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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科41巻13号

1987年12月発行

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図譜・546

血管拡張性肉芽腫様外観を呈したAmelanotic Melanomaの1例

著者: 堀内長晴 ,   根本洋 ,   長尾貞紀 ,   飯島進 ,   菅原久栄

ページ範囲:P.1024 - P.1025

患 者 57歳,女性
初 診 昭和58年1月6日

原著

シンナーによる一次刺激性皮膚炎

著者: 青島敏行 ,   久野信一郎 ,   堂阪直子

ページ範囲:P.1027 - P.1030

 18歳,男子の塗装作業中に生じたシンナーによる中毒および皮膚障害を報告した.受傷時の詳細は不明な点が多いが,作業中意識を失って倒れ,床にたまっていたシンナーが衣服につき,それが皮膚に接触したものと思われる.来院時,意識レベルは覚醒しているが見当識障害があり,シンナー臭が強かった.皮膚症状は右肩,背部,右上腕に広い潰瘍があり,右手背,前腕,腰部,大腿部に糜爛が点在,紅斑,水疱も認められる.皮疹が衣服の縫い目,雛に一致して不整形を呈するものもある.水疱蓋組織像は表皮細胞の核濃縮,細胞質の均質無構造化を示すものの,染色性は保たれ,細胞間浮腫は軽度である.本例は翌日には意識回復,1週間後には表皮形成完了し,10日後に退院した.シンナーによる皮膚障害の報告は文献的にも少なく,稀な症例と考えられる.

グルコン酸クロルヘキシジンによる接触蕁麻疹の1例

著者: 杉山朝美 ,   林正幸 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.1031 - P.1037

 グルコン酸クロルヘキシジンによる接触蕁麻疹の1例を経験した.症例は19歳の女性.約1.7%のグルコン酸クロルヘキシジンを使用して手洗いをしたところ,20分後より,前腕から手背にかけて膨疹が出現した.オープンパッチテストでは陰性であったが,スクラッチテストにより紅斑,膨疹が生じ,即時型反応陽性であった.Peroxidase標識抗ヒトIgE抗体を用いて測定した,クロルヘキシジン特異IgE抗体も陽性であった.自験例は,グルコン酸クロルヘキシジンによるⅠ型アレルギー反応で,接触蕁麻疹症候群のstage 1に該当する例と考えられた.さらに,対称構造をとるクロルヘキシジンの半分の構造を有するクロルグアナイドを用いて,オープンパッチテスト,スクラッチテストを行ったが,結果はいずれも陰性であった.

壊疽性丘疹状型Vasculitis Allergica Cutis

著者: 松原三希子 ,   竹重量子 ,   山本綾子 ,   坂本ふみ子 ,   伊藤雅章 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.1039 - P.1043

 16歳,男性.1歳6カ月頃より全身に壊疽性小結節が出現し,瘢痕治癒を繰り返している.粘膜侵襲はなく,全身状態は良好であるが,15年間皮疹の新生が続いている.組織学的に細小血管を中心とする汎血管炎と広範な楔状壊死を示し,vasculitisallergica cutisと診断して経過を観察中である.

薬疹の統計的観察—横浜市大皮膚科の最近8年間における統計

著者: 相原道子 ,   宮川加奈太 ,   内藤静夫 ,   大沢純子 ,   斎藤すみ ,   北村和子 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.1045 - P.1051

 横浜市大皮膚科の1978年から1985年までの8年間における薬疹について統計的観察を行った.患者数は833名で同期間の新患総数の1.58%を占め,1973年の当科統計の1.54%と比較して増加していない.年齢別では50歳台の増加が目立つ.臨床型では発疹症型が増加し,約半数を占めるが,全体としていろいろな臨床型の薬疹がみられる.原因薬剤は抗生剤が最も多く,なかでもセフェム系による薬疹が増加している.臨床型と原因薬剤はある程度の関係がみられるものの一定していない.肝障害は薬疹患者全体の5.3%に合併しているが,大部分は軽症である.投与開始より発症までの期間は発疹症型で2週未満のものが多く,苔癬型では4週以上のものが多い.皮膚試験成績では貼布試験で26.0%の,皮内試験で79.5%の陽性率を示す.紅皮症型,発疹症型,多形紅斑型の陽性率が高く,原因薬剤としては抗生剤の陽性率が高い.以上,最近8年間の薬疹の統計に若干の考察を加えた.

Annular Elastolytic Giant Cell Granuloma—全身型と限局型の2例

著者: 高木肇 ,   市來善郎 ,   加藤文明 ,   柳原誠 ,   森俊二

ページ範囲:P.1053 - P.1057

 症例1:67歳,女性.右前腕,項部の環状紅斑に気付く,皮疹は徐々に腰背部,四肢にも出現してきた.環状の皮疹は境界明瞭で,辺縁は堤防状に隆起し,軽い浸潤を触れ赤褐色を呈する.中心部はわずかに陥凹し,皮膚萎縮と色素沈着を認めた.組織学的検索では,隆起部で膠原線維間に多核巨細胞,組織球が並んで存在し,弾性線維の貪食像を見た.隆起部内側では弾性線維が消失していた.症例2:82歳,女性,数年前から左前額部に米粒大の赤褐色斑を認め放置していたが,数カ月前から拡大し,周辺堤防状隆起を呈する環状紅斑となった.Annular elastolytic giant cell granulomaの全身型と限局型と思われる2例を報告し,若干の文献的考察を加えた.

Subacute Cutaneous Lupus Erythematosusの3例

著者: 中川浩一 ,   辻卓夫 ,   格谷敦子 ,   茶之木美也子 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.1059 - P.1064

 症例1:38歳,男性.2〜3年前より環状の紅斑が顔面,胸部,背部,腎部に出没を繰り返していた.症例2:49歳,女性.約3年前より環状の紅斑が顔面,上肢に出没を繰り返していた.症例3:18歳,男性.約2カ月前にスキーを行ってから顔面,両上肢,背部に紅斑が出現し始め,次第に環状を呈するようになってきた,組織学的検査では3例とも真皮上層のリンパ球主体の細胞浸潤が主要な所見で,螢光抗体直接法では症例3のみlupus band test陽性所見が得られた.臨床検査では,全例においてRA test陽性,抗核抗体陽性,症例3のみ補体値の低下が認められた.また,抗SS-A, SS-B抗体は3例ともいずれか一方が陽性であった.以上の所見より,これら3例をSontheirnerらの提唱するsubacute cutaneous lupus erythematosusと診断した.症例1は抗SS-B抗体単独陽性である点,症例3はSjogren症候群型の環状紅斑を呈した点が特異的な所見であった.

Werner症候群の1例

著者: 北川佳代子 ,   増田光喜 ,   仲弥 ,   多島新吾 ,   原田敬之

ページ範囲:P.1065 - P.1068

 左足外踝部の難治性潰瘍を主訴として来院した49歳女子のWerner症候群の1例を報告した.身長151.5cm,体重45kgで,四肢の強皮症様皮膚硬化,白髪,老人様顔貌,足底の限局性角質増殖,若年性白内障,四肢皮下脂肪および筋の萎縮,糖代謝異常等を示し,典型的な1例と考えられた.自験例ではその潰瘍底に,病理組織学的に著明な石灰化像が認められたが,この石灰沈着はWerner症候群に伴う結合組織代謝異常を基盤として生じたものと推測された.

乾癬様皮疹を呈した川崎病の1例

著者: 川口博史 ,   池澤善郎 ,   大沢純子 ,   吉田貞男

ページ範囲:P.1069 - P.1072

 川崎病(MCLS)の経過中に乾癬様の皮疹が出現した男児例を経験した.症例は9カ月の男児.昭和61年2月,発熱,全身の発疹,口唇の発赤,眼球結膜の充血,手掌の紅斑が出現した.皮疹は尋常性乾癬様で,組織学的にも乾癬様の組織反応であった.アスピリンの内服により発熱,CRPなどの所見は改善され,ステロイド剤の外用により皮疹は速やかに消褪した.MCLSの皮疹として,小膿疱の多発した例は報告があるが,乾癬様の皮疹を呈した例は今まで報告がなかった.また,3歳以下の乳幼児の乾癬は稀であり,その発症メカニズムにMCLSのような感染アレルギーの示唆されている疾患が何らかの関わり合いを持っていることを示す例として興味があり,ここに報告する.

Eccrine Spiradenomaの2例

著者: 木村俊次 ,   繁益弘志

ページ範囲:P.1073 - P.1077

 症例1:42歳,家婦.10年来出現し,1年来圧痛,最近自発痛出現.現症:左肩後面に表面一部褐色調,豌豆大,弾性軟,隆起しない皮下結節が単発.症例2:49歳,家婦.6年来出現.現症:上背ほぼ中央に小豆大,弾性軟,やや隆起する皮下結節が単発.圧痛,ときに自発痛あり.皮表に著変なし.組織所見:いずれもほぼ定型的で,大小2種類の細胞から成る索条を形成するが,症例1では一部に浮腫性変化,症例2では管腔形成傾向が顕著で,一部に2種類の管腔構造を認めた.免疫組織学的所見:中心部のやや大型の細胞の一部が2例ともS−100蛋白陽性であったが,陽性細胞は症例1で2〜3%,症例2で40〜50%であった.また管腔構造の内縁が2例ともCEA陽性を示した.本腫瘍の本邦例と欧米例とを比較し,免疫組織学的所見について若干の考察を加えた.

下口唇に生じたAngioleiomyomaの1例—最近13年間の本邦皮膚科領域,病理学領域および口腔外科領域報告例の検討

著者: 清水文子 ,   小野田進 ,   長村洋三 ,   権柄浩 ,   岡島晶子

ページ範囲:P.1079 - P.1084

 32歳,男.下口唇中央やや右側の口唇紅部から粘膜部にかけての大豆大,ドーム状,暗赤色の腫瘤.自発痛,圧痛なし.組織学的には静脈型.過去13年間の本邦皮膚科領域におけるangioleiomyomaは110例で,その臨床的特徴は,男女比2:3,好発年齢30〜50歳代,発生部位は下肢が約60%,特に下腿が35%と最も多く,自発痛,圧痛は68%,特に下肢例では89%にみられた.口唇部angioleiomyomaの報告例は自験例を含め皮膚科領域8例,病理学領域6例,口腔外科領域9例,計23例で,その臨床病理学的特徴は,男女比2:1,好発年齢30〜60歳代,自発痛,圧痛は記載の明らかな19例中1例に認めたにすぎず,組織型は約69%が静脈型であった.

アポクリン嚢胞腺腫—電顕所見

著者: 麻生和雄 ,   穂積豊

ページ範囲:P.1085 - P.1089

 著者らは最近アポクリン嚢胞腺腫の1例を経験,電顕検索を行った.症例は82歳,男,左頬部腫瘤で病理組織学的に定型像を示した.電顕検索では分泌細胞,筋上皮細胞よりなり,decapitationおよびmerocrine分泌像所見を見,分泌細胞中には分泌顆粒とともにlamellar or filamentous substanceの存在がみられた.本邦電顕観察例では,これまでに自験例のように分泌部由来が示された症例はない.

脂腺母斑上に生じた脂腺上皮腫

著者: 村松勉 ,   白井利彦 ,   北村弥 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.1091 - P.1095

 49歳,女子の左側頭部の脂腺母斑上に発生した脂腺上皮腫の1例を報告した.組織学的にはbasaloid cells様細胞.嚢腫状構造をまじえる好塩基性細胞の胞巣,拡大した汗腺様構造の増殖ならびに表皮母斑の組織像を示す部分よりなり,電顕的には充実性胞巣の部分ではlipidが遊出したと思われる大小の空胞をもつ細胞がみられ,拡大した汗腺様構造を示す部分では,分泌部ならびに汗管の構造がみられ,アポクリン腺様形態を示していた.

膵癌の臍転移例—過去22年間の臍転移本邦報告例の検討

著者: 久本和夫 ,   西岡和恵 ,   太田貴久 ,   松岡俊秀

ページ範囲:P.1097 - P.1102

 臍窩の硬結を主訴として来院した76歳,女子の膵尾部癌の臍転移例について報告するとともに,過去22年間の本邦皮膚科領域における臍転移例38例について統計的に観察し若干の考察を行った.渉猟した限りでは膵癌の臍転移例は1例を除いて原発臓器の確定に先行していた.膵癌の臍転移例は膵体尾部癌である可能性が極めて高いと考えられた.

原発巣が完全自然消褪した悪性黒色腫の小児例

著者: 柴田明彦 ,   森嶋隆文 ,   花輪滋 ,   長島典安 ,   深田栄俊 ,   兼松秀一 ,   鮫島俊朗 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.1103 - P.1107

 原発巣が完全消褪した悪性黒色腫の13歳,女子例を報告した.初診1カ月前,左大腿上内側部の有痛性腫瘤に気付き,初診前日他医で切開術を受け,黒色腫瘤であったため当科を紹介された.切開創部からの滲出液中5—S-CD値は高値で,大腿部腫瘤は黒色腫の転移巣であることが示唆された.唯一原発巣と思われた左膝の黒色色素斑にメラニン産生細胞はなく,メラノフェージをみるのみであった.左大腿腫瘤は,螢光法的にも,病理組織学的にも黒色腫のリンパ節転移であった.術後低値を示していた尿中5—S-CD値は,術後5カ月頃から異常値となり,広汎な転移が予測され,放射線学的にこれを確認し,初診10カ月後死亡した.

胃癌を合併したAdult T Cell Leukemia

著者: 茶之木美也子 ,   濱田稔夫 ,   巽純子

ページ範囲:P.1109 - P.1112

要約 58歳,男,愛媛県出身.全身倦怠感,呼吸困難,瘙痒性皮疹のため入院した.胸部・背部皮膚に紅色から褐色の丘疹が播種状に存在し,両側胸水,軽度肝脾腫を認めた.末梢白血球数10万/mm3,flower cell 87.5%,血清Ca 10.9mg/dl,ATLA抗体 2,560倍,proviral DNA陽性で,染色体異常も認められた.胃透視と胃内視鏡でBorrmannⅡ型の胃癌(tubular adenocarcinoma)が確認された.ATLに対する化学療法を行ったが,患者は3カ月後に下血のため死亡した.背部の丘疹の組織像は,HE染色で真皮の血管,毛包,汗器官周囲に小型から中型の異常細胞が密に浸潤していた.Epidermotropismはなく,浸潤細胞はLeu 1(+),Leu 4(+),Leu 3a+3b(+),Leu 2a(—)でヘルパー・インデューサーサブセット抗原をもつ細胞が主であった.ATLによる細胞性免疫不全状態が胃癌の進展に影響を及ぼした可能性がある.

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編集室だより

ページ範囲:P.1068 - P.1068

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

臨床皮膚科 第41巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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