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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科41巻12号

1987年11月発行

雑誌目次

図譜・545

Necrobiosis Lipoidicaの3例

著者: 岡昌宏 ,   村田洋三 ,   谷昌寛 ,   澄川康祐

ページ範囲:P.932 - P.933

〔症例1〕
患 者 52歳,女性
 家族歴・既往歴 特記すべきことなし.

原著

Microcystic Adnexal Carcinomaの1例

著者: 山元真理子 ,   堀口裕治 ,   荻野篤彦

ページ範囲:P.935 - P.940

 十数年前に生じた左下顎部の皮下腫瘤を主訴とする71歳女性のmicrocysticadnexal carcinomaの1例を報告した.組織学的所見は真皮から皮下脂肪織,筋層にかけて多数の島状から索状の上皮性腫瘍巣および管腔様ないし嚢腫状構造がみられ,一部,角化や毛嚢への分化を示す部分もある,腫瘍巣の回りは均質な結合織から成り,ところによりmorphea様の密な結合織中にわずかに管腔様構造が存在する部分もある.神経周囲にも腫瘍巣の浸潤がみられる.しかし,腫瘍細胞の異型性は少なく,核分裂像もみられない.PAP法によるCEAの検索では管腔を形成する壁細胞および管腔内容物が陽性を示した.

悪性線維性組織球腫の1例

著者: 村松勉 ,   北村弥 ,   白井利彦 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.941 - P.945

 53歳,女性の挫傷後の左下腿部に発症した悪性線維性組織球腫の1例を報告した.腫瘍部の組織にはbizarreな核を有する巨細胞をまじえる組織球様細胞,線維芽細胞様細胞よりなるstoriform patternならびに粘液腫様構造が認められ,組織学的にはpleomorphic subtypeに属すると思われる.電顕所見も併せて報告し,本症の組織発生について若干の考察を加えた.

ヤマイモによる接触皮膚炎の1例

著者: 久保容二郎 ,   野中薫雄 ,   吉田彦太郎

ページ範囲:P.947 - P.951

 ヤマイモによる接触皮膚炎の1例を報告した.同症例に,おろし器で擦りおろしたヤマイモ(トロロ)とトロロの冷水抽出濾過液およびエタノール抽出濾過液による貼布試験を行ったところ,トロロに強陽性が認められた.濾過液では,冷水抽出物に陽性,エタノール抽出物には陰性であった.その結果,ヤマイモに含まれる蓚酸カルシウムの針状結晶の物理的,化学的刺激による接触皮膚炎と診断した.同時にトロロから冷水に抽出される粘液様物質に対する接触感作の可能性も考えられた.

カプトプリルにより惹起された天疱瘡様皮疹の1例

著者: 吉池久美子 ,   野口信子 ,   小川秀興

ページ範囲:P.953 - P.956

 50歳男性.高血圧症の治療目的でカプトプリルを内服していた患者に天疱瘡様皮疹の発生がみられたので報告する.臨床症状は躯幹および上肢に生じた天疱瘡あるいは多形滲出性紅斑様薬疹を思わせた.病理組織学的には棘融解性の表皮内水疱が認められた.螢光抗体法直接法では病変部表皮細胞膜(間)部にIgG,C3の沈着が認められた.流血中の抗表皮細胞膜(間)抗体は陰性で,自家皮膚を用いた螢光抗体法間接法でも抗体価は10倍以下であった.本症の如きカプトプリルによる天疱瘡様皮疹の報告例は少なく,本邦で2例目であるが,本薬剤は構造上,D-penicillamineに類似した構造を有する点から今後注意が必要と思われる.

エノキサシンによる光線過敏症の1例

著者: 上村雅子 ,   浅井俊弥 ,   塚本宏太郎 ,   衛藤光

ページ範囲:P.957 - P.960

 84歳,男に生じたエノキサシンによる光線過敏症の1例を報告した.内服2カ月後より,露光部に一致して浮腫性の紅斑が出現し,組織学的には,いわゆる湿疹型反応を呈した.エノキサシンおよび類似構造式をもつナルジクス酸の内服照射テストは,共に陽性であった.以上より,光アレルギーによる光線過敏症が疑われた.

疱疹状天疱瘡,殊に口腔粘膜病変について

著者: 斉藤範夫 ,   樋口由美子 ,   花輪滋 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.961 - P.965

 臨床的にはジューリング疱疹状皮膚炎を思わせ,小水疱の病理組織学的所見は落葉状天疱瘡を思わせ,紅斑部のそれはeosinophilic spongiosisであり,免疫組織学的には直接法で表皮細胞間にIgG沈着,間接法で天疱瘡抗体を証し,ステロイドの内服が劇的に奏効した疱疹状天疱瘡の22歳,女性の典型例を報告した.自験例で興味あることは,口腔粘膜病変が初発症状であったこと,寛解時の観察から口腔粘膜の初発疹が水疱あるいは血疱であることを類推しえたこと,この水疱の病理組織学的所見は基底層直上の棘融解性水疱であり,パラフィン切片のPAP法で上皮細胞間にIgGの沈着を確認しえたことである.

多形日光疹(Epstein)およびその類似例

著者: 車地祐子 ,   御藤良裕 ,   小林美咲 ,   佐藤吉昭

ページ範囲:P.967 - P.973

 J.H.Epsteinの定義に一致した多形日光疹(polymorphous light eruption, PLE)の1例と,厳密にはそれと一致しない3例を報告した.光線照射試験では,症例1はUVBの2MEDを連日3回同一部位へ反復照射することにより臨床的,組織学的に同様皮疹を可現できたが,症例2は同じ反復照射により水疱の形成がみられた.また症例3,4はMEDの低下があり,特に症例3ではUVAにも反応した.これらの症例2,3,4は明らかに異常反応を呈したが,J.H.Epsteinの厳密な定義によるPLEとはいえず,それぞれ別のメカニズムによって発症するものであると考えられた.

菌状息肉症と肺悪性腫瘍の合併例

著者: 根本治 ,   小野塚仡 ,   三沢和史

ページ範囲:P.975 - P.977

 58歳女性.約10年前に菌状息肉症(mycosis fungoides,MF)が発症し,plaquestageを迎えた患者に肺悪性腫瘍(adenocarcinoma)が合併し,下腿の2カ所のMFのplaqueの上にadenocarcinomaの皮膚転移を認めた.

Cutaneous T Cell Lymphomaの1例—Suppressor/Cytotoxic T Cellの表面形質を呈する

著者: 村松千鶴子 ,   富岡容子 ,   松本俊一 ,   守田英治

ページ範囲:P.979 - P.984

 全身に潰瘍を伴う浸潤性紅斑,腫瘤がみられ,激しい皮膚症状を呈したにもかかわらず,経過中に末梢血への異型細胞の出現,リンパ節の腫大もなく,また剖検所見においても,皮膚外病変の全く認められなかったcutaneous T cell lymphomaの1例を報告する.皮疹部の病理組織像において,浸潤細胞はepidermotropismが強く,形態的にも特徴あるT細胞の性状を有していたが,表面形質の検索にてsuppressor/cytotoxic Tcellが主体であった.本邦の皮膚科領域におけるsuppressor/cytotoxic T cellの形質を呈する悪性リンパ腫の報告は比較的稀であり,若干の文献的考察を付け加える.

紅皮症<丘疹—紅皮症(太藤)>に続発したB-cellリンパ腫の1例

著者: 滝口好彦 ,   島田耕司 ,   鈴木正夫 ,   佐藤紀夫 ,   長尾貞紀 ,   飯島進 ,   富永邦彦 ,   瀬上秀雄 ,   若狭治毅

ページ範囲:P.985 - P.989

 56歳,男.紅皮症にて経過観察中,約4年後リンパ節に悪性リンパ腫(diffuse,mixed,B-cell,IgM,λ-type)の発症を見た1例を報告した.この紅皮症は丘疹—紅皮症(太藤)の皮膚所見に一致するものであった.その組織所見は何れも非特異的炎症像で,後に行ったホルマリン固定・パラフィン切片を用いたB-SA法にて,浸潤細胞はMT-1陽性・MB-1陰性を示し非特異疹を支持する結果を得た.また,リンパ腫細胞はMT-1陰性・MB-1陽性を示した.リンパ腫に対してVEP・CHOP・放射線療法を施行するも,約1年7カ月後死亡した,剖検にて肝・腎・甲状腺・リンパ節・骨・皮膚にリンパ腫細胞の浸潤が認められた.

Hereditary Papulotranslucent Acrokeratoderma (Focal Acral Hyperkeratosis)

著者: 木村孔右 ,   石橋明 ,   比留間政太郎 ,   久木田淳

ページ範囲:P.991 - P.994

 42歳,主婦.30歳頃より手掌に自覚症のない皮疹が生じ,hereditary papulo—translucent acrokeratodermaと診断された.Acrokeratoderma hereditarium punctatumとは病変の程度の差に過ぎず,focal acral hyperkeratosisとは同症と思われるので,pri—orityを尊重して上記疾患名を使用した.類似症状を示すacrokeratoelastoidosisも同症である可能性を示唆すると共に,degenerative collagenous plaques of the handsとの異同についても述べた.

皮膚病変に伴ったReflex Sympathetic Dystrophy Syndrome

著者: 水谷仁 ,   北出勘治 ,   清水正之

ページ範囲:P.995 - P.999

 手指に皮疹を生じた帯状疱疹例と,細菌感染,抜爪を初期病変とする右第1趾難治性潰瘍例にreflex sympathetic dystrophy syndrome (RSDS)の発症をみた.前者は局所の保温,ステロイド外用により軽快したが,関節の屈曲拘縮は不変であった.後者は局所的な硝酸銀による潰瘍治療により軽快した.疼痛を伴う皮膚病変が治療に抵抗する場合本症を考え,早期診断,治療を行う必要性について述べた.

石灰化上皮腫(腫瘤型)の2例

著者: 赤尾明俊 ,   片倉仁志 ,   亀田洋 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.1001 - P.1004

 症例1:67歳男性.2カ月前より,左耳前被髪部に25×20mmの赤褐色半球状腫瘤を認めた.症例2:65歳,女性.3カ月前より,右前額側頭部生え際に20×17mmの赤褐色半球状腫瘤を認めた.組織は共に典型的な石灰化上皮腫であった.石灰化上皮腫は"通常型"と呼ばれるもののほか,水疱様を呈する特異例(水疱様型)の報告がある.本2例は腫瘤を形成していて,通常型とも水疱様型ともいいがたく,腫瘤型として報告した.この特異な臨床像をとる原因としては,水疱様例と同様に,皮下組織が少ない部位に比較的急速に腫大したこと,水疱様型と比べると,擦過等の外的刺激が少なかったことなどの外的要因が主因と考えられる.顔面,頭部など皮下組織が少なく,骨に近い部位に比較的急速に発育する腫瘤をみた場合には,石灰化上皮腫も考慮せねばならない.

Prostaglandin E1が著効したScleredemaの1例—Scleredema AdultorumとDiabetic Scleredemaの本邦報告例の統計的観察

著者: 安田仁子 ,   伊藤正俊 ,   清水文子 ,   関根万里 ,   岡島晶子

ページ範囲:P.1005 - P.1009

 40歳,男.約20年前より項〜上背に板状硬化局面あり.組織学的に結合織増生を主体とし,線維間にヒアルロン酸の沈着を認めた.75g GTTで境界型を示したが,糖尿病の診断基準には当てはまらないこと,再発性扁桃炎があること,発症年齢が若いことよりscleredema adultorum (SA)と診断.ProstaglandinE1静注により皮疹の軽快をみた.また,SA 51例とdiabetic scleredema (DS)92例の本邦報告例を集計し臨床的相違点を検討した.SA, DSともに性差は認めなかった.20歳未満の発症例はSAでは27%認めるのに対し,DSでは1例も認めなかった.硬化が項,上背,肩に限局するものは,SAでは15%,DSでは92%であった.2年以内寛解例をSAの65%にみるのに対し,DSでは92%が2年以上持続している.

インターフェロン局注によりHSV抗原の消失と腫瘤の退縮を認めた開口部形質細胞症の1例

著者: 中島澄乃 ,   内藤勝一 ,   森岡眞治 ,   岩原邦夫 ,   ,   小川秀興

ページ範囲:P.1011 - P.1015

 74歳,女性の陰部に生じた開口部形質細胞症の1例を報告した.自験例では,典型的な病理組織像の他に,螢光抗体法直接法にて,病変部表皮上層にherpes simplexvirus (HSV)抗原を認めた.5年前より副腎皮質ホルモンの局注,外科的療法,冷凍凝固療法等を反復施行するも再発を繰り返すため,今回,インターフェロンαの局注を試みた.その結果,腫瘤の著明な縮小を認め,同時に扁平化した病変部では,螢光抗体法でHSV抗原の消失を認めた.以上より,本症例では,治療としてインターフェロンαの局注が極めて有効であったこと,また本症の成因としてHSV感染が関与している可能性が示唆されたので報告した.

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編集室だより

ページ範囲:P.940 - P.940

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました,皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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