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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科40巻4号

1986年04月発行

雑誌目次

図譜・522

痛風結節

著者: 高橋泰英

ページ範囲:P.286 - P.287

患者70歳,男
初診昭和58年11月4日

原著

人工的黒皮症—ナイロンタオル使用等による特異的色素沈着症

著者: 池谷田鶴子 ,   小川秀興

ページ範囲:P.289 - P.295

 躯幹,四肢に生ずる特異的な色素沈着症37例をまとめた.性別では男6例,女31例であり,そのうち34例にナイロンタオル,ナイロンタワシの使用歴(2〜15年)が認められた.我々は本症の発症に関し,ナイロン製品,布地,香粧品等の関与も考え,これらにつき貼布試験を行ったが,確実な結果は得られなかった.そこで10例に対し,トリイの化粧品シリーズを用い通常の貼布試験と,tape strippingをあらかじめ行った部への貼布試験の2系列を施行し,成績を対比した結果,前者では化粧品皮膚炎の既往ある1例を除きすべて陰性後者では全例に刺激反応を認めた.以上の結果より,本症発症要因としてナイロンタオル等による直接的物理的,化学的影響は否定しないものの,まずこれらによる擦過が角層のバリアー機能を低下させ(1次的要因),次いで香粧品,衣類,洗剤等に含まれる,恐らくは複数,しかも多くの化学物質(2次的要因)が透過しやすくなることが関与するものと考えた.

フルオシノニド軟膏接触皮膚炎原因物質の安全性について

著者: 太田みどり ,   戸田浄

ページ範囲:P.297 - P.300

 4例のフルオシノニド軟膏接触皮膚炎を経験した.貼布試験で,4例とも軟膏基剤成分であるアマコールCABに陽性所見を示した.5%アマコールCABについて,ヒト貼布試験,モルモットによる接触感作性試験を行ったが,明らかな感作性は認めなかった.

Eosinophilic Pustular Dermatosisの1例

著者: 長田玲子 ,   宇田川晃 ,   高山修身 ,   長谷川正次 ,   堀嘉昭

ページ範囲:P.301 - P.306

 好酸球性膿疱性皮膚症(eosinophilic pustular dermatosis)の1例を報告し,併せて本邦において発表された110症例につき統計的考察を試みた.自験例は75歳,女.掌蹠に皮疹が初発し,DDS,サラゾピリン,シノミン,コルヒチン,塩酸ミノサイクリンの内服およびステロイド含有軟膏塗布にて効果を示さず,エトレチネートの内服が著効した.また経過中,橋本甲状腺炎を合併した.本疾患は20歳代の男性の顔面に好発し,末梢血好酸球数は10%以上の増多を示す.皮疹は粘膜を除く全身に出現するが,22.4%の症例で掌蹠にも見られ,毛包を欠く部位であることより,診断名をeosinophilic pustular folliculitisよりもeosinophilic pustular dermatosisとする方が妥当と考えた.

小児Sweet病の2例

著者: 上田清隆 ,   西岡清

ページ範囲:P.307 - P.310

 2カ月男児と3歳男児の小児Sweet病の2症例を報告した.2カ月男児例は,生後2週目に顔面の紅斑として発症しており,従来の報告例のうち最年少例と考えられた.同症例では,本症発現とSMAミルク摂取との関連性が疑われたが,確認はできなかった.3歳男児例は,1歳2カ月頃より顔面に紅斑の出没を繰り返しており,ヨードカリ内服で皮疹の消褪を見たが,内服中止により皮疹が再燃した.

小児膿疱性乾癬(Zumbusch型)の1例—本邦報告例の文献的考察

著者: 佐々木絹子 ,   石田修 ,   前田和男 ,   山名香折 ,   西尾千恵子 ,   高橋誠

ページ範囲:P.311 - P.315

 5歳,男児の膿疱性乾癬(Zumbusch type)の1例を報告した.急性期にはステロイド療法を施行し,離脱にはPUVAとエトレチネートの併用療法が有効であった.1年間再燃していない.小児の膿疱性乾癬は現在まで本邦で53例報告されており,発症のピークは1歳以下である.成人に比し予後は良いので,治療に際してステロイドを使用する場合は慎重に行う必要がある.症例報告と共に若干の文献的考察を行った.

超音波療法が奏効したHypodermitis Sclerodermiformisについて

著者: 関口かおる ,   八木茂 ,   西山千秋 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.317 - P.321

 臨床的にも組織学的にもhypodermitis sclerodermiformisの定型的所見を示し,超音波療法が奏効した60歳,女性例を報告した.本症の特徴は以下のように要約される.1)臨床像:静脈不全を有する下腿に生じる境界明確,不規則形,木様硬に触れる表在性浸潤局面であり,限局性強皮症と異なって皮野は明瞭で,皺を寄せることが可能である.2)組織像:定型疹では真皮中層から皮下脂肪組織にかけての膠原線維束の増生が主要所見で,初発疹ではこれに皮下脂肪織炎を認める.3)治療:超音波療法は定型疹に劇的に奏効したが,初発疹には無効であった.本症の病像はきわめて特異的であり,本症の概念が知られるようになれば,報告例が増すものと思われた.

顔面に生じた平滑筋母斑の2例

著者: 滝脇弘嗣 ,   武田克之 ,   田山正伸 ,   大崎正文

ページ範囲:P.323 - P.326

 11歳女子の額部と36歳男子の頬部に生じた平滑筋母斑の2例を報告した.臨床像は,前者では表面顆粒状の淡褐色斑,後者では有毛性暗褐色局面で,ともに組織学的によく分化した立毛筋類似の平滑筋の束状増生をみた.報告例の多くは躯幹と四肢に好発し,それと顔面発生例では臨床像がやや異なるようである.なお前者は脳室奇形を合併した.

甲状腺癌に合併した粘液水腫の1例

著者: 井上由美子 ,   池谷敏彦 ,   高間弘道 ,   玉田康彦

ページ範囲:P.327 - P.329

 47歳,男性.初診の約7年前より頸部に腫瘤が出現し,増大傾向あるも放置していたところ,約1年前より両手に結節が多発してきた.臨床検査成績で甲状腺機能,血清生化学,免疫血清学的検査に異常所見はなかった.病理組織学的に真皮上層の著明な浮腫と膠原線維の離開,断裂像があり,同部位にムチンの沈着を認めた.頸部腫瘤の摘出標本ではpapillary-follicular combined typeのadenocarcinoma of thyroidであった.癌腫の摘出により皮疹の改善がみられたことから,この皮疹の形成に甲状腺癌が関与しているものと考えたい.

Hydroa Vacciniformeの4例

著者: 川田暁 ,   御藤良裕 ,   近藤靖児 ,   佐藤吉昭

ページ範囲:P.331 - P.335

 Hydroa vacciniforme (以下HV)4例の背部皮膚に,340nm単色光を反復照射し,皮疹の誘発を試みた.症例は,1)8歳男児,2)10歳女児,3)6歳女児,4)12歳女児の4症例で,いずれも家族歴に特記すべきことなく,うち3例について検索したポルフィリン体は血中・尿中ともに正常であった.光線テストは教室の単色光発生装置を用いて,波長340nmの単色光を,症例1に20,症例2に16,症例3に14,症例4に20J/cm2を,それぞれ背部の同一部位に連日照射した.その結果,照射部位に一致して症例1(総量80J/cm2)・症例2(同81)・症例4(岡59)では紅斑・小丘疹の,症例3(同41)では紅斑・小水疱の出現をみた.症例3,4の病理組織像は,表皮内の多房性水疱であり,HVの組織像と一致した.即ちUVA (340nm)の反復照射によって,自験4例のうち2例は組織学的にHVと一致する皮疹の誘発がみられた.

男子乳房Paget病の1例

著者: 一山伸一 ,   石井則久 ,   内山光明 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.337 - P.339

 72歳,男性の右乳房に生じた乳房Paget病の1例を報告した.臨床的には乳頭,乳輪部の褐色,不整形,やや不整に隆起した軟性局面であった.組織学的には,炎皮では胞体の明るい,いわゆるPaget細胞の密な浸潤があり,一部では基底膜の破壊を認めた.真皮ではいわゆるcomedo carcinomaの状態にあり,一部では腺腔外に浸潤する像が認められた.治療はradical mastectomyを行った.

Sjögren症候群の母親から出生した新生児エリテマトーデス

著者: 高橋良造 ,   中村準之助

ページ範囲:P.341 - P.345

 Sjögren症候群と診断し得た母親から出生した典型的な新生児エリテマトーデスの1例を報告した.患者は生後55日の女児で,ほぼ全身に拇指頭大までの環状ないしDLE様の紅斑が多発し,肝腫,肝障害も認められた.組織学的に典型的なLEの所見を欠くが,表皮真皮境界部にIgGの線状沈着があった.皮疹は生後3カ月までに殆ど消失,一方,肝障害は4カ月過ぎまで持続した.患児の母親は29歳で一見健康そうにみえたが,精査の結果,昭和52年設定の診断基準3項日のすべてを満足し,Sjögren症候群と診断された.母子ともに血清中に抗核抗体(speckled type),抗SS-A抗体が証明された.本症の母親にはSjögren症候群が少なくないことを指摘し,それに関する精査の必要性を強調した.また本症と本症候群との症候論的類似性を推測した.

手指のボーエン病—理髪用鋏の慢性刺激により発生したと思われる症例

著者: 金内日出男 ,   桜井みち代 ,   青島敏行

ページ範囲:P.347 - P.349

 83歳,女性.約50年間理髪業を営んでいた.理髪鋏の柄が当たる右第4指指背に角化性鱗屑痂皮を伴う紅斑が出現.市販の外用剤を塗布しても軽快せず,有痛性のビランとなった.組織学的にBowen病と診断.理髪用鋏の慢性刺激により発生したと考えられるBowen病は,発生要因として興味深いと思われるので報告した.

Letterer-Siwe病—数個の小丘疹のみを認めた1例

著者: 田中律子 ,   深井和吉 ,   濱田稔夫 ,   鈴木伸典 ,   松崎香士

ページ範囲:P.351 - P.355

 1歳9カ月,女児のLetterer-Siwe病の1例を報告した.初診の約2カ月前より発熱が続き,来院した.著明な肝脾腫,胸部レ線像で異常陰影を認めたが,皮疹としては,腹部に出血性丘疹を数個見るのみであった.その組織像にて,定型的な組織球性異型細胞が真皮上層に密に見られ,表皮に浸潤するものも多数認められ,Letterer-Siwe病との診断に至った.Vinblastin, cyclophosphamide, prednisoloneによる治療で症状は著明に改善し,その後,再発は見られない.Histiocytosis X cellとLangerhans cellに関する最近の知見を述べ,治療法に関する問題点を述べた.

HelperとSuppressorの両Phenotypeを有する皮膚初発T細胞型皮膚リンパ腫の1例

著者: 新井栄一 ,   池田重雄 ,   片山勲

ページ範囲:P.357 - P.361

 Helperとsupprcssorの両phenotypeを有する皮膚初発T細胞型皮膚リンパ腫の1例を経験した.症例は61歳の女性で,主訴は多発した赤色小丘疹であった.生検凍結切片材料でT細胞表面マーカーの検索を行ったところ,helperとsuppressorの双方のphenotypeを持つ腫瘍細胞の存在を強く示唆する結果が得られた.これらの細胞のT細胞のontogenyにおける位置づけは,現在までのところcommon thymocyteからmature thymocyteへ分化する過程の細胞に相当するものと推測されている.このhelperおよびsuppressorの両phenotypeを示す症例は,primary,secondaryの皮膚リンパ腫のいずれにおいても見出されており,臨床病理像上の特殊性は見出し得なかった.

原発巣が完全消褪した悪性黒色腫の1例

著者: 村松千鶴子 ,   小林まさ子 ,   藤田優

ページ範囲:P.363 - P.366

 40歳,女性,2カ月前より左鼠径リンパ節が腫大し,2週間前,近医を受診し,摘出術施行後来院.6年前,左臀部に灰黒色小腫瘤が出現し,1年前より縮小褪色しているとのことであった.組織学的に,リンパ節では悪性黒色腫の転移像が認められ,左臀部色素斑では,真皮上層に多数のmelanophageとリンパ球浸潤,小血管の増生がみられるが,melanoma cellは認められなかった.他の全身皮膚,粘膜,直腸,S状結腸,腟,子宮に異常所見はなく,左臀部の小腫瘤が原発巣と考えられた.原発巣が消褪し,所属リンパ節転移を生じた悪性黒色腫の1例を報告するとともに,悪性黒色腫の原発巣の自然消褪例について,若干の文献的考察を試みたので,加えて報告する.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.345 - P.345

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

印象記

南米の病院を訪ねて I

著者: 西川武二 ,   清水宏

ページ範囲:P.367 - P.369

 1985年8月西川と清水は,慶応義塾大学医学部国際医学研究会の第8次南米派遣団の団長および副団長として,3名の医学部学生と共に南米諸国を訪問する機会を得た.南米には,ブラジル天疱瘡(fogo selvagem),南アメリカ分芽菌症,リーシュマニア症など,日本ではみられない興味深い疾患が知られている.そこで今回,南米での見聞録を2回に分けて書かせていただくことにした.日程の詳細は表および図1の通りである.滞在期間はおよそ3週間であったが,学生団員は7週間の長期に亘り南米に滞在し,アマゾン奥地にまで活動範囲を伸ばした.今回,誌面の都合上,活動のすべてを書くことはできないため,数多くの興味深い皮膚疾患を見たり学術交流を行い得た数都市での活動を中心に紹介させていただく,前半のブエノスアイレス(アルゼンチン)およびボツカツ(ブラジル)を清水が,後半のサンパウロ,リオデジャネイロ(ブラジル),ボリビアの日系人移住地は西川が担当した.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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