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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科41巻10号

1987年09月発行

雑誌目次

図譜・543

症候性白輪毛

著者: 洲脇正雄 ,   広畑衛

ページ範囲:P.742 - P.743

患 者 16歳,女性
初 診 昭和60年11月22日

原著

Granuloma Glutaeale of the Agedの1例

著者: 寺木祐一 ,   川久保洋 ,   小松威彦 ,   西川武二

ページ範囲:P.745 - P.747

 Granuloma glutaealeの老人発症例を報告した.患者は68歳,女性.左右鼠径部に拇指頭大および鳩卵大結節を各1個認めた.個疹は暗赤色調を呈する境界明瞭な類円形結節であり,皮表より扁平に隆起する.組織像は角質増生,表皮肥厚,著明な表皮突起の延長を認め,真皮では著明な浮腫と稠密な炎症性細胞浸潤を認めた.真菌は直接鏡検および培養にて陰性.下着の貼布試験陰性.皮疹はステロイド外用にて数週間で軽快した.本症例は従来の報告例と異なり高齢者に生じ,かつおむつ着用の既往がなく,下着等の刺激による慢性炎症が発症の一因として関与している可能性が考えられた.

人工紫斑—自己赤血球感作症候群と類似した臨床像を呈した1例

著者: 東山真里 ,   喜多野征夫 ,   上西国宏 ,   頼藤和寛

ページ範囲:P.751 - P.754

 自己赤血球感作症候群は20〜30代の女性の四肢に好発し,限局性の疼痛と腫脹を伴う紫斑を主徴とする疾患である.本症例は自己赤血球感作症候群ときわめて類似した病像を呈していたが,打撲による自傷行為を確認し人工紫斑と診断した.本症例においては自己赤血球皮内注射により紫斑は誘発されず,血液凝固線溶系には異常を認めなかった.自己赤血球感作症候群の患者には特有な性格や精神的偏りがあることがしばしば報告されているので,自験例のような人工紫斑を注意して鑑別する必要がある.

Toxic Epidermal Necrolysisの3例—殊にその死因について

著者: 豊田裕之 ,   水口美知 ,   尾立冬樹 ,   肥田野信

ページ範囲:P.755 - P.760

 全例男で,年齢は69歳,42歳,32歳.第2例は著明な肝障害を伴ったため血漿交換療法を施行したが死亡した.第3例は以前より潜在していた糖尿病があり,大量のステロイド点滴によりケトアチドーシスに陥ったが治癒した.原因にはそれぞれデパケン,アスピリン(インフルエンザワクチン?),トランコパールが疑われた.TENの死亡要因を文献的に検討したところ,中高年者に死亡者数が多く,予後は皮疹の重症度よりも肝機能障害,顆粒球減少などの合併症の程度に強く左右されるものと思われた.

Bromodermaの1例

著者: 筒井真人 ,   岸山和敬 ,   種市幸二

ページ範囲:P.761 - P.764

 下腿・腰部に生じたbromodermaの34歳女子例を報告した.患者は28歳頃から活力が出るとして,ブロムワレリル尿素を含有するセデスA錠を1日平均約30錠服用していた.病理組織学的には,偽癌性表皮肥厚,表皮内膿瘍,真皮上層の膿瘍,炎症性細胞浸潤が認められた.血清Br濃度は9.5mEq/lと高値を示した.

Sweet病様皮疹を呈したNeuro-Behçet病

著者: 天谷雅行 ,   早川和人 ,   多島新吾 ,   原田敬之 ,   西川武二 ,   植松大輔

ページ範囲:P.765 - P.769

 49歳女.約20年来,Sweet病様の軽度有痛性の滲出性紅斑が再発を繰り返し,経過中に口腔内アフタ,陰部潰瘍,結節性紅斑様皮疹,針反応陽性の所見を認めた.Sweet病様皮疹を伴う不全型Behçet病として経過を観察していたところ,発症約20年後に,片麻痺,構語障害,知能低下,抑鬱状態などの重篤な精神神経症状が出現し,neuro-Behçet病と診断した.プレドニソロン60mg/日より開始し漸減,寛解状態を得た.Behçet病とSweet病の関連につき若干の考按を加えるとともに,本例のごとくむしろSweet病様皮疹が前景に立つBehçet病患者においても,将来Behçet病としての重篤な合併症を発現し得る可能性があり,診療に際しては十分に留意する必要があることを述べた.

円板状エリテマトーデス,進行性全身性硬化症,多発性筋炎のOverlap症候群の1例—ステロイド剤とD-ペニシラミンの分離性効果

著者: 杉山朝美 ,   黒沢伝枝 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.773 - P.778

 円板状エリテマトーデス(以下DLEと略す),進行性全身性硬化症(以下PSSと略す),多発性筋炎(以下PMと略す)のoverlap症候群の1例を経験した.症例は37歳の男性.21歳時,頭部にDLEが出現.昭和57年頃よりレイノー現象が,また昭和58年頃より手指・足趾の感覚低下,しびれ感が出現し,翌59年2月頃より皮膚硬化が,10月頃より筋力低下が始まった.昭和60年3月,DLE,PSS,PMのoverlap症候群を疑い,治療としてまずプレドニゾロンを投与することにより筋炎症状と検査所見が著明に改善し,次いでプレドニゾロンとともにD-ペニシラミンを追加投与することにより皮膚硬化が著明に改善した,このように系統の異なる2つの薬剤がPMとPSSの症状に分離して著明な効果を示したことは,合併疾患それぞれの独立性を重視したoverlap症候群なる概念を治療効果の面から間接的に支持する所見として興味深いものと思われた.

皮膚Lupus Erythematosusを合併したGeneralized Morphea

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.779 - P.784

 両上肢にほぼ対側性に,初め紅斑性皮疹,のち一部に紅斑を伴う硬化性局面を来し,組織学的に表皮〜真皮上層がLE,真皮中層〜皮下組織がmorpheaに一致する所見を示した39歳家婦例を報告した.本症例の血清自己抗体は検索の限りではすべて陰性であったが,皮疹の発生部位や臨床症状はgeneralized morphea (GM)の定義に合致する.一方,紅斑の組織の上半部がLEに一致すること,紅斑の一部に軽度の鱗屑と萎縮性変化をみること,および日光照射にて紅斑の増悪をみることから,紅斑は皮膚LEに属するものと考えられるが,DLEとしては非定型的である.DLEとmorpheaとの合併例のこれまでの報告例には,いずれも臨床的にもDLEと診断される紅斑性皮疹を合併している点で,本症例とはやや趣を異にする.この他,深在性エリテマトーデスや薬剤誘発LEとの鑑別についても触れた.

麻疹不活化ワクチン接種後16年目に発症した異型麻疹の1例

著者: 米田洋子 ,   永井秀史 ,   藤田優

ページ範囲:P.785 - P.788

 17歳,男.昭和43年に麻疹不活化ワクチンの接種歴がある.昭和59年4月21日より38℃台の発熱,咳,咽頭痛が出現した.第4病日より顔面,躯幹,四肢に紅色丘疹が出現した.当科受診時(第5病日),ほぼ全身に粟粒大から碗豆大の紅色丘疹が多発し,顔面,手背,足背に比校的密で躯幹に疎である.一部には漿液性丘疹も混在する.カタル症状,コプリック斑は認めない.胸部X線で細かい粒状陰影がみられる.第5病日の麻疹抗体価はHIで16倍,第12病日で2,048倍と著明に上昇した,本例にみられた症状をKワクチン接種後麻疹にみられる異型麻疹の症状と比較検討した.

特異な臨床像を呈したPorokeratosisの1例

著者: 松本和彦 ,   伊藤隆 ,   御子柴甫 ,   斎田俊男 ,   面高信平

ページ範囲:P.789 - P.793

 15歳,男子.幼児期に発症,掌蹠を含めた両手足と大腿部に点状角化性丘疹が不規則線状ないし列序性に配列していた.融合傾向あり.組織学的には典型的なcornoidlamellaが認められた.Porokeratosisの病型分類につき考察し,本症をlinear porokera—tosisと診断した.自験例の電顕的検索ではcornoid lamella部の表皮細胞内に多数の層板顆粒が認められ,cornoid lamellaの形成に層板顆粒が何らかの形で関与している可能性が推測された.

頭部に生じたVerruciform Xanthoma

著者: 岸本三郎 ,   小石和夫 ,   宮下文 ,   奥田良治 ,   玉置公一

ページ範囲:P.795 - P.799

 11歳,男子の頭部に生じたverruciform xanthoma (VX)の1例を報告した.先行病変を伴わず,陰嚢や皮膚粘膜移行部等の特殊な部位以外の皮膚に生じた自験例は本邦初である.S−100蛋白やリゾチームの免疫組織化学的検索や電顕的観察によりVXはmonocyte-macrophage系組織球の増殖であった.さらに経皮排出現象を認め,本現象はVXの特徴的所見の一つと考えた.

Trichoadenomaの1例

著者: 広川政己 ,   水元俊裕 ,   飯塚一

ページ範囲:P.801 - P.804

 25歳女性の前額部に生じたtrichoadenomaの1例を報告した.本腫瘍の組織学的構築は,好酸性に染まる扁平上皮様細胞から構成される多数の角質嚢腫と少数の充実性腫瘍細胞塊とからなり,毛包漏斗部への分化をより特徴的に示す腫瘍であると考えた.Trichoepitheliomaとの鑑別および本腫瘍の毛包系腫瘍における分類上の意味付けを,若干の文献的考察とともに検討した.

Mucous Cysts of the Vulva—Paramesonephric Cystsと考えられる1例

著者: 小熊修子 ,   熊切正信 ,   小林衣子 ,   高島巌

ページ範囲:P.805 - P.809

 44歳女性の外陰部に発症したmucous cystの1例について報告した.組織学的に嚢腫壁は1層の円柱上皮からできており,嚢腫壁細胞および内腔にはPAS反応陽性,ジアスターゼ抵抗性のゼリー状無構造物質が認められた.酵素抗体法と電子顕微鏡を用いて検索し,文献的考察を行った.

悪性血管内皮細胞腫の2例

著者: 青木見佳子 ,   矢島純 ,   服部怜美 ,   本田光芳 ,   川並汪一 ,   池川修一 ,   石原和之

ページ範囲:P.811 - P.816

 73歳男性の悪性血管内皮細胞腫の2例を報告した.病理組織学的には2例とも一部に明らかな血管腫様構造が見られ,1例では電顕的にWeibel-Palade顆粒が認められた.第VIII因子関連抗原はともに弱陽性〜陰性であった.また,過去22年間に報告された98例について若干の考察を加えて報告した.

悪性リンパ腫に合併したReactive Elastofibromatosis

著者: 二瓶義道 ,   石川英一

ページ範囲:P.817 - P.823

 64歳,女.8年来,躯幹,四肢に浸潤性紅斑が多発し,出没を繰り返していた.初診時,さらにリンパ節腫大,白血球増多があり,最終的に生検リンパ節,末梢血液の所見からT細胞性悪性リンパ腫と診断した.また悪性リンパ腫とは別に,手背,膝蓋下部,足背などに胡桃大までの皮下結節の多発を認めた.皮下結節は4年前から発生するようになったという.組織学的に皮下に限局性に膠原線維の増加があり,その中に弾性線維染色陽性物質の分岐,肥厚,顆粒状沈着を認めた.電顕学的に同物質に相当するものは,正常の弾性線維を核として,その周囲に厚く細線維と細顆粒よりなる無定型物質が沈着していた.これらの変化は従来,elastofibromaで観察されている組織像と類似していた.なお,皮下結節は悪性リンパ腫に対する化学療法の結果,その紅斑の軽快とともに縮小した.

先天性皮膚欠損症の3例

著者: 沢辺元和 ,   辻卓夫 ,   寺尾祐一 ,   古川雅祥 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.825 - P.829

 症例1:生後3日の男児.生出時より頭頂に15×10mmの皮膚欠損あり.症例2:生後6日の男児.出生時より頭頂部に10×8mmの浅い皮膚欠損あり.一部痂皮形成を見る.症例3:2歳の女児.生後間もなく頭頂部の小指頭大の黒褐色の痂皮に気付くも放置していた.初診時,頭頂部に20×15mmのやや扁平に隆起した瘢痕状局面をみる.いずれも鉗子分娩や分娩時の外傷はなかったという.症例3のみ切除術を施行した.病理組織所見として,表皮の菲薄化と真全層に亘る膠原線維の増加,弾性線維の繊細断裂化および一部の未熟毛包を除く皮膚付属器の欠如を認めた.なお,いずれの例においても両親に血族結婚なく家系内に同症もみられず,他の外表奇形の合併も認めなかった.

印象記

第17回世界皮膚科学会議に参加して

著者: 原田敬之

ページ範囲:P.830 - P.833

 1987年(昭和62年)5月24〜29日の6日間,第17回世界皮膚科学会議(ⅩⅦth World Congress of Der—matology)が西ドイツのベルリン市の国際会議場(International Con—gress Center)で盛大に開催された.世界各地の70カ国より5,000人を越える皮膚科医が集い,地理的条件も加わったためか,本学会の最大の参加者数となった.日本からも400人を越える学会参加者および同伴者があり,円高の関係もあってか,前回の東京大会を除けばやはり最高の人数となった.折からベルリン市は市創立750年を祝っており,本学会に対して市を挙げての協力と惜しみない援助が行われており,空港にも"welcome to CMD"(CongressusMundi Dermatologiae)の看板が掲げられていた.
 今回の学会のテーマは"Dermato—logy in Five Continents"で,文字通り「世界の皮膚科」を目指すものであったが,参加者数,プログラムの編成などからみても,当初の目的は美事に達成されたように思われた.ベルリンの気候は寒からず,暑からずで,空気は少し乾燥気味であったが,爽やかで,夜は9時すぎまで明るく,活動するのに良く,絶好のシーズンと思われた.会場の国際会議場はMessegelandeの近くで,ベルリン市街にあり,5,000人を収容でき,同時通訳用のイヤホーン装置の完備した第1会場を初め大小種種の会場を備えた大ビルディングで,なかにはレストラン,銀行,郵便局もあり大変便利であった.学会の運営はドイツらしく,綿密に企画され,細かい気配りが随所にみられ,我々にとって受け入れやすく感じた.学会登録をすると,プログラムのほかに,薄目の電話帳といった感じの抄録集2冊,症例集,種々のパンフレットの入った一抱えもある書類が手渡された.プログラムが前以て送られてこないので,それから期間中の予定を考えなければならないという難点はあったが,プログラムや場内のボードに日程が判りやすく表示されており,予定を立てる手助けとなった.

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編集室だより

ページ範囲:P.749 - P.749

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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