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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科40巻6号

1986年06月発行

雑誌目次

図譜・524

黒色調を呈したエックリン汗孔腫

著者: 山下典子

ページ範囲:P.480 - P.481

症例53歳,男性
初診昭和59年4月16日

原著

Myopathyを伴ったScleromyxedemaの1例

著者: 早川和子 ,   国枝美穂子 ,   山村弟一 ,   橋本公二 ,   西岡清

ページ範囲:P.483 - P.488

 46歳,主婦.全身皮膚の硬化に加えて,顔面,頸部,手背には蝋様光沢を示す丘疹の集簇を認めた.皮膚の組織化学的,生化学的検索によりヒアルロン酸の沈着が認められ,scleromyxedemaと診断した.同時に筋力低下,筋系酵素の上昇を伴ったため,polymyositisを疑い,筋生検を行った.筋変性像が主体でmyopathyと考えられたが,筋線維間にはムチン沈着は証明されなかった.Myopathyを本症の合併症の一つと考え,若干の私見と文献的考察を加えた.

水疱形成をみたATTLの1例

著者: 飯島茂子 ,   堀内早苗 ,   佐久間満里子 ,   高橋秀東 ,   上野賢一 ,   森尚義

ページ範囲:P.489 - P.496

 48歳,男.昭和58年から易疲労感出現.翌年6月,全身の紫紅色斑と頸部リンパ節腫脹が出現し10日程で消失.その2カ月後同症状が再発し,軽快ないまま,3週後より熱発と紅色結節が出現.10月本院入院時,紫紅色丘疹,紅色結節に加えて,背部には右側に強く水疱が集簇性に多発していた.表在リンパ節腫脹,肝脾腫あり.皮膚生検にて真皮上層に血管周囲性の異型リンパ球浸潤を認め,水疱は表皮下水疱を示した.末梢血11%,骨髄4.8%に異型リンパ球が出現し,E-rosettes 85%,Leu 3 86.3%よりhelper T細胞の性格で,抗ATLA抗体陽性であった.末梢血異型リンパ球は電顕上,分葉状核があり,皮膚のT細胞リンパ腫の中でもATLLとも見なしうると考えられた.皮疹初発より5カ月で死亡.特異疹としての水疱は皮膚の悪性リンパ腫やATLLでも稀で,今までに2例報告されているにすぎない.電顕では表皮突起部角化細胞内にもtubuloreticular structureが認められた.

若年性類天疱瘡の1例

著者: 内海雅雄 ,   安達幸彦 ,   石川英一

ページ範囲:P.497 - P.502

要約 6歳,女児.四肢・外陰部に瘙痒を伴わない粟粒大から小指頭大までの緊満性水疱が多発.組織学的に表皮下水疱を示し,螢光抗体直接法で基底膜層に一致してIgA,IgM,C3の線状沈着が認められ,間接法にてIgG抗基底膜抗体が40倍陽性であった.DDSは無効であったが,プレドニゾロン内服によく反応した.以上の所見とともに最近の見解を参考にし,本例は若年性類天疱瘡の一亜型と診断した.

水疱性扁平苔癬の1例

著者: 渡辺剛一 ,   石川英一

ページ範囲:P.503 - P.506

 34歳,女性,初診1年前より口腔内にびらん,半年前より四肢に,皮疹上に一部小水疱をみる紅斑が出現した.組織学的に,紅斑では過角化,基底細胞層に液状変性,コロイド体,真皮上層にリンパ球の帯状浸潤があり,水疱部では表皮真皮間に水疱,水疱辺縁部では基底細胞層に液状変性が認められ,扁平苔癬あるいは扁平苔癬様皮疹の嫁に一致していた.さらに免疫組織学的にはコロイド体に一致してIgM, C3を認めた.抗基底膜抗体陰性.以上の臨床像,組織像,免疫組織学所見より,この症例は水疱を伴う扁平苔癬のうち,lichen planus vesiculosusに該当すると診断した.

上顎洞癌を合併したCicatricial Pemphigoidの1例

著者: 杉浦久嗣 ,   宮内東光 ,   田中壮一 ,   渡辺昌平 ,   林進

ページ範囲:P.507 - P.511

 臨床像,病理組織像,免疫学的所見より典型的と思われるcicatricial pemphigoidの1例を経験した.本例においては入院加療中に上顎洞癌の合併が見出された.本邦では本症の報告例自体が少ない上,悪性疾患合併例の報告は著者らが調べた限り見当たらない.自験例における本症と悪性疾患の関連について若干の考察を加えた.

カルテオロール(β-遮断薬)およびα-メチルドーパによる苔癬様皮疹

著者: 久保寺直美 ,   池澤善郎 ,   宮本秀明 ,   吉田貞夫

ページ範囲:P.513 - P.518

要約 カルテオロールとα-メチルドーパによる苔癬様皮疹を経験した.患者は66歳の男性.腎機能低下を伴う高血圧症に対して種々の高血圧治療薬,尿酸生成阻害薬および血管拡張薬の6種類の薬剤を服用中に,瘙痒を伴う紅色皮疹が体幹四肢に出現,比較的急速に増加した.皮疹は鱗屑を伴う紅斑(乾癬様皮疹)を混じた褐色の色素沈着性紅斑(苔癬様皮疹)で,組織学的には軽度の苔癬様組織反応であった.舌にも扁平苔癬様の白色病変が認められた.皮疹軽快後に施行した投与薬剤全ての内服試験により,上記2薬剤が原因薬剤であると推定された.薬疹発症までの投与期間がカルテオロールの場合約3年間,α-メチルドーパの場合約10年間であったにもかかわらず,内服試験ではそれぞれ2日後と約8時間後に融合性の充実性紅色丘疹が誘発された.本症例は臨床的にも免疫学的にも興味ある症例と考え,若干の考察を加えて報告した.

顔面に生じたLichen Striatusの1例

著者: 田崎理子 ,   花田勝美 ,   帷子康雄

ページ範囲:P.519 - P.521

 2歳,女児の顔面に発症した線状苔癬について報告する.初診の約3カ月前より鼻背部に線状の皮疹の出現をみる.外用療法にて軽快しないため当科受診.試切後,急速な皮疹の扁平化をみた。顔面に発症する線状苔癬は比較的稀であり,若干の文献的考察を試みた.

面皰母斑—自験1例の電顕的観察

著者: 勝海薫 ,   伊藤雅章 ,   増子倫樹 ,   結城恵 ,   設楽篤幸 ,   濱路政博

ページ範囲:P.523 - P.528

 40歳,男子の面皰母斑の1例を光顕,DACM染色,電顕的に検索した.光顕的に面皰様構造は汗腺との連続はなく,角質塊が充満した毛漏斗の拡大より形成される.面皰様構造下部に,脂腺は欠如するが,大きな立毛筋が近接する,未熟で変形した毛組織が存在する.電顕的に壁の基底細胞は不均一な少量の張原線維を含有するが,その角化は正常.一方,未熟な毛組織の外毛根鞘様細胞の張原線維は,一部球状に凝集している.面皰周囲にムチン沈着,空胞変性を認めるが,結合組織に奇形的要素はない.面皰壁のDACM染色所見は正常毛漏斗部と同様である.本症例は毛組織全体の奇形的変化によって生じたものと考えられる.

抗SS-A抗体陽性を呈したNeonatal Lupus Erythematosusの1例

著者: 西原修美 ,   香曾我部幸 ,   竹田弘 ,   山内芳忠 ,   植木宏明

ページ範囲:P.529 - P.534

 日齢16,女児.発熱と共に前額部,腹部,臀部に扁平丘疹,環状紅斑を生じ,母児共に抗核抗体陽性,抗SS-A抗体陽性のため,neonatal lupus erythematosusと診断した.母親に膠原病を示唆する症状はなく,患児にも心疾患を思わせる所見はない.患児の抗核抗体は半年で陰性化し,皮疹も4カ月目には色素沈着のみとなった.本邦に於てすでに,21例の報告をみる.

Trichilemmal Carcinomaの1例

著者: 筒井真人 ,   松尾忍 ,   大熊憲崇 ,   飯塚一 ,   大河原章

ページ範囲:P.535 - P.538

 70歳,男性.陰嚢右側に小児手拳大の表面壊死性の腫瘤が,右鼠径部には拇指頭大までの赤色腫瘤が多発し,両鼠径部に拇指頭大のリンパ節が触知された.組織学的には,いわゆるbowenoid carcinomaであるが,腫瘍細胞が表皮と連続性にinvaginationの像を呈したこと,clear cellに富み,その部に一致してジアスターゼ消化性PAS陽性物質の沈着がみられたこと,いわゆるtrichilemmal keratinizationを思わせる所見が得られたことより,毛包由来の悪性腫瘍と考え,また腫瘍細胞の血管ないしリンパ管内浸潤の所見とあわせてtrichilemmal carcinomaと診断した.

汎発性皮膚転移癌の3例

著者: 志村葉子 ,   飯谷稲子 ,   藤野百代 ,   千葉紀子 ,   下田祥由

ページ範囲:P.539 - P.542

 48歳女性,40歳女性および44歳女性の3例の汎発性皮膚転移癌を報告した.原発病巣は1例は胃癌(症例1),2例は乳癌(症例2,症例3)であった.各症例ともに皮膚転移は毎日1〜3個ずつ出現し,小豆大から拇指頭大までで潰瘍化することなく躯幹,上肢,下肢,顔面,頭部などに,ただ数の増加のみが見られた.症例1,症例2では患者は絶えず新しく出現する皮下結節にきわめて神経質になり,恐怖の念さえ抱いた.これら不安の念に駆られる患者に対して,腫瘍そのものに対する治療に加えて適正な精神治療の必要性を強く感じた.

顔面に単発したCutaneous T cell Lymphomaの1例

著者: 太田みどり ,   戸田浄 ,   薬丸一洋 ,   三方淳男

ページ範囲:P.543 - P.547

 症例は54歳男性.初診時,右頬部に5×9mm,表面に光沢のある境界明瞭な鮮紅色扁平隆起を認めた.組織所見からdiffuse lymphoma, pleomorphic typeと診断.免疫染色で,腫瘍細胞はhelper/inducer T cellの形質を示した. ATLA抗体は5倍以下,全身リンパ節,骨髄に異常はなく,摘出術後,現在経過観察中である.皮膚のみに単発,限局したmalignant lymphomaは稀であり,それについて文献的考察を加えた.

エトレチネートが奏効した疱疹状膿痂疹の1例

著者: 横山愛子 ,   安田和正 ,   平野京子

ページ範囲:P.549 - P.552

 51歳,女性.発症後8年間に亘り繰り返し疱疹状膿痂疹の重篤な再発がみられ,DDS,メソトレキセートなど種々の治療に抵抗した症例にエトレチネートを使用し,奏効をみたので報告し,若干の考察を行った.

PUVA療法中,多発性色素斑と光線性角化症を生じた尋常性乾癬の1例

著者: 伊藤達也 ,   児島孝行

ページ範囲:P.553 - P.556

 73歳,男で,約6年間のPUVA療法中に多発性色素斑と光線性角化症が出現した尋常性乾癬の1例を報告した.患者のskin typeはIIIで,以前にイクタモール加硼酸亜鉛華軟膏外用とステロイド内服を行っている.色素斑出現までのUV-A総照射線量は約2,400J/cm2,光線性角化症出現までは約10,000J/cm2と他の報告に比べて大量であるが,これはPUVA療法による急性毒性を避けるために0.03〜0.1%と低濃度の8—MOPを外用したためと考えた.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.552 - P.552

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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