011 - P.1017

 鼻背に生じた拇指頭大のatypical fibroxanthoma (AFX)の75歳男子例と,上背部に生じた嚢腫状変化を伴う手掌大のmalignant fibrous histiocytoma (MFH)の82歳男子例を報告した.前者は単純切除後,半年を経て再発をみず,後者は手術を拒否し,レントゲン照射するも肺炎を併発し,初診後,約半年にて死亡した.剖検は施行でぎず,内臓転移巣の有無は不明であった,両疾患は,腫瘍細胞の光顕および電顕所見のみでは鑑別が困難であるが,1)部位,性状などの臨床所見,2)組織学的所見で,AFXにはpilose—baceous collaretを認め,一方MFHは殆どがstoriform patternを認めること,3)AFXは皮下深くから筋肉内には浸潤しないこと,および4) AFXは予後が良いこと,などにより鑑別できると思われた.

成人T細胞白血病の1例—リンパ性痒疹に対する一考察

著者: 三上幸子 ,   花田勝美 ,   鎌田義正

ページ範囲:P.1019 - P.1023

要約 39歳,男性,青森県在住.特異疹として痒疹型丘疹が出現し,いわゆるリンパ性痒疹(prurigo lymphatica)を呈した成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia:ATL)の1例を報告した,全身のリンパ節腫大で初発し,後に瘙痒のある赤褐色丘疹が多発.皮疹部の組織では真皮への異型リンパ球浸潤とポートリエ微小膿瘍を認め,核の分葉した細胞がみられた.異型リンパ球は末梢血,骨髄に各々90%,27%認め,膜表面形質は末梢T細胞のOKT3(+),4(+),6(-),8(-)を示した.抗ATLA抗体は80倍陽性,同居家族に陽性者なく,輸血歴なし.皮疹はステロイド外用や化学療法に反応したが,肝脾,胃腸管への腫瘍浸潤,肺炎合併により,全経過1年3カ月で死亡した.

多発性日光角化症—有棘細胞癌,ボーエン病,毛嚢腫瘍を伴った1例

著者: 佐藤千鶴 ,   長谷川隆 ,   藤田優

ページ範囲:P.1025 - P.1029

 80歳,男性,漁師.全身に日光角化症様皮疹が多発し,左手背に有棘細胞癌,右下腿にボーエン病,右前額部に有棘細胞癌とtrichilemmal carcinoma in situ,左手関節部に2個のボーエン病の発生をみた1例を報告した.さらに,日光角化症とボーエン病および毛嚢腫瘍の関係に関して若干の考察を加えた.

破壊型基底細胞上皮腫の1例—キューサおよび炭酸ガスレーザーの使用経験

著者: 三上英樹 ,   笹森幸子 ,   山本雅章 ,   福士堯

ページ範囲:P.1031 - P.1034

 症例は86歳,女性.初診時,鼻部を中心として両頬部に及ぶ手拳大の,辺縁やや隆起した易出血性の潰瘍を呈していた.生検にて破壊型基底細胞上皮腫と診断した.腫瘍が広範囲かつ深部に及ぶため,メスによる根治切除は困難と考え,キューサおよび炭酸ガスレーザーの使用を試みた.下床の健常組織をできるだけ温存するようにしてキューサ吸引後レーザー焼灼を3回繰り返したところ,腫瘍組織はほぼ完全に除去された.この状態を略治と考え,中間層植皮術を施行した.術後3カ月で再発はみられない.本症の診断および使用したキューサ,炭酸ガスレーザーについて考察した.

Trabecular Carcinoma of the Skin

著者: 田中信 ,   林至 ,   青柳文也 ,   長島正治 ,   笠原正男

ページ範囲:P.1035 - P.1040

 96歳,女性の右耳前部に発生した弾性硬,小胡桃大,半球状に隆起した紅色腫瘤を経験した.初診時,付属器系の悪性腫瘍が疑われた.生検の結果,小型で胞体に乏しい円形あるいは類円形の腫瘍細胞が真皮全層および皮下脂肪織に不規則に増殖していた.腫瘍細胞は敷石状に配列し,索状および結節状胞巣を形成していた.電顕的検索にて,分泌顆粒が認められたが,少数の細胞にごくわずかであったため敢えてMerkel cell carcinomaとせず,trabecular carcinoma of the skinとして報告した.本邦報告例を集計し,本腫瘍の臨床的および組織学的特徴などについて文献的考察を加えた.

Letterer-Siwe病—免疫組織学的に検討した1例

著者: 田中正明 ,   勝海薫 ,   松崎照樹 ,   増子倫樹 ,   永井透 ,   佐藤良夫 ,   岡吉郎

ページ範囲:P.1041 - P.1046

 11カ月,男児.生後3カ月頃より,陰股部に糜爛,背部に紅色丘疹が出現し,長岡赤十字病院皮膚科でLetterer-Siwe病と診断され,精査の目的で新潟大学医学部皮膚科を紹介された.左前胸部の痂皮性丘疹は,組織学的に真皮上層から一部は表皮内にかけて組織球増殖が著明であった.増殖細胞は,電顕的にBirbeck顆粒を有し,免疫組織学的にS100β,OKT6,OKT4,OKIal陽性であった.以上より,自験例をLetterer-Siwe病と確診した.初診時,病変は皮膚およびリンパ節に限局していたが,次第に悪化し,肝脾腫,中耳炎,顎骨病変などを生じてきた.プレドニソロン,ビンブラスチンの併用にて軽快し,減量中一時再燃をみたが,現在,両剤の併用により寛解状態を保っている.しかし発育障害がみられ,今後さらに種々の障害の出現も予想され,経過観察中である.

特異な臨床像を呈するGeneralized Verrucosis—Etretinate(Ro10-9359)が奏効した1例

著者: 格谷敦子 ,   辻卓夫 ,   高橋邦明 ,   庄司昭伸 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.1047 - P.1052

 症例:41歳男.15歳頃,前額に小さな疣贅様皮疹が1つ出現した.その後,皮疹は徐々に全身に拡大し,特に顔面,手に顕著となる.昭和46年当科を受診し,電気凝固法により両手など一部を残して切除するも,以後両手の皮疹は徐々に増大,融合して皮角様〜岩石様となり,全身には皮膚色〜黒褐色の扁平〜皮角様皮疹が散在する.組織像は尋常性疣贅および扁平疣贅に相当し,電顕的には角層および顆粒層の核内に多数のhumanpapillomavirus粒子が認められた.臨床検査では血清IgMの低値以外に異常はない.治療として,etretinate 50mg/dayを投与し,約2週目より主に手足の皮疹部の周囲に亀裂が生じ角質塊が脱落し,その部に硬い扁平な隆起を残すのみとなった.組織像では空胞細胞が残存していた.以後,etretinateを漸減し経過観察中である.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.1034 - P.1034

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してき.ました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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