icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科40巻5号

1986年05月発行

雑誌目次

図譜・523

皮膚クリプトコックス症

著者: 坪井良治 ,   栗田依幸 ,   木村太紀 ,   小川秀興 ,   浜本恒男 ,   蓮沼紀一 ,   森健

ページ範囲:P.376 - P.377

患者34歳,女性
初診昭和59年4月3日

原著

Localized Lymphangioma Circumscriptum—第VIII因子関連抗原の検索と電顕的観察

著者: 増子倫樹 ,   松崎照樹 ,   伊藤雅章 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.379 - P.384

 Localized lymphangioma circumscriptumの2例の皮膚病変を電顕および第Ⅷ因子関連抗原の間接螢光抗体法により検索した.電顕的検索では,表皮直下の拡張した管腔の内皮細胞に近接して多数のanchoring folamentsや弾力線維を認め,内皮細胞の基底板が欠如している部位ではanchoring filamentsが内皮細胞に直接付着していた.これらの所見は,この管腔構造が毛細リンパ管の性格を有していることを示している.一方,Weibel-Palade顆粒の出現,pericyteの存在など毛細血管の要素も認められ,管腔の内皮細胞は第VIII因子染色で2例とも特異螢光を示した.これらは本症の発生病理を考える上で重要な所見と考えられた.

Hidroacanthoma Simplexの2例—Eccrine Poromaとの臨床像の比較およびHistogenesisについての考察

著者: 麻生和雄 ,   穂積豊

ページ範囲:P.385 - P.389

 Hidroacanthoma simplexは表皮内エクリン汗管腫瘍でhistogenesisからeccrineporomaと同一腫瘍と考えられている.しかし,その臨床像は普通では扁平隆起性で,eccrine poromaの半球状ドーム様であることと比べて相違があるように思われる.著者らは2症例を経験,主として本邦での報告例から,その臨床像をeccrine poromaと比較,電顕検索では腫瘍はおそらく表皮内汗管外周細胞由来が示唆されると考えて報告した.

Desmoplastic Nevus

著者: 木村俊次 ,   禾紀子

ページ範囲:P.391 - P.395

 17歳,女子.3年来右手背に結節出現し,各種治療を受けるも漸次増大.現症:右手背第4MP関節部に1.2×0.9.cm,高さ0.5cm,赤褐色,硬,一部萎縮性瘢痕を有するが全体として表面平滑なドーム状結節が単発,自覚症なし.組織所見:表皮は不規則に肥厚し,表皮真皮境界部に紡錘形の母斑細胞より成る大小の胞巣が散在.同様の胞巣は表皮直下から真皮下層にかけて多数存在し,胞巣間には肥厚・均質化した膠原線維束が目立つ.母斑細胞は上層でのみ一部かなり多量のメラニン色素を有する.間質に弾力線維は乏しい.胞巣辺縁部にはマスト細胞の軽度増加をみる.瘢痕部は表皮菲薄化と真皮上層の軽度の線維化とを示した.本例は若年性黒色腫のうち間質の線維化傾向の高度のものに対してBarrらが命名したdesmoplastic nevusに一致すると思われるが,この概念の妥当性を中心に若干の検討を加えた.

表皮嚢腫を伴った真皮内母斑

著者: 沢田幸正 ,   荒道人 ,   角田孝彦

ページ範囲:P.397 - P.400

 24歳,男,左耳前部の真皮内母斑下に発生したトリコスターシスを示す表皮嚢腫の1例を報告した.本症例では嚢腫下層で嚢腫に対する異物反応によると考えられる肉芽腫を形成し,臨床的にあたかも皮下腫瘍が合併しているような所見を呈した.色素性母斑病巣では麦皮嚢腫は約1.7〜3.2%に認められるとする報告もあり,稀なものではないようであるが,場合によっては嚢腫に対する急性炎症などで悪性腫瘍と鑑別を要する場合もあると考えられる.

Eccrine Nevusの1例

著者: 中山英俊 ,   三原基之

ページ範囲:P.401 - P.403

 46歳,男性の発生部位としては稀な前胸部に生じたeccrine nevusの1例を報告した.組織学的にはエックリン汗腺の過形成のみが認められ,自験例をeccrine nevus単純型と診断した.

小児の皮膚悪性リンパ腫の3例

著者: 森美智留 ,   大越久美子 ,   森尚隆 ,   月永一郎 ,   小林仁 ,   熊切正信 ,   三浦祐晶

ページ範囲:P.405 - P.408

 小児の皮膚悪性リンパ腫3例を経験した.年齢は5歳,8歳,15歳.性別は女児2例,男児1例.発生部位は左側額部2例,左頬部1例.初回入院時には,2例は皮膚以外に病変を認めなかったが,1例はリンパ管造影で腹部大動脈リンパ節に腫脹を認めた.治療は放射線療法,化学療法を行った.小児の皮膚悪性リンパ腫につき若干の文献的考察を加えた.

類白皮症の1例

著者: 石田明美 ,   久保等 ,   大熊憲崇 ,   飯塚一 ,   大河原章

ページ範囲:P.409 - P.413

 2歳,男児,日本人.出生時から全身の皮膚・毛髪の色調が異常に薄い.虹彩は暗青灰色であるが,他に眼症状はなく,その他の合併症を伴わない.抜毛で毛球部にメラニン色素を少量認め,ドーパ反応は陽性.皮膚のメラニン色素は組織学的には減少しているが,電顕的には表皮メラノサイトに4期メラノソームを認める.ドーパ反応によりGolgi器官関連小胞体および核付近のメラノソームに反応産物を認めた.1年間の経過観察中に皮膚・毛髪の色調が増強した.母親と弟に同症があり,常染色体優性遺伝性類白皮症と診断した.

リンパ節転移を認めた瘢痕癌—予防的所属リンパ節郭清について

著者: 橋本明彦 ,   亀山孝一郎 ,   神崎保

ページ範囲:P.415 - P.419

 術前に発見困難であった所属リンパ節転移を有する瘢痕部有棘細胞癌の2例を報告した.症例1は44歳,女,頭部の熱傷瘢痕癌(T4N0M0).広範囲切除術を施行するも2カ月後,頸部リンパ節転移を認め,癌性胸腹膜炎を来し死亡した.症例2は73歳,男,左下腿の交通外傷後の瘢痕癌(T3N0M0).下腿切断術および予防的左鼠径リンパ節郭清術を施行し,同部に転移を認めた.両例とも術前に所属リンパ節を触知せず,諸検査にても転移は疑われなかった症例である.瘢痕癌は通常の有棘細胞癌に比べ,予後は不良とされている.特に原発巣進行例での所属リンパ節転移の頻度は高く,原発巣の切除術後にリンパ節転移を認める症例も少なくないと思われる.瘢痕癌の原発巣進行度,転移,予後を検討し,治療,特に予防的所属リンパ節郭清の意義につき考察を試みた.

広範な壊疽を伴ったIgA-κ型骨髄腫の1例

著者: 広川政己 ,   大熊憲崇 ,   飯塚一 ,   大河原章

ページ範囲:P.421 - P.425

 左前胸部,右上腕に広範な壊疽性局面を伴ったIgA-κ型の多発性骨髄腫の77歳,女子例を報告した.クリオグロブリンは陰性であった.血清中に,セルロースアセテート膜電気泳動法で2M成分を認めたが,免疫電気泳動法ではM成分はIgA-κ型の1本の沈降線を示した.このことより,IgAの重合体の存在とそれに伴う血液粘度の上昇および局所の末梢循環障害が,皮膚病変の形成に大きく関与していると考えた.

封入体疣贅の組織化学的および電顕的検索

著者: 結城恵 ,   伊藤雅章 ,   清水直也 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.427 - P.434

 封入体疣贅の角化異常を明らかにするために,足底3例,手掌2例,顔面1例の同症6例を,N—(7—dimethylamino−4—methyl−3—coumarinyl) maleimide (DACM)染色および電顕的に検索した.その結果,1)好塩基性核内封入体はSH陽性SS陰性で,電顕的には核小体・ウイルス複合体,2)好酸性核内封入体はSH陰性SS陽性で電顕的にはケラトヒアリン様物質,3)細胞質内封入体はSHは種々の程度に陽性,SS陰性で電顕的には張原線維・ケラトヒアリン複合体であった.4)正常ヒト表皮では,手掌足底のケラトヒアリン顆粒の一部がSS陽性を示すが,本症では全例で発生部位の解剖学的分布の差によらず,封入体を有しない角化細胞のケラトヒアリン顆粒の多くにSS陽性所見を認めた.以上より,封入体疣贅では,ケラトヒアリン物質が早期にまたは異所性に産生され,細胞質内封入体,好酸性核内封入体が形成されると考えられ,ケラトヒアリン物質の質的多様性が示唆された.

日光蕁麻疹3例における膨疹抑制機序の検討

著者: 浜中宏 ,   吉岡晃 ,   岡本祐之 ,   宮地良樹 ,   段野貴一郎 ,   堀尾武

ページ範囲:P.435 - P.439

 23歳の女性1人と55歳の女性2人の日光蕁麻疹3例を報告した.作用波長は3例ともにほぼ400〜500nmの可視領域に存在した.作用波長照射直後から,より長波長の光線を追加照射すると膨疹形成が抑制された.照射順序を逆にした場合および作用波長と抑制波長を同時に照射した場合には膨疹形成は抑制されなかった.in vitroで作用波長の光線を照射した自己血清を患者皮内に注射すると,全例において膨疹が生じ,血清中で光抗原が産生されるものと思われた.また,抑制波長の作用機序として,光抗原の不活化,肥満細胞脱顆粒の抑制,chemical mediatorの不活化,血管拡張の抑制等の可能性を考えて検討を加えた.

4種類のヒトパピローマウイルスが分離された疣贅状表皮発育異常症

著者: 谷垣武彦 ,   欠田良児 ,   湯通堂満寿男 ,   羽倉明 ,   玉置弘光 ,   石田稔 ,   堀哲二 ,   西山謹司 ,   長谷川順吉

ページ範囲:P.441 - P.444

 典型的な疣贅状表皮発育異常症(EV)の患者(37歳,男性)(EV 2 OS)の皮疹から4種類の異なるヒトパピローマウイルス(HPV)を分離した.それらは,癜風様皮疹からはHPV−17,20と38の3種類,扁平疣贅様皮疹からはHPV−3の計4種類であった.本患者は皮膚悪性腫瘍が多発し不幸な転帰をとった症例で,眉間に再発した有棘細胞癌の組織中に,分離された4種類のHPV DNAの一つが検出された.EVにおけるHPVの多様性と発癌は極めて密接な関連があり,興味ある症例である.

Epidermophyton floccosumによる股部白癬—4例の報告

著者: 高瀬孝子 ,   上野賢一

ページ範囲:P.445 - P.448

 Epidermophyton floccosumによる股部白癬の4例を報告した.症例はすべて30歳以下の男性であった.E.floccosumによる股部白癬の臨床像は,いわゆる頑癬のそれとは異なり,炎症症状が少なく,堤防状隆起や苔癬化が明瞭でないのが特徴である1)といわれる.自験例においても,うち2例では典型的な頑癬像とは異なる所見がみられた.

BCG接種部位に生じた尋常性狼瘡の1例

著者: 川口博史 ,   佐々木哲雄 ,   中嶋弘 ,   吉沢潤

ページ範囲:P.451 - P.454

 60歳,女性.11歳の時に受けたBCG接種部位が徐々に隆起,増大してきた.組織学的に乾酪壊死を伴う類上皮細胞性肉芽腫であった.当初,我々はBCG誘発lupusvulgarisを考えたが,生検皮膚組織より分離された菌はMycobacterium tubereulesisであった.INH,RFP,SMの三者併用療法により皮疹は軽快,現在,経過観察中である.BCGの副反応としてのBCG誘発lupus vulgarisば報告があるが,BCG接種部位よりヒト型結核菌が検出されたのは稀と考え,若干の考察を加えて報告する.

特発性斑状皮膚萎縮症,Anetoderma—特にSchweninger-Buzzi型幼児顔面萎縮斑について

著者: 麻生和雄 ,   佐藤紀嗣

ページ範囲:P.455 - P.459

 Jadassohn型特発性斑状皮膚萎縮症が幼児顔面に限局してみられることは稀である.著者らは最近,きわめて類似した臨床像を示す3歳女子例の2症例を経験した.Schweninger-Buzzi型特発性斑状皮膚萎縮症の32歳,女子例をあわせて報告し,focalelastosisとしての特発性斑状皮膚萎縮症についての最近の知見を補足する.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.400 - P.400

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

薬剤

新DTM (スラントN〈日研〉)による白癬菌およびカンジダの分離培養成績—旧DTM,サブロー培地との同時比較による

著者: 金学洙 ,   香川三郎

ページ範囲:P.461 - P.467

はじめに
 DTM (dermatophyte test medium)は白癬菌分離を目的として作製された培地1)で,現在本邦においても広く使用されているが,今回,日研化学(株)でDTMと同様の組成をもつ日本製DTM (商品名:スラントN〈日研〉,以下A培地とする)を開発した.著者らは,この新しいDTMによる白癬菌の分離,同定を,従来のDTM (輸入品,Chester A.Baker社製,以下B培地とする)およびSabouraud培地(以下C培地とする)のそれと比較検討したので,その成績を報告する.

印象記

南米の病院を訪ねて Ⅱ

著者: 西川武二 ,   清水宏

ページ範囲:P.468 - P.470

サンパウロ(ブラジル)
 サンパウロ郊外のパウリスタ州立大学ボツカツ校ならびにサンタ・マリナ移住地での活動の後,私たちは学術活動の中心であるサンパウロ市に入った.ここではサントアマロ医科大学整形外科主任教授の北代大志先生のお世話で,短時日の間に多くのスケジュールが私たち一行を待ち受けていた.
 サンパウロ大学サンパウロ大学はサンパウロ市に位置する州立大学で,日本でいえば差し詰め東京大学といえようが,市中の大学だけに建物が林立し,あまり緑は多くない.ボツカツと同様に午前8時の約束で,その少し前に皮膚科を訪ねると,既にすべては正常通り機能していた.皮膚科主任のサンパイオ教授は国際皮膚科連合の南米を代表する1人で,すでに円熟期にあるが,大柄であるにも拘らずかなり動きは機敏であった(図1).ここでは米国ジョンスホプキンス大学のディアズ準教授の推薦もあり,2日間つづけて早朝講演をするよう配慮されていた.第1日目は「免疫螢光の臨床皮膚科ならびに研究皮膚科的な応用」という題で西川が講演した.皮膚科講義室は教授室のすぐ向かい側で,早朝にも拘らず一杯の聴衆で,議論も活発であった.螢光補体法の手技を詳しく教えて欲しいという要望も出て,翌朝はさらに早く午前7時30分に訪問を約束させられるほどであった.英語を理解する人口は必ずしも多いとはいえないが,西川のスライドは現在慶大眼科留学中の花代清明先生の協力で下半分ポルトガル語がつけられているために,良く理解されたようである.講演後の数十床の病棟回診は最も印象の深いものであった.サンパイオ教授が目下,ブラジル天疱瘡の治療に血漿交換療法を行っているためもあり,天疱瘡患者が目についた.尋常性天疱瘡は少なく,大半はブラジル天疱瘡で,かつてほどでないにしろ,この疾患はブラジルの看板といえよう.しかし,この病棟での患者をみるかぎり,特徴的な所見をといわれると意外にむずかしい.落葉状とは確かに異なり1),またブラジルに殆どの例がみられ,南米一帯に分布するものではない2).要するに,比較的若年より生じ,落葉状であるが,古くなると色素沈着や疣状局面を来しやすく,粘膜疹を欠き,またendemicに発生し,感染源(ウイルス)も示唆される3,4)などが特徴であろう.幼少時に罹患すると小人症となるというが,これはどうやら栄養障害に起因する続発性変化らしい.その他,稀有な感染症(病原体は一種の藻類?),黒色真菌症,悪性リンパ腫,原因不明の巨大潰瘍など,いずれも日本ではみられないような派手な発疹で,強烈な印象を与えられた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?