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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科41巻9号

1987年08月発行

雑誌目次

図譜・542

成人男子頸部に多発した伝染性軟属腫

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.652 - P.653

患 者 32歳,男子
初 診 昭和61年8月29日

原著

重症の糖尿病を伴い急性間質性肺炎にて死亡した皮膚筋炎の1例

著者: 下江敬生 ,   妹尾明美 ,   梅村茂夫 ,   小玉肇 ,   野原望

ページ範囲:P.655 - P.659

 58歳,女性.10年前より糖尿病にて治療中.眼囲の浮腫性紅斑を初発とし,急速に頸部,胸部,四肢関節部に皮疹が拡大.全身倦怠感,関節痛などの症状も伴った.関節部には難治性潰瘍を形成した.コルチコステロイド投与にて一時的に全身症状軽快するも,次第に糖尿病が悪化し,急激な呼吸器症状,PaO2の低下を来し,発症後4カ月で間質性肺炎にて死亡した.CEAの上昇はあったが悪性腫瘍の合併はなかった.重症の糖尿病を基礎疾患にもち,急性間質性肺炎にて死亡した皮膚筋炎の1例を報告する.

特異な皮膚症状を呈したHypereosinophilic Syndromeの1例

著者: 藤原愉高 ,   中北隆

ページ範囲:P.661 - P.664

 30歳,女性臨床的には発熱と共に生じる脂肪織炎様の浸潤性紅斑,繰り返し出没する膿瘍およびその治癒後に形成される陥凹局面を特徴とし,末梢血好酸球増加,IgE高値,筋酵素の上昇を伴う.組織学的には真皮浅層から筋層に亘る広範な血管周囲性の好酸球浸潤を認めた.自験例は従来報告されているhypereosinophilic syndromeに記載のない特異な皮膚症状を呈したのでここに報告する.

Etretinate内服が有効であったTransient Acantholytic Dermatosis

著者: 北畠雅人 ,   石川英一 ,   内山安弘

ページ範囲:P.665 - P.669

 Etretinate内服が有効であったtransient acantholytic dermatosisの1例を報告した.70歳,男性.10年来,体幹,四肢に瘙痒性紅色皮疹が出没.臨床的に米粒大までの小さな紅色丘疹,水疱が頭部,顔面,掌蹠を除く全身に播種状に多発し,組織学的には棘融解細胞を含む表皮内水疱で,螢光抗体法で皮膚に免疫グロブリンの沈着を認めず,血中IC抗体は検出されなかった.Etretinate 1日25mg投与で,1カ月後には皮疹は消褪し,新生も認められなくなった.

家族性皮膚アミロイドーシス

著者: 川口博史 ,   黒沢伝枝 ,   増田智栄子 ,   中嶋弘 ,   亀田洋 ,   早川律子

ページ範囲:P.671 - P.676

 4世代15人に及ぶ家族性の皮膚アミロイドーシスを経験した.発端者は67歳男性で,初診約25年前より四肢に瘙痒性角化性丘疹が出現していた.組織学的,電顕的に真皮上層にアミロイドの沈着を認めた.全身性アミロイドーシスを疑わせる所見は認められなかった.当科を受診した8名の血縁者のうち7名にアミロイド苔癬があり,組織学的にアミロイドの沈着を認めた.家族性皮膚アミロイドーシスは諸外国で10家系,我国で4家系の報告があるのみで,我国において4世代に及ぶ家族歴が明らかにされたのは自験例が初めてと思われる.

自然退縮を示した先天性皮膚組織球増殖症—Congenital Self-healing Reticulohistiocytosis(Hashimoto & Pritzker)とは異なる1例

著者: 正橋寿子 ,   高橋伸也 ,   森下由美子

ページ範囲:P.677 - P.685

 出生時から全身に100個に及ぶ結節と多数の赤褐色斑のみられた男児を経過を追って観察した.皮膚以外に病変を認めず,結節は生後18日頃から退縮し始め,2.5カ月では大部分が平低化し,7カ月では数個を残すだけであった.臨床経過はcongenital selfhealing reticulohistiocytosis(CSR)に似ていたが,電顕ならびに免疫組織化学的所見に重要な違いがみられた.電顕上,自験例の腫瘍細胞には桿状の小器官が多数みられたが,超微形態は典型的なLangerhans cell(LC)顆粒とはかなり異なっていた.また,抗S-100蛋白抗体に対して経過を通じて陰性を示した.これらの所見は,CSRの腫瘍細胞はLC顆粒を有し,S-100蛋白が陽性であるとする近年の報告と異なる.自験例とCSRとの違いを明らかにするとともに,組織球増殖症における自験例の位置付けを試みた.

高IgE症候群の1例

著者: 杉田泰之 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.687 - P.692

 8歳,男児.生後3日頃より全身に瘙痒性皮疹が出没.昭和58年12月13日,胸部腫瘤にて当院小児科へ入院.全身の痂皮を伴う紅色丘疹と膿疱のため同月17日当科を受診.手術により胸部腫瘤は黄色ブドウ球菌(黄色ブ菌)性のcold abscessと判明し,その後も同部位にcold abscessが再発した.ほかに膿痂疹や中耳炎および肺炎をしばしば併発し,どれからも同様に黄色ブ菌が分離され,また鷲口瘡や指のカンジダ性爪炎と爪郭炎および体幹四肢の皮膚カンジダ症が増悪と軽快を繰り返した.検査所見では好酸球5〜9%,血清IgE9,800〜17,700IU/ml,RAST検査でダニ,ハウスダスト陰性,卵白,カンジダはscore2と陽性を示した.以上の所見より本症例を高IgE症候群と診断し,若干の文献的考察を加えた.

Nonvenereal Sclerosing Lymphangitis of the Penisの1例—その発症病理について

著者: 重本尚 ,   石井晶子 ,   土田哲也 ,   関利仁 ,   玉置邦彦 ,   今村哲夫

ページ範囲:P.693 - P.697

 45歳,男,独身.初診の2週間前に陰茎冠状溝後縁左側に索状硬結が出現した.自覚症状なし.いわゆるnonvenereal sclerosing lymphangitis of the penisと診断した.病理組織像,PAP法による第Ⅷ因子関連抗原の染色により罹患脈管が静脈であると示唆された.発症病理について考察し,何らかの原因で弁をもつ静脈が閉塞し,その末梢側に拡張が起こるものと考えた.

Warty Dyskeratoma—初期変化を伴った1例の報告

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.699 - P.703

 63歳男子.右頬部に単発したwarty dyskeratomaの1例を報告した.約半年前から出現した小豆大,軽度隆起性,境界比較的明瞭な小腫瘍で,中央には灰褐色でやや陥凹する角栓様構造を有し,ときに瘙痒を訴える.組織学的に近接する3個の毛嚢に一致して,不全角化性角栓,corps rondsを含む異常角化細胞,基底層直上の裂隙形成基底細胞様細胞の増殖をみる.これらの変化は3個の毛嚢間で程度に差があり,初期のものでは毛嚢漏斗部に裂隙形成がみられ,基底細胞様細胞増殖もごく軽度である.本例にみられた初期変化から,本腫瘍は基本的には毛嚢漏斗部由来と考えられる.病因としてウイルス説は否定できない.また本邦報告例23例について欧米例と比較した.

Arteriovenous Hemangiomaの1例

著者: 内山紀子 ,   松井雅彦 ,   山路和彦

ページ範囲:P.705 - P.708

 53歳,男性.約30年前より右背部および左腰部の2カ所に生じたarteriovenoushemangiomaについて報告した.2カ所共ほぼ同様の組織像を呈しており,真皮全層,一部皮下脂肪織まで大小多数の血管が密に存在し,血管壁の厚さは厚いものから薄いものまで種々である.腫瘍の下方には,リンパ濾胞が比較的多数みられ,宿主の側の何らかの免疫反応を思わせた.

Sinus Histiocytosis with Massive Lymphadenopathy

著者: 村上静幹 ,   石川英一

ページ範囲:P.709 - P.714

 58歳,女性に発症したsinus histiocytosis with massive lymphadenopathyの皮膚病変を経験したので報告する.初診1年半前より,両側頸部,肩甲部上部に皮下結節が出現.頸部結節の一部は当科初診前,試験切除され病理学的にsinus histiocytosis withlymphadenopathyと診断された.初診時,右側頸部,両側上背部皮下に鳩卵大までの圧痛を伴わない境界明瞭な可動性のある硬い結節を認め,自覚症状はなかった.さらにGaシンチグラム上,左上眼窩,鼻腔内に皮下結節と同様にGaの異常集積像が認められ,類似病変の存在が疑われた.当科で検索した左肩甲部皮下結節の組織像では,不完全な線維性被膜内に,S−100蛋白陽性組織球の稠密な浸潤を認め,その一部にリンパ球および赤血球の貪食像がみられた.皮疹はその後,一部自然退縮した.

眉部に皮下膿瘍を生じた前頭洞膿嚢胞の1例

著者: 高橋千恵 ,   宮内東光 ,   田辺正博 ,   田林徳昭

ページ範囲:P.715 - P.717

 患者は73歳,女性.初診時に左上眼瞼から眉部にかけて腫脹がみられ,皮下に境界不鮮明な軟骨様硬度をもつ隆起を触れた.約1週間後,波動を生じたため切開し,その後も排膿が続くため耳鼻科を併診し,前頭洞膿嚢胞の診断を得た.前頭洞や節骨洞において,自然孔の閉塞によって粘液嚢胞が生ずることがあり,細菌感染を合併している場合は膿嚢胞と呼ばれる.前頭洞は眼窩に接しているため,嚢胞が大きくなると,眼窩上壁,内壁が圧迫吸収され,眼球突出,複視などの眼症状が現れることが多い.自験例は前頭洞膿嚢胞が眼窩上壁を破壊して眼窩内に侵入するとともに,眉部皮下にも突出して皮下膿瘍を形成した珍しい症例である.

手指に発生したBowen癌の1例

著者: 佐藤俊次 ,   木村康隆 ,   早稲田豊美 ,   新井克志 ,   鈴木忠彦

ページ範囲:P.719 - P.722

 70歳,女性の右第3指指背に発生したBowen癌の1例を報告した.組織学的に古谷ら6)の報告したBowen癌の組織像にほぼ一致し,Bowen病組織像の中で一部において真皮内への腫瘍細胞の浸潤を認め,また団塊様増殖を示していた.病変は全切除後,全層植皮にて治療した.昭和61年11月現在,再発は認めていない.

新生児ヘルペス

著者: 北川伸子 ,   北村えみ ,   大川幸三 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.723 - P.725

 患者は生後8日の女児生後4日目に右頭頂部に水疱が出現し,徐々に皮疹の拡大,増加がみられたため,当科へ入院した.入院後,水疱内容のTzanck test,螢光抗体法でherpes simplex virus Ⅰ型が同定され,新生児ヘルペスと診断した.治療は最初,アシクロビル外用のみより開始したが,徐々に皮疹が拡大してきたため,アシクロビル点滴の併用を行い,順調に軽快,退院した.しかし,その後,2回の頭部の水疱の再然をみたが,アシクロビル点滴にて,軽快している.アシクロビルによる副作用はみられなかった.

クロモミコーシス—長期観察例

著者: 高瀬孝子 ,   上野賢一

ページ範囲:P.727 - P.733

 前に報告した症例1)であるが,その後多発性の病巣を生じてきたので再び報告する.前回の報告の要旨:初診は昭和55年1月(62歳),茨城県在住の農婦.その後通院しなくなり,再診は昭和58年12月(66歳),左手背に局面性病巣を認めた.痂皮内にscleroticcells (+).組織内菌要素を認め,培養でExophiala dermatitidisを分離した.5—FC内服,約5カ月で瘢痕治癒した.治療中,左手背に自家接種病巣を認め切除その後,局所再発はなかった.その後の経過:昭和60年3月(67歳),前頸部に皮疹を認め,これを切除した.菌要素陽性.培養は不成功.5—FC4カ月内服.昭和61年1月(68歳),右前腕・右下腿・左足背に直径1cm位の局面性病変,痂皮内にsclerotic cells (+).すべて切除.菌要素陽性,培養でE.dermatitidisを分離した.表在リンパ節腫脹を認めず,全身の検索で異常所見を認めなかったことから,後発病巣を自家接種によるものと考えた.

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編集室だより

ページ範囲:P.659 - P.659

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました,御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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