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原著
フォーレル水摂取により発生した慢性砒素中毒症の1例
著者: 寺尾祐一1 濱田稔夫1
所属機関: 1大阪市立大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.47 - P.51
文献購入ページに移動 56歳,女性.17歳時に扁平疣贅の治療のためフォーレル水を約1年間内服し砒素黒皮症を呈した.27年後に左鼠径部に皮膚癌と診断された腫瘤が生じ,手掌足底には砒素性角化症をみた.さらに38年後に右前腕部にボーエン病の発生を認めた.内臓悪性腫瘍は今までのところ認めえない.原因となった砒素は現在でも医療用として使われているものもあり,また職業上や環境汚染などによって摂取することがあり決して過去の病気ではないこと,ならびに症状発現までの潜伏期が非常に長いことに留意して,注意深く職業歴や砒素既往の有無を確かめ,既往が明らかである場合には長期に及ぶ観察,診察および早期治療が必要である.
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