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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科42巻10号

1988年10月発行

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図譜・556

Clear Cell Eccrine Carcinoma

著者: 島田耕司

ページ範囲:P.886 - P.887

患 者 42歳,女
初 診 昭和58年8月24日

原著

骨髄性プロトポルフィリン症の1例—β-carotene内服療法

著者: 車地祐子 ,   佐藤吉昭

ページ範囲:P.891 - P.896

 14歳,男.9歳頃より日光過敏症状あり.初診時,顔,手背に多数の小瘢痕および色素沈着を認めた.血液中,糞便中のプロトポルフィリンは著しく増加していたが,尿中ポルフィリン体は正常であった.赤血球螢光,光溶血現象ともに陽性で,400nm単色光照射により皮疹が誘発された.本例にβ-carotene(Phenoro)内服療法を行い,その血中濃度の推移と,症状の改善および皮疹誘発の抑制との関係について検討した.その結果,本剤75mg/dayの1〜2週間内服で急性皮膚症状の出現は完全に抑制され,その臨床効果は内服中止後も2,3週間持続した.この間,患者はほぼ健常人並みの生活が可能であった.以上より急性皮膚症状の抑制には,血中の総carotene濃度を400〜600μg/dl以上に保つことが必要と思われた.

穿孔型環状肉芽腫—我国の統計事項を中心として

著者: 花田裕子 ,   森嶋隆文 ,   佐藤和三

ページ範囲:P.897 - P.902

 27歳,女性の穿孔型環状肉芽腫の定型例を報告.自験例で特異なことは環状病巣にも穿孔を思わせる臨床所見を認めたことである.我国の本症10例について統計的観察を試み,以下の結果を得た.1)罹患年齢や性差は通常の環状肉芽腫と差はない.2)病型:限局型よりも汎発型に多い傾向がある.3)穿孔皮疹の臨床像:丘疹型では中心臍窩を有し,鱗屑や痂皮が付着し,ときに小水疱様ないし膿疱様外観を呈する.潰瘍型では爪甲大からピンポン玉大の浸潤局面で,辺縁や局面内に米粒大前後の黒色痂皮,小陥凹や小孔を認める.4)病理組織学的所見(穿孔機序):palisading granulomaが表皮直下に位置することを特徴とする.丘疹型では変性膠原線維の経表皮性排除機構を示し,潰瘍型では表皮が壊死に陥って潰瘍を形成し,変性膠原線維を直接排除する.5)合併症:糖尿病が潰瘍型の2例,丘疹・潰瘍型の1例に合併,丘疹型では糖尿病の併発はなかった.

混合性結合組織病から全身性エリテマトーデスへの移行例—Urticaria-like Lesionsと中枢神経症状を伴った1例

著者: 佐々木哲雄 ,   杉本純一 ,   稲谷真 ,   宮本秀明 ,   相原道子 ,   片倉仁志

ページ範囲:P.903 - P.907

 42歳,女性.混合性結合組織病(MCTD)として経過観察中,関節痛の増強,抗DNA抗体,抗Sm抗体の陽性化,血清補体価の低下を認め,全身性エリテマトーデス(SLE)への移行と診断し,43歳時よりプレドニゾロン内服を開始した.45歳時より葬麻疹様紅斑の出没あり,組織学的にleukocytoclastic vasculitisの所見を認めた.47歳時よりCNSループス,48歳時より顔面紅斑,49歳時より上腕,体幹に浸潤性紅斑が出現し,後者の皮疹は組織学的に血管炎の像を呈した.腎症は伴わないものの活動性が高く治療にも抵抗性のSLEで,しばしば血中免疫複合体が陽性となり,上記症状と並行した.MCTDを細分類して,その経過を検討することの必要性を示唆する症例と思われた.

食道粘膜剥離を生じた尋常性天疱瘡,殊に表層性解離性食道炎について

著者: 斉藤範夫 ,   鈴木秀明 ,   樋口由美子 ,   花輪滋 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.909 - P.914

 表層性解離性食道炎の基礎疾患が尋常性天疱瘡であった27歳,女性例を報告した.尋常性天疱瘡患者における食道粘膜吐出例の特徴は以下のように要約される.1)いずれも女性罹患例である.2)吐出時,口腔粘膜病変をみるのみで,皮膚病変は略治の状態である.3)前駆症状として悪心・嘔吐,咽頭痛,胸骨痛や嚥下困難などがみられ,突然,紐様構造物を吐出し,吐出後に出血やショック症状はみられない.4)吐出物は全長25〜30cm,灰白色,半透明,薄膜様,紐状ないし筒状の構造物である.5)病理組織学的には基底層あるいはその直上より剥離した重層扁平上皮で,棘融解細胞を認め,免疫病理学的には粘膜上皮細胞間にIgGの沈着を認める.6)血中抗表皮細胞間抗体価は一般に低値である.7)コルチコステロイド内服に速やかに反応し,約2週後に上皮化する.

小児の汎発性膿疱性乾癬

著者: 荒川謙三 ,   赤木理 ,   金本昭紀子 ,   大森祥夫

ページ範囲:P.915 - P.920

 1歳11カ月の男児の汎発性膿疱性乾癬の症例を報告した.患者は生後間もなくよりステロイド外用剤を使用していたが,気管支炎が引き金となり全身に紅斑,膿疱が出現し,高熱が持続.各種治療に抵抗し体重も減少するためetretinateを使用したところ,急速に皮疹および全身状態の改善が見られた.しかし投与中,肝酵素の急速な上昇が見られたが,減量により速やかに正常化したため,投与が継続できた.自験例の問題点を中心に挙げながら,小児の汎発性膿疱性乾癬の治療,特にetretinateによる治療について述べる.

皮膚病変を伴った全身性アスペルギルス症の1例

著者: 片山治子 ,   安田英己 ,   森安惟一郎

ページ範囲:P.921 - P.925

 肺結核に続発したアスペルギルス性肺膿瘍から全身播種を来し,皮膚病変を生じた全身性アスペルギルス症の1例を報告した.症例は43歳の女性,皮疹は掌蹠のみに多発する浸潤性紅斑で,膿疱化するものがある一方で自然消褪するものもあった.組織学的には真皮内の限局性の肉芽腫で,PAS染色で肉芽腫の中に少数の菌糸が認められた.皮膚組織片の培養にて,原因菌はAspergillus fumigatusと同定された.AmphotericinBと5FCの併用療法にも反応せず,短期間のうちに死亡した.過去の,皮膚病変を伴う全身性アスペルギルス症の本邦報告例についても簡単に述べた.

乾癬の液体窒素凍結療法

著者: 麻生和雄

ページ範囲:P.927 - P.931

 乾癬局面性皮疹を綿球に浸した液体窒素で水疱が生ずるように数秒凍結した.乾癬20症例151局面で凍結療法後に73個(48%)の局面は1〜5カ月再発をみることなく皮疹が消失した.即ち5カ月以上18,3カ月以上25,2カ月以上20,1カ月以上10局面が寛解している.寛解局面は色素脱失と辺縁の色素沈着を残した.凍結療法の軽快局面は43個(28%),無効局面は35個(28%)である.凍結療法は,チガソン,メトトレキセート,PUVA療法,外用ステロイド療法の乾癬維持療法の併用療法として価値ある治療法と考えられた.

Wegener肉芽腫症—いわゆるPustular Vasculitis像を呈した1例

著者: 宮本裕 ,   木藤正人 ,   樋口定信 ,   東家倫夫 ,   吉田重彦 ,   浜田哲夫

ページ範囲:P.933 - P.937

 28歳女子のWegener肉芽腫症の1例を報告した.皮疹で特徴的なことは,四肢伸側,臀部,肘,膝などの関節背面に膿疱が初発したことと,下腿にみられた皮疹の一部に直線状の配列をなすものがあり,いわゆるケブネル現象を示していると考えられたことである.また,膿疱は病理組織学的に表皮内膿疱および膿疱直下の真皮の血管炎からなり,いわゆるpustular vasculitis像を呈しており,Wegener肉芽腫症においてもpus—tular vasculitisがみられたことは,興味ある所見と考えられた.治療はcyclophosphamideとcorticosteroidの併用療法を行い,自験例ではcyclophosphamideが奏効し,良好な経過をとったと考えられた.また自験例では発症から診断までの期間が約6カ月と比較的短期間であったことと,早期に治療を開始することができたことが,腎炎などの重篤な症状への進展を阻止できた理由と考えられた.

14q+マーカー染色体陽性を示した皮膚B細胞リンパ腫の2例

著者: 柳川茂 ,   柵木信夫 ,   金子安比古 ,   桜井雅温 ,   三比和美 ,   高山昇二郎

ページ範囲:P.939 - P.946

 症例1:83歳,男.左下腿の手拳大皮下腫瘤を主訴に来院.症例2:68歳,男.右脚の多発性皮下腫瘤,睾丸腫脹を主訴に来院.いずれも,NHL,diffuse,large celltype,皮膚原発B細胞リンパ腫と診断した.共に化学療法が効果を示しながらも,髄膜浸潤にて予後不良の経過をたどった.また,腫瘍細胞の染色体分析を行い,2例に共通して悪性リンパ腫に特徴的な14q+マーカー染色体を認め,症例2においては,バーキット型リンパ腫に特徴とされるt (8;14)(q24;q32)(8番,14番染色体長腕の相互転座)がみられた.染色体分析の意義につき述べると共に,皮膚原発B細胞リンパ腫の臨床像,予後,治療につき,若干の考察を加えた.

Multicentric Reticulohistiocytosisの1例

著者: 馬場直子 ,   宮本秀明 ,   長谷哲男 ,   池澤善郎 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.947 - P.950

 60歳,女性.昭和54年頃から,指DIP関節の変形と圧痛が出現し,次第に手・肘・膝の関節痛を来し,昭和59年12月頃から,手背・頭頂部・耳介・顔面に粟粒大,紅色の隆起性小結節が出現した.手背および額の小結節より生検した病理組織像は,真皮に大小不同の単核または多核巨細胞が稠密に浸潤しており,典型的なmulticentric re—ticulohistiocytosisと診断した.免疫組織学的所見では,巨細胞のlysozyme (+),α1antichyrnotrypsin (+),S100蛋白(—),OKT6(—),OKIa−1(—),Leu 1(—),Leu 2a(—),Leu3a (—),Leu4(—),Leu14(—)であり,この細胞がmonocyte-macrophage系の細胞であるという説と矛盾しない所見と思われた.治療は,predonine投与により皮疹は縮小消退傾向を示し,関節症状も軽快した.

先天性皮膚欠損症の切除瘢痕部周囲に見られたMultiple Satellite Granuloma Telangiectaticumの乳児例

著者: 出光俊郎 ,   植木裕美子 ,   矢尾板英夫 ,   市橋光 ,   中三川晃利

ページ範囲:P.951 - P.956

 生後1カ月,女児.出生時,仙骨部に皮膚の欠損を伴った脊髄髄膜瘤があり,根治手術を行った.同時にその上方,腰椎直上に先天性皮膚欠損症の治癒後とみられる萎縮性の小瘢痕を指摘され切除,縫縮を行ったが,離開し,瘢痕治癒した.術後1カ月より腰椎部の瘢痕を中心に毛細血管拡張および鮮紅色丘疹が多発し,急速に増大,増数した.病理組織では角質増殖に加えて真皮乳頭層に赤血球を容れる脈管の拡張と増生を認め,一部では内被細胞の増殖も観察された.組織学的には被角血管腫に類似する点もあるが,全体としてmultiple satellite granuloma telangiectaticumに一致すると考えた.また,その後の検索によりArnold-Chiari奇形が確認された.Multiple satellite granulomatelangiectaticumの本邦最年少例を報告し,中枢神経疾患との合併例について文献的に考察を行った.

リンパ管腫—リンパ管造影による検討

著者: 浅野翔一 ,   宮崎孝夫 ,   相模成一郎

ページ範囲:P.957 - P.961

 腰リンパ本幹系リンパ管の分布領域,即ち下肢や陰嚢にリンパ管腫の認められた患者6名に足背式リンパ管造影検査を施行した.その結果,リンパ管腫の種類(限局性リンパ管腫や海綿状リンパ管腫)の如何にかかわらず,全例でリンパ管腫病巣の存在する領域の集合リンパ管内に造影剤の残留が認められた.このことはリンパの排導遅延による管内リンパ鬱滞の存在を実証するものであり,このリンパ鬱滞がリンパ管腫と緊密な関係にあることが示唆された.

Papillary Eccrine Adenomaの1例

著者: 角谷孝子 ,   佐藤俊樹 ,   正橋寿子 ,   真家興隆 ,   高橋伸也 ,   若松信吾

ページ範囲:P.963 - P.967

 52歳女性の右前額部に生じたpapillary eccrine adenomaの1例を報告した.大きさ4.5×2.3cmの紅斑を伴う扁平隆起性の弾性硬の腫瘤であった.病理組織学的には真皮中層から深層,一部エックリン汗腺よりも下部の皮下脂肪織内まで大小多数の管腔構造および管腔内に管腔壁が乳頭状に突出した特徴的な所見がみられた.本症は我国においてはまだ報告例が少ない良性汗器官系腫瘍である.

多発性丘疹状毛包上皮腫の5例

著者: 林葉子 ,   菊池りか ,   中島静香 ,   肥田野信

ページ範囲:P.969 - P.973

 多発性丘疹状毛包上皮腫(TPM)の5例(女4例,男1例)を報告した.臨床像では4症例における顔面の皮疹は典型的で,内1例は頭部に,1例は下腿にも結節があった.他の1例は遺伝的背景を欠き,老人期発症で鼻部に皮疹が3個しかないことから,TPMというよりは孤立性毛包上皮腫の多発型とするのが妥当と考えた.組織学的に,顔面および頭部の皮疹は典型的なtrichoepitheliomaの像を呈した.下腿の1例は腺様構造を主体とするBCE様のtrichoepitheliomaであり,骨異常を認め,母斑症的性格を有した点から,基底細胞母斑症候群との関連性が示唆された.家族内同症を1例で認め,常染色体性優性遺伝と考えられた.1例に胃癌の合併を認めた.

いわゆるBalloon Cell Nevusの1例

著者: 尾立朱実 ,   米元康蔵 ,   木下正子 ,   海老原善郎 ,   外野正巳

ページ範囲:P.975 - P.979

 4歳,男児.生下時より肛囲右後方に黒色斑あり,徐々に隆起し切除時10×8mm大の黒色結節を示した.組織学的に,上層の帯状の複合型母斑細胞母斑に接し,真皮上層から下層に及ぶ空胞細胞の集塊を認めた.空胞細胞は,腫瘍上層辺縁部では細胞質にme—lanin顆粒を有するものもあり,またS−100蛋白染色にて空胞細胞塊全体にまだら状に陽性を呈した.電顕的検索にて,本細胞にmitochondria,basal lamina,microfilamentを認めた.空胞細胞の起源については,母斑細胞と同一と考えた.その発症過程は,時期は不明であるが,臨床的・組織学的に増殖性変化によると思われた.細胞内空胞の本態については明らかにできなかった.過去20年間の症例について併せて報告した.

印象記

X ISHAM—(1988,6/27〜7/1,バルセローナ,スペイン)

著者: 増田光喜

ページ範囲:P.980 - P.982

 バルセローナは,マドリードに次ぐスペイン第二の都市で,カタルーニャ自治政府の首都です.人口は首都区域全体で310万人,紀元前より地中海の要港として栄えてきました.1492年1月,イベリア半島最後のイスラム王国グラナダを征服直後のイサベラ女王より経済的援助を受けたコロンブスは,その10カ月後に新大陸を発見します.それから丁度500年後の1992年,オリンピックがこのバルセローナで開かれることは皆さん御存じの通りです.帰国後コロンブスは,バルセローナに今も残る"王の広場"でイサベラ女王とフェルナンド王のいわゆるカトリック両王に謁見し,新大陸発見の報舎をしたと伝えられます.バルセローナの目抜き通りランブラスの港側の端近くの高さ約50mの塔の頂上には,死ぬまでインドと信じて疑わなかった新大陸を指差すコロンブスの姿があり,そこから目と鼻の先の港には,彼の航海に使われた驚くほど小さなサンタ・マリア号の実物大の模型が繋留されています.
 今回同市において,X th Congressof the International Society forHuman and Animal Mycology (XISHAM)が開催されました.名誉会長には現スペイン国王フアン・カルロス1世を戴き,学会プログラムの第1ページには国王の御写真が掲げられています.会場は,4年後のオリンピックではその施設の大半が集まるといわれる,市の南西にある緑に覆われたモンジュイックの丘の麓のPalacio de congresosでした.我々の宿舎は市の中心ともいうべきカタルーニャ広場の近くでしたが,会場への往復には経済的理由と便利さからほとんど地下鉄を利用しました.当市の地下鉄は非常に安く(どこまで乗っても1回50 pesetas, 1pt=1.2円,我々はさらに安い10回分300ptsのTarjetaという回数券を利用した.もっともタクシーに乗っても日本と較べれば大変安い),また安全清潔で,行き先や乗り場などの案内も分かりやすく,朝夕にも日本のような混雑はなく,冷房車両もありなかなか快適で,一般市民の人人と触れ合うよい機会です.それはさておき,会議場の近くのエスパーニャ広場で地下鉄を降り地上に出ると,正面のモンジュイックの丘の中腹に,現在内部はカタルーニャ美術館になっているかつての王宮の堂々とした雄姿が目に入ります.会議場はその王宮の下にあり,エスパーニャ広場から会議場までの間,王宮を見上げながら噴水のある広い通りをぶらぶら歩くのが,会議期間中の私の楽しみのひとつでした.また会場の近くには,カタルーニャ美術館のほかに歩いて20分程の所にホアン・ミロ美術館もあり,昼食後の散策などには最適です.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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