原著
全身性強皮症患者にみられたPOEMS症候群
著者:
石川治1
石川英一1
野口哲郎2
所属機関:
1群馬大学医学部皮膚科教室
2野口皮膚科
ページ範囲:P.105 - P.110
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68歳,女.全身の色素沈着,強指症,舌小帯短縮,下腿の剛毛,多発性血管腫などの皮膚症状,多発神経炎による筋力低下,深部反射消失および下腿浮腫,顕著な頸部リンパ節腫脹,胸水,肝腫大が認められ,さらに検査によりエストロン値上昇,神経伝導速度低下,IgA・λ型のM蛋白の存在が明らかとなり,総合していわゆるPOEMS症候群と診断した.また頸部リンパ節は,組織学的に多数のリンパ濾胞様構造を認め,病理学的にhyaline vascular typeのCastleman病と診断された.なお自験例は臨床的にproxi—mal sclerodcrma,強指症,舌小帯短縮を認め厚生省強皮症調査研究班の診断基準案を満足した.組織学的にも,前腕伸側皮膚で真皮上層に膠原線維の限局性膨化と真皮下層に線維化が,背部皮膚で真皮上層に間質性浮腫と下層に膠原線維の膨化が認められ,強皮症の組織所見を呈した.POEMS症候群自体,皮膚硬化,全身の色素沈着が高率に見られることから,全身性強皮症との関連が当然問題となる.今回の報告に見られた全身性強皮症病変は単なる偶然の合併でなく,POEMS症候群そのものが強皮症の類症である可能性がある.