原著
Dysplastic Nevusの1例
著者:
藤田和美1
清水宏1
渡辺知雄1
宮川俊一1
西川武二1
所属機関:
1慶応義塾大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.735 - P.738
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26歳,男.思春期頃から,躯幹を中心に,長径5〜12mm大までの大小不同,黒〜黒褐色,黄褐色,赤褐色などの色調を呈する色素斑が多発.皮疹は円形ないし楕円形,斑状または軽度扁平隆起性,辺縁不整で,周囲に一部"しみ出し"を認め,全身に50個前後存在した.家族内には同症および悪性黒色腫の発生はない.背部の長径7mm以上の色素斑3個を切除した.組織学的に3個の色素斑はほぼ類似の所見を呈した.即ち,基本的には色素性母斑の構築に加え,不規則に延長した表皮突起の基底層に沿って,豊富なメラニン顆粒を含みhyperchromatism, pleomorphismを呈するmelanocyteが一部に胞巣を形成しつつ連続性に増生する.真皮上層にはlamellar fibroplasia,稠密な反応性のリンパ球浸潤を認めた.以上より本例をdysplastic neviと診断し,他の皮疹は無処置のまま経過観察中である.本症の疾患概念および悪性黒色腫との関連について若干の文献的考察を行った.