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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科42巻11号

1988年11月発行

雑誌目次

図譜・557

Malignant Proliferating Trichilemmal Cystの1例

著者: 工藤比等志 ,   野々垣涼子 ,   米澤郁雄 ,   細川靖治

ページ範囲:P.992 - P.993

患 者 46歳,女性
初 診 昭和62年5月30日

原著

ムチン沈着よりなる結節状皮疹および網状紅斑局面を伴った紅斑性狼瘡

著者: 小野寺有子 ,   小松威彦 ,   清水宏 ,   仲弥 ,   西川武二

ページ範囲:P.995 - P.1000

 患者は1歳,女性.3年来の播種型DLEにて経過観察中,両上肢,躯幹に小指頭大までの紅色結節が多数出現した,また前胸部には軽度の浸潤を伴う網状紅色局面を認めた.組織学的にはいずれの皮疹にも真皮全層に亘る豊富なムチン沈着を認めた.紅色結節は結節性皮膚ループスムチン症,また網状紅斑局面はreticular erythematous mu—cinosis症候群に極めて類似した紅斑と考えられ,REMとLEとの関連性が示唆された.

ハッカ油によると思われる口腔粘膜扁平苔癬の1例

著者: 禾紀子 ,   中山秀夫 ,   鶴町和道 ,   栗原誠一

ページ範囲:P.1001 - P.1006

 練り歯磨中のハッカ油(Japanese mint oil)が原因と思われる,臨床的・組織学的に典型的な口腔粘膜扁平苔癬の1例を報告する.貼付試験にて,ハッカ油強陽性を示し,歯磨,菓子類等に含まれるミントを避ける生活で,病巣の著明な改善をみ,以前の歯磨再使用で再発をみた.

長期間に亘り再燃を繰り返すライター症候群の1例

著者: 定本靖司 ,   浦野芳夫 ,   荒瀬誠治 ,   重見文雄 ,   武田克之

ページ範囲:P.1007 - P.1012

 56歳,男性.皮疹および関節痛で発症.皮疹はkeratodermia blenorrhagica,circinate balanitisの典型像を示したが,初発の関節病変は指趾末節であり関節症性乾癬も疑わせた.経過中に結膜炎も出現し,2主徴および典型的皮疹により確診した.以後,約6カ月から1年の間隔で寛解再燃を繰り返し,症状は徐々に増強したが,全経過中明らかな尿道炎を思わせる自,他覚所見はなくtriasはそろわなかった.HLA-B 27は陰性であった.

肺結核を合併したHypereosinophilic Syndromeの1例

著者: 高木茂 ,   大野盛秀 ,   吉友和夫

ページ範囲:P.1013 - P.1018

 77歳,男性.ほぼ全身に掻痒感の強い神経皮膚炎様皮疹,丘疹を伴った紅斑および紫斑があり,不眠,強度の倦怠感および体重減少等の全身症状を合併した.発熱および肝脾腫はみられなかった.臨床検査で肺結核の合併と,末梢血および骨髄像に著明な成熟型好酸球の増多がみられた.左腰部の丘疹を伴った紅斑部位の病理組織所見では,真皮上中層の血管周囲に組織球,小円形細胞および多数の好酸球の浸潤とその脱顆粒がみられた.抗結核療法開始3カ月後,ステロイド内服を併用したところ,皮疹全身症状および異常検査値の改善がみられた.外用PUVA療法はステロイド内服量の漸減に有効であった.本症例の肺結核とHES発症との関連性について文献的考察を行った.

尋常性疣贅の発生部位に限局して生じた尋常性乾癬—乾癬発症におけるIFNの関与について

著者: 小林勝 ,   塩原哲夫 ,   長島正治

ページ範囲:P.1019 - P.1023

 両手背の尋常性疣贅の発生部位に限局して尋常性乾癬が生じた54歳,男性例を経験したので2,3の実験を試み,乾癬発症におけるインターフェロン(IFN)の関与についての考察を加えて報告した.即ち,同患者の手関節屈面には全く乾癬の併発を認めない尋常性疣贅がみられたので,これを対照としてDNCB誘発刺激を加えたところ,手背の疣贅では乾癬を生じたものの,手関節屈面の疣贅では乾癬の発症をみず,苔癬型組織反応を呈したのみであった.次いで,エトレチネート内服により乾癬を消褪させた後,残った疣贅に対してインターフェロンα(IFNα)を局注したところ,手背部,手関節屈面の疣贅とも乾癬を生じてきた.この結果から乾癬の発生にはIFNが関与していることが示唆された.

男子性器単純ヘルペスの臨床的検討

著者: 郷路勉 ,   熊本悦明 ,   広瀬崇興 ,   坂岡博

ページ範囲:P.1025 - P.1030

 ウイルスの存在を確認し,確定診断を行い得た85例の男子性器単純ヘルペスについて臨床的検討を行ったところ,以下のような結果を得た.過去7年間の年間患者数は急速に増加し,昭和60年では全STDの7.6%,淋菌性尿道炎の31%であった.年齢分布は初発型では20歳代(28%),再発型では30歳代(18%)に多かった.感染源は友人(35.9%)が最も多かった.潜状期は2〜7日が殆どであり,再発の間隔は1〜4カ月が多かった.HSVの型別分布は初発型では1型10.3%,2型89.7%,再発型では1型2.2%,2型97.8%であった.皮疹の好発部位は包皮内板(75.3%)であった.皮疹と鼠径リンパ節の腫脹は初発型では範囲が広くて疼痛が強く,再発型では範囲が狭く疼痛が弱い傾向であった.軽度の発熱は初発型の約40%にみられたが,再発型ではみられなかった.Acyclovir錠の投与で初発型の治癒期間が対症療法の平均21.3日から16.1日に短縮された.

臍に生じた脂漏性角化症—1症例報告と関西医科大学における統計的観察

著者: 山中知佳 ,   久保桂子 ,   尾口基

ページ範囲:P.1031 - P.1035

 52歳女性.臍部に生じた脂漏性角化症の1例を報告した.臍窩に埋もれるように米粒大,表面角化性に粗?な小結節がみられ,組織像は角化型の脂漏性角化症に典型的であった.過去11年間に関西医科大学皮膚科を受診した総患者数269,128人中,組織学的に検索がなされた脂漏性角化症患者387人,393症例について統計的観察を行った.男女比は53:47,年齢は20歳台からすでにみられ,男女とも60歳台が最多であった.部位的には40歳台までは頭頸部,顔面など裸露部に,高齢者例では四肢に生じてくる傾向を示した.また,頭頸部,顔面は男子に多く,胸腰部では女子が多い傾向がみられた.

前腕に生じた単発型皮膚グロムス腫瘍の1例

著者: 佐藤貴浩 ,   勝俣道夫 ,   柳澤啓子

ページ範囲:P.1037 - P.1041

 30歳,男性の右前腕に生じた単発型皮膚グロムス腫瘍の1例を報告した.組織学的には真皮中層に1層の内皮細胞で囲まれた大小の血管腔と,その周囲に円形の核と好酸性の胞体をもついわゆるグロムス細胞が増殖していた.グロムス細胞は,エラスティカ・ワンギーソン染色で黄染,アザン・マロリー染色で赤染,ビメンチン陽性,デスミン陰性であった.また,間質と一部の細胞巣内に弾性線維,管腔周囲と個々のグロムス細胞を取り囲むように網状に嗜銀線維を認めた.第Ⅷ因子関連抗原は血管腔に沿って陽性,S100蛋白は間質の神経線維に陽性を呈した.電顕的にグロムス細胞は平滑筋細胞に類似し,間質には種々の量の膠原線維,不定形物質,マスト細胞,さらに多くの有髄神経がみられ,また無髄神経も散見された.

多発性石灰化上皮腫の1例

著者: 山田晴義 ,   大山克巳 ,   原田敬之 ,   西川武二

ページ範囲:P.1043 - P.1045

 31歳,男.頭部,顔面,両上肢に8個を数えた石灰化上皮腫の1例を報告した.1965年から1984年までに本邦で報告された石灰化上皮腫を集計した結果,多発例は404例中48例(11.9%)で,個数別では,本例の8個は13個(2例)に次ぐ個数となり極めて稀な症例であると思われた.

色素血管母斑症の2例

著者: 海老原全 ,   桜岡浩一 ,   清水宏 ,   仲弥 ,   原田敬之

ページ範囲:P.1047 - P.1053

 色素血管母斑症の2例を報告した.症例1は6カ月女児で,出生時より躯幹,下肢を中心に青色および赤色皮疹が混在して認められ,右小耳症の合併を認めた.症例2は1週女児で,出生時より顔面を含むほぼ全身に青色および赤色皮疹が混在して認められ,また左上下肢の肥大を認め,Klippel-Weber症候群の合併が考えられた.病理組織学的に症例1,2とも赤色皮疹部は真皮浅層血管の軽度拡張,壁の軽度肥厚を示し,青色皮疹部では真皮にdermal melanocyteが散在性に認められた.さらに症例1では電顕的に検討を行い,真皮のdermal melanocyteおよび幼若な血管の増生を確認した,以上の所見より2例とも高野-Kruger-土肥型,長谷川・安原分類のⅡbに相当すると考えられた.また色素血管母斑症の本邦報告例を検討し,分類および成因について若干の考察を加えた.

脂腺上皮腫の4例

著者: 小林孝志 ,   松尾忍 ,   松本光博 ,   飯塚一 ,   岸山和敬

ページ範囲:P.1057 - P.1062

 脂腺上皮腫の4例を報告した.全例女性で平均年齢は63.3歳であった.腫瘍は全て顔面に発生し,大きさ1cm以下の淡紅色,暗赤色ないし橙黄色の丘疹として認められた.組織学的には4例ともほぼ同様で,境界明瞭な真皮内に限局した腫瘍巣を呈し,また全例に嚢腫様構造が認められた.腫瘍細胞は胞体に乏しく好塩基性に染まる基底細胞様細胞と,泡沫状の胞体を示す脂腺細胞様細胞からなり,前者が優位を占めていた.電顕所見では,腫瘍細胞の細胞質内に種々の大きさの脂肪滴様構造が観察され,正常脂腺細胞と類似の所見を得た.脂腺上皮腫の分類上の位置づけにつき若干の考察を加えた.

正中頸嚢胞

著者: 秋山真志 ,   宮川俊一 ,   仲弥 ,   原田敬之

ページ範囲:P.1063 - P.1067

 症例は30歳,男.3年前より頸部正中の腫瘤に気づいていたが放置.初診時,頸部正中に2.5×1.5cmの縦長,索状の表面常色,弾性硬の皮下腫瘤を認めた.正中頸嚢胞の診断にて,舌骨の一部を含め嚢腫摘出術を施行した.正中頸嚢胞は甲状舌管の遺残組織より生じる先天性頸部腫瘤であり,現在まで数多くの症例が報告されている.しかし,皮膚科領域での報告は比較的稀である.今回,著者らは最近10年間の文献報告例に自験例を加えた本症270例に対して臨床統計的検討を加えた.

先天性皮膚欠損症の1例

著者: 南口洋子 ,   早川和子 ,   川津友子

ページ範囲:P.1069 - P.1072

 生後1日,男児.生下時より左下肢に広範な皮膚欠損が存在.病理組織学的所見にて表皮細胞の変性,基底膜の欠損,真皮層の菲薄化,皮膚付属器,膠原線維,弾性線維の減少を認めた.0.1%エリスロマイシンアズノール軟膏の塗布にて25日後に上皮化し,5カ月後には軽度の瘢痕を残して治癒するも,患肢脛骨に6mmの短縮を認めた.

家族性良性慢性天疱瘡—DDSが奏効した1症例

著者: 名村章子 ,   伊庭仁樹 ,   赤枝民世 ,   尾口基

ページ範囲:P.1073 - P.1077

 DDSによる治療が効果的であった家族性良性慢性天疱瘡の1症例を報告した.39歳男性で,約10年前より,まず頸部に皮疹が生じ,漸次腋窩,陰股部に拡大し,肘窩,膝膕にも皮疹はみられ,軽快増悪を繰り返していた.家系に同症があり,臨床的,組織学的に家族性良性慢性天疱瘡に典型的であった.治療と経過は外用療法と抗生剤の全身投与を2週間以上行うも改善が得られず,抗生剤に変えてDDSを150mg/日2週間投与することにより,皮疹は軽快した.次いで,100mg/日に減量し,約2カ月半の経過で寛解状態に至り,DDSも中止した.外用療法のみで約1年を経たが皮疹の再燃はない.DDSの各種皮膚疾患に対する奏効機序についても考察した.

絶縁針電気凝固法による腋臭症および腋多汗症の治療

著者: 小林敏男

ページ範囲:P.1079 - P.1083

 筆者はこの5年間で258名の腋臭症および腋多汗症患者に対して,絶縁針を用いた電気凝固法による治療を試みた.針は2種類を用い,皮膚表面に接する基部を絶縁し,それ以下の深部を非絶縁とした.治療に当たっては,まず脱毛用絶縁針を用い腋毛を脱毛した.初回はまびき脱毛を原則とし,その後は1〜3カ月ごとに毎回生えている毛をすべて脱毛した.また,腋多汗症患者全員および臭気が特に強い腋臭症患者に対しては,長い絶縁針を用い,汗腺電気凝固法をも併用した.5回目治療後約3カ月の時点で,67名の患者にアンケートを依頼した.その結果,殆ど瘢痕形成なく腋毛は著しく減少しており,またアンケートでは,多くの患者で腋臭および腋発汗の減少が見られた.基部を絶縁した針を使用したことにより,皮膚表面は温存したまま長い通電時間,強い通電強度のもとにて十分に汗腺および毛乳頭が電気凝固破壊された結果によるものと思われる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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