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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科41巻2号

1987年02月発行

雑誌目次

図譜・536

毛包炎を思わせた手白癬の1例

著者: 佐伯眞理子 ,   西山千秋

ページ範囲:P.102 - P.103

患 者 14歳,女子中学生
初 診 昭和59年3月26日

原著

全身性強皮症患者にみられたPOEMS症候群

著者: 石川治 ,   石川英一 ,   野口哲郎

ページ範囲:P.105 - P.110

 68歳,女.全身の色素沈着,強指症,舌小帯短縮,下腿の剛毛,多発性血管腫などの皮膚症状,多発神経炎による筋力低下,深部反射消失および下腿浮腫,顕著な頸部リンパ節腫脹,胸水,肝腫大が認められ,さらに検査によりエストロン値上昇,神経伝導速度低下,IgA・λ型のM蛋白の存在が明らかとなり,総合していわゆるPOEMS症候群と診断した.また頸部リンパ節は,組織学的に多数のリンパ濾胞様構造を認め,病理学的にhyaline vascular typeのCastleman病と診断された.なお自験例は臨床的にproxi—mal sclerodcrma,強指症,舌小帯短縮を認め厚生省強皮症調査研究班の診断基準案を満足した.組織学的にも,前腕伸側皮膚で真皮上層に膠原線維の限局性膨化と真皮下層に線維化が,背部皮膚で真皮上層に間質性浮腫と下層に膠原線維の膨化が認められ,強皮症の組織所見を呈した.POEMS症候群自体,皮膚硬化,全身の色素沈着が高率に見られることから,全身性強皮症との関連が当然問題となる.今回の報告に見られた全身性強皮症病変は単なる偶然の合併でなく,POEMS症候群そのものが強皮症の類症である可能性がある.

中枢神経症状を呈した全身性エリテマトーデスの1例

著者: 稲守美紀 ,   森田秀樹 ,   浅野翔一 ,   甲斐俊朗

ページ範囲:P.111 - P.114

 精神症状,痙攣,昏睡を主徴としたSLEの1例を報告した.症例は20歳の女性.SLEで入院加療中,熱発と精神症状の出現(過換気症候群,見当識障害,記銘力の低下等)があり,同時期より全身の表在リンパ節の腫脹も出現してきた.臨床症状と諸検査の結果より,ウイルス性脳炎を疑い,抗ウイルス剤,グロブリン製剤を投与したが漸次症状は悪化し,痙攣発作出現,ついには昏睡に陥った.そこで,ステロイドの増量を行ったところ,中枢神経症状は速やかに反応し,軽快をみた.患者は,右上肢のごく軽度の運動障害を残したのみで独歩退院した.頭部CTスキャンでは全経過を通し,器質的変化は認められなかった.中枢神経症状出現時に抗核抗体が高くSLEの活動性が示唆されたこと,ステロイドが著効したこと,血中ウイルス抗体価の特異的上昇がなかったことなどにより,本例はSLEによる中枢神経障害(CNS-SLE)と診断した.

シェーグレン症候群を伴った男子全身性エリテマトーデスの1例

著者: 片山一朗 ,   竹田裕子 ,   上田美紀子 ,   山下紀子 ,   笹井敬子 ,   橋本武則 ,   佐野榮春

ページ範囲:P.115 - P.119

 52歳男子のSLE例を報告した.臨床経過よりDLEからの移行が考えられ,Sjögren症候群(以下SjSと略す)の合併が認められた.SLEに関しては,1982年改訂診断基準11項目の8項目を認めたが,SjSについては眼,唾液腺等の障害は軽度であった.本症例の特微として,①心肺,中枢神経系の臓器障害に乏しかった点,②比較的少量のステロイドでコントロールが可能であった点,③ステロイド非投与時期に血中テストステロン値の低下,エストロゲン値の上昇を認めた点等があげられる,なお本症例においては,慢性膵炎,糖尿病,肝硬変,滑膜嚢腫等の多彩な合併症が見られ,その発症に一部SjSの関与している可能性も考えられた.

小児の水疱症—Juvenile Bullous PemphigoidとLinear IgA Bullous Dermatosis of Childhoodの各1例の報告

著者: 藤田優 ,   築藤玲子 ,   村松千鶴子

ページ範囲:P.121 - P.125

 症例1:1歳6カ月男児.躯幹・四肢に碗豆大の緊張性の小水疱が散在性ないし集簇性に多発,一部環状配列も示す.螢光抗体直接法で基底膜部にIgG,C3の沈着を認め,間接法40倍陽性より,juvenile bullous pemphigoidと診断.症例2:1歳1カ月女児.顔面・躯幹に小指頭大までの水疱が多発,口腔内,口囲,外陰部にも水疱を認め,環状配列も示す.螢光抗体直接法で基底膜部にIgAの沈着,間接法にてIgA抗基底膜抗体10倍陽性よりlinear IgA bullous dermatosis of childhoodと診断.症例1と症例2の臨床像は極めて類似していた.そこで本邦報告例について,その特徴を検討したが,手掌,足蹠の皮疹および口内疹はjuvenile bullous pemphigoidの特徴といえるが,linearIgA bullous dermatosis of childhoodの特微といえるものはなかった.

Eosinophilic Cellulitisの1例

著者: 工藤隆弘 ,   渡辺剛一 ,   石川英一

ページ範囲:P.127 - P.131

 43歳,女性にみられたeosinophilic cellulitisの定型所見を報告した.皮疹は両側上下肢に拇指頭大までの紫紅色の結節が多発して認められた.組織学的には真皮中下層から皮下脂肪織にかけて好酸球の多い細胞浸潤と,変性した膠原線維を組織球,好酸球および巨細胞が取り囲む像(flame figure)を認めた。検査上,末梢血好酸球増多(26%)を認めた.

Transient Acantholytic Dermatosisの2例

著者: 栄枝重典 ,   益田俊樹 ,   池田政身 ,   森三佐子 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.133 - P.139

 症例1:55歳,男性.米粒大から大豆大の黒色丘疹,結節が前胸部に出現し始め,その後,頸部,背部,顔面へと拡大していった.症例2:25歳,女性.瘙痒を伴う半米粒大の紅色丘疹が両手指,両上肢に散在性に出現.両者とも臨床像,組織所見よりtransient acantholytic dermatosis(TADと略)と診断した.症例1ではステロイド外用に反応せずetretinateで加療し軽快中.症例2ではドレニゾンテープによく反応し短期間にて略治した.臨床像および治療効果ともに大きく異なるこれら2症例を報告するとともに,その名称さえ確立されたものとはいい難い本症について文献的に考察した.

水疱形成を伴った多形紅斑がみられた胃癌の1例

著者: 小池俊一 ,   川崎洋司 ,   出来尾哲 ,   地土井襄璽 ,   小笹正三郎 ,   有馬透 ,   林貴史

ページ範囲:P.141 - P.145

 63歳,女性.発熱,全身倦怠感とともに,ほぼ全身に水疱形成を伴う瘙痒を有する紅斑性皮疹が生じた.この皮疹は臨床的,病理組織学的特徴から,多形紅斑と診断された.末梢血検査にて貧血,便潜血強陽性であったため,上部消化管造影,内視鏡検査を施行したところ,Borrmann 4型胃癌が発見された.胃全摘後,特に治療することなく皮疹の経過を観察したところ,皮疹は比較的速やかに軽快した.本症例は,胃癌によって生じた水疱形成を伴う多形紅斑と考えられた.

陰茎硬化性萎縮性苔癬に続発した扁平上皮癌

著者: 田端英之 ,   山蔭明生 ,   石川英一

ページ範囲:P.147 - P.151

 59歳,男.包茎があり,35歳の時,輪状切開術を受けた.29歳頃より陰茎亀頭から包皮下面にかけて淡紅色萎縮斑が発生.48歳の時施行した生検皮膚の組織像は硬化性萎縮性苔癬からロイコプラキーへの移行の像を示した.そして59歳再診時には,臨床的に一部が角化性浸潤局面を呈し,組織学的に扁平上皮癌と確定した.文献的に,硬化性萎縮性苔癬は外陰部に生じた場合,ロイコプラキーを経て外陰癌に移行する頻度が高い.

Familial Woolly Hair—症例の報告

著者: 麻生和雄

ページ範囲:P.153 - P.157

 生下時から,縮毛とhypotrichiaが見られ,Hutchinsonらのfamilial woolly hairの記載に一致すると考えられた3歳4カ月女児例を報告した.妹(1歳)に同症あり,祖父母は血族結婚である.頭髪はwoolly hairの特徴を具えている.爪,歯,その他に異常なく,精神知能健常.3年間経過を観察,woolly hairそのものに変化はないがhypo—trichiaは改善されてきた.

先天性無痛無汗症の1例

著者: 石井則久 ,   宮川淳子 ,   大沢純子 ,   川口博史 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.159 - P.162

 先天性無痛無汗症の1例を報告した.4カ月の女児で,無痛,無汗,自傷行為,発熱が観察された.汗腺組織は正常であったが,種々の発汗試験に反応を示さなかった.本疾患は稀な疾患であり,本邦における統計的観察を行った.

Lymphomatoid Papulosis

著者: 天谷雅行 ,   田中勝 ,   清水宏 ,   原田敬之 ,   西川武二

ページ範囲:P.163 - P.169

 53歳,男.18年来,全身症状を伴わず,躯幹・四肢に自覚症状を欠く新旧の丘疹,結節が播種状に多発し軽快,増悪を繰り返す.光顕的には真皮上層より皮下脂肪織にかけて異型リンパ球様細胞を主体とする稠密な細胞浸潤を認め,核分裂像も散見された.電顕では,これら異型細胞の核には深い切れ込みがあり,細胞質内には比較的豊富なミトコンドリア,リボゾーム,粗面小胞体を有するものも見られた.免疫組織化学にて,これらの異型細胞はLeu 3a陽性,OKT−8陰性でhelper/inducer Tcell由来と考えられた.自験例は臨床的には急性苔癬状痘瘡状粃糠疹に酷似した皮疹を呈し,全身症状を欠き慢性で良性な経過をとるが,組織学的にはlymphoma様の悪性像を呈することからlymphoma—toid papulosis (LP)と考えられた.LPの統一された診断基準は確立されていないが,自験例のような症例は現時点では一応LPと診断整理した上で,将来lymphomaへ移行する可能性も考慮しつつ,長期間follow upする必要があることを強調した.

平滑筋母斑の2例

著者: 勝見伸也 ,   森下美知子 ,   佐藤良夫 ,   清水美津子

ページ範囲:P.171 - P.176

 平滑筋母斑の2例を報告した.症例1:10カ月,女児.左背部の有毛性淡褐色斑.症例2:6カ月,男児.左臀部の限局性多毛.組織学的に両者ともに真皮内に大小の平滑筋束の増生を認めた.平滑筋の母斑性病変に対して種々の名称が用いられてきたが,「平滑筋母斑」が妥当であると考えた.これまでの内外の報告例を集計し,Becker母斑との異同についても考察を加えた.

成人型黄色肉芽腫の1例

著者: 川島香 ,   北畠雅人 ,   石川英一

ページ範囲:P.177 - P.180

 52歳,女性.左頤下部に帯黄色,表面に毛細血管拡張を伴う小結節が単発.組織検査でTouton型巨細胞,異物型巨細胞を含む肉芽腫を認めた.臨床検査所見に異常なし,レックリングハウゼン母斑症の合併はなかった.

Clobetasol 17-Propionate軟膏外用による医原性クッシング症候群の1例—下垂体副腎皮質機能正常化の遅延

著者: 石原隆 ,   土井顕 ,   早稲田則雄 ,   倉八博之 ,   菱川秀夫 ,   大郷典子 ,   宗義朗

ページ範囲:P.181 - P.186

 59歳の女性で広汎な尋常性乾癬治療のためclobetasol軟膏1日7.5〜10gを2年間全身に単純塗布することにより,典型的なクッシング症候群が発症した.血中ACTH,cortisolおよび尿中17-OHCS,17KSは全て測定感度以下で,ITT,rapid ACTH負荷にても無反応であった.Clobetasolを4カ月かけて漸減し中止したにも拘わらずcortisolは依然として測定感度以下で,ITT,rapid ACTH,CRF負荷にても反応性は充分でなく,ACTH・Z刺激や経口ステロイド剤の補償を要した.塗布治療をRinderon VG軟膏®2.5g/日に変更して約7カ月後,体重は徐々に30kg減少し乾癬も改善し,ACTH 71pg/ml,cortisol 10μg/dlと正常化した.Clobetasolによる医原性クッシング症候群の発症は稀ではあるが有り,1週100g以上の連続使用で発症の可能性が示唆されてきた.しかし,本症のように50g前後でも発症の可能性があり,発症後は長期間,下垂体副腎皮質機能抑制が持続するのでwithdrawal shockに注意して漸減することが肝要である.

Tungiasis(スナノミ症)の輸入例

著者: 松井新 ,   神田錬蔵

ページ範囲:P.187 - P.190

 57歳,男性.ブラジルのアマゾン地域を旅行中,右踵部に虫刺様の皮疹に気づき,帰国した時は「靴ずれ」様になっていた.一部を切開したところ多数の卵が集塊状に認められたので丁寧に全摘出し,Tunga penetransと同定した.スナノミ症は南米・アフリカ地方では常識的な疾患といわれているが,我国ではあまり知られていないので,旅行者は注意する必要がある.

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編集室だより

ページ範囲:P.157 - P.157

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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