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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科41巻4号

1987年04月発行

雑誌目次

図譜・538

Papillomatosis Cutis Carcinoides

著者: 林至 ,   田中信 ,   平石英一 ,   長島正治

ページ範囲:P.298 - P.299

患 者 39歳,男性
初 診 昭和59年9月4日

原著

メキタジンによる薬疹の1例

著者: 村野早苗

ページ範囲:P.301 - P.304

要約 61歳,男.メキタジン錠内服5日後より顔面に瘙痒を伴った紅斑が出現,次第に増悪し,躯幹,四肢にも拡大した.初診時,顔面には軽度の浮腫,瀰漫性紅斑と扁平紅色丘疹,躯幹,四肢にはほぼ左右対称性に赤色丘疹が集簇して多発していた.貼布試験陽性,きらに成分貼布試験にてメキタジン陽性であった.メキタジンによる薬疹例は未だ報告をみない.

尋常性乾癬と白斑の合併例

著者: 山田裕道 ,   西川千香子 ,   神野公孝 ,   種田明生 ,   小川秀興

ページ範囲:P.305 - P.308

 24歳で尋常性乾癬に罹患,34歳で白斑の合併をみた73歳女性の症例を報告する.白斑は乾癬皮疹部の辺縁より始まり外方へと拡大し,さらに乾癬と無関係の部位にも生じた.病理組織学的には白斑皮疹部のみならず,乾癬皮疹部においてもメラニン染色陰性,DOPA反応陰性であった.検査所見としてはIgG,IgA高値,抗甲状腺抗体が認められた,治療はステロイド外用とPUVA療法の併用にて乾癬は著明に軽快,白斑部には色素沈着をみている.乾癬,白斑ともにその病像形成に免疫学的機序が考えられており,本症例の如く自己免疫性疾患の素因のある個体に両疾患が合併したことは興味深い,乾癬と白斑の合併例は欧米では若干の報告があるが,本邦では非常に稀有と思われ,症例の検討に加え,乾癬,白斑両疾患の因果関係を中心に若干の考察を行い,両者の関連性を示唆する所見を得た.

Linear IgA Bullous Dermatosis

著者: 檜垣修一 ,   須藤成章 ,   高橋省三 ,   諸橋正昭

ページ範囲:P.309 - P.313

 68歳,女性.3ヵ月前,左上腕に瘙痒性小水疱を生じ,その後,徐々に両上肢・体幹などに拡大.血液検査では,特に異常なし.HLA抗原は,HLA-A9,B40,Cw3を検出.組織学的には,表皮下水疱がみられ,好中球・好酸球・単核球の浸潤が認められた.螢光抗体直接法にて,真皮表皮境界部に線状IgA,C3の沈着をみた.ベタメタゾン3mgで治療を開始し漸減で水疱の新生をみたため,DDS50〜75mgを併用し,瘙痒,皮疹の軽快をみた.臨床的に小水疱を主体としたlinear IgA bullous dermatosis (以下LBD)の症例を経験したので,本邦における統計的検索と若干の考察を加えて報告した.

先天緑内障と高度難聴を合併した劣性栄養障害型先天性表皮水疱症の1例

著者: 中川俊文 ,   稲井優 ,   高岩堯

ページ範囲:P.315 - P.319

 先天緑内障と中耳炎後の高度の難聴を合併した劣性栄養障害型先天性表皮水疱症(recessive dystrophic epidcrmolysis bullosa:RDEB)の1例を報告した.現在まで,このような合併の報告は見られないが,先天緑内障および中耳炎の発症にRDEBが関与している可能性が推察された,また,治療としてはフェニトイン内服を行ったが,水疱形成抑制効果は内服開始後の早期に一時的に認められたのみであり,且つフェニトイン血中濃度が4μg/ml程度においても,眩暈,嘔吐等の副作用が出現し,より高濃度の維持ならびに長期投与は不可能であった.

原発性胆汁性肝硬変とSjögren症候群を合併したCREST症候群

著者: 金子佳世子 ,   月本厚美 ,   尾立冬樹 ,   肥田野信 ,   柴田興一 ,   小幡裕

ページ範囲:P.321 - P.325

 61歳,女性.幼少時よりしもやけができやすかった.Sclerodactylia,レイノー症状,毛細血管拡張,皮下組織の石灰化,食道の緊張低下と軽度拡張などの症状と,免疫学的に抗セントロメア抗体が陽性であることより,CREST症候群と診断された.軽度の肝機能障害も認められ,肝生検の結果と抗ミトコンドリア抗体陽性により原発性胆汁性肝硬変と考えた.口内および眼球乾燥感も出現し,唾液腺造影,ローズベンガルテスト,シルマーテストの結果よりSjögren症候群の合併も認められた.

好酸球性膿疱性毛嚢炎に類似の組織像を示した毛包性ムチン沈着症

著者: 中村聡 ,   広根孝衞

ページ範囲:P.327 - P.329

 59歳,男.約1年前より頬に淡紅色の浸潤性局面が出没してきた.その生検標本では毛包および脂腺の周囲に好酸球とリンパ球から成る稠密な細胞浸潤が存在し,若干の毛包では外毛根鞘に酸性ムコ多糖類の沈着が顕著であるが毛根鞘内への細胞浸潤はごく軽度であり,他の毛包では外毛根鞘に細胞浸潤は顕著であるが酸性ムコ多糖類の沈着は軽度であった.前者の毛包病変を比較的早期の変化,後階の毛包病変をより進行した変化と考えて,本症例を毛包性ムチン沈着症と診断した.発症の約2年後に皮疹の発生は止まり,その後1年間再発はみられない.

骨髄性プロトポルフィリン症の父子例

著者: 水田栄一 ,   山本信二 ,   稲井優 ,   高岩堯

ページ範囲:P.331 - P.335

 Erythropoietic protoporphyriaの父子例を報告した,父親は肝障害,息子は鉄欠乏性貧血を伴っており,赤血球,糞便中protoporphyrinの著増,赤血球螢光現象,光溶血現象,日光過敏症状は両者に認められた.β—力ロチンを投与し,その血清濃度を経時的にhigh perrormance liquid chromatographyにより定量した.血清β—カロチン濃度の上昇とβ—カロチン製剤の安定性との関係について若干の考察を加えた.

多発性皮膚平滑筋腫の1例

著者: 大沢純子 ,   宮川加奈太 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.337 - P.340

 46歳,女性,子宮筋腫の既往のある典型的な多発性皮膚平滑筋腫の1例を報告した.10年前より左前腕伸側に粟粒大から小豆大までの暗赤色丘疹が多発し,徐々に上腕にまで拡大してきた.圧痛,自発痛ともに認められない.病理組織学的所見では,真皮全層に亘って境界不明瞭な被膜のない不規則に交錯する平滑筋線維束の増殖を認めた.腫瘍塊はHE染色でエオジン好性,azan-Mallory染色で赤色,elastica-van Gicson染色で黄色を呈し,抗ミオグロビン抗体によるPAP法で陽性の所見を示した.併せて1985年までの本邦報告例63例につき文献的に検討し,若干の考察を加えた.

Sudoriparous Angiomaの2例

著者: 吉田永子 ,   河内繁雄 ,   山路和彦 ,   斎田俊明 ,   高瀬吉雄

ページ範囲:P.341 - P.344

 1歳女児と5歳男児の下肢に発生したsudoriparous angiomaの2例を報告した.圧痛,局所多汗および局所多毛を伴う,紫褐色,弾性硬の皮下結節で,組織学的にはcavernous hemangiomaに相当する血管の増生とエクリン汗腺の増生が認められた.また,アザンマロリー染色にて間質内に平滑筋線維が認められた.現在までの本邦報告例16例をも含めて,本症の概要について記述するとともに,本症における圧痛の発生に血管平滑筋が関与している可能性を述べた.

Hemangiopericytomaの1例—デスミン,ビメンチンの免疫組織化学的検討

著者: 平野眞也 ,   若林俊治 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.345 - P.350

 60歳男性の手掌に生じたhemangiopericytomaの1例を報告した.光顕的には多数の不整形の管腔周囲に円形ないし類円形の腫瘍細胞が不規則な増殖を示す所見が大部分であったが,一部で血管平滑筋腫で見られるような,紡錘形の腫瘍細胞が管腔を厚く層状に取り囲む像も見られた,電顕的には大部分の腫瘍細胞はpericyteの特微を有していたが,一部でdense body,attachment plateを持ち,平滑筋への分化を示す細胞も見られた.一方,細胞骨格を構成する中間径フィラメントであるデスミン,ビメンチンを免疫組織化学的に観察したところ,大多数の腫瘍細胞はデスミン陽性であり,ビメンチンにも陽性を示した.しかも腫瘍細胞は長い突起を持ら,蜘蛛状の特徴的な細胞形態を示した.光顕的には本腫瘍は比較的診断が困難であるが,デスミン,ビメンチンの免疫組織化学的検索によりその診断が容易となり,特にデスミンが本種瘍の診断に有用と考えられた.

下腿に発生したTrichilemmal Cystの1例

著者: 井原ちひろ ,   中山恵二 ,   中村進一

ページ範囲:P.351 - P.353

 46歳男子の左下腿に発生したtrichilemmal cystについて報告し,併せて自験例を含めた本症の報併例48例のうち,文献的に調べえた40例について統計的に観察した.年齢は19歳から80歳までで,平均46.8歳,性別は男:女は42.5%:57.5%と女性に多く発生する傾向がみられた.大きさは0.5×0.5cmから鶏卵大まで様々であるが,多くは直径は1〜2cmであった.また発生部位は,被髪頭部29例(72.5%),その他11例と被髪頭部の発生例が特に多いが,下肢に発生したものは自験例が本邦報告例第1例目と考えられ報告した.

潰瘍形成および指趾の壊疽を伴った成人T細胞白血病の1例

著者: 出光俊郎 ,   伊藤乾 ,   横道弘直 ,   佐藤功 ,   鈴木千征

ページ範囲:P.355 - P.360

 皮膚および口腔粘膜,咽頭,喉頭に潰瘍形成を認め,さらに指趾の壊疽を伴った成人T細胞白血病(ATL)の1例を報告した.症例は72歳,男性.2年前に顔面,前腕の多発性紅色丘疹を主訴として当科初診.組織像で小円形細胞の表皮内および血管周囲の密な浸潤をみたが,異型細胞はなく,診断未確定のまま一旦軽快.今回は躯幹,四肢に浸潤性紅斑が多発し,個々の皮疹は水疱形成ののち急速に潰瘍化,指趾では壊疽を呈した.組織像では表皮の好酸性壊死と真皮上層の著明な浮腫のほか,異型リンパ球様細胞を伴った稠密な細胞浸潤がみられた.末梢血には特徴的な核の切れ込みを有する異型リンパ球が10%に認められ,抗ATLA抗体陽性であることからATLと診断した.自験例は皮膚病変を伴ったくすぶり型ATLから典型的ATLへ移行した症例と考えられ,その臨床像,組織所見につき考察を行った.

伝染性単核症の1例

著者: 栃原啓子 ,   山口文雄 ,   漆畑修 ,   柱宗孝

ページ範囲:P.361 - P.364

 風疹様の発疹を呈した伝染性単核症の1例を報告した.症例は19歳,女.昭和60年5月3日より発熱,咽頭痛,頸部リンパ節腫脹を生じ,5月4日からパセトシン(AMPC),ボルタレン,エンピナースを内服するも症状改善せず.5月11日,当院耳鼻科受診.血清トランスアミナーゼ高値にて入院となる.5月15日,白血球25,100,リンパ球53%,異型リンパ球32%,EBウイルス抗EA-DR IgG上昇.5月14日,手背に発疹出現し,5月18日には手掌,足底を除き全身に瘙痒を伴う風疹様の発疹で,粟粒大から半米粒大の紅斑および紅色丘疹が多発した.我国の伝染性単核症研究班の報告では,発疹は51.3%と高頻度にみられる.発疹の形態についてはいろいろな報告があるが,我国で報告された発疹を伴う伝染性単核症のうちEvansの診断基準を満たす24例では,その58.3%が風疹様の発疹であり,本例も風疹様の発疹を呈しており,発疹を伴う伝染性単核症では風疹様の発疹の出現頻度が高いと思われる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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