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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科41巻5号

1987年05月発行

雑誌目次

図譜・539

開口部プラスマ細胞症

著者: 大草康弘 ,   長島正治

ページ範囲:P.376 - P.377

患 者 35歳,男性
初 診 昭和60年2月12日

原著

AIDS患者に生じたKaposi肉腫の1例

著者: 清水宏 ,   西川武二 ,   細田泰弘 ,   ,  

ページ範囲:P.379 - P.385

 AIDS患者に生じたKaposi肉腫の1例を報告した.患者は45歳,ブラジル在住白人,男性同性愛者,日和見感染,体重減少,抗HTLV—Ⅲ抗体陽性等からAIDSと診断される.最近1〜2カ月の間に,頸部,躯幹,陰部周囲に赤ブドウ酒色の指頭大小結節あるいは扁平隆起性浸潤局面が約100個多発してきた.小結節は組織学的に真皮を上下に広く押し開くように増生する辺縁比較的明瞭な腫瘍巣から形成されている.腫瘍巣と被覆表皮との間には正常膠原線維層を認める,腫瘍細胞は,核小体が明瞭で大型多形な核を有する内皮細胞様細胞と紡錘形細胞から構成されており,それらが赤血球を有する小管腔を形成するように増生し,組織学的には典型的なKaposi肉腫の像を呈した.諸外国および本邦におけるAIDS患者の発生状況について現状を述べ,またKaposi肉腫を初めとする,AIDS患者に高率に出現することが知られている多彩な皮膚症状について言及した.

母斑細胞から発生したと思われる悪性黒色腫の1例

著者: 飯沢理 ,   加藤泰三 ,   照井正 ,   木村道夫

ページ範囲:P.387 - P.390

 43歳,女性.40歳時,腰部正中部付近に黒色の扁平隆起性の皮疹が出現し,約1年後よりこの一部が盛り上がり出血し易くなった.大きさ2×2cmで,円形の境界明瞭な扁平隆起性黒色局面内右側に,1.2×1.3cmの有茎性で表面に糜爛を呈するame—lanoticな腫瘤がある.その組織像では,黒色腫細胞の浸潤内に母斑細胞のnestがみられ,また扁平隆起性局面と腫瘤との境界部において,母斑細胞の異型性が黒色腫細胞集団に近づくに従って著明になるという所見が認められた.この組織学的所見は母斑細胞から黒色腫細胞への移行を強く示唆するものであり,極めて珍しい症例と考える.また我々の検索の限りでは,本邦における後天性の色素性母斑と悪性黒色腫の合併例は過去20年間に報告がなく,この症例を報告した.

Bowenoid Papulosis of the Genitalia—膣内に白色上皮を合併した症例

著者: 瀬川郁雄 ,   赤坂俊英 ,   丹治修 ,   藤田秀人 ,   武内健一 ,   善積昇 ,   斎藤怜

ページ範囲:P.391 - P.395

 ITPの加療中に生じた26歳女性のbowenoid papulosis of the genitaliaの1例を報告した.外陰部には広範なbowenoid papulosis of the genitaliaの皮疹が認められ,condyloma acuminatum様の皮疹が混在し,さらに膣内に白色上皮を合併し,これらの組織像はすべて,carcinoma in situの所見を示した.いずれの病変に対しても観血的療法を行わず,液体窒素圧抵法にて良好な治療成績を得た.病巣内のpapilloma virusの局在を検討するために,抗bovine papilloma virus抗体を用いたPAP法を行ったところ,外陰部の皮疹と膣内の不全角化細胞の核に一致して陽性所見を得た.また,電子顕微鏡による検索で,外陰部の皮疹の不全角化細胞の核内に直径50nmで高電子密度のvirus-like particleを認めた.

特異な臨床症状を呈した肺癌(扁平上皮癌)の皮膚転移の1例

著者: 斎藤由希子 ,   田中壮一 ,   加藤弘文 ,   岡田慶夫

ページ範囲:P.397 - P.401

 肺癌(扁平上皮癌)の加療中,前胸部に生じたcarcinoma erysipelatodesの71歳男性例を報告した.腫瘍細胞塊を入れた真皮脈管腔は,第VIII因子関連抗原をマーカーとしたPAP法にて検索したところ陰性であり,リンパ行性転移が示唆された.さらに透過型電顕では,腫瘍細胞はトノフィラメントおよびデスモゾームを有し,細胞間隙に多数のmicrovilli様の突起が観察された.

腎細胞癌の皮膚転移の1例

著者: 只木行啓 ,   高橋正昭

ページ範囲:P.403 - P.405

 62歳,女性の左拇指にみられた腎細胞癌の皮膚転移例を報告した.腎細胞癌の皮膚転移は,一般に頭部に多く,拍動性の結節状の臨床像をとるのが特徴とされている.自験例は個疹上は半球状隆起の拍動性,有痛性の結節であり,腎細胞癌の皮膚転移の特徴を有し典型的であったが,その転移部位が極めて稀な四肢末端部で,しかも組織学的な存在部位も稀な真皮下層から皮下組織内へかけてであった.治療は腫瘍を全摘したが,肺転移,脳転移を来し,皮膚転移出現より8カ月後に死亡した.

早期胃癌を併発したSweet症候群

著者: 碇優子 ,   橋爪鈴男 ,   相原満里子 ,   神田秀一 ,   原本泉 ,   芹川宏二 ,   内田博子 ,   田所衛

ページ範囲:P.407 - P.413

 49歳,男.左手関節痛とともに手背に有痛性浸潤紅斑が出現,顔面,項部,四肢に拡大した.末梢血好中球数増加,脂肪肝,糖尿病あり.病理組織学的に真皮に核塵を伴う好中球,リンパ球様細胞の密な浸潤を認め,赤血球血管外遊出,血管内皮細胞の膨化,フィブリノイド変性をわずかに認めた.臨床症状,検査所見はコルヒチン内服にて軽快した.経過中,全身検索にて胃癌を確認,胃亜全摘出術を施行,組織学的にsignet ringcell type,Ⅱb+Ⅱcの早期胃癌であった.術後,軽度の皮疹再燃を認めた.Sweet症候群と悪性腫瘍の合併例の多くは白血病である.白血病以外の悪性腫瘍との合併例は現在まで11例が報告されている.悪性腫瘍合併例について文献的に考察し,また,本症に対するコルヒチン治療について考察を加えた.

肝細胞癌を合併した壊疽性膿皮症の1例—Diflorasone Diacetate軟膏により皮疹の改善を認めた症例

著者: 片山一朗 ,   竹田裕子 ,   上田美紀子 ,   山下紀子 ,   橋本武則 ,   佐野榮春

ページ範囲:P.415 - P.418

 壊疽性膿皮症の1例を報告した.本症例においては原発性肝細胞癌の合併が見られ,経過中免疫複合体の上昇を認め,皮疹の改善に伴いその低下を認めた.併せて施行したリンパ球幼若化反応においてPHA,ConAに対する反応性の低下が見られ,悪性腫瘍に伴った免疫調節機構の異常が本症発症に関与している可能性が考えられた.治療として,diflorasone diacetate(ダイアコート®軟膏)の外用を施行し,速やかな皮疹の改善を認めた.

線状強皮症の1例—病変部線維形成への肥満細胞の関与について

著者: 武田孝爾 ,   浜崎洋一郎 ,   籏持淳 ,   植木宏明

ページ範囲:P.419 - P.423

 28歳男性に生じた線状強皮症の1例を報告する,約10カ月前より左大腿内側から下腿伸側にかけて帯状の褐色硬化局面が徐々に出現してきた.検査成績で抗核抗体,抗DNA抗体,LEテスト(+),RA (+)などの免疫血清学的異常を伴っていた.病変皮膚の肥満細胞数は反対側の正常皮膚より増加していた.さらに病変および正常皮膚より線維芽細胞を培養し,コラーゲン合成能を測定したところ,病変部由来細胞に著明な充進を認めた.本症例の皮膚病変の形成には免疫血清学的異常に加え,肥満細胞が関与している可能性が示唆される.

顕著な局所性石灰沈着を認めた成人皮膚筋炎の1例

著者: 久保川透 ,   石川英一

ページ範囲:P.425 - P.428

 62歳,女子にみられた皮膚筋炎.石灰沈着による皮膚のしこりを初発症状とし来院した.初診時,両側上腕屈側から肘窩にかけて,また両側膝窩の何れも皮下に顕著な石灰沈着を認め,レ線上,網状陰影として観察された.血清カルシウム値正常.皮膚筋炎の診断は顔面,上胸部にみられた紫褐色斑および上腕二頭筋の生検組織像,筋電図所見で決定した.また自覚的に近位筋の筋脱力症状があった.内臓悪性腫瘍の合併はなかった.

Cicatricial Pemphigoid of Brunsting & Perryの1例

著者: 山蔭明生 ,   川島香 ,   石川英一

ページ範囲:P.429 - P.433

 30歳,男のcicatricial pemphigoid of Brunsting and Perryの1例を報告した.頭部・顔面・頸部に初発した激痒を伴う紅斑,水疱を認め,皮疹は瘢痕治癒する傾向がみられた.水疱部皮膚の病理組織像では表皮下水疱を認め,水疱内にフィブリンの析出をみ,水疱底では著明な浮腫と組織球・形質細胞・リンパ球・好中球・好酸球から成る稠密な細胞浸潤があり,真皮上層に毛細血管の拡張を認めた.瘢痕化した皮膚では,組織学的に真皮上層の毛細血管の増生と拡張,膠原線維の増生を認めた.水疱部の螢光抗体直接法では,基底膜層に一致してIgG,C3の沈着を,表皮細胞間にIgGの弱い特異螢光を認め,間接法で患者血中抗基底膜抗体160倍陽性であった.瘢痕化の機序および螢光抗体法所見について文献的考察を加えた.

Self-healing Juvenile Cutaneous Mucinosisの1例

著者: 小林衣子 ,   高島巌 ,   森川玲子 ,   月永一郎 ,   青柳俊

ページ範囲:P.435 - P.438

 6歳,男児.顔面,四肢に小豆大から拇指頭大までの皮下結節が急速に多数出現組織学的に線維芽細胞の増殖とムチンの沈着を認めた.また上背部には瘙痒を伴う皮膚色,光沢を有する小丘疹が集簇性に存在し,組織学的にもlichen myxedernatosusの像を示した.ASO値が高値を示した以外,検査成績に異常なく,甲状腺機能も正常だった.本症例は,1980年Bonerandiらが紹介したself-healing jluvenile cutaneous mucinosisに合致すると考えた.本症とlichen myxedematosusとの関係について論じた.

脛骨前粘液水腫の2例

著者: 藤田優 ,   守田英治 ,   渡辺富美子

ページ範囲:P.439 - P.443

 56歳女,48歳男の脛骨前粘液水腫の2例を報告した.第1例は本症を主訴に来院し,甲状腺機能充進を認め,LATS陽性であったが,第2例ではバセドウ病治療中に発生し,甲状腺機能は正常であり,LATSも陰性であった.本例では電顕的に空胞状を示す粗面小胞体を多数有する線維芽細胞を認め,その内外にムコ多糖を認めた.血清中のhyaluronidase inhibitorは共に陰性であり,螢光抗体直接法では両例共に主にIgMの沈着を真皮乳頭層に認めた,これらのことから文献的考察も加え,本症の発症機序について若干の考えを述べた.

爪甲肥厚および足底部角質増殖を伴ったChronkhite-Canada症候群の1例

著者: 服部瑛 ,   川口修之 ,   本橋豊 ,   高山尚 ,   片貝重之

ページ範囲:P.445 - P.448

 55歳,男性のChronkhite-Canada症候群の1例を報告した.胃・小腸・大腸に亘る消化管ポリポーシスとともに,皮膚科的に脱毛・全身の色素沈着および爪甲異常を認めた.自験例では,爪甲異常が爪甲肥厚であったことと足底部に角質増殖を認めたことが特異的な皮膚症状と思われた.経静脈栄養・蛋白同化ステロイド剤・ステロイド剤等の投与により上記皮膚症状はほぼ消失した.

赤色文身部に異常反応をみた2例—Lichenoid Tattoo ReactionとTattoo Granuloma

著者: 長尾貞紀 ,   伊藤信夫 ,   稲葉鐘吾 ,   飯島進 ,   花田勝美 ,   帷子康雄

ページ範囲:P.449 - P.453

 赤色文身部に異常反応をみた2例を報告した.1例はhypertrophic lichenplanus様の組織像を呈し,lichenoid tattoo rcaction (LTR)と診断した.他の1例は肉芽腫像を呈しtattoo granuloma (TG)と診断した.X線微小部分析の結果,それぞれの症例の文身色素は共にほぼ同様の水銀化合物であることが示された.文身部の異常反応としてTGはしばしば報告されるところであるが,LTRは本邦では未だこの名で報告された例はなく,本稿ではこれを中心に考察し,ほぼ同一の色素で第1例と第2例が異なった組織反応を呈したことについても簡単に言及した.

熱傷瘢痕部に生じたサルコイドーシスの瘢痕浸潤

著者: 格谷敦子 ,   北島淳一 ,   濱田稔夫 ,   出口美智子

ページ範囲:P.455 - P.458

 79歳,女性.10年前,燃えた新聞紙により生じた両下腿および両前腕の熱傷瘢痕部に,2〜3年前より赤味が増してきた.皮疹は瘢痕部に一致し,光沢のある褐赤色丘疹または局面で,やや隆起し軽度凹凸を示す.表面に鱗屑を伴う.組織学的には表皮に著変なく,真皮浅層から中層に著明な類上皮細胞の肉芽腫状細胞浸潤が認められる.乾酪壊死像は認められない.多数の異物型およびラングハンス型巨細胞が存在し,細胞内に重屈折性を示す異物が認められるものもある.抗酸菌染色陰性.67Gaシンチにて両側肺門部にRIの異常集積あり.右眼前房隅角にサルコイド結節存在.検査成績は赤沈亢進以外,特に異常は認められない,以上,熱傷瘢痕部に生じたサルコイドーシスの瘢痕浸潤の1例を報告した.

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編集室だより

ページ範囲:P.453 - P.453

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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