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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科41巻3号

1987年03月発行

雑誌目次

図譜・537

小局面状皮疹を呈した皮膚サルコイドーシス

著者: 天野佳子 ,   栗原誠一 ,   古家堯

ページ範囲:P.198 - P.199

〔症例1〕
患 者 71歳,女性
初 診 昭和60年2月25日

原著

色素性乾皮症の1例—剖検所見を含めて

著者: 早川和人 ,   小松威彦 ,   西川武二 ,   栗原誠一 ,   細田泰弘

ページ範囲:P.201 - P.205

 色素性乾皮症A群と考えられた1女子例につき,約17年間の長きに亘り加療,経過観察を行い,死後剖検する機会を得たので報告すると共に若干の考按を加えた.本例は乳児期に光線過敏症にて発症,小児期より顔面に基底細胞上皮腫の多発を認め,23歳にて左頬部に悪性黒色腫が出現,26歳にて死亡した.多彩な神経症状の他,身体,性腺発育不全を有し,最終的にde Sanctis-Cacchione症候群に一致する症例と考えられた.剖検では高度の栄養低下,全身諸臓器の萎縮の他,神経系においては本症候群に関する諸家の記載にほぼ一致する所見を,悪性黒色腫については左肺の他,左顎下,左中頸部リンパ節に転移巣を認めた.本例の死因に関しては,腫瘍死よりもむしろ原病の進展による精神神経症状の悪化によるものと考えられた.

Nonbullous Congenital Ichthyosiform Erythrodermaの1例

著者: 橋本喜夫 ,   石田明美 ,   松本光博 ,   飯塚一 ,   水元俊裕 ,   室野晃一 ,   藤田晃三

ページ範囲:P.207 - P.213

 Nonbullous congenital ichthyosiform erythrodermaの1例を報告した.症例は生後14日,女児.出生時からほぼ全身の潮紅と落屑が著明で,病理組織学的には不全角化を伴った軽度の角質増殖を認めた,電顕では,従来の報告と一致する所見に加えて,表皮細胞間に放出されたlamellar granuleのほかに,中が無構造の径150nmの円形の顆粒も認められた.治療は外用療法のみで経過を観察した.外用剤として10%および20%尿素軟膏単独,レチノイド親水軟膏,ステロイド軟膏と尿素軟膏の混合軟膏を用いて各々の効果を比較したところ,ステロイド軟膏と尿素軟膏の混合軟膏が最も有効であった.そのほか本症の病因やlamellar ichthyosisとの異同につき若干の文献的考察を加えた.

胃癌を合併した全身性エリテマトーデスの1例

著者: 碓井美智子 ,   島本順子 ,   水野正晴 ,   片岡和洋 ,   山本昇壯 ,   前田元道

ページ範囲:P.215 - P.219

 46歳男性のSLE患者で経過中胃癌を合併した症例を報告した.症例は関節痛およびDLE様皮疹にて初発し,全身の関節痛,発熱などの全身症状の発現がみられ,入院時諸検査にてDLEが考えられたが,同時に胃癌を発見され胃全摘術を受けた.手術時,腫瘍はⅡc進行型硬性癌で,P1 Ho N4S2,Stage Ⅳの状態であり,充分なリンパ節郭清は施行し得なかった.本症例に対しステロイド療法は施行しなかったが,術後SLEの急性期の症状は徐々に消褪し興味ある臨床経過を示した.SLEと固型癌との関係について自験例を中心に文献的考察を加え報告した.

硬化性萎縮性苔癬の1例—テストステロン軟膏外用療法の検討

著者: 稲冨徹 ,   落合豊子

ページ範囲:P.221 - P.225

 45歳,男子の左仙骨部に生じた硬化性萎縮性苔癬の1例を報告した.治療として,テストステロン軟膏の外用を行い,臨床的に皮疹の縮小,炎症所見の消褪,また組織学的に浮腫の消失,表皮細胞の増殖,真皮膠原線維の増生を認めた,特記すべき副作用は生じなかった.以上のことから,テストステロン軟膏は硬化性萎縮性苔癬に対して効果があり,従来の治療(副腎皮質ステロイドの外用など)が奏効しない場合,あるいは長期に行えない場合,テストステロン軟膏を本症に対し試みることは価値があると考えた.併せて本邦報告例につき文献的考察を行った.

特異な組織像を示した正中頸瘻の1例

著者: 栗本圭久 ,   岸本武 ,   手塚正

ページ範囲:P.227 - P.230

 正中頸瘻の1例を報告した.症例は8歳男子,前頸正中部の皮下腫瘤およびその部からの滲出液の排出を主訴として来院した.手術により1本の索状物を摘出した.このものは中央に1本の太い管腔,その周囲の多数の腺組織およびこれらを取り囲むようによく発達した横紋筋組織から構成されていた.甲状腺組織はみられなかった.索状物の組織学的検討およびその起源について若十の考察を加えた.

全身性変化を伴った色素性痒疹

著者: 秋田尚見 ,   花田勝美 ,   帷子康雄

ページ範囲:P.231 - P.234

 全身性病変を伴った色素性痒疹の4例を経験した.糖尿病,妊娠,鉄欠乏性貧血等の合併が認められ,うち1例は明らかに下着に接する部位を避けて発現していた.従来の外因説に加え全身性疾患の関与が疑われたが,両者の因果関係は明らかにできなかった.なお,昭和51〜60年に報告された本邦色素性痒疹75例を調査した結果では,全身性病変を伴った例は11例(14.7%)で,全身性疾患の関与も無視し得ないと思われる成績であった.

Sclerosing Lymphangitis of the Penisの1例

著者: 内藤至子 ,   行木弘真佐 ,   斎藤義雄

ページ範囲:P.235 - P.238

 40歳,男性のsclerosing lymphangitis of the penisの1例を報告した.自験例は病理組織学的にはリンパ管由来が考えられ,罹患脈管に対する第Ⅷ因子関連抗原は弱陽性に染色された.文献的検索においても,自験例を含め,本症6例に行われた第VIII因子関連抗原の検索結果は,いずれも陽性ないし一部のみ陽性の所見を呈し,この第VIII因子関連抗原陽性の所見は,本症の特徴の一つである可能性が示唆された.

Etretinateが奏効した膿疱性乾癬Annular型(再発性環状紅斑様乾癬)

著者: 松永佳世子 ,   細川かをり ,   早川律子

ページ範囲:P.239 - P.244

 44歳,男性.37歳より躯幹に鱗屑性紅斑出現.42歳時当科初診.顔面・四肢・躯幹に微細鱗屑を被る紅斑と一部に小膿疱を認めた.組織学的には表皮内への単核球・好中球浸潤と赤血球の漏出を認めた.ステロイド外用剤の塗布,抗ヒスタミン剤,ビタミンB2内服にて効果なく,メドロール4mg/日の内服開始3カ月後より皮疹増悪,環状紅斑となり半粟粒大の膿疱形成著明となった.生検にて角質層に好中球性膿疱とこれに連続するKogoj海綿状膿疱を認めた.全身症状は認めなかった.以上より膿疱性乾癬annular型,即ち再発性環状紅斑様乾癬と診断.Etretinate 50mg/日内服にて皮疹は完全に消褪した.内服中止1カ月後,鼠径部・手関節部に小膿疱を有する点状病変を認め生検にて膿疱性乾癬の再発を確認しetretinateを再投与.現在10mg隔日投与にて皮疹は完全に抑制されている.再発性環状紅斑様乾癬としては本邦第8例目.

腹直筋皮弁を用いて再建した胸部放射線潰瘍の2例

著者: 浦田裕次 ,   中西浩 ,   塙伸太郎 ,   大原国章 ,   浅野さとえ

ページ範囲:P.245 - P.249

 乳癌手術後の放射線照射による潰瘍を腹直筋皮弁を用いて再建した2例を報告した.放射線による皮膚障害は軽症の場合は保存療法で十分であるが,深達性の潰瘍がある場合は手術療法が必要となり,筋皮弁術のよい適応となる,胸部の放射線潰瘍に対しては,従来は広背筋皮弁術が,よく用いられてきた.しかし,1977年Drever1)が腹直筋皮弁術を提唱してから,多数の報告が認められるようになった.腹直筋皮弁は,広背筋皮弁と異なり,術中の体位変換が不要であり,出血する可能性も低く,donor siteへの植皮をしなくても,比較的広範囲を被覆できることなどの利点がある.欠点として腹壁ヘルニア,腹部皮膚の緊張の増強,臍の下方への偏位がある.しかし適応を考慮すれば,非常に有用な術式と思われた.

爪下外骨腫の3例

著者: 金丸哲山

ページ範囲:P.251 - P.254

 爪下外骨腫の3例(9歳女児,21歳男性,10歳男児)を報告した.組織学的には3例とも骨軟骨腫であった,近年,病理組織学的に爪下外骨腫を,骨軟骨腫型と外骨腫型の2型に分類して考える傾向がみられるが,基本的には骨軟骨腫であって,爪甲下という特殊な環境で発育する結果,特殊な臨床像および組織像を呈するものと考えた.

紅色局面上に集簇性に生じた稗粒腫の2例

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.255 - P.258

 症例1:1歳7カ月男児.約3カ月来,特に誘因なく右鼻翼に直径4mmの淡紅色扁平隆起性局面が単発.表面に直径1mm以下の白色小丘疹が約20個存在する.組織学的に被覆表皮との連続性はないが,毛嚢・脂腺との連続性を一部有する角質性小嚢腫が真皮上層に多数存在する.症例2:1歳9カ月女児.約3ヵ月前擦過傷を受けた右鼻翼に約2カ月来6×4mmの淡紅色扁平隆起性局面が単発し,表面に直径1mm以下の白色小丘疹が約20個存在する.本例は液体窒素療法3回で略治.この2症例はHublerらのmilia enplaqueや勝俣・比留間の集簇性稗粒腫に類似するが,それぞれ異なる点もあり,今後症例追加とより進んだ検討が必要と思われる.

皮膚平滑筋肉腫の1例

著者: 宿輪哲生 ,   堀真 ,   西本勝太郎

ページ範囲:P.259 - P.263

 56歳,男性.2年前下腹部中央に皮下硬結が出現し,某外科医院で摘出術をうけたが,2カ月前より手術瘢痕部に一致して皮下硬結が再発した.組織学的には,真皮上層から皮下脂肪織にかけて,紡錘形の核を有する腫瘍細胞の束状増殖がみられたが,血管の増生は認められなかった,腫瘍細胞はvan-Gieson染色で黄染し,Azan-Mallory染色では赤染したため,皮膚平滑筋肉腫と診断した.電顕的にはmyofilament,dense patch,marginal density,basement membraneなどの存在が認められたが,pinocytotic vesicleは不明瞭であった.また自験例の発生母地としては立毛筋が考えられた.

抗腫瘍剤の血管外漏出による皮膚障害について

著者: 松永若利 ,   草場辰哉 ,   市村信一 ,   吉村浩二

ページ範囲:P.265 - P.269

 近年,各種の抗腫瘍剤使用の増加と相まって抗腫瘍剤の血管外漏出に伴う皮膚障害も増加してきている.最近,我々は手背に抗腫瘍剤を点滴中,漏出を来し手術を余儀なくされた2症例を経験したので報告するとともに,併せて当科にて経験した抗腫瘍剤の血管外漏出による皮膚障害患者,23例につき若干の考察を加え報告する.

寄生虫妄想の4例

著者: 千代谷成史 ,   帷子康雄 ,   斉藤宏 ,   石戸谷忻一

ページ範囲:P.271 - P.275

 寄生虫妄想の4例を報告し,考察を加えた.身体的基盤として全例に視力障害があり,3例に「虫が見える」という視覚的異常体験が確認された,また4例とも発症前に小鳥,猫などの小動物との接触機会があり,これらの共通点から,錯視が妄想の発生,保持に影響を与えるものと考えた.また4例中2例は夫婦例であり,寄生虫妄想では極めて稀な2人精神病を呈した.

水痘脳炎の1例

著者: 近藤隆男 ,   梅村忠弘 ,   藤城昇 ,   北川元二

ページ範囲:P.277 - P.280

 昏睡状態に陥ったが,救命し得た水痘脳炎の1例を経験した.症例は22歳の女性で,水痘に中枢神経症状が合併し,意識障害が徐々に進行して昏睡状態になった.気管内挿管をし,全身管理を行いながらγ—グロブリン,Ara-Aなどを投与した.意識障害は徐徐に回復し,後遺症も残らず治癒した.本症例について,若干の考察を加えて報告した.

薬剤

新しい創傷被覆材料DuoACTIVE(DuoDERM)による若干の皮膚潰瘍の治療成績

著者: 笠井達也 ,   細川倫子

ページ範囲:P.281 - P.289

はじめに
 原因の如何を問わず,潰瘍形成を主徴とする皮膚病変は,通常の皮膚科診療上,症例数としては余り多いものではないが,慢性経過をとるものではしばしば治療に難渋し,患者自身はもとより,治療する側にとっても苦痛の多いものである.今回,皮膚欠損部を被覆する新しい医療材料としてDuoACTIVE(DuoDERM)の提供を受け,少数例ではあるが,種々の原因によって生じた皮膚の潰瘍の治療を試み,良好な結果を得たので,その成績の概略を報告する.

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編集室だより

ページ範囲:P.280 - P.280

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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