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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科42巻12号

1988年12月発行

雑誌目次

図譜・558

環状扁平苔癬

著者: 出光俊郎 ,   植木裕美子 ,   加藤英行 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.1092 - P.1093

患 者 59歳,主婦
初 診 昭和62年9月1日

原著

湿疹型接触過敏反応と光線過敏反応とを同時に示したCarbamazepin(Tegreto®)による薬疹

著者: 花田順子 ,   照井正 ,   竹松英明 ,   酉抜和喜夫 ,   田上八朗

ページ範囲:P.1095 - P.1098

 46歳,男.三叉神経痛のため,carbamazepin(Tegretol®:CBZ)を200mg/日内服し始め,1カ月後より,日光露出部を中心として瘙痒性紅色丘疹が出現した.UVAを15.5J/cm2照射したところ,48時間後に紅斑および小水疱の出現がみられた.CBZ20mgの内服試験陽性,CBZの貼布試験陽性,光貼布試験陽性,リンパ球幼若化試験陽性の結果から,本患者はCBZ内服による光線過敏型反応と湿疹型接触過敏反応を同時に示した稀な症例であると考えた.

高グロブリン血症性紫斑の3例

著者: 檜垣祐子 ,   大江麻里子 ,   肥田野信 ,   保坂真理子 ,   杉野信博

ページ範囲:P.1099 - P.1104

 続発性グロブリン血症性紫斑の3例を報告した.症例1は18歳女性でsubclinicalSjögren syndromeに,症例2は54歳女性で慢性関節リウマチに,症例3は41歳女性で典型的シェーグレン症候群にそれぞれ続発したと考えられた.いずれも紫斑部の組織に血管炎は認めなかったが,症例1で血管壁にC3の沈着を認めた.本邦報告例について検討したところ,基礎疾患としてシェーグレン症候群が高頻度を占めており,本症を見た場合十分に検討を行うべき疾患と思われた.

Subsepsis Allergicaの1例—特にStill病との関係について

著者: 仲弥 ,   西川武二

ページ範囲:P.1107 - P.1111

 49歳男性のsubsepsis allergicaの1例を報告した.臨床的には間歇性の弛張熱に加えて,発熱とともに全身に出没する一過性の粟粒大から爪甲大の蕁麻疹様淡紅色紅斑および一過性の関節痛を認めた.末梢血にて好中球が増加し,敗血症が疑われたが,血液培養にて病原菌は検出されず,感染病巣の存在を示唆する所見もなく,抗生剤は無効であった.副腎皮質ステロイド剤内服にて症状,検査所見とも著明に軽快した.本症とStill病の異同については従来より議論が多い.両疾患の病状はかなり一致しており,本質的には両者は同一の疾患と考えられるが,若干の概念的な相違もある.本症の病因が解明されていない現在,より膠原病的色彩の強いStill病の名称に統一するのは早計と思われ,関節症状が軽微であった自験例においては"subsepsis allergica"を用いた.

慢性関節リウマチに合併した血管炎—肉芽腫様変化を伴った例

著者: 田畑伸子 ,   相場節也 ,   岡崎太郎 ,   田上八朗

ページ範囲:P.1113 - P.1116

 57歳,女性.11年前に発病した慢性関節リウマチの経過中,四肢末端および下腿に,難治性の浮腫性紅斑性腫脹と潰瘍が出現した.組織学的には,真皮に広範な出血巣とフィブリン沈着があり,周辺に好中球と単核細胞の浸潤を伴った小血管の血管炎と,さらに一部肉芽腫様変化とが共存する特異な所見を認めた.Dapson内服が著効を示した.本邦におけるrheumatoid vasculitisの報告例をもとに,若干の考察を加えて報告した.

壊死性筋膜炎を伴ったVibrio vulnificus敗血症の1例

著者: 徳田安孝 ,   宇原久 ,   羽生田久美子 ,   松井雅彦 ,   山路和彦 ,   斎田俊明 ,   袖山治嗣 ,   黒田孝井 ,   松本頴樹 ,   川上由行

ページ範囲:P.1117 - P.1122

 61歳,男性.患者は糖尿病,食道癌根治術の既往があり,また魚介類の刺身を好物とし,頻繁に食していた.8月初旬,突然高熱と右大腿屈側部痛が出現し,翌日ショック状態となった.ショックは補液等の治療で是正されたが,右大腿に紅斑が出現し急速に拡大し壊死巣を形成した.静脈血および創培養よりVibrio vulnificusが検出された.抗生物質投与と広範なデブリードマンにより,全身状態は急速に改善した.患者血清を用いた螢光抗体法間接法では,V.vulnificusに対する抗体価の有意な上昇を示した.本菌による感染症が敗血症および皮疹を呈しやすいのは,菌の組織への侵入力が強いことや,菌体外毒素による血管透過性亢進活性やコラーゲン溶解活性などが関与しているものと考えられる.

結節性動脈周囲炎の初期と診断した3例

著者: 幸田衛 ,   森健一 ,   植木宏明

ページ範囲:P.1123 - P.1128

 初期の結節性動脈周囲炎と診断した3例を報告した.症例1は両上肢,右大腿の皮内から皮下にかけての結節,症例2は全身のlivedo racemosaと多発性単神経炎,症例3はvasculitis allergica cutis様皮疹と腎炎を主症状とし,いずれも全身状態は良好で強い多臓器病変は生じていなかった.症例1では皮膚型結節性動脈周囲炎との,症例2ではSneddon症候群との,症例3ではvasculitis allergica cutisとの鑑別を中心に考察した.

疥癬結節について—発生に関する検討

著者: 久保容二郎 ,   山下和徳 ,   鳥山史 ,   野中薫雄

ページ範囲:P.1129 - P.1133

 疥癬結節の特異的な3例について病理組織学的または直接鏡検による検討を試みた.その結果,2症例では不全角化を伴う部の角層内に嚢状間隙が存在し,その底部に虫卵または卵殻が認められた.他の1症例の直接鏡検では,母虫,約15個の虫卵,4個の卵殻および糞便などからなる長楕円形の集塊が認められた.これらの所見は交配,受精した成熟雌虫が角層内で1〜2カ月間ほぼ静止していることを示唆していると考えられる.そして,その場で産卵し,虫体およびその排泄物,特に糞便などの成分が角層内嚢状間隙の底部から,表皮,真皮へと垂直方向より直線的にしかも持続的に浸透するため肉芽腫性炎症が惹起され,結節が形成されると考えられた.

Eruptive Vellus Hair Cysts

著者: 木村孔右 ,   石橋明 ,   久木田淳 ,   雨宮信子

ページ範囲:P.1135 - P.1138

 両大腿屈面に見られたeruptive vellus hair cystsの20歳女子例を報告した.直径約3mmの暗赤色?瘡様丘疹と,直径約2mmの灰青色の皮内小結節から成る.前者は炎症性細胞浸潤を伴い,上皮性の嚢腫壁が消失して肉芽組織が壁を成し,後者は多数の毛を容れる上皮嚢腫で炎症を伴っていない.本例では,ビニールレザーの腰掛けに坐るようになったことと,発症時期,発症部位が符合していた.病因的関連性が疑われる.

被包性脂肪壊死性結節(菊池)の1例

著者: 江副和彦 ,   生野麻美子 ,   吉本信也

ページ範囲:P.1139 - P.1143

 47歳男子の右大腿に小指頭大,弾性硬で表面平滑に触れる単発性皮下結節を認めた.摘出時,皮下脂肪織深部に乳白色の被膜を有する腫瘤を認め,組織学的には壊死に陥った脂肪細胞巣が結合織で被包されていた.変性した脂肪細胞膜は蜂巣状から一部は絨毛状,唐草模様状を呈し,パラフィン切片を用いた脂肪染色で陽性所見を得た.

平滑筋母斑を合併したベッカー母斑の1例

著者: 櫻井美佐 ,   清水宏 ,   多島新吾 ,   原田敬之 ,   西川武二

ページ範囲:P.1145 - P.1148

 17歳男性の右顔面に生じた平滑筋母斑を合併したベッカー母斑の1例を報告した.11歳頃より右顔面に有毛性の褐色斑として初発した.組織学的には,軽度の表皮肥厚,表皮基底層での色素増強など,ベッカー母斑の特徴に加え,真皮内に種々の方向に錯綜する多数の平滑筋の増生を認めた.ベッカー母斑と平滑筋母斑の合併の報告は,本邦では文献上いまだにみられない.ベッカー母斑と平滑筋母斑との関連および異同につき若干の文献的考察も加えたので併せて報告する.

Solitary Fibrofolliculoma

著者: 麻生和雄

ページ範囲:P.1149 - P.1153

 Fibrofolliculomaは結合織性毛根鞘線維増殖に囲まれた毛包漏斗部腫瘍である.Hereditary,sporadic typeと共にsolitary typeの存在が知られている.著者はsoli—tary typeに一致すると思われる2症例を経験,症例2は病理組織学的にperifollicularfibromaを合併していた.症例を報告すると共に文献的に考察し,そのhistogenesisについて私見を述べた.

Eccrine Porocarcinomaの1例

著者: 寺木祐一 ,   杉浦丹 ,   清水宏

ページ範囲:P.1155 - P.1160

 68歳,男.30年来,右下腿に黒褐色の結節が存在,最近辺縁より易出血性の暗紅色結節が出現.組織:黒褐色結節周辺部では類円形の好塩基性,細胞質に乏しい小型の細胞が増生,一部に細胞間橋を認め,辺縁の柵状配列はなし.中心部では腫瘍細胞はより真皮内に増殖し,異型性や核分裂像を呈する細胞も散見,暗紅色結節部では明るい細胞が多く,細胞の大小不同,異型性が強く,核分裂像も著明.また好酸性に染まる無構造集塊も認める.以上より本症例は組織学的にeccrine poromaよりeccrine poroepitheliomaを経てeccrine porocarcinomaへと進展した像を認め,eccrine poromaはeccrine po-rocarcinomaの前駆症となり得る可能性を組織学的に示唆する症例と考えられた.

汎発性疣贅様皮疹で発症したLeser-Trélat徴候の1例

著者: 清水直也 ,   岡吉郎 ,   田島健三 ,   宮島武文

ページ範囲:P.1161 - P.1165

 60歳の女性のLeser-Trélat徴候の1例を報告した.初診の約2カ月前より全身,特に四肢に瘙痒を伴う汎発性疣贅様皮疹が急激に多発した.内臓悪性腫瘍を疑い検索した結果,胃癌が発見された.胃亜全摘術施行後,瘙痒が消失し,疣贅様皮疹も徐々に縮小した.手術前後の皮疹を組織学的に検討した.過角化と表皮肥厚の程度に差を認めたが,基本的には同様で,鋸歯状の表皮肥厚,基底層の色素沈着の増強を認めた.リンパ球浸潤の程度は,腫瘍摘出の前後でその差を認めなかった.

妊娠を契機に増大した悪性黒色腫の1例

著者: 八木沼健利 ,   小澤雅邦 ,   上出良一 ,   新村眞人

ページ範囲:P.1167 - P.1169

 妊娠を契機に増大した悪性黒色腫の1例を報告した.24歳,女性.約10年前に右耳前部の米粒大黒色斑に気づく,6年前の第1子妊娠時にやや拡大かつ軽度隆起した.さらに1年前の第2子妊娠中にも増大し15×10×15mmの易出血性有茎性黒色腫瘤となり近医で単純切除された,悪性黒色腫の病理組織診断にて当科紹介さる.治療として前回手術瘢痕を中心とした広範囲切除術およびリンパ節廓清術を施行したところ,右耳前部リンパ節に転移を認めpT3,N1,M0と診断.術後療法として化学療法および免疫療法を行い経過観察中である.本例を中心に悪性黒色腫と妊娠の関係について文献的考察を加えた.

Solitary Nonepidermotropic T Cell Pseudolymphoma of the Skin

著者: 田中正明 ,   伊藤薫 ,   山口茂光 ,   坂本ふみ子 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.1171 - P.1176

 新潟県出身の62歳女性の背部正中に生じた浸潤性紅斑を報告した.組織学的にはリンパ球様細胞が真皮上中層に稠密に浸潤し,これらは表皮親和性を示さず,個々の細胞はクロマチンに富み,切れ込みの多いやや大型の核を有する細胞が主体で,NCIも高値を示し悪性リンパ腫が強く示唆された.免疫組織学的に浸潤細胞の多くはhelper/indu—cer T cellの形質を示した.全身的検索で他臓器侵襲を思わせる所見がなかったため切除のみで経過観察しているが,術後4年の現在良好な経過をとっている.1986年,vander Putteらは,組織学的に悪性リンパ腫を疑わせながら良性の経過をとっている3例をsolitary nonepidermotropic T cell pseudolymphoma of the skinと命名して報告している.調べ得た限りでは,それ以後本症の報告はない.自験例は臨床像,組織像ともほぼこれに一致する.本症がT細胞増殖性疾患のどこに位置するか,今後症例の集積と経過観察が必要である.

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臨床皮膚科 第42巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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