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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科42巻1号

1988年01月発行

雑誌目次

図譜・547

妊娠に合併した色素分界線条の2例—日本人およびインドネシア人

著者: 内山紀子 ,   進藤泰子

ページ範囲:P.6 - P.7

〔症例1〕
患 者 32歳,日本人女性
主 訴 腹部,両下肢の色素沈着

原著

Subacute Cutaneous Lupus Erythematosusの1例

著者: 高橋慎一 ,   清水宏 ,   原田敬之 ,   西川武二 ,   田久保浩

ページ範囲:P.9 - P.13

 37歳,男.Sontheimerらの提唱したsubacute cutaneous lupus erythematosus(SCLE)のannular-polycyclic typeに一致する皮疹を有する症例を報告した.全身症状を欠き,検査所見で抗核抗体陽性,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体陽性を示した.皮膚病理組織所見では,表皮基底細胞層の液状変性および真皮上層の血管・付属器周囲性にリンパ球浸潤を認めた.Lupus band testは陰性.皮疹は副腎皮質ステロイド含有クリームの外用のみで瘢痕を残さず色素沈着,色素脱失を残し軽快したが,その後処々に環状紅斑の出没を繰り返し,またシェーグレン症候群(SjS)を思わせる検査所見を示した.自験例はSCLEとSjSの環状紅斑の関連を示唆する症例と考えられた.

Systemic Lupus Erythematosusに併発した多発性皮膚線維腫の1例

著者: 浦亜紀子 ,   仲弥 ,   西川武二

ページ範囲:P.15 - P.18

 Systemic lupus erythematosus (SLE)にてステロイド剤内服中に四肢,胸腹部に赤褐色丘疹が計57個多発し,組織学的に皮膚線維腫と確診された47歳,女性例を報告した.SLEに伴う多発性皮膚線維腫は最近,欧米において報告され注目されているものの,本邦においては未だ報告をみず,自験例が本邦初例と思われる.また欧米における本症の既報告10例につき,統計的に検討したところ,全例女性で,下肢から躯幹,上肢に拡大する傾向が認められた.

稗粒腫様丘疹を伴ったClear Cell Syringoma

著者: 竹重量子 ,   山本綾子 ,   猪股成美

ページ範囲:P.19 - P.23

 59歳,男性の両上下眼瞼,頬部に生じたclear cell syringomaの1例を報告した.自験例の特徴は臨床的に,比較的大きな扁平丘疹と稗粒腫様白色小丘疹の2つの要素が混在する点であった.組織所見上,扁平丘疹は真皮上・中層のclear cellの胞巣が集塊を形成しているのに一致した.稗粒腫様小丘疹は,角質物や無構造物を内容とする大小の嚢腫であり,その構造的特徴より汗管由来の嚢腫と考えた.また本邦報告例について検討し,本症が通常型汗管腫に比較して,1)皮疹がやや大型のものが多いこと,2)発症年齢がやや高いこと,3)糖尿病の合併が非常に高いことが分かった.

鬱滞によると思われる下腿の皮下脂肪織炎の3例

著者: 黒瀬信行 ,   五十嵐敦之 ,   五十棲健 ,   大河内仁志 ,   石井晶子 ,   土田哲也 ,   関利仁 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.25 - P.31

 最近我々は,長年に亘る下肢静脈瘤に伴う浮腫の経過中に,下腿の板状硬結ないし皮下結節を来した同様な臨床像,組織像を呈する3症例を経験した.これらはWeber—Christian病,Rothmann-Makai症候群,結節性紅斑,硬結性紅斑,血栓性静脈炎,ステロイド後脂肪織炎等と鑑別可能であり,木村らの報告した,"静脈鬱滞によると思われる下腿の皮下脂肪織炎"と同一の範疇に属する病態と考えた.その成因として静脈瘤に起因する循環不全による脂肪壊死が考えられた.Stasis dermatitisの臨床像を呈するものは少ないが,同様の機序が働いていることが示唆され,これらの病態をstasis panniculitisとしてまとめうる可能性があるものと思われた.

壊死性遊走性紅斑の1例

著者: 金子佳世子 ,   肥田野信 ,   上村誠 ,   大庭義人 ,   鎮目和夫 ,   宮川高一

ページ範囲:P.33 - P.37

 55歳,男性.7年前,膵腫瘍,多発性胃潰瘍のため膵頭,胃・十二指腸,胆嚢切除術施行.2年前から下肢,臀部に落屑性紅斑が出現している.血中グルカゴン高値,低蛋白血症,下痢,正球性正色素性貧血,低アミノ酸血症,耐糖能異常などを認めた.皮膚所見は壊死性遊走性紅斑と診断されたが,グルカゴノーマは発見できなかった.経過中,Stevens-Johnson症候群を併発したため高カロリー輸液を施行したところ,検査値の正常化に伴い皮疹も軽快し,再発をみない.膵頭,胃切除後の消化吸収不良により引き起こされた著しい低栄養状態を背景に出現した皮疹と考えた.

Follicular Mucinosis—特発型と症候型の比較検討

著者: 長谷哲男 ,   金秀沢 ,   馬場直子 ,   宮本秀明 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.39 - P.43

 3例の特発型,1例の症候型のfollicular mucinosisについて比較検討した.症候型の1例は悪性リンパ腫に伴ったものであり,皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)の特徴を示した.即ち,多発性であり,組織学的にはポートリエ微小膿瘍が認められ,免疫組織化学ではLeu 3a陽性のCD3, CD4型腫瘍であった.特発型の3例と比較すると,形質細胞,リゾチーム陽性細胞は多かったが,S−100蛋白陽性細胞は減少していた.好酸球浸潤については特発型の1例にも認められた.表皮向性も特発型の1例において認められた.これら4例の検討を通してHempsteadらの説,即ちfollicular mucinosisは疾患名でなく毛嚢脂腺系の特徴的組織変化を表す組織学的用語としての意味を持つにすぎないとの説について検証した.

足底に生じた悪性黒色腫の典型例および疑診例—スタンプ螢光法と病巣中5-S-cysteinyldopa測定による確定診断

著者: 兼松秀一 ,   森嶋隆文 ,   花輪滋 ,   鮫島俊朗 ,   柴田明彦

ページ範囲:P.45 - P.48

 臨床的に足底の結節型悪性黒色腫が疑われた67歳,女性例(症例1)と37歳,男性例(症例2)の確定診断のために,スタンプ螢光法と病巣中5-S-CD値測定が行われた.症例1では病巣表面からのスタンプ螢光法で,多数の螢光性黒色腫細胞がみられ,術中の病巣割面からのスタンプ螢光法でも同様細胞が確認され,病巣中5-S-CD値も高値であり,悪性黒色腫と診断しえた.症例2では病巣表面から,また病巣割面からのスタンプ螢光法で,螢光性腫瘍細胞はみられず,病巣中5-S-CDも検出不能で,黒色腫は否定的であった.病理組織学的所見は出血を伴った毛細血管拡張性肉芽腫であった.以上,病巣表面からのスタンプ螢光法は黒色腫の術前診断法として,病巣割面からのスタンプ螢光法および病巣中5-S-CD値の測定は術中診断法として有用であることを再確認した.

温熱療法と放射線療法の併用療法を行った悪性黒色腫の2例

著者: 松吉徳久 ,   井手山晋 ,   田中俊宏 ,   宮地良樹 ,   今村貞夫 ,   平岡真寛 ,   西村恭昌

ページ範囲:P.49 - P.53

 2例のmalignant melanomaに対して温熱療法と放射線療法を施行した.症例1では温熱療法にはradiofrequency波を用い,放射線療法にはコバルトを用いた.また効果判定はCT-scanにより行った.症例2では温熱療法にはマイクロ波を用い,放射線療法にはβ-トロンを用いた.また効果判定は触診により行った.併用療法により症例1はno regression,症例2はcomplete regressionという結果を得た.症例2について若干の組織学的検討を加えた.

von Recklinghausen病に併発したMalignant Peripheral Nerve Sheath Tumorの1例

著者: 上田貴子 ,   倉増隆司 ,   川村正昭 ,   前田和男 ,   高橋博之 ,   神保孝一

ページ範囲:P.55 - P.61

 34歳,男性.生来,von Recklinghausen (R)病に罹患している.右上腕の皮下腫瘤が最近6力月間で急激に増大し,全切除を行った.臨床像および組織学的所見より,malignant peripheral nerve sheath tumorと診断した.免疫組織化学的に腫瘍細胞の起源はSchwann細胞が示唆され,電顕下ではSchwann細胞由来の腫瘍細胞と線維芽細胞様の細胞とが観察された.

Roseola Pigmentosaの2例

著者: 三上幸子 ,   三上英樹 ,   田崎理子 ,   橋本功 ,   石戸谷忻一

ページ範囲:P.63 - P.67

 Roseola pigmentosaの2症例を報告した.いずれも特徴的な臨床像を呈し,症例1では経過中,扁平苔癬様皮疹の出現をみた.組織学的に紅斑部は苔癬様組織反応,色素斑部は組織学的色素失調を呈し,また症例1の紅斑部における螢光抗体法直接法ではコロイド小体にIgM,C3,C4,fibrinogen,表皮真皮境界部にIgM,C3,fibrinogenの沈着をみた.これらの所見は本症が類似疾患であるashy dermatosis,lichen planus pigmentosus等と同一の範疇にあり,また扁平苔癬のvariantであるという考えを示唆するものと思われた.

イブプロフェンが原因と考えられたToxic Epidermal Necrolysis(TEN)の1例

著者: 谷口雄一 ,   小堀幸子 ,   青木重信 ,   平本力 ,   井上俊一郎 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.69 - P.73

 53歳,女.イブプロフェン(ブルフェン)を2週間以上内服中にベンザエースを服用後,口腔内の発赤と水疱が出現した.さらに,リンコシンとスルピリンの筋注も追加投与されたのち,全身の皮膚の紅斑と水疱に気付いた.臨床および組織所見からtoxic epidermal necrolysis(TEN)が診断された.TEN型薬疹は最重症型の薬疹であり,致命率も非常に高いが,本症例はステロイド大量投与と抗生物質,高カロリー輸液によって幸いにも救命することができた.イブプロフェン(ブルフェン),ベンザエース,スルピリン,リンコシンのパッチテストを試行したところすべて陰性であった.リンパ球幼若化試験ではイブプロブェン(ブルフェン),ベンザエースがcontrolより2倍程度の値を示したが,陽性と決定し難かった.なお本邦におけるTENの報告例と自験例について若干の考察を加えた.

紫外線(UVA)の反復照射によって皮疹の誘発をみた種痘様水疱症の1例

著者: 戸村敦子 ,   真家興隆 ,   高橋伸也

ページ範囲:P.75 - P.79

 8歳,男児の種痘様水疱症例において,Dermarayを用いて紫外線照射試験を行い皮疹の人工的誘発を試みた.その結果,患児においては,UVA 1回照射量17.6J/cm2を24時間おきに連日3日間照射した部位に水疱形成が認められたが,UVA 52.8J/cm2を1回で照射した部位では紅斑が生じただけであった.UVBの最小紅斑量(MED)を連日2日間照射した部位には水疱形成はみられなかった.なお,同じ条件で正常女児にUVA照射を施行したが紅斑および水疱は生じなかった.誘発された水疱の組織像では表皮内および表皮下に水疱が形成され,水疱内には変性,壊死性表皮細胞とフィブリン様物質の析出がみられ種痘様水疱症の組織所見とほぼ同様であった.また,本疾患においての紫外線による人工的皮疹誘発について文献的考察を併せ行った.

優性栄養障害型表皮水疱症の単発型の2例

著者: 村松勉 ,   白井利彦 ,   波床光男 ,   飯田孝志 ,   坂本邦樹 ,   新家興

ページ範囲:P.81 - P.85

 家系内に同症を認めない,3歳の女児および2歳10カ月の男児の表皮水疱症の2例を報告した.両症例とも出生時より,外力の加わる部位に水疱,糜爛が出現し,電顕にてdermolysisが認められた.指趾の癒着ならびに歯牙病変はみられず,約3年間の経過観察中に水疱形成は減少し,自然軽快傾向が認められた.両症例とも単発型の優性栄養障害型表皮水疱症と診断した.

皮膚Rhodococcus感染症の1例

著者: 伊東佳子 ,   高橋誠

ページ範囲:P.87 - P.90

 80歳女性の右下眼瞼内側に存在する,膿瘍を伴う腫瘤より,非常に稀な菌種であるRhodococcus bronchialisが分離された.組織学的に,菌要素の証明はなされなかったが,真皮から皮下組織にかけて,単核球細胞浸潤を伴う泡沫細胞の集簇を認め,黄色腫の組織像を呈し,Rhodococcus infectionと黄色腫の成因との関係の面で非常に興味がもたれた.自験例の病変部は種々の薬剤に抵抗性であり,最終的には手術的治療が適当であると考えられた.Rhodococcusは,人においてはまだ,その病原性が明確にはされていない菌種であるが,過去の文献的考察および自験例より,少なくとも人の皮膚に対しては病原性が存在すると考えられた.

一卵性双胎の第Ⅱ児のみに見られた先天性皮膚カンジダ症の1例

著者: 猪狩由美子 ,   神山修 ,   長尾貞紀 ,   飯島進 ,   吉松宣弘

ページ範囲:P.91 - P.94

 先天性皮膚カンジダ症の1例を報告した.患児は生後2日,男児で,一卵性双胎の第Ⅱ児である.前期破水あり,破水52時間後帝王切開にて出生した.生下時より背部全体に膿疱が播種性にみられ,直接鏡検,培養でカンジダが同定された.第Ⅰ児には皮疹が認められなかった.5—FC内服,ナイスタチン外用で約8日で治癒した.

これすぽんでんす

Crow-Fukase症候群—小林氏の論文を読んで

著者: 繁益弘志

ページ範囲:P.96 - P.96

 本誌41巻11号「Crow-Fukase症候群の1例」を大変興味深く拝読致しました.
 本症候群は御指摘のように,1968年,深瀬らによる「多発性神経炎,内分泌症状を伴うplasma cell dyscra—sia」の報告を以て本邦の嚆矢とするようです.その後,類似症例が相次ぎ,これに注目した高月ら1)により,同様の症例の調査・集積がなされ,一つの症候群として把握すべきであることが提唱されると同時に,外国では深瀬らの報告以前にCrowの報告が見出されたという経緯もまた御指摘のとおりと思います.

繁益弘志氏へ

著者: 小林衣子

ページ範囲:P.97 - P.97

 本症候群における血管腫の発現頻度は,進藤ら1)の集計で54例中9例,Nakanishiら2)の統計においても特に記載はなく,通常稀な所見と考えられています.自験例においても,腹部に帽針頭大の老人性血管腫と思われる血管腫を1個認めたのみでした.このため論文中3)には記載しておりません.したがって繁益氏のごとく血管腫の臨床的重要性を強調し過ぎるのも,その発症における興味の点などを別にして,無理があるのではないかと考えます.

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編集室だより

ページ範囲:P.53 - P.53

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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