icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科40巻2号

1986年02月発行

雑誌目次

図譜・520

炭疽病

著者: 成田博実 ,   青木洋子

ページ範囲:P.102 - P.103

患者23歳,男子,獣医
初診昭和57年3月2日

原著

Woringer-Kolopp Diseaseの1例

著者: 杉浦丹 ,   高月正宏 ,   西川武二 ,   三方淳男

ページ範囲:P.105 - P.111

 10歳,男子.7年来右大腿に自覚症状なく緩徐な拡大傾向を示す境界明瞭な角化性紅斑局面が単発.組織学的に表皮内に明るい胞体と核の切れ込みを示す大型の異型単核細胞が蜂巣を形成しPaget様に浸潤し,真皮上層にも異型単核細胞を多数認めた.特異な臨床および組織所見より本例をWoringer-Kolopp diseaseと診断した.自験例の表皮および真皮の浸潤異型細胞は,電顕的にcerebriform型の核を示し,酵素組織学的にacid phosphatase,β-glucuronidaseの顆粒状ないし点状陽性を示し,免疫組織化学的にOKT3,Leu-1陽性を示したことよりTリンパ球由来と思われ,本症はmycosis fungoides近似のT cell増殖症の一良性型と考えられた.

IgAκ型M蛋白血症を伴ったPyoderma Gangrenosumの1例

著者: 石田明美 ,   久保等 ,   飯塚一 ,   大河原章

ページ範囲:P.113 - P.116

 78歳,男性の右側胸部に生じたpyoderma gangrenosumの1例を報告した.菌学的検査は陰性で,抗生物質に反応せず,ステロイドホルモンの全身投与が著効を示した.IgA κ型のM蛋白血症と好中球遊走能の低下を伴い,組織学的に真皮の血管炎の像と螢光抗体法で血管壁にIgAの沈着を認め,これらの異常が本症の発症に関与していると推定した.

多発性骨髄腫—黄色腫様皮疹を伴った症例

著者: 仲村洋一 ,   大槻典男 ,   江竜喜史 ,   竹越忠美

ページ範囲:P.117 - P.121

 患者は60歳の農婦で,結節状の皮膚病変を伴った多発性骨髄腫と思われる症例である.皮膚病変は組織球浸潤を主とする結節のほか,黄色肉芽腫または黄色腫に類似の組織像を示すものもあり,また陳旧な結節では中心部の結合織の変性がみられた.免疫グロブリンではIgGλ型増加,但し他の免疫グロブリンの著しい減少はなかった.骨髄像では形質細胞の増加と異型性がみられた.ステロイド内服で結節は消失した.

Auto-immune Annular Erythemaの1例

著者: 小林衣子 ,   中川淳子 ,   高島巌

ページ範囲:P.123 - P.126

 52歳,家婦.約3年前から.背部に始まり,四肢,臀部に遠心性に拡大する還状紅斑を繰り返し難治であった.臨床検査成績で,白血球減少,γ-gl.の上昇,RA陽性,抗核抗体陽性,細胞性免疫能の低下を認めた.抗SS-A抗体,抗SS-B抗体は陰性で,粘膜の乾燥症状はない.病理組織所見はLEに近い像を示した.皮疹部の螢光抗体直接法で,表皮真皮境界部に免疫グロブリン,補体の沈着は見られなかった.以上の所見から,autoimmune annular erythemaと診断した.本症および環状紅斑を主訴とするSLEは,Sontheimerらのsubacute cutaneous LEと同一疾患であり,環状紅斑を伴うシェーグレン症候群とも極めて近縁の疾患と考えた.

Auto-immune Annular Erythemaの2例

著者: 豊島弘行 ,   神田源太 ,   赤星吉徳 ,   笹岡和夫

ページ範囲:P.127 - P.131

 47歳(症例1)と55歳(症例2)の男子に生じたauto-immune annular erythemaの2例を報告した.いずれの症例も顔,躯幹,上腕などに多発する浸潤性紅斑を主徴とするが,全身症状は殆どなく,いわゆる乾燥症状もない.紅斑の多くは遠心性拡大傾向を示したが,第1例では両耳介に凍瘡様皮疹も認められた.両例とも抗核抗体陽性(speckled pat—tern)で,その他に症例1では白血球減少,症例2では血沈の亢進がみられた.しかし,他にSLEおよびSjögren syndromeと診断するに足る免疫学的異常は認められなかった.組織学的には真皮の血管および附属器周囲性の密なリンパ球浸潤が主要所見であった.Lupusband testは両例ともに陰性であった.以上の所見から自験例をauto-immune annular ery—themaと診断したが,症例1はSontheimerらのsubacute cutaneous erythematosesに近い症例と考えられた.

カプトリル®による扁平苔癬型薬疹

著者: 角田孝彦 ,   小川俊一

ページ範囲:P.133 - P.137

要約 51歳,男.高血圧あり,カプトリル®1日100mg内服2カ月後より,ほぼ全身に瘙痒ある隆起性紅斑出現,頭部に脱毛,口腔に粘膜疹がある.末血に好酸球増多,異型リンパ球がみられ,IgA低値,抗核抗体40倍(homogenous型)陽性.組織は典型的で,パッチテストはカプトリルが陽性,チオラは陰性.薬剤中止により約1カ月で皮疹軽快,抗核抗体も陰性となった.カプトリルによる抗核抗体の陽性化と扁平苔癬の発生機序につき考察した.

慢性関節リウマチに随伴した下腿の巨大な壊死性潰瘍性病変

著者: 木村俊次 ,   禾紀子 ,   増田光喜 ,   倉持正雄

ページ範囲:P.139 - P.144

 34歳,男子,約5年来,四肢の関節痛とともに腋窩・臀部・四肢に水疱様〜潰瘍性病変が多発し,出没を繰り返す.約2年前左下腿に生じた水疱様病変が壊死性潰瘍性病変となって巨大化し,25×20cmの大きさとなる.臀部・足背・膝肘伸側などには対側性に膿疱様病変・潰瘍・瘢痕が多発する.臀部の膿疱様病変・下腿の潰瘍辺縁は組織学的に壊死・好中球浸潤・出血などを示すも,明らかな壊死性血管炎の所見はなく,螢光抗体直接法も陰性.検査成績では血沈中等度亢進,補体高値,RA・RAHAテスト陽性,抗核抗体陽性,ツベルクリン反応も強陽性で潰瘍化をみた.四肢関節X-PはRAに典型的.皮疹は抗生物質,DDSに不応,副腎皮質ホルモン剤内服に反応した.本例の皮膚病変は血管炎によって生じ,下腿の壊死性潰瘍性病変はそれに二次的修飾が加わったものと考えるのが最も妥当と思われた.

劣性栄養障害型先天性表皮水疱症に対するフェニトイン(アレビアチン)の効果について—2例の解析

著者: 浅田秀夫 ,   橋本公二 ,   滝尻珍重 ,   佐野榮紀 ,   相馬照代 ,   喜多野征夫 ,   小林與一 ,   山村弟一 ,   西岡清 ,   吉川邦彦

ページ範囲:P.145 - P.150

 劣性栄養障害型先天性表皮水疱症(recessive dystrophic epidermolysis bullosa:RDEB)患者2症例についてフェニトイン内服療法を行った.水疱形成は血中濃度の立ち上がりから数日ないし1週間遅れて抑制されたが,服用を続行したところ抑制効果が減少する傾向が見られた.眠気,眩暈,集中力低下,肝障害などのフェニトインの副作用が出現してきたこと,および血中濃度の維持が困難であったことから,長期連用はできなかった.

天疱瘡に対するステロイド間歇投与法についての一考察—岩手医科大学付属病院皮膚科の最近10年間の症例から

著者: 藤田秀人 ,   伊崎誠一 ,   伊崎正勝

ページ範囲:P.151 - P.156

 尋常性天疱瘡6例,落葉状天疱瘡2例,紅斑性天疱瘡5例の計13例のうち2例を除く11例に対してステロイドの連日投与後に間歇投与法を試みた.その結果,ステロイドの連日投与により水疱の新生が抑制され,糜爛面が乾燥化した後,ステロイドの1日投与量を変えず投与間隔をあける間歇投与法は長期に亘り皮疹の再発を防ぐ方法として,十分に推奨されるものであることが明らかとなった.

Etretinate外用・内服療法が奏効したKyrle病について

著者: 花田裕子 ,   花輪純子 ,   花輪滋 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.157 - P.163

 Etretinateの外用ならびに内服療法が奏効したKyrle病の80歳,女性例を報告した.自験例で興味ある所見は次の通りである.1)定型疹は4,5mm〜6,7mm,ときに10mmの中央に黒褐色の角栓をいれる丘疹ないし結節である.2)初発疹は白色の角化物を有する小丘疹と考えられた.3)本症の特徴的所見とされる疣贅様角化局面はetretinateのODT療法の経験から角栓を有する丘疹の集簇からなることを明らかにした.4)組織学的に角栓内のcellular debrisは角栓の表皮内穿孔がかつて生じたことを示唆する所見と解された.5) Etretinateの外用や内服療法が奏効したことから,本症はelimination diseaseではなく.角化異常症であると考えた.

Mycobacterium marinum感染症の1例—硫酸アミカシンによる治療例

著者: 新井裕子 ,   中嶋弘 ,   内藤静夫 ,   黒沢伝枝 ,   亀田洋 ,   神永陽一郎

ページ範囲:P.165 - P.168

 硫酸アミカシン(AMK)が奏効したMycobacterium (以下M.) marinum皮膚感染症の1例を報告した.また,同薬剤に対する本菌の試験管内感受性成績を報告した.
 症例:71歳,男性,魚類飼育を趣味とする.初診の3.5カ月前に受けた左手の小外傷創が治癒せず浸潤,硬結に発展.現症:左手背にびまん性の浸潤性紅斑と一部硬結,漿液性丘疹,小膿疱,点状潰瘍が混在し,鱗屑,痂皮が付着する.左前腕にもびまん性の潮紅と鱗屑を伴う,領域リンパ節腫脹なし.生検組織学的所見は化膿性,肉芽腫性反応で,組織標本内に菌要素は検出されない.組織片からの分離株は細菌学的にM.marinumと同定された.ツ反陽性.AMKは200mg/1日7日間,100mg/1日9日間連続で,その後200mg/1日週2回で3週間,筋注で投与し治癒した.AMKの総量3,500mg,治療期間は6週間を要した.AMKの自験分離菌株に対するMICは0.78μg/mlであった.

顔面に発生したTrichilemmal Cystの1例

著者: 沢田幸正

ページ範囲:P.169 - P.172

 57歳,男の鼻根部に発生したハイブリッド型のtrichilemmal cystの1例を報告した.本症は本邦でも少なく,また,その90%が頭皮部に生ずるとされており,顔面に発生したものは比較的稀であると考えられたので報告し,併せて上皮嚢腫やproliferatingtrichilemmal cystとの差異について述べた.

Eccrine Poroepitheliomaの1例

著者: 林宗伸 ,   守屋英一 ,   池谷敏彦

ページ範囲:P.173 - P.177

 61歳,男性の右小指丘部に生じたeccrine poroepitheliomaの1例を報告した.腫瘍は30年前より存在し漸次増大,初診時16×12×10mmの紅色半丘状で,表面凹凸不整を呈していた.組織学的所見では腫瘍細胞は真皮内に乳頭状に深く侵入し,核の大小不同,異型性を認め,一部で管腔形成傾向を示した,また腫瘍細胞はPAP法抗ケラチン抗体染色で染色されず,胞体にPAS染色陽性顆粒を認め,これはジアスターゼにより消化された.生検部位により組織像に相違を認めた.自験例を含め本邦において報告されたeccrine poro—epithelioma 26例を集計した結果,初発年齢は50歳〜60歳代が過半数を占め,平均初診年齢は63.0歳,初診までの平均経過年数は9.7年であり,男女比は認めなかった.好発部位は頭顔面部,躯幹,下肢であった.

皮角の形を呈し,自然脱落した第5趾尋常性疣贅

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.179 - P.183

 21歳,男子,左第5趾爪部に出現し,皮角の形を呈した角質増生高度の尋常性疣贅の1例を報告した.疣贅は同部を打撲後約2週間で自然脱落し,まもなく爪甲は正常化した.本例で疼痛が先行したこと,脱落角質塊の一部に黒化がみられたこと,脱落角質塊は組織学的に真皮乳頭に一致する出血像や細胞浸潤像を示したことなどは,尋常性疣贅の自然消褪時の所見とよく合致する.本例の疣贅は種々の治療が誘因となり,打撲が直接的原因となって脱落したものと考えられた.

電撃傷皮膚の病理組織学的観察

著者: 青島敏行 ,   桜井みち代 ,   藤田研一 ,   坂梨四郎 ,   三谷恒雄

ページ範囲:P.185 - P.189

 27歳,男子,電力会社職員の7万ボルトの電線接触による電撃傷を報告した.顔面,左上肢および背腰部の一部を除くほぼ全身(70%)に黒色焼痂が存在し,蒼白,黄色,赤色調の部位もみられ,皮疹は右半身に高度である.病理組織像は,HE染色では表皮,毛嚢細胞の核延長,血管壁の核消失.汗腺細胞の不明瞭化がみられ,膠原線維は断裂,破壊,離開し偏光で赤橙色に光る.Elastica-van Gieson染色では膠原線維は暗赤褐色を呈し,弾性線維は断裂,走行の乱れを示し血管壁では不明瞭である.PAS染色では基底膜,血管壁は強陽性:汗腺周囲も陽性,表皮,汗腺細胞は陰性,毛嚢は一部染まるのみ,膠原線維は偏光で銀白色の光輝を発した.SCALDS scoreは19点で重症熱傷に入るが,輸液,輸血,減張切開,外用療法,植皮等により救命しえた.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.172 - P.172

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?