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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科42巻2号

1988年02月発行

雑誌目次

図譜・548

第Ⅱ期梅毒疹

著者: 林健 ,   生野麻美子

ページ範囲:P.104 - P.105

患 者 44歳,男,個室浴場従業員
初 診 昭和61年6月11日

原著

Riga-Fede病の3例

著者: 関太輔 ,   諸橋正昭 ,   勝山豪 ,   古田勲

ページ範囲:P.107 - P.110

 Riga-Fede病の3例を報告した.症例1:1歳2カ月,女児.正常萌出した下顎乳中側切歯(以後BBと略す)により舌下面に潰瘍を生じた.症例2:1カ月半,女児.出生時より萌出していた下顎乳中切歯(以後AAと略す)により舌下面に潰瘍を伴う腫瘤が出現.症例3:8カ月半,男児.正常萌出したAAにより舌下面に潰瘍を伴う腫瘤が出現.3例とも原因歯の歯切縁の研磨削合ならびに舌下面への口腔用軟膏の塗布にて軽快した.本症の原因,診断,治療などについて文献的考察を加えた.

肉芽腫性口唇炎—歯周炎の治療後治癒した1例

著者: 近藤慈夫 ,   麻生和雄 ,   安川和夫

ページ範囲:P.111 - P.116

 53歳,男子.初診の約1年前から下口唇の腫脹あり.溝状舌もみられるが顔面神経麻痺はみられない.口唇腫脹部の組織像では,真皮に血管周囲性の小単核球およびプラズマ細胞の浸潤巣,および類上皮細胞性の肉芽腫があり,肉芽腫性口唇炎と診断した.2ないし3週に1回,トリアムシノロンの局所注射を行い腫脹は減少したが完治せず,やがて下口唇健常皮膚に新たに浮腫性皮疹を生じてきた.患者の下顎には局部床義歯が装着されていたが,残存している前歯部歯牙4本に慢性辺縁性歯周炎が認められ,しかもそのうち1本に慢性根尖性歯周炎も認められ,これらの治療を開始したところ,口唇の腫脹が急速に消褪し,歯の治療開始以後10カ月の現在まで再発がない.

Nodular Fasciitis—病理組織学的,電子顕微鏡的検討

著者: 勝俣道夫 ,   野崎清恵

ページ範囲:P.117 - P.122

 21歳,女子の左前腕に生じた15×10mmの弾性硬,表面常色で自発痛を伴う皮下結節につき報告した.組織像は皮下脂肪織深部から筋膜直上部にかけ増殖する病変で,辺縁部では粘液腫様の間質中に線維芽細胞様細胞が,中央部では線維芽細胞ないし組織球様細胞の増殖が毛細血管と赤血球塊に混じて認められ,破骨巨細胞様細胞も多数存在することより結節性筋膜炎と診断した.本症の概要について言及し,既報告例の検討よりその組織像はmyxoid, cellular, fibrousの3型に分類でき,Shimizuらの指摘するごとく,経時的にmyxoidからcellular,そしてfibrous typeに移行する可能性があると考えた.電顕的検索では病変細胞の多くはmyofibroblastに類似する細胞で,破骨巨細胞様細胞は組織球様細胞であったが,明瞭な貪食像は認められなかった.この巨細胞と増殖性筋膜炎にみられるganglion cellに類似した大型細胞との比較検討を行い,この両者は形態的にかなりの差異があると思われた.

奈良医大皮膚科における最近6年間の水疱性類天疱瘡の統計的観察

著者: 村松勉 ,   白井利彦 ,   飯田孝志 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.123 - P.126

 昭和56年1月初めより昭和61年12月末までの6年間に奈良医大皮膚科を受診し,水疱性類天疱瘡と診断された30例について統計的検討を加えた.男8例,女22例で,平均年齢は70.5歳であった.全身汎発性28例,限局性2例で,大部分の症例で瘙痒感を認め,皮疹は副腎皮質ホルモンの全身投与に対し,反応は概ね良好であった.螢光抗体法直接法では16例(53%)に表皮真皮境界部にIgGの沈着が,24例(80%)にC3の沈着がみられた.間接法では24例(80%)が抗基底膜部抗体陽性を示した.20例(67%)においては抗基底膜部抗体価が,また2例においては血清IgE値が病勢との相関を示した.

猫ひっかき病の1例

著者: 若林淑子 ,   樋口由美子 ,   花輪滋 ,   児浦達朗 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.127 - P.130

 36歳,女.初診1カ月前,左手掌を飼い猫にひっかかれ,1週後,左腋窩リンパ節が鶏卵大に腫大した.初発皮膚病変の病理組織学的所見は,表皮直下から真皮中層に壊死ないし類壊死がみられ,これを囲んで柵状配列を示す類上皮細胞層を認め,その外層にリンパ球浸潤を伴い,この所見は本症の診断上,古くから重要視されているリンパ節の所見と基本的には同一であった.リンパ節病変部の壊死部に,Warthin-Starry銀染色陽性多形桿菌が多数認められた.この症例の経験から,初発皮膚病変の病理組織学的検索やWarthin-Starry銀染色陽性多形桿菌の証明が本症の診断法として重視されるべきものと考えられた.

新潟大学皮膚科における最近10年間の悪性黒色腫—23例の検討

著者: 山本綾子 ,   藤原浩 ,   池田和人 ,   河井一浩 ,   兼子泰行 ,   小黒啓子 ,   手塚匡哉 ,   吉田伸江

ページ範囲:P.131 - P.135

 1976年から1985年までに新潟大学皮膚科で経験した悪性黒色腫23例について臨床的,組織学的に検討した.発症時年齢はacral melanoma (AM)が65.1歳super—ficial spreading melanoma (SSM)が56.0歳,nodular melanoma (NM)が41.8歳とAMが最も高齢であった.男女比は9:14と女性に多かった.病型別には,AM, NM,SSMの順に多く見られ,発生部位としては足底が最も多かった.悪性黒色腫のlevelやstageの差異,根治的治療の有無が,予後に強く関連していることが示唆された.

巨大色素性母斑上に生じたVerrucous-Keratotic Malignant Melanomaの1例

著者: 北出勘治 ,   水谷仁 ,   清水正之

ページ範囲:P.137 - P.140

 35歳,男性.生下時より左下肢全体に無症候性皮疹があり,初診7カ月前に左大腿部の腫瘤に気づいた.左下肢全体に褐色から黒色の色素性母斑を認め,左大腿外側の母斑上に直径約35mmの黒色,一部灰黒色,表面に白色調の角質が付着し,疣贅状に隆起する境界明瞭な腫瘍を1個認めた.悪性黒色腫を疑い,腫瘍を広範全摘した.組織学的には,表皮真皮境界部に帯状にメラノーマ細胞の増殖があり,腫瘍巣を被覆する表皮は不規則に肥厚し,過角化,錯角化,papillomatosisを示した.腫瘍周囲の母斑は複合型色素性母斑であった.自験例はKuehnl-Petzoldtらの報告したverrucous-keratotic ma—lignant melanomaに一致すると考えられた.本症は悪性黒色腫の一亜型として捉えるべきであると考えた.

特異な組織像を呈した乳房Paget病の男子例

著者: 松崎照樹 ,   山本綾子 ,   坂本ふみ子 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.141 - P.145

 76歳の男子に発症した乳房Paget病を報告した.組織学的には表皮内に明調細胞が腺様構造を形成する像が多数認められた.腺腔を形成する細胞の多くは高円柱状の細胞からなり,細胞質の一部が腺腔面に突出する断頭分泌像がみられた.治療は右腋窩リンパ節廓清および定型的右乳房切断術を施行.4年8カ月を経過する現在,再発は見られていない.男子乳房Paget病の本邦報告例と臨床および組織学的に比較検討して考察を加えた.

進行胃癌に合併した巨大なボーエン病の1例

著者: 安藤浩一 ,   森重彰 ,   室慶直 ,   大橋勝 ,   神田正明 ,   槇坪康子

ページ範囲:P.147 - P.149

 86歳,女性.1カ月前より食欲不振,腹部膨満感などの異常があり,内科で精査の結果,進行胃癌と診断された.それに合併して5年以上前より右腰背部に自覚のない皮疹があり,徐々に増大し,初診時には26×14cmに及ぶ巨大な皮疹を呈していた.生検した結果,一部に真皮内への浸潤を認めた単発型のボーエン病と判明した.ボーエン病については,砒素などの発癌因子との関連や内臓悪性腫瘍との合併例につき過去に多くの報告がある.本症例は農業に従事していたため砒素を摂取した可能性があるが,単発型であるため砒素が原因とは断定し難かった.また本症例においてボーエン病が巨大化した一因として胃癌の合併があると考えられた.

腎移植後の皮膚有棘細胞癌の1例

著者: 小林まさ子 ,   藤田優 ,   岡本昭二 ,   落合武徳 ,   浅野武秀 ,   磯野可一

ページ範囲:P.151 - P.155

 腎移植後17年目に顔面に有棘細胞癌を生じ,他臓器転移を起こして死亡した58歳,男の1例を報告する.臓器移植後の悪性腫瘍,特に皮膚有棘細胞癌の合併は,欧米やオーストラリアでは多数報告されている.本邦では腎移植後に発生した悪性腫瘍は1985年12月1日現在32例で,皮膚有棘細胞癌を生じた患者はなかった.臓器移植と悪性腫瘍の発生について若干の文献的考察を加えた.

皮膚T細胞性リンパ腫の臨床的検討

著者: 長谷哲男 ,   金秀沢 ,   馬場直子 ,   宮本秀明 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.157 - P.161

 1987年までの16年間に経験した皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)について検討した.菌状息肉症(MF)の紅斑期22例,局面期9例,腫瘍期9例,その他20例の合計60例であった.紅斑期では全例生存しており,治療は電子線,PUVA療法,外用療法などであり,完全寛解は12例であった.局面期では電子線PUVA療法にても完全寛解導入は難しく,1例を除き皮膚病変の残存が認められた.腫瘍期においては電子線,PUVA療法,化学療法にもかかわらず,9例中8例が死亡しており,腫瘍期以後の平均生存期間は38カ月であった.その他とした腫瘤形成性,紅皮症型のCTCLでは電子線,化学療法を行った.完全寛解は12例で得られているが,再発が多く,8例の死亡が確認されている.平均生存期間は65.3カ月であった.

Sebaceous Trichofolliculomaの1例

著者: 橋本喜夫 ,   石田明美 ,   松尾忍 ,   飯塚一

ページ範囲:P.163 - P.167

 Sebaceous trichofolliculomaの1例を報告した.48歳,男性の鼻尖部に生じた5×5mmの結節で毳毛の突出や中心小窩は認められなかった.本症は1980年,Plewigが初めて報告した毛包系腫瘍で,本邦での報告は見当たらない.この疾患概念と病理発生につき若干の文献的考察を加えた.

乳頭腫ウイルス抗原陽性を呈した足底表皮嚢腫の1例

著者: 佐藤貴浩 ,   折田正人 ,   勝俣道夫

ページ範囲:P.169 - P.172

 9歳,男児の左足底拇趾球部に生じた16×16mm大の表皮嚢腫の1例につき病理組織学的に検討したところ,嚢腫壁の表皮側のほぼ半周に亘る部分で,壁の内腔側に類円形から不整形の好酸性無構造物質を認め,また嚢腫壁のほぼ全層に亘って同様の好酸性無構造物質を胞体内にもつ明るい細胞が混在していた.さらに同部のケラチン様物質内に多数の空胞様構造を認めた.ABC法による乳頭腫ウイルス抗原の検索を行ったところ,後二者において陽性の所見を得た.過去10年間に当科で経験した足底表皮嚢腫9例について再検討したが,同様の構造を認めた症例はなく,またこの例では初診の約2年前に両足底に疣贅様皮疹があったこと,同部を打撲した既往もあることから,乳頭腫ウイルスが偶発的に嚢腫内に侵入したものと考えられた.

皮膚軟骨腫の1例

著者: 武田康子 ,   滝野長平 ,   勝俣道夫

ページ範囲:P.173 - P.177

 56歳,女の右鼻部に生じた皮膚軟骨腫の1例を報告した.腫瘍は淡紅色,3×3×4mm大,有茎性,自覚症のない弾性硬に触れる結節で,また組織学的には表皮直下より真皮下層に位置する腫瘍塊で,構成細胞の核は小型で楕円形を呈し,胞体は淡明化しており,これが淡く好酸性に染まる豊富な間質内に散在してみられた.悪性像・分裂像はみられず,周囲の炎症反応も殆ど認められなかった.特殊染色の成績から間質内物質はコンドロイチン硫酸を主とする酸性ムコ多糖類と考えられ,また腫瘍細胞はS−100蛋白の存在ならびに電顕所見から軟骨細胞に相当するものと考えられた.さらに腫瘍内に弾力線維が認められなかったことから,本例は硝子軟骨から構成されたものと考えた.文献上,本例の発生部位,形状ならびに硝子軟骨からのみ構成されることは稀である.

爪床爪郭弁法による陥入爪の手術法

著者: 桑名隆一郎 ,   浦田喜子 ,   松本真理 ,   大谷晶子 ,   岩瀬悦子 ,   安積輝夫

ページ範囲:P.179 - P.182

 爪床爪郭弁による爪床形成術を,外側縁のみが彎曲する典型的な陥入爪8例,爪甲全体が強く彎曲するendonychia constrictiva 2例に施行し,良好な経過を得た.本法は爪甲の幅が狭くならないため整容的に好ましく,また,endonychia constrictivaにも応用できるなど,従来のlabiomatricectomyよりも優れた方法と考えられた.

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編集室だより

ページ範囲:P.140 - P.140

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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