icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科40巻8号

1986年08月発行

雑誌目次

図譜_527

下口唇に生じた硬化性萎縮性苔癬

著者: 中村恵 ,   飯泉陽子 ,   楠俊雄 ,   本田光芳 ,   永島錦一

ページ範囲:P.688 - P.689

患者24歳,女性
初診昭和59年8月10日

図譜_528

Lichen Planus Annularis

著者: 生野麻美子 ,   羽田俊六 ,   葛井周子

ページ範囲:P.692 - P.693

患者58歳,男子,光学機械製作業
初診昭和58年7月5日

原著

掌蹠の角質肥厚を伴ったProgressive Erythrokeratodermieの父娘例

著者: 石田明美 ,   渡辺信 ,   飯塚一 ,   水元俊裕

ページ範囲:P.695 - P.699

 生後間もなくから主として四肢に地図状の紅色角化性局面があり,掌蹠の著明な角質肥厚と手指の絞扼を伴う父娘例を報告した.娘例はetretinateの内服により皮疹の著明な改善をみた.本症例はGahlenのいうprogressive Erythrokeratodermieの範疇に属し,その中でも共に常染色体優性遺伝性を示すerythroderma congenitum symmetricumprogressivum (Gans & Kochs)とkeratosis extremitatum hereditaria progrediens mitdominantem Erbgang (Greither)の中間的な表現型をとったものと解釈した.

水疱性類天疱瘡22例の統計的観察—慶大皮膚科過去10年間の経験例

著者: 高橋慎一 ,   清水宏 ,   原田敬之 ,   西川武二

ページ範囲:P.701 - P.705

要約 昭和49年1月より昭和58年12月末までの10年間に螢光抗体法所見により確認された水疱性類天疱瘡22例について検討した.男8例,女14例であり,発症年齢は17歳〜88歳,平均は62.0歳であった.男に比較的高齢発症の傾向が認められた.瘙痒は全例に認められ,粘膜疹は約30%の症例に認められた.好酸球増多は91%に認められ,全例で病勢との相関が認められた.血中抗基底膜部抗体は1例を除き全例(96%)で検出された.初回陰性例でも再検により初めて抗基底膜部抗体が検出された症例もあることより,初回陰性例でも繰り返し血中抗体を検索することが重要と考えられた.また約70%の症例で抗基底膜部抗体価は病勢と比較的相関していた.治療面においては,ステロイド内服が主体となるが,ステロイドの減量が困難な症例ではDDSを併用することにより,その減量が容易になる傾向が認められた.

骨髄性プロトポルフィリン症の2例

著者: 浅井俊弥 ,   寺本範子 ,   堀内保宏 ,   神崎保

ページ範囲:P.707 - P.711

 骨髄性プロトポルフィリン症の2例を報告した.症例1は24歳男性で12歳より,症例2は7歳女児で6歳より日光過敏が出現した.それぞれ螢光赤血球の存在,光溶血現象の陽性,赤血球中あるいは糞便中のプロトポルフィリンの高値より診断した.また,骨髄性プロトポルフィリン症の急性期および慢性期病変の臨床的,病理組織学的特徴を電顕的観察を含めて検討した.

血液透析患者にみられたPorphyria Cutanea Tarda-like Syndromeの1例

著者: 桜岡浩一 ,   杉浦丹 ,   宮地邦彦

ページ範囲:P.713 - P.717

 69歳,女.約1年前より血液透析およびフロセミドを投与されていた慢性腎不全患者の顔面,手背等に緊満性水疱,痂皮等を認めた症例を報告した.フロセミドは初診以後中止したが,水疱は約7カ月間出没を繰り返し,一時小康状態を保ったのち,1年後には日光露出部以外の足趾,手指側縁等に水疱の新生を認めた.皮疹の状態は晩発性皮膚ポルフィリン症と酷似していたが,諸検査にて晩発性皮膚ポルフィリン症は除外された.慢性腎不全患者に水疱が生じたものはbullous dermatosis of hemodialysisとして知られているが,いくつかの病態のものが含まれていると考えられ,本症例はそれらのうちBrivetらが提唱するporphyria cutanea tarda-like syndrome in hemodialyzed patientsにほぼ一致すると考え報告するとともに,透析患者に生じる水疱症の成因および分類について若干の考察を試みた.

汎発性銀皮症の1例

著者: 稲田修一 ,   酒井伊勢子 ,   功野泰三 ,   浜田光恵 ,   島本順子 ,   満田邦枝 ,   灰塚省二郎

ページ範囲:P.719 - P.723

 汎発性銀皮症の1例を報告した.患者は58歳,女性.初診の約15年前より連日口腔清涼剤を大量に服用し,服用約5年後より露光部皮膚が青色調を呈してきた.初診時,全身の皮膚は軽度に青灰色調を呈していたが,顔面,爪甲半月ではその色調は著しかった.生検皮膚組織では黒色微細顆粒が主に汗腺,毛嚢周囲,血管壁,solar elastosis部に多数沈着しており,これは暗視野顕微鏡下で光り輝き,電顕的には長径100〜300nmの類円形,不整形の電子密度の高い顆粒として観察され,X線微小分析により銀を含有していることが証明された.露光部,非露光部皮膚の光顕的,電顕的対比から,露光部の著しい色素増強は主に沈着した銀顆粒の量的差によると考えられた.

Actinic Reticuloidの1例

著者: 山田政春

ページ範囲:P.725 - P.729

 Iveらの報告したactinic reticuloid1)に合致する1例を報告する.臨床的に日光過敏が徐々に増悪し,経過中2回に亘って紅皮症と獅子様顔面を生じた.光線テストでUVBのMEDの低下とUVAの過敏を確認した.UV照射部およびそれによって増悪した苔癬化病巣の病理組織所見では,いわゆる湿疹反応がみられた.紅皮症の状態の時点での病理組織所見では,異型細胞を伴う炎症性細胞浸潤がみられた.本症例の特徴は,日光直射部位に白斑を生じたこと,および紅皮症化した時に末梢血中に異型細胞を数%認めたことである.パッチテスト,光パッチテストでは多数のアレルゲンに全て陰性であった.

胆石を伴った急性膵炎にみられた結節性脂肪壊死症の1例

著者: 大郷典子 ,   河合敬一 ,   菱川秀夫 ,   土井顕 ,   宗義朗

ページ範囲:P.731 - P.734

 胆石の嵌頓により生じた急性膵炎にみられた結節性脂肪壊死症の33歳,女性例を経験した.自験例を含めた本邦報告例9例の臨床所見,基礎疾患等を検討し,若干の文献的考察を加えて報告した.

Dysplastic Nevusの1例

著者: 藤田和美 ,   清水宏 ,   渡辺知雄 ,   宮川俊一 ,   西川武二

ページ範囲:P.735 - P.738

 26歳,男.思春期頃から,躯幹を中心に,長径5〜12mm大までの大小不同,黒〜黒褐色,黄褐色,赤褐色などの色調を呈する色素斑が多発.皮疹は円形ないし楕円形,斑状または軽度扁平隆起性,辺縁不整で,周囲に一部"しみ出し"を認め,全身に50個前後存在した.家族内には同症および悪性黒色腫の発生はない.背部の長径7mm以上の色素斑3個を切除した.組織学的に3個の色素斑はほぼ類似の所見を呈した.即ち,基本的には色素性母斑の構築に加え,不規則に延長した表皮突起の基底層に沿って,豊富なメラニン顆粒を含みhyperchromatism, pleomorphismを呈するmelanocyteが一部に胞巣を形成しつつ連続性に増生する.真皮上層にはlamellar fibroplasia,稠密な反応性のリンパ球浸潤を認めた.以上より本例をdysplastic neviと診断し,他の皮疹は無処置のまま経過観察中である.本症の疾患概念および悪性黒色腫との関連について若干の文献的考察を行った.

鼻部軟骨に浸潤した基底細胞上皮腫の1例

著者: 長谷川隆 ,   黒田啓 ,   伊藤達也 ,   小林まさ子 ,   岡本昭二 ,   一瀬正治

ページ範囲:P.739 - P.743

 88歳,女性.十数年前に左下眼瞼に皮疹出現.5年前にBCEの診断を受けたが高齢のために手術しなかったところ,数カ月前より急速に増大し,左下眼瞼より鼻頬部にかけて5×6cmの,一部に潰瘍を伴う腫瘤となった.所属リンパ節は触知しないが,X-Pで上顎洞への浸潤像を認めた.そこで全麻下に眼窩内容摘出,部分上顎洞切除を含む広汎切除を施行した.組織像にて腫瘍は浅部ではsolid typeに,深部では不規則に錯綜し,鼻部軟骨にも浸潤していた.術後6カ月の現在,再発を認めない.多くのBCEは長期間放置されていても良好の経過をとるが,時には自験例の如く巨大化し,著明な局所破壊性を示すこともある.今後,さらに高齢化社会を迎えるに当たり,同様の症例が増加することが予想される.第一選択の治療法は手術療法であるが,高齢であることが手術禁忌とはならない.時期を失うことなく早期診断と早期手術療法をすべきであることを強調した.

Pilonidal Sinusの1例

著者: 河野昭彦 ,   吉田正美 ,   矢野寛 ,   猿田隆夫

ページ範囲:P.745 - P.748

 建築業に従事し,頻回にトラックに乗る31歳の男性に生じたpilonidal sinusの1例を報告した.仙骨部に生じた小腫瘤より尾骨正中線上の小陥凹にかけて瘻孔を形成していた.瘻孔内の毛髪の走査電顕による観察と,瘻孔付近に毛包のないことより,脱落した毛髪が尾骨部において,機械的刺激,臀部の運動により皮膚に穿通し,そこに二次感染が加わり瘻孔を形成,さらに異物肉芽腫を生じたものと考えた.

Infantile Digital Fibromatosisの3例

著者: 守田英治 ,   児島孝行 ,   長谷川隆 ,   赤松徹 ,   藤田優 ,   竹内孝

ページ範囲:P.749 - P.754

 Infantile digital fibromatosisの3例を報告した.症例1は7カ月男児の左第2趾末節背面,症例2は9カ月女児の左第5指末節内側と指尖部,症例3は1歳6カ月男児の左第2趾末節外側と趾腹に生じた淡紅色弾性硬の腫瘤であった.いずれも手術療法を行わずに経過を観察したところ,2例で自然消褪傾向が認められた.文献的検討から,本症は一般に3〜4歳までに自然消褪すると考えた.症例1, 3では生検を施行し,組織学的に腫湯細胞内に特徴的な好酸性封入体が認められた,電顕的に,封入体は組線維の塊であり,また腫瘍細胞にはmyofibroblastの特徴が認められた.症例3では腫瘍細胞の組織培養を行い,培養細胞内にも腫瘍細胞と同様の封入体が光顕および電顕的に確認された.

Alopecia CongenitaとSteatocystoma Multiplexを伴ったPachyonychia Congenita

著者: 松村治和

ページ範囲:P.755 - P.759

 頭部・顔面の乏毛と体幹・四肢の無毛およびsteatocystoma multiplexを伴ったpachyonychia congenitaの男性例を報告した.家系内に同症は認められなかった.本症例では爪の変形,手掌・足底の角化,体幹・四肢における角化性病変が存在したが,口腔内の白色病変は認められなかった.Pachyonychia congenitaに毛の異常を伴うことは従来よく知られているが,本症例のように身体の広い範囲に亘る毛の異常を示すものは非常に稀である.

脂腺母斑上に生じた脂腺上皮腫の1例

著者: 川名万季 ,   古賀道之

ページ範囲:P.761 - P.764

 29歳,男.頭部の鶏卵大脂腺母斑上に脂腺上皮腫を併発した症例を報告する.組織学的所見では,腫瘍部は限局性で,大小不規則な小葉を構成していた.腫瘍細胞は,基底細胞類似の好塩基性細胞と胞体の明るい成熟脂腺細胞類似の細胞の2種から成り,前者が多数を占める.後者はSudan Ⅲ染色陽性であった.当教室では,過去15年間に組織検査にて脂腺母斑と診断された症例は38例.そのうち,腫瘍併発例は本例を含めて3例で,残り2例は脂腺腺腫であった.

Intravascular Papillary Endothelial Hyperplasiaの3例

著者: 北川伸子 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.765 - P.768

 症例1:8歳,女児.左足底部の腫瘤.症例2:46歳,男性.左足底部の腫瘤.症例3:33歳,男性.左腋窩部の腫瘤.症例1では真皮深層部に血栓形成,血栓内部に内皮細胞の増殖あり.症例2, 3では真皮深層部に血栓形成あり.Intravascular papillaryendothelial hyperplasiaと診断.しかし,周囲に内皮細胞の増殖があり,裂隙状の腔を形成していることが問題点で,それらとの関連を含めて考察した.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.748 - P.748

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?