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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科41巻11号

1987年10月発行

雑誌目次

図譜・544

Warty Dyskeratoma

著者: 東川俊昭 ,   中村立一 ,   谷昌寛

ページ範囲:P.842 - P.843

患 者 81歳,男性
初 診 昭和57年10月22日

原著

特発性斑状皮膚萎縮症—電顕的,免疫組織化学的観察

著者: 宮本亨 ,   宮本二郎 ,   西浦清一 ,   神戸直登

ページ範囲:P.845 - P.848

 29歳,男性.自覚症状のない一部紅斑を伴う米粒大から拇指頭大の斑状萎縮斑が両上背を中心に散在性に多発した.HE染色では真皮血管周囲に軽度リンパ球浸潤を認める以外著変なく,Weigert染色では真皮網状層において弾力線維の消失を認めるが,真皮乳頭層にはほぼ正常の弾力線維が存在した.以上よりJadassohn型特発性斑状皮膚萎縮症と考えた.電顕的には真皮乳頭層においてほぼ正常のoxytalan fiberとelaunin fiberを認めたのに対し,真皮網状層ではelastic fiberはもちろん,その細線維も認めなかった.また抗serum amyloid P component抗体とNKH−1を用いた免疫組織化学では,電顕所見と同様に真皮網状層では,陽性に染まる線維成分を認めなかった.これらの所見より本症の病変は真皮網状層におけるエラスチンと細線維に生じるのではないかと推測した.

真皮コラーゲンのヒドロキシリジン量減少を認めたEhlers-Danlos症候群

著者: 海野俊雄 ,   増谷衛 ,   関東裕美 ,   石原勝 ,   中山靖久

ページ範囲:P.849 - P.853

 臨床的に皮膚の過伸展性,脆弱性と四肢末梢関節に著しい過可動性を認めるも,眼症状や他の内臓合併症を認めないEhlers-Danlos症候群の10歳男児例を報告した.電顕的に特異な形態をとる膠原線維が散見され,生化学的にも,コラーゲン架橋に重要なアミノ酸であるヒドロキシリジン量の低値が認められた.以上の所見から自験例は,古典的臨床分類では第Ⅱ型に属すると思われるが,生化学的所見では第Ⅵ型に属し,既存の分類には当てはまらなかった.

Crow-Fukase症候群の1例

著者: 小林衣子 ,   粟田修子 ,   高島巌 ,   深沢雅則 ,   田代邦雄

ページ範囲:P.855 - P.859

 71歳,女性.全身の皮膚の色素沈着,浮腫,硬化を主訴として当科受診,diffusesclerodermaの疑いで経過観察中に,M蛋白,多発性神経炎に気付かれ,最終的に近年注目されているCrow-Fukase症候群と診断した.本症候群の概念の変遷と,Crow-Fukasesyndromeを紹介し,強皮症との関係,黄体ホルモン療法について論じた.

メチクランによる光線性白斑黒皮症を併発したシェーグレン症候群の1例

著者: 馬場安紀子 ,   山崎雙次 ,   古谷達孝

ページ範囲:P.861 - P.866

 メチクランによる光線性白斑黒皮症を併発したSjSの61歳女性症例について報告した.本症例におけるSjSは眼,口腔乾燥症状,Schirmer test陽性,耳下腺造影所見,小唾液腺病理組織所見などから確定診断された.また本症例は肺線維症,Raynaud現象,抗核抗体陽性所見などから,PSS (probable)とも診断された.メチクランによる光線性白斑黒皮症は,従来よく知られているサイアザイドによる白斑黒皮症と,症状,経過,組織学的所見などがよく似ており,また両者の交叉過敏性についても報告例をみている.SjSでは様々な皮疹を伴うが,薬疹を合併することも多く,詳細な検索が必要と考え,報告した.

尋常性疣贅からTricholemmal Keratosisへの移行を思わせた1例

著者: 木村俊次 ,   繁益弘志

ページ範囲:P.867 - P.871

 20歳,男子の後頭部に単発した乳頭腫の1例を報告した.組織学的に並列U字型およびV字型の上皮増殖を示し,顆粒層付近の核周囲の空胞化やケラトヒアリン顆粒の粗大化など尋常性疣贅に一致する部分から,ケラトヒアリン顆粒が欠如し,trichilemmalkeratinizationと区別できない角化様式を示す部分まで,種々の段階の組織所見を示した.PAP法では尋常性疣贅に一致する組織所見を示した部分にのみ,少数散在性に上皮核に一致する乳頭腫ウイルス抗原を認めた.以上の所見から本例は,尋常性疣贅からtricholemmal keratosisへの移行を示した症例と考えられ,同時に,tricholemmal kera—tosisが尋常性疣贅に由来しうることを支持する一つの好例と考えられた.

アスピリンとジクロフェナクナトリウム(ボルタレン®)により誘発された紫斑の1例

著者: 森三佐子 ,   山本康生 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.873 - P.876

 62歳,男性.肝硬変にて加療中,かぜのため種々の薬を内服したところ,全身に広汎かつ著明な紫斑が出現.内服誘発テストにてアスピリン,ボルタレンで陽性,インダシン,ナイキサンで陰性.組織所見より,いわゆる紅斑性薬疹が基礎にあり,その上に肝硬変による凝固因子異常も加わった結果と推察されたが,アスピリンとボルタレンの相乗作用および交叉反応の可能性も考えられた.

Etretinateと扁桃摘出術により軽快した汎発性膿疱性乾癬の1例

著者: 斎藤すみ ,   池澤善郎

ページ範囲:P.877 - P.882

 18歳時に尋常性乾癬が発症して,24歳時に左膝関節炎を併発し,約5年間のステロイド外用療法により乾癬性紅皮症となり,今回ステロイドのODT療法によって発症した汎発性膿疱性乾癬の症例を経験した.患者は25歳の女性で,種々の治療に抵抗し,発熱などの強い全身症状を伴って皮疹が再燃を繰り返した.Etretinate投与により約2週間後には,比較的限局した小膿疱の間歇的な新生が見られたものの皮疹や全身症状の著明な改善をもたらした.約4カ月後に扁桃摘出術(扁摘)を加えることにより,その1週間後に前述した小膿疱の新生も完全に消失した.Etretinateの減量により乾癬の皮疹は再発したが,膿疱の新生は約2年経過するも未だ見られていない.汎発性膿疱性乾癬(GPP)に対するこのようなetretinateと扁摘の治療効果について若干の考察を加えた.

特異な臨床像を呈した膿皮症の1例

著者: 辻岡馨 ,   米澤郁雄

ページ範囲:P.883 - P.887

 69歳,男子に発症した特異な臨床像を呈した膿皮症の1例を報告した.臨床的には左顔面に限局性に多発した疣状隆起性病変で,組織学的には表皮のpseudoepithelio—matous hyperplasiaと真皮の膿瘍および出血巣が認められた.病変組織から表皮ブドウ球菌が分離同定され,抗菌剤内服と局所への外科的治療により約1カ月で軽快した.内科的に疑われたmyelodysplastic syndromeに伴う白血球減少症,好中球遊走能異常および血小板減少症が発症素因として考えられた.

多発性神経鞘腫の1例—毛嚢周囲柵状神経終末由来と思われた多発性神経鞘腫

著者: 田中利治 ,   小幡正明 ,   田上八朗

ページ範囲:P.889 - P.892

 55歳,女性.右上腕に発生した多発性神経鞘腫の1例を報告した.個疹は毛嚢一致性の小丘疹で,組織学的にも毛嚢直下にこれを取り囲むように腫瘍塊を認めた.細胞の配列から,Antoniの分類でA型と考えた.また,これはS−100蛋白陽性を示した.一方,腫瘍の局在から毛嚢周囲の柵状神経終末由来のものと推定された.本邦皮膚科領域における報告例を,他臓器腫瘍,色素斑などの合併例と非合併例とに分けて統計的考察を加えた.

リンパ節転移を伴ったTrichilemmal Carcinomaの1例

著者: 荒政明 ,   渋谷真理子 ,   松本光博 ,   飯塚一

ページ範囲:P.893 - P.896

 72歳,女性.初診の約6年前に,左大腿外側に軽度の瘙痒を伴う赤色丘疹が出現.徐々に増大し,初診時には3.5×3.7×1.0cmの暗赤色腫瘤となった.生検時の組織像は,分葉した大小の胞巣からなる上皮性腫瘍で,一部で毛嚢および表皮と連続し,中心部には好酸性無構造の壊死像を認めた.細胞は大型で細胞質が明るく,PAS陽性物質を含み,異型性が強く,多数の核分裂像も認められた.Trichilemmal carcinomaの診断のもとに広範囲切除術を施行したが,術後6カ月目に左鼠径リンパ節に転移したため,当該リンパ節を切除し経過観察中であるが,現在再発および他部への転移は認めていない.自験例を報告するに当たり,いわゆるtrichilemmal carcinomaにおける外毛根鞘性角化について,若干の文献的考察を加えた.

脂腺癌

著者: 村野早苗 ,   小林まさ子

ページ範囲:P.897 - P.900

 57歳,女性の頬部に発症した脂腺癌の1例を報告した.初診時,右頬部鼻翼に接して,頂に血痂が付着した14.5×15mmの赤褐色腫瘤を1個認めた.組織学的には,真皮内に増殖する細胞集塊を認め,その構成細胞は泡沫状細胞と,核仁の明瞭な大型の核を持った好酸性細胞の2種類からなり,いずれも異型性が著明である,また中にエオジン好性物質を容れる管腔形成像が多数認められ,泡沫状細胞はSudan Ⅲ染色陽性であった.比較的稀な脂腺癌の1例を報告し,病理組織学的所見について文献的考察を加えた.

膵癌の臍転移の1例—経上皮性排除現象のみられた症例

著者: 野々垣涼子 ,   立花隆夫 ,   堀口裕治 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.901 - P.905

 70歳,男性.徐々に増大する臍の腫瘤を主訴として来院した.生検時の組織学的検査では高分化型の腺癌であり,腫瘍抗原の検索により膵癌の転移が疑われた.術前には原発巣の存在を示す所見を得られなかったが,腫瘤を全摘した際,膵体尾部に瀰漫性の硬結を確認し,膵体尾部癌の臍転移と診断した.摘出した臍腫瘤の組織像には,真皮上層の腫瘍細胞が管腔構造を保ったまま表皮に取り込まれ,外界に排除される所見が認められた.

Cutaneous T Cell Lymphomaの1例

著者: 佐藤千鶴 ,   藤田優 ,   河野典博 ,   相馬正子 ,   森茂郎

ページ範囲:P.907 - P.911

 38歳,女性.前腕に皮疹出現後,6カ月で皮疹が全身性に拡大.初診時,ほぼ全身に紅斑,紅色結節が多発し,手掌,足底に膿疱を認めた.両腋窩,鼠径リンパ節腫脹.ATLA抗体(—).皮膚の組織像は,真皮にconvolutedな核をもつ大型の細胞が浸潤,Pautrier's microabscessもみられた.リンパ節では,傍皮質領域に腫瘍細胞が瀰漫性に浸潤していた.腫瘍細胞表面マーカーは皮膚,リンパ節ともに,Leu 4(+),Leu3a(+),Tac (+),Leu1(—)であり,cutaneous Tcell lymphomaと診断した.またhelp—er/inducer T cellとsuppressor/cytotoxic T cellの二重染色を施行し,若干の考察を加えた.

皮膚に腫瘍細胞浸潤を認めたT helper/inducer(TH/I)TypeのChronic Lymphocytic Leukemiaの1例

著者: 前田和男 ,   山名香折 ,   倉増隆 ,   川村正昭 ,   高橋博之 ,   堀越貴志 ,   神保孝一 ,   高橋誠 ,   赤保内良和 ,   及川修

ページ範囲:P.913 - P.919

 皮膚に腫瘍細胞浸潤を認めたT-chronic lymphocytic leukemia(T-CLL)を経験したので報告する.自験例の特徴は,1)初発症状が著明な胸水貯留に伴う呼吸困難であったこと,2)高γグロブリン血症,赤血球の連銭形成を認めたこと,3)皮膚病変が多数の皮下腫瘤として出現したこと,4)腫瘍細胞の表面形質はCD 3,CD 4,CD 5陽性,CD 8陰性でT helper/inducer(TH/1)であった.また一部の細胞はCD 25陽性であったが,la,T 9,Ki-1など他の活性化抗原は陰性であったことである.免疫組織学的に検討するとともに,細胞形態学的には鑑別がしばしば困難なchronic typeのadult T cellleukemia/lymphoma(ATLL)との違いを含あ検討した.

印象記

第86回日本皮膚科学会総会・学術大会印象記

著者: 小野友道

ページ範囲:P.920 - P.924

 第86回大会は昭和62年4月10・11・12日の3日間,神奈川県民ホールを主会場,隣接する産業貿易センタービルを副会場として開催された.会頭は横浜市立大学皮膚科教授,永井隆吉先生である.プログラムを拝見すると名誉会頭に野口義圀横浜市立大学名誉教授,副会頭に加藤安彦先生(横浜市民病院),平井義雄先生(横浜赤十字病院)の御名前が並び,いつもと違った役員構成であると思っていた.いざ学会に出席し,学会本部席で開業や勤務の諸先輩がそれぞれ時間をやりくりして御世話しておられるのを垣間見て,また本大会の暖かい歓迎ムードを肌で感じ,この役員構成システムが永井会頭の学会主催に当たっての基調となる御姿勢ではないかと考えたのである.

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編集室だより

ページ範囲:P.859 - P.859

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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