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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科41巻8号

1987年07月発行

雑誌目次

図譜・541

Verruciform Xanthoma

著者: 長尾洋 ,   赤木芳文

ページ範囲:P.566 - P.567

患 者 72歳,男性
初 診 昭和61年5月7日

原著

Linear IgA Bullous Dermatosis of Childhood

著者: 寺本輝代 ,   長瀬早苗 ,   樋口道生 ,   苅谷英郎 ,   滝内石夫

ページ範囲:P.569 - P.573

 9歳,男児.顔面,体幹,四肢にジューリング疱疹状皮膚炎を思わせる,瘙痒を伴う小水疱の環状配列をみる紅斑と,手大までの辺縁隆起性の紅斑が多発し,組織学的に,表皮下水疱と真皮乳頭部に好中球を主体とする微小膿瘍を認めた.螢光抗体直接法にて,表皮真皮境界部にIgAの線状沈着がみられた.免疫電顕による観察でIgAは主としてbasal lamina直下のanchoring fibrilに沈着していた.好酸球増多あり,KI貼布試験は陰性,HLA抗原型はB51,BW56,DR2,DR4,上部消化管の内視鏡検査は正常だった.DDS50mg/日投与後皮疹の改善をみたが,溶血性貧血を来したため,DDSを減量し症状をコントロールした.口蓋扁桃肥大を認めASO,ASK高値であったため扁桃摘出術を行ったところ,血清補体価の急激な低下をみ,DDS投与を中止するも1カ月後に皮疹は消褪し,その後1年経過するも症状の再燃はない.

慢性リンパ球性白血病患者に合併したNecrotizing Fasciitisの1例

著者: 戸田則之 ,   荒瀬誠治 ,   滝脇弘嗣 ,   中西秀樹 ,   白神皞 ,   高橋秀夫

ページ範囲:P.575 - P.578

 55歳,男性.慢性リンパ球性白血病で加療中,左大腿部に突然疼痛を訴え,ショック状態になり緊急入院.入院当日,左下肢は全体にやや腫大し,大腿後面ほぼ全体に比較的境界明瞭で一部紫色調を帯びた淡紅色斑を認め,激しい圧痛を訴えた.翌日,紅斑はさらに拡大し,中心部は出血を伴い境界明瞭な紫紅色斑となり,3日後には同部が壊死に陥った.入院2日目に病変内よりブドウ球菌を証明,臨床および検査所見より本症をnecrotizing fasciitisと診断し,抗生剤の大量投与ならびにsurgical debridementを繰り返したが死の転帰をとった症例について報告した.

エノキサシンによる光線過敏症の3例

著者: 松井千尋 ,   高橋省三 ,   諸橋正昭

ページ範囲:P.579 - P.582

 エノキサシン内服により惹起された67歳男子,59歳男子,60歳男子の光線過敏症例を報告した.エノキサシン内服中の2例に光線照射試験を施行したが,UVAおよびUVB両領域で光線過敏反応を示した.うち1例での光貼布試験は陰性であった.全例が潜伏期間を有していること,再投与時の症状の再燃が投与後速やかにみられたことから,本症は光アレルギー性反応による発症機序が推定された.

新潟大学皮膚科における最近6年間の円形脱毛症の統計的観察

著者: 森下美知子 ,   佐藤良夫 ,   永井透 ,   勝海薫 ,   横山博之 ,   山崎龍彦

ページ範囲:P.583 - P.587

 昭和53年から58年の6年間に新潟大学皮膚科を受診した円形脱毛症患者661人を集計した.性差なく20歳代をピークに各年代に分布した.病型別頻度は通常型,全頭脱毛症,汎発性脱毛症,ophiasis型の順で,家系内発生は22.4%に,爪の変化は24%にみられた.アトピー疾患,自己免疫疾患の合併もみられた,小児例では重症型が多く,家系内発生,爪の変化が高率にみられ,家系内発生や合併症を有する症例,初発年齢が低い症例が予後不良であった.

Primula obconicaによる苔癬型色素沈着性接触皮膚炎の1例

著者: 大沢純子 ,   吉田貞夫 ,   川口博史 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.589 - P.592

 66歳,主婦.初診の1年前より両手背に瘙痒性皮疹が出没するようになったが,その都度ステロイド外用にて略治していた.昭和61年3月頃より皮疹は両手背から前腕,頸部,顔面にまで拡大した.皮疹は浸潤を伴った暗赤色の紅斑および青褐色の色素沈着で,組織学的には典型的な苔癬型反応を呈した.初めは苔癬型薬疹などを疑ったが,薬剤の服用歴なく,問診により2年前桜草を購入し,1年前より手入れをするようになったことが判明した.パッチテストによりPrimula obconicaの花・葉・茎で陽性を示したことより,Primula obconicaによる苔癬型色素沈着性接触皮膚炎と診断した.

リチウム製剤投与中乾癬様皮疹の増悪をみた1例

著者: 花田勝美 ,   秋田尚見 ,   橋本功

ページ範囲:P.593 - P.596

 小児神経症で長期間,断続的に炭酸リチウム製剤の投与を受けていた11歳,女子で,その投与時期にほぼ一致して繰り返し乾癬様皮疹の増悪をみた例を報告した.併せて,リチウムと乾癬に関する文献的考察を行った.

高度黄疸患者にみられた緑色あるいは橙色の汗疱

著者: 石井晶子 ,   飯島正文

ページ範囲:P.597 - P.599

 高度の黄疸を呈する38歳男子の掌蹠に,緑色あるいは橙黄色の点状色素斑および小水疱が多数生じた.これらは黄疸の軽快と共に約10日後には消褪した.組織学的には軽度のspongiosisを認めたが,汗疱の病変部と汗管との連続性は認められなかった.汗疱の発症機序,表皮への血中ビリルビンの侵入機序について若干の考察を行った.

Palisading Granulomaの組織像を呈したマンソン裂頭条虫症

著者: 向井秀樹 ,   刀祢毅 ,   岩崎雅 ,   伊藤洋一 ,   吉原正明

ページ範囲:P.601 - P.605

 50歳,主婦の左前腕内側部に生じたマンソン裂頭条虫症を報告した.一般的に,本症は臨床的に他の疾患を疑い,生検により虫体を検出し診断されることが多い.今回,我々は臨床的に種々の良性腫瘍を考え,生検にてpalisading granulomaの組織像を呈し,血液および尿検査より糖尿病を証明したことから,皮下型の環状肉芽腫を考えた.しかし,同組織内に多数の好酸球がみられたため,寄生虫症を疑い各種皮内および血清反応を施行.その結果,マンソン裂頭条虫症と診断した.生検6カ月後に,再発した皮下結節より虫体を証明した.本症の組織像は,好酸球を伴う非特異的肉芽腫とされているが,自験例の如きpalisading granulomaを呈することも稀にあり,その際には寄生虫症も念頭におくべきと考えた.さらに,本症の診断に皮内および血清反応が有効であることを強調したい.

瀰漫性扁平黄色腫の1例

著者: 辻岡馨 ,   米澤郁雄 ,   堀口裕治

ページ範囲:P.607 - P.610

 60歳,女性の上眼瞼,頸部,上背部,腋窩に出現した正脂血症性の扁平黄色腫の1例を報告した.黄色腫形成の要因として,3回に亘る薬疹という局所的要因と,histio—cytosis Xが疑われた内臓病変に関連する何らかの血清因子の関与が考えられた.

Superficial Spreading Capillary Hemangioma

著者: 石田明美 ,   飯塚一

ページ範囲:P.611 - P.613

 51歳男性の足底,56歳女性の手掌に生じた,Miharaら1)が提唱したsuperficial spreading capillary hemangiomaに一致すると思われる2例を報告した.組織学的には真皮乳頭ないし乳頭下層に限局した毛細血管の小葉状の増生という特徴的な像を示していた.自験2例とMiharaらの1例は,中年以降に掌蹠に発症した点が共通していた.

多発したWarty Dyskeratoma—症例報告と本邦例集計

著者: 白井康文 ,   白井絹江 ,   尾口基

ページ範囲:P.615 - P.619

 51歳,男性.多発したwarty dyskeratomaの1例を報告した.左頸部に半米粒大の半球状,中心に陥凹を有する淡黄褐色小結節が,右耳下部に米粒大のわずかに隆起した淡褐色小結節がみられた.組織像は両者とも同一であった.即ち,病変は表皮が嚢状に陥凹して,中心部に角栓を入れ,その周囲は結合織に囲まれたカップ状を呈していた.その底部では基底層〜基底層直上層が真皮に向かって絨毛状となり,当該部に棘融解が著明で,不規則な裂隙が形成されていた.また,異常角化細胞がみられ典型的であった.自験例を含めた本邦報告例22例について統計的観察を行い,若干の文献的考察を加えた.

Bowen病様組織変化を示したHidroacanthoma Simplex

著者: 野崎重之 ,   上田宏一 ,   実川久美子 ,   佐藤昌三 ,   安西喬

ページ範囲:P.621 - P.624

 67歳,女性の臀部に生じたhidroacanthoma simplexの1例を報告した.病理組織学的に腫瘍巣は表皮内に限局するが,一部の腫瘍胞巣では腫瘍細胞の核の大小不同,細胞配列の乱れが顕著で,核の異型性,核分裂像,clumping cellなどBowen病様変化を認めた.1963年から1985年までに報告された本邦例で,核または細胞に異型性がみられたeccrine poroma 7例,自験例を含めたhidroacanthoma simplex 7例について臨床および病理組織につき考察した.その結果,異型性のみられた例では異型性のみられない例より腫瘍の好発年齢は高く,腫瘍に増大傾向を認めた.さらにeccrine poromaでは下肢に好発し腫瘍がやや大きい,hidroacanthoma simplexでは局面状皮疹に腫瘤形成するなどの特徴がみられた,また,これらの症例にみられた細胞または核の異型性の意義について考察を加えた.

粘膜苔癬より生じた頬粘膜有棘細胞癌の1例

著者: 武村俊之 ,   荒井亮鈴 ,   木裕介 ,   向井秀樹 ,   衛藤光 ,   古山登隆 ,   烏飼勝行

ページ範囲:P.625 - P.628

 54歳,女.初診より2年前に口腔粘膜に発赤を伴う糜欄局面あり,組織学的に粘膜苔癬と診断外来にて加療するも改善傾向を認めず,その後通院中断.2年後に,右頬粘膜の腫瘤を主訴に再び来院.組織像から,粘膜苔癬上に生じた有棘細胞癌と診断した症例を報告する.治療として広汎全摘術を施行し,局所再発,全身転移の徴候なし.扁平苔癬が悪性化したとする報告は現在まで150例に及ぶ.なかでも口腔粘膜に,臨床的に糜欄,潰瘍を呈するものに悪性化が多い.その誘因として不適切な治療,カンジダ感染,機械的刺激などがあげられる.さらに皮疹発生から悪性化までの期間は,平均2年と比較的短い.したがって,難治性潰瘍が慢性に経過する場合には悪性化することに十分留意すべきと考えた.

Xeroderma Pigmentosum Variant群の顔面に生じたPedunculated Lentigo Maligna Melanoma—カラースライドによる初期病変および拡大様式の観察

著者: 深田栄俊 ,   柴田明彦 ,   鈴木秀明 ,   花輪滋 ,   長島典安 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.629 - P.635

 左頬部に悪性黒色腫,右頬部に悪性黒子の発生をみたXP variantの37歳,女性例を報告した.自験例で興味あることは,悪性黒色腫が悪性黒子を基盤として生じ,臨床所見,病理組織学的所見はpedunculated malignant melanomaのそれに一致していたことである.換言すればpedunculated lentigo maligna melanomaと称すべき症例である,カラースライドをもって初期病変の性状を検討したところ,左頬部の悪性黒色腫の発生母地と考えられる色素斑は少なくとも8年前に存した不規則の淡褐色,小色素斑であり,右頬部の悪性黒子は12年前では楕円形の淡褐色,小色素斑であることを確認した.

眼瞼結膜より生じた悪性黒色腫の2例

著者: 金丸哲山

ページ範囲:P.637 - P.641

 皮膚粘膜以外に発症した悪性黒色腫を経験することは皮膚科医にとってあまり多いことではない.今回,眼瞼結膜発症と思われる2例を経験する機会を得たのでここに報告する.症例1:82歳,男.急速に増大する右下限瞼の黒色腫瘤を主訴として当院眼科初診,同時に皮膚科併診となる.右眼球および瞼結膜に黒褐色で辺縁比較的明瞭な色素斑が存在し,瞼結膜には有茎性の小指頭大の腫瘤形成を認めた.悪性黒色腫の診断のもとに,DTIC・ACNU・vincristineの三者併用療法1クール修了後,姑息的に腫瘤基部切断術および断端部凍結療法を施行した.症例2:39歳,女.初診1カ月前に右眼球結膜の淡褐色色素沈着ならびに瞼結膜部の小結節に気付く.病理組織学的にlentigo maligna mela—nomaと診断した.

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編集室だより

ページ範囲:P.641 - P.641

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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