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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科40巻9号

1986年09月発行

雑誌目次

図譜_529

赤色文身による皮層の異常反応

著者: 足立功一 ,   熊切正信 ,   森美智留

ページ範囲:P.778 - P.779

患者30歳,男性
初診昭和59年4月28日

原著

Eosinophilic Panniculitisの1例

著者: 三原一郎 ,   新村眞人

ページ範囲:P.781 - P.785

 20歳,男.臨床的に両下腿の紅褐色硬結性局面,組織学的に血管炎を伴うeosino—philic lobular panniculitis,血液学的に末血好酸球増多,IgE高値という特徴的所見を呈した1例を報告した.自験例に採用したeosinophilic panniculitisという名称は稠密な好酸球浸潤を示す脂肪織炎という組織学的所見の表現名であり,本邦では6例の報告があるが,未だ確立した疾患概念ではない.これら症例が,同じ範疇の疾患なのか,また一つの疾患概念となり得るのか,今後症例を積み上げて検討していくことが必要と考えた.

耳介に生じた環状肉芽腫—免疫組織学的検索

著者: 薄場泰子 ,   相場節也 ,   八丁目直寛 ,   田上八朗

ページ範囲:P.787 - P.789

 16歳の男子の耳介のみに発生した稀な環状肉芽腫の1例を報告した.免疫組織学的検討を加え,ヘルパーT細胞優位の浸潤を認め,細胞性免疫反応の本症の発症に果たす役割を示唆する結果を得た.

硬化性萎縮性苔癬の4例—我国の統計的事項を中心として

著者: 樋口由美子 ,   長島典安 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.791 - P.796

 症例1は左大腿部の35歳,女性,症例2は右下腹部の31歳,女性,症例3は右下眼瞼の6歳,女児,症例4は外陰部の77歳,女性例である.自験4例で興味あることは,白斑が本症の初期疹の一つであると考えられたこと,症例2の臨床像は一見,Pasini-Pierini型皮膚萎縮症を思わせたこと,症例3は我国の最年少例であることである.我国の本症の特微を欧米例と比較すると,1)陰部外例が多く,女性外陰例が少なく,両者の合併は極めて稀である,2)陰部外例では性差はないが,外陰部例では閉経期以降の女性に多い,3)陰部外例の好発部位は欧米例と同様に背部や項頸部である,4)小児例は極めて稀であるが,いずれも女児で陰部外例であった.

全身性エリテマトーデスに合併したSubcorneal Pustular Dermatosis(Sneddon-Wilkinson)の1例—Etretinate内服療法を中心として

著者: 佐々木聰 ,   大田ゆみ ,   葛西邦博 ,   末木博彦 ,   藤澤龍一

ページ範囲:P.797 - P.801

 23歳,女.昭和57年よりSLEに対しprednisolone内服療法中,昭和59年11月より鱗屑を伴った紅斑が出現し,次第に辺縁に膿疱を伴うようになった.昭和60年2月,皮膚生検を施行し,臨床および組織所見よりsubcorneal pustular dermatosis(SPD)と診断した.最初,sulfapyridine内服療法で軽快したが,副作用出現のため中止.次いで,etretinate内服療法を行い著効を示したが,初期導入量は,0.5mg/kg/日と一般的使用量の半量であった.SPDの病因については自己免疫学的機序に基づくとの考えもあり,Krogh & Tonderは膿疱蓋にimmune complexの沈着を見出している,Immune complex diseaseの代表的疾患であるSLEとの合併例は,Saulsburyらが1例を報告しているのみであり,本邦では未だないが,この合併は偶然の一致ではなく,SPDの病因を解明する上で,意義があるように思われる.

肺癌を合併した落葉状天疱瘡—症例報告と本邦例集計

著者: 若林正治 ,   築藤玲子 ,   藤田優 ,   陳瑞明

ページ範囲:P.803 - P.808

 78歳,男性.肺癌を合併した落葉状天疱瘡の1例を報告した.肺癌は組織学的には扁平上皮癌と診断されたが,天疱瘡が発症する2年前の胸部レ線像でも陰影が確認されており,明らかに肺癌が先行していた.皮疹は角層下水疱で,螢光抗体直接法にて表皮細胞間にIgG,C3の沈着が証明され,臨床的にも落葉状天疱瘡であった.プレドニゾロン80mg/日内服にて加療するも,難治性で長期投与を必要とし,その副作用によると思われるアスペルギルス肺炎を併発し死亡した.なお肺癌の全摘術は行い得ず,天疱瘡との関連性は明らかにできなかった.天疱瘡と悪性腫瘍(胸腺腫を除く)の合併例は決して多いとはいえないが,両者の発症機構には免疫学的見地からも注目が集められており,自験例を含めた本邦報告例29例について統計的観察を行い,若干の文献的考察を加えた.

Borrmann3型胃癌を合併したCutaneous T-cell Lymphoma—剖検例

著者: 田中律子 ,   鈴木伸典 ,   那須輝史 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.809 - P.813

要約 進行胃癌を合併したcutancous T-cell lymphoma(CTCL)の1例を報告した.症例は76歳,男.約6カ月前より,体幹・四肢に散在性に生じた瘙痒性浸潤性丘疹のため皮膚科を受診した.病理組織学的に異型性の著しいリンパ球が表皮および真皮に浸潤し,Pautrier微小膿瘍を形成する.末梢血中,リンパ節,骨髄,肝,肺等に異型リンパ球の浸潤は見られない.PAP法にて腫瘍細胞はinducer/helper T-cellと思われ,CTCLと診断した.皮疹発生より約10カ月後,胃内視鏡にてBorrmann 3型胃癌が発見された,剖検にて化学療法による悪性リンパ腫の治癒後状態と,胃癌およびその肝転移が確認された.胃癌の発生に対して,悪性リンパ腫による免疫能低下が関与したものと考える.

皮下結節で発症したB cell由来悪性リンパ腫の2例

著者: 戸村敦子 ,   小関史朗 ,   村井博宣

ページ範囲:P.815 - P.820

 皮下結節で発症したB cell由来悪性リンパ腫の2例を報告した.症例1:84歳女.右側額部,右耳後部に鶏卵大皮下結節出現.腫瘍組織像では中ないし大型リンパ球様細胞の瀰漫性増殖が認められ,メチルグリーンピロニン染色にて胞体がピロニン好性を示した.電顕像では胞体に脂肪小滴が認められた.以上より,バーキット型悪性リンパ腫と診断,症例2:76歳女.腹部,背部に皮下結節出現,増大.腫瘍組織像はdiffuse patternを示しlarge cellが主体.PAP法では胞体内にIgMとλ chainが陽性.以上より,B celltypeの瀰漫性大細胞型悪性リンパ腫と診断.なお,皮膚病変を認めたB cell lymphornaの本邦報告例につき若干の考察を加えた.

High Grade Malignant Lymphomaの転帰をとったSézary症候群の1例

著者: 長田浩行 ,   幸田衞 ,   武井洋二 ,   荒川雅美 ,   植木宏明 ,   真鍋俊明

ページ範囲:P.821 - P.825

 76歳,男子.Sézary症候群の診断で約5年間,ステロイド投与にて寛解増悪を繰り返していた.死亡約半年前から急速に頸部リンパ節腫脹を生じ,リンパ節生検では,Sézary細胞は極く少数で,大部分は大型のimmunoblast様の腫瘍細胞で占められていた.脳転移のため死亡したが,Sézary症候群の末期に悪性度の高いlymphomaが生じたものと考えた.

黒色調を呈したPinkus型Eccrine Poroma—2例の報告

著者: 佐藤則子 ,   木村俊次

ページ範囲:P.827 - P.830

 症例1,66歳女.2年来出現し,漸次増大.現症:左側頸に6.5×5.0mm,黒色,ドーム状,表面平滑,弾性軟の腫瘤が単発.組織所見:被覆表皮と連続性に基底細胞様の小型類円形の細胞が索状,粗大網状をなして増殖.管腔構造あり.明調細胞が胞巣内に多数散在.全般的に腫瘍細胞内にメラニン色素が増加し,一部で特に顕著.症例2,53歳男.5年来出現し漸次増大.現症:右示指基部横側に3×3mm,類円形,黒褐色,表面角化性,細顆粒状,扁平隆起性の小腫瘍が単発.組織所見:表皮と連続性に基底細胞様の小型類円形の細胞が充実性に増殖.腫瘍細胞自体にはメラニン色素は一部で増加しているのみであるが,被覆表皮では全般的に,メラニン色素と明調細胞とが増加している,黒褐色調を呈したPinkus型eccrine poromaについて検討し,本邦では稀ならず認められること,メラニン色素増加やメラノサイトの存在を示す例も少なくないことなどを指摘した.

PilomatricomaにおけるSquamoid Cells

著者: 山田政春

ページ範囲:P.831 - P.835

 Pilomatricoma15例中5例にbasophilic cellsからsquamoid cellsへの移行がみられた.そのうち4例ではsquamoid cellsの部分からepidermoid keratinizationといえる角化が生じており,4例中3例にsquamoid cellsの胞体内にケラトヒアリン顆粒がみられた.5例中1例にはsquamoid cellsの胞体が膨化する形で角化しており,trichilemmal keratini—zationを思わせる.15例中1例に異物反応の強いものがあり,その中央に同心円状の角質塊があり,squamoid cellsより形成されたと思われる.他の15例中の9例にはbasophiliccells, shadow cells,骨形成,異物肉芽腫などがさまざまの割合で見られたが,squamoidcellsは見られなかった.Squamoid cellsはかなりの割合で見られることから,pilomatri—comaの診断に当たってはbasophilic cells, shadow cells,骨化所見の3つ以外にもsqua—moid cellsの有無を日常的に取り上げるべきであると考えた.

足底に生じた大型のAcquired Fibrokeratoma—Angiofibromaの組織所見を示した1例

著者: 木村俊次 ,   繁益弘志

ページ範囲:P.837 - P.840

 79歳,男.12,3年前から出現し,近医で切除するもその後再発,増大.現症:右足底踵部中央に25×23×12mm,表面角化・落屑性,淡紅色,弾性硬の広基有茎性腫瘤が単発する.軽度圧痛あり.組織所見:一部錯角化を伴う角質増生をみるも,表皮は全体的に非薄化し,メラニン色素も一部で軽度増加しているのみである.病変の主体は真皮にあり,上層には軽度ないし中等度の浮腫,小血管の増生・拡張,血管周囲の層状の結合織増生をみる.また真皮全体に繊細な結合織の増生と紡錘形〜星形の結合織細胞が増加する.結合織細胞には多核のものも多数存在する.マスト細胞は真皮上層で軽度増加する.腫瘤内に弾力線維は存在しない.自験例をangiofibromaとacquired fibrokeratoma (AFK)との二面から検討した結果,angiofibrornaの組織所見を呈したAFKと考えられた.

Multiple Hamartoma症候群(Cowden's Disease)の1例

著者: 原田玲子 ,   東冬彦 ,   露木晃 ,   大橋正次郎

ページ範囲:P.841 - P.846

 46歳,女性に認められたmultiple hamartoma症候群(Cowden病)の1例を報併した,自験例では顔面,四肢,特に末端に,正常皮膚色角化性ないし表面平滑な小丘疹が多発し,躯駆幹の血管腫,大腿の血管脂肪腫も認められた.既往に乳癌,甲状腺腺腫があり,精査の結果,子宮筋腫および食道から直腸にかけて多発性ポリープが見出され,胃のポリープの一部に悪性像が認められた.本症は本邦においては未だ稀な疾患であるが,多臓器に亘る良性および悪性腫瘍を合併する点が重要である.また,multiple trichilemmomaの存在が本症の診断に不可欠とする指摘もあるが,集積された症例から見ると,顔面の小丘疹は毛嚢の形成異常の範疇に属するものと考えたい.診断に当たっては,四肢の角化性丘疹,口腔粘膜の発疹も重要と考えた.

色素血管母斑症の1例—貧血母斑について

著者: 成沢寛 ,   大坪東彦 ,   日野由和夫 ,   幸田弘

ページ範囲:P.847 - P.851

 生下時より両側性対称性太田母斑,眼球・口蓋メラノーシス,広範な青色斑,7歳頃から左半身の広範な貧血母斑,13歳頃から両頬部のパラパラ型の太田母斑,特に自覚していなかったが背部の単純性血管腫を認めた17歳,女性の色素血管母斑症の1例を報告した,従来,本症における貧血母斑合併例は散見されるが,その意義については殆ど論じられていない.自験例に合併した貧血母斑は,遅発性に左下肢末梢より上行性に拡大し,左半身に限局性の広範な分布を示した.さらに患側下肢の萎縮を伴い,類症の報告は見当たらず,貧血母斑について発生機序を含め若干の考察を加えた.

尋常性膿瘡の1例

著者: 河島岳史 ,   宮野径彰 ,   徳田安章

ページ範囲:P.853 - P.857

 症例は21歳男.初診の4カ月前より右大腿に拇指頭大の痂皮に覆われた潰瘍が出現,軽快増悪を繰り返すうち,2カ月前より右下肢全体に拡大多発するに至り当科受診.初診時,痂皮の下に膿を容れるスプーン状の潰瘍が右大腿中心に多発.Streptecoccus pyogenes(S. pyogenes)とStaphylococcus aureus (S. aureus)の2菌種を検出.白血球増多,左方移動,CRP軽度上昇を認めるが,血沈,ASOは正常範囲.組織は深膿痂疹として典型で,表皮から真皮浅層の化膿性炎症で,血管炎,肉芽腫の所見はない.抗生剤の全身投与と局所療法,入院安静にて約3週間で色素沈着を残して治癒し検査値も正常化した.再発はない.免疫能,消化器系にも異常なく,経過からも尋常性膿瘡と診断.本症は昨今稀になりつつあり,さらに稀有な多発型と考え報告した.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.801 - P.801

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

印象記

第85回日本皮膚科学会印象記

著者: 中嶋弘

ページ範囲:P.858 - P.861

 第85回日本皮膚科学会総会・学術大会は昭和61年5月16〜18日,関西医科大学皮膚科・朝田康夫教授を会頭として,新緑萌える京都岡崎の京都会館において開催された.前日までの天候も一転して爽やかな日和となり,朝田会頭ならびに関係者各位の人徳の程が偲ばれた.
 学術大会は1,800人を越える参加者があり,また,プレジデンシャルアドレス,皆見賞受賞記念講演,国際皮膚科学交換講座(土肥記念講演),特別招待講演,教育講演(9席),シンポジウム(4題),CPC(12題),漢方セッション(6題),一般演題(202題),スライド供覧(126題),学術展示(76題)など内容も豊富で極めて盛会であった.この中には10名余の外国人による講演が含まれており,国際色豊かな学会でもあった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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