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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科40巻5号

1986年05月発行

文献概要

印象記

南米の病院を訪ねて Ⅱ

著者: 西川武二1 清水宏1

所属機関: 1慶応義塾大学医学部皮膚科教室

ページ範囲:P.468 - P.470

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サンパウロ(ブラジル)
 サンパウロ郊外のパウリスタ州立大学ボツカツ校ならびにサンタ・マリナ移住地での活動の後,私たちは学術活動の中心であるサンパウロ市に入った.ここではサントアマロ医科大学整形外科主任教授の北代大志先生のお世話で,短時日の間に多くのスケジュールが私たち一行を待ち受けていた.
 サンパウロ大学サンパウロ大学はサンパウロ市に位置する州立大学で,日本でいえば差し詰め東京大学といえようが,市中の大学だけに建物が林立し,あまり緑は多くない.ボツカツと同様に午前8時の約束で,その少し前に皮膚科を訪ねると,既にすべては正常通り機能していた.皮膚科主任のサンパイオ教授は国際皮膚科連合の南米を代表する1人で,すでに円熟期にあるが,大柄であるにも拘らずかなり動きは機敏であった(図1).ここでは米国ジョンスホプキンス大学のディアズ準教授の推薦もあり,2日間つづけて早朝講演をするよう配慮されていた.第1日目は「免疫螢光の臨床皮膚科ならびに研究皮膚科的な応用」という題で西川が講演した.皮膚科講義室は教授室のすぐ向かい側で,早朝にも拘らず一杯の聴衆で,議論も活発であった.螢光補体法の手技を詳しく教えて欲しいという要望も出て,翌朝はさらに早く午前7時30分に訪問を約束させられるほどであった.英語を理解する人口は必ずしも多いとはいえないが,西川のスライドは現在慶大眼科留学中の花代清明先生の協力で下半分ポルトガル語がつけられているために,良く理解されたようである.講演後の数十床の病棟回診は最も印象の深いものであった.サンパイオ教授が目下,ブラジル天疱瘡の治療に血漿交換療法を行っているためもあり,天疱瘡患者が目についた.尋常性天疱瘡は少なく,大半はブラジル天疱瘡で,かつてほどでないにしろ,この疾患はブラジルの看板といえよう.しかし,この病棟での患者をみるかぎり,特徴的な所見をといわれると意外にむずかしい.落葉状とは確かに異なり1),またブラジルに殆どの例がみられ,南米一帯に分布するものではない2).要するに,比較的若年より生じ,落葉状であるが,古くなると色素沈着や疣状局面を来しやすく,粘膜疹を欠き,またendemicに発生し,感染源(ウイルス)も示唆される3,4)などが特徴であろう.幼少時に罹患すると小人症となるというが,これはどうやら栄養障害に起因する続発性変化らしい.その他,稀有な感染症(病原体は一種の藻類?),黒色真菌症,悪性リンパ腫,原因不明の巨大潰瘍など,いずれも日本ではみられないような派手な発疹で,強烈な印象を与えられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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