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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科41巻7号

1987年06月発行

雑誌目次

図譜・540

小児の汎発性扁平苔癬の1例

著者: 粟田修子 ,   小林衣子 ,   高島巌

ページ範囲:P.466 - P.467

患 者 9歳,男子
初 診 昭和59年2月6日

原著

Papulovesicular Light Eruptionの統計的観察

著者: 上出良一 ,   沢田俊一 ,   青木育子 ,   横井清

ページ範囲:P.469 - P.474

 Elpernらのpapulovesicular light eruption,堀尾らの小丘疹性日光疹(micro—papular light eruption)に合致する自験15例について統計的観察,病理組織学的検討を行った.臨床的には20〜30歳代の女性に初夏から夏にかけて日光照射後好発し,均一な粟粒大紅色丘疹が主として前腕伸側,手背にみられ,顔面はむしろ稀であった.明らかな"hardening"現象を有するものも見られた.病理組織学的には表皮の海綿状態,時に多房性水疱形成がみられ,真皮では乳頭層の浮腫,浅層の血管周囲性リンパ球浸潤が著明であった.連続切片では,大多数の海綿状態は汗管とは無関係に生じており,発汗の関与を積極的に支持する結果は得られなかった.

AlfacalcidolとFenbufenによる湿疹型薬疹

著者: 宮川淳子 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.475 - P.480

 Alfacalcidolとfenbufenによる湿疹型薬疹の1例を経験した.患者は58歳男性,alfacalcidol, tolperisone hydrochloride, fenbufen内服1週間後より両上腕に皮疹出現,徐々に全身に拡大した.四肢の著明な浮腫性紅斑,発熱,好中球増多を伴い,皮疹消褪後施行した内服試験より,alfacalcidolおよびfenbufenが原因薬剤と考えられた.特に活性型ビタミンD3製剤であるalfacalcidolによる湿疹型薬疹は我々の調べた限りでは未だ報告がなく,興味ある症例と考え,若干の考察を加えて報告した.

トラニラストが有効と考えられた光沢苔癬の1例

著者: 塩原哲夫 ,   新井良子 ,   長島正治

ページ範囲:P.481 - P.484

 8歳の男児の全身諸所に発症した光沢苔癬の1例を報告した.上背部には粟粒大の黄白色丘疹と小脱色素斑とが混在する局面を認め,トラニラスト内服とステロイドの外用により速やかに脱色素斑を残し治癒した.苔癬様組織反応を呈する疾患における本症の位置づけ,脱色素斑の発症機序およびトラニラストの作用機序につき若干の考察を試みた.

Lichen Aureus(Lichen Purpuricus)の5例

著者: 赤木理 ,   多田譲治 ,   神崎寛子 ,   野村直子 ,   赤木正子 ,   片山治子

ページ範囲:P.485 - P.489

 Lichen aureusは10〜30歳台の男性の四肢,特に下肢に好発する.合併症・薬剤など特に誘因なしに,自覚症の殆どない,丘疹要素を伴った黄色〜錆色色素斑を生じ,慢性に経過する.組織学的には,表皮に著変なく,真皮浅層にヘモジデリンを伴い,帯状の密なリンパ球,組織球の細胞浸潤をみるのが特徴である.Purpura pigmentosa chronicaの範疇に入る一つのclinical entityであるが,本邦では稀である.今回我々は,37歳女性の右下肢,55歳男性の両下肢,60歳女性の両下肢,27歳男性の右上肢,10歳女児の右下肢に生じたlichen aureusの5例を報告するとともに文献的考察を行った.

全身性強皮症の経過中に慢性関節リウマチを併発した症例

著者: 水谷仁 ,   清水正之

ページ範囲:P.491 - P.495

 51歳,農婦.進行性全身性強皮症(PSS)の発症5年後にリウマチ性関節炎(RA)を併発した症例を報告した.PSSは抗Scl−70抗体陽性のproximal sclerodermaを有する典型例である.RAはPSSがステロイド投与により軽快を示していた経過中に発症したもので,糜爛性関節炎と関節変形を有するほか,発症と同時にリウマチ因子が陽性化を示し,ARAの診断基準8項目を満足する典型的なものである.特異所見が乏しいRAと,関節症状の高頻度なPSSでは,明らかなオーバーラップと断定出来る症例は少なく,今後の症例集積の指標となりうると考えた.

MCTDとサルコイドーシスの合併例—PGE1の投与によりサルコイドーシスの急性増悪をみた例

著者: 坪井達也 ,   岸本三郎 ,   山田一雄 ,   安野洋一 ,   寒原誠一 ,   中川雅夫

ページ範囲:P.497 - P.502

 48歳,男性にみられたMCTDとサルコイドーシスの合併例を報告した.臨床的には顔面・背部の紅斑で始まり,両手指の浮腫性腫脹,レイノー現象,次いで関節痛と筋力低下が認められた.検査所見ではspeckled typeの抗核抗体陽性,抗RNP抗体陽性,RNase感受性抗ENA抗体高値よりMCTD,さらにBHLと血清ACE値の上昇および皮膚,筋肉,リンパ節の類上皮細胞肉芽腫よりサルコイドーシスと診断した.また,PGE1の投与によりサルコイドーシスが急速に悪化し,PGE1と本疾患発生との因果関係が強く疑われた.

結節性類天疱瘡(Pemphigoid Nodularis)の1例

著者: 山本昌充 ,   堂阪直子 ,   堀口裕治 ,   段野貴一郎 ,   堀尾武 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.503 - P.506

 症例:77歳女性.昭和59年6月頃より,全身に孤立性の充実性丘疹が多発した.皮疹は一時軽快したが,翌年の昭和60年2月初旬より,全身に拇指頭大の水疱が出現し,組織学的および螢光抗体法所見より,水疱性類天疱瘡と診断された.水疱は副腎皮質ホルモン剤の内服にて寛解したが,昭和61年1月に水疱の再燃をみた,経過中,水疱の出現前および消褪後に,四肢と背部に瘙痒を伴う充実性丘疹が多発した,丘疹性の皮疹は組織学的に角質の増殖,表皮肥厚,真皮毛細血管の拡張と付属器周囲の小円形細胞の浸潤を認め,一部には表皮下水疱の形成をみた,また丘疹部では水疱部と同様に表皮基底膜部に線状のIgGと補体(C3)の沈着を認めたが,無疹部ではかすかにIgGの沈着をみたのみであった.以上の所見から,本症を水疱性類天疱瘡の一亜型である結節性類天疱瘡(pemphigoid nodularis)と診断した.

月経前に増悪傾向を示した掌蹠膿疱症

著者: 堀口典子 ,   堀口裕治 ,   今村貞夫 ,   藤井信吾

ページ範囲:P.507 - P.510

 23歳,女性.昭和53年7月7日初診.月経痛,月経不順のため,不明の女性ホルモン剤を服用していたことがある.18歳頃より掌蹠および爪床に膿疱が生じるようになり,組織学的には,角層下のKogoj海綿状膿疱を示した.皮疹は黄体期に悪化し,月経開始とともに軽快する傾向を示した.また,尿中プロゲステロン代謝物の軽度の低値を示した.通常は皮疹の増悪しない卵胞期を選んでプロゲステロン製剤であるノルエチステロン5mgを1回投与したところ,一過性に膿疱が新生した.一方,エストロゲン製剤であるメストラノルの継続投与を行ったところ排卵が抑制され,月経前の皮疹の増悪も抑制された,本症では黄体期に増加するプロゲステロンの好中球に対する遊走能亢進作用により,掌蹠膿疱症が周期的に増悪したものと考えた.

Alopecia Neoplasticaの1例

著者: 田中友紀子 ,   大草康弘 ,   長島正治

ページ範囲:P.511 - P.515

 79歳.女性の乳癌の転移により生じたalopecia neoplasticaの1例を報告した.乳癌切除4年6カ月後に右側頭部に光沢のある1.7×1.5cm,類円形,皮表よりわずかに隆起する境界明瞭,基底とわずかに可動性のある淡紅色の硬い脱毛局面を1個認めた.組織学的には真皮,皮下組織に浸潤する硬癌であり,腫瘍細胞による毛包の破壊,圧迫による萎縮がみられた.腫瘍細胞には電顕的に細線維,細胞質内腺管がみられ,乳癌の転移と診断された,本症の脱毛の機序について腫瘍細胞による毛包の破壊および結合織増生を含めた腫瘍細胞巣による毛包の圧排が考えられた.また原発巣の検索には電顕的検索が極めて有用であることを述べた.

紡錘状有棘細胞癌の1例

著者: 松永若利 ,   吉村浩二 ,   蕭悧悧

ページ範囲:P.517 - P.521

 65歳,女性,左眉毛部の穿掘性小潰瘍を原発巣として,初診時既に耳下腺,頸部リンパ節への転移を認めた紡錘状有棘細胞癌の1例を報告した.初回手術時に根治的腫瘍摘除を施行したにも拘わらず,その後数回の再発を繰り返し,その都度切除術を施行した.本例は病理組織学的にも臨床的にも極めて高悪性度の有棘細胞癌であり,その臨床像および組織学的特徴につき,若干の考察を加えた.

左上肢に限局して多発した皮下型神経鞘腫の1例

著者: 勝俣道夫 ,   折田正人 ,   道川誠 ,   佐野元規 ,   塚越廣 ,   三瓶清恵

ページ範囲:P.523 - P.529

 63歳,女子の左上肢に限局して計33個もの腫瘤が多発した皮下型神経鞘腫の1例を報告した.四肢のしびれ感と左下肢の歩行障害が認められたため全身の精査を施行し,腰椎部の軽度右側への側彎と,第6,7頸神経左側後根硬膜内髄外に2個の神経鞘腫,臍左下方と左方の腹壁筋層内に各1個の神経鞘腫と考えられる腫瘤を認めた.自験例は皮膚型神経鞘腫が多発し,ほかに色素斑や中枢神経等の神経鞘腫を合併するいわゆる多発性皮膚神経鞘腫症とは異なるものの,やはり神経櫛系の母斑症に属する症例と考えられた.またRecklinghausen母斑症とは,自験例の腫瘤がすべて神経鞘腫で,淡褐色の色素斑も少数であることより別症とするのが妥当と思われた.

耳前瘻孔の12例

著者: 栗本圭久 ,   山田秀和 ,   柳原宏四 ,   鈴木雅裕 ,   荒金兆典 ,   手塚正

ページ範囲:P.531 - P.535

 耳前瘻孔は胎生第5週に耳介を形成する6個の耳介結節の癒合不全により起こる疾患である.今回我々は当科を訪れた12例の本症をまとめ報告する.12例のうち男性6例,女性6例で性差は認められなかった,発現部位は両側4例,右側のみ4例,左側のみ4例であり両側性に多くみられるとはいえなかった.家系内発現は同症のみられるものが9例,みられないものが3例であり,不規則(不完全)優性遺伝説に一致していた.組織学的所見は表皮に続く瘻管で,上皮は重層扁平上波,管腔内には比較的密な角質が充満している.瘻管壁周囲には多少の炎症細胞浸潤があり,リンパ濾胞様の構造を示す例もみられた.また,瘻管周囲には毛包と脂腺が多数認められ,管腔に開口する像が散見される.しかも瘻管上部のみでなく末端部でも認められた.本症は合併奇形として副耳,両側側頸瘻,earpit-deafness症候群などが報告されている.

紅皮症に併発したカポジー水痘様発疹症の1例

著者: 藤岡彰 ,   落合豊子 ,   馬場俊一 ,   鈴木啓之

ページ範囲:P.537 - P.541

 症例は62歳,男性.昭和59年3月,背部に瘙痒性皮疹が出現.近医で治療を受けたが漸次全身に拡大したため,同年11月当科を受診し,紅皮症の診断で入院した.ステロイド軟膏の外用療法を主体に治療を開始.入院18日目に突然発熱し,同時に左口角に膿疱を生じた.2日後には顔面全体および体幹に膿疱,糜爛は拡大した.疱膜のウイルス性巨細胞陽性.カポジー水痘様発疹症を疑い,免疫グロブリンの静注を施行したが効果なく,アシクロビルの静注が著効した.カポジー水痘様発疹症の皮疹が軽快してきた時,一時期,紅皮症の皮疹に軽快傾向を認めた.61年3月には帯状疱疹も発症した.諸検査より,自験例をherpes simplex virusの再燃による,紅皮症に併発したカポジー水痘様発疹症と考えた,併発した原因として,皮膚barrierの低下,ステロイド剤の外用,細胞性免疫能の低下が考えられた.

広範囲に皮疹のみられたクロモミコーシスの1例

著者: 小泉雄一郎 ,   山本泉

ページ範囲:P.543 - P.546

 症例は58歳男,理容師.広範に躯幹全周を取り巻いて,両側背部,腹部,左側胸部,臀部,両上腿に境界明瞭な隆起性紅斑局面.右眉毛部,両鼻孔部,左顎下部,左4指にも遠隔病巣あり.直接検査でsclerotic cellを認め,黒色真菌を分離した.分離菌はコーンミール培地ではTorula Poikilosporaと一致する所見であったが,オートミール培地で10週間培養したところ,分生子形成を認め,Fonsecaea pedrosoiと同定した.

Mycetomaの1例

著者: 小松平 ,   長谷川嘉春 ,   加藤安彦 ,   宮井美津男

ページ範囲:P.547 - P.552

 25歳,男.昭和52年交通事故にて右膝蓋部の皮膚を剥離した.昭和55年より同部に膿疱→排膿→痂皮化を繰り返し,昭和60年8月当科初診時には同部に紫紅色の瘢痕様丘疹が散在した手拳大の局面があり,一部には瘻孔,痂皮や鱗屑が認められた.排膿中に黄白色の顆粒を混じ,好気性培養により白色〜黄褐色で皺襞のある隆起性集落を形成し,鏡検にて短桿菌状,一部菌糸状でグラム陽性,且つ抗酸性.生理学的性状から本症例をNocardia brasiliensisによるmycetomaと診断.ST合剤にて皮疹の軽快をみた.

マンソン孤虫症の1例

著者: 早川さゆり ,   小川力 ,   関川弘雄 ,   鷲尾勝

ページ範囲:P.553 - P.557

 16年間に亘り腹部から腰部にかけて移動性の紅色隆起性線状皮疹が出没した60歳,男性例を報告した.皮疹摘出時,虫体を認め,組織内の虫体の構造よりマンソン孤虫と同定,免疫学的検査では,オクタロニー法は陰性,間接螢光抗体法では陽性を示した.最近のマンソン孤虫の集計を試み,統計的観察を行い,潜伏期間と病悩期間について若干の考察を付け加えた.

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編集室だより

ページ範囲:P.552 - P.552

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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