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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科42巻4号

1988年04月発行

雑誌目次

図譜・550

乳房Paget病の2例

著者: 山崎雄一郎 ,   増田光喜 ,   渡辺匡子 ,   籏野倫 ,   山田穰

ページ範囲:P.300 - P.301

〔症例1〕
患 者 68歳,女
初 診 昭和60年3月19日

原著

アレルギー性紫斑における腹部症状—3例の報告

著者: 山中克二 ,   白浜茂穂 ,   小島博美 ,   吉沢直人 ,   松本吉郎

ページ範囲:P.303 - P.306

 腹部症状を伴うSchönlein-Henoch紫斑病の3例について,消化管粘膜の変化を内視鏡下に観察しえた.全例とも両下肢に紫斑が認められた.症例1(15歳,女)では大腸粘膜全体に出血斑があり,一部は糜爛,潰瘍を呈した.上部消化管には変化はなかった.症例2(29歳,女)は胃,症例3(19歳,男)は十二指腸に,それぞれ散在性出血斑が認められた.腹部症状を伴う場合,胃から直腸に至るすべての消化管粘膜のどこかに,出血性病変が出現する可能性があると考えられた.

肝内胆汁鬱滞型肝障害を合併したSweet病の1例

著者: 黒坂理文子 ,   権丙浩 ,   清水文子 ,   小野田進 ,   長村洋三

ページ範囲:P.307 - P.312

 肝内胆汁鬱滞型肝障害を合併したSweet病の1例を報告した.本邦におけるSweet病報告例は,296例を数え,肝障害の有無の記載されていた症例は66例であった.うち21例に肝障害を認めた.肝障害の型は,肝細胞障害型が2例,閉塞型は自験例を含め3例,混合型は1例の計6例で,他は型の記載は不明であった.本症例では,皮疹の消長と肝胆道系酵素値の正常化が一致した.肝障害の経過の記載の明らかな例のすべてにおいて,皮疹の改善とともに肝機能の正常化をみており,本症における肝障害は予後良好と思われる.

Pustular Vasculitis—胸肋鎖骨間骨化症,急性直腸炎,血尿および蛋白尿を合併した症例

著者: 野村直子 ,   梅村茂夫 ,   小玉肇 ,   野原望

ページ範囲:P.313 - P.318

 54歳,男性.掌蹠膿疱症が既往にあり,発熱,左胸鎖関節部腫脹,疼痛に引き続き四肢に出血性丘疹や膿疱を生じ,さらに経過中,急性直腸炎と尿異常所見とを合併した.Salazosulfapyridine (salazopyrin)の投与により,皮疹を含め臨床症状は全て軽快し,手掌に掌蹠膿疱症の皮疹を残すのみとなった.病理組織学的に表皮内膿疱と真皮のleukocytoclastic vasculitisの像を認めた.既存の疾患概念であるSchönlein-Henoch紫斑病,acute generalized pustular bacterid,bowel-associated dermatosis-arthritissyndromeなど全てとの関連性が考えられるが,pustular vasculitisという新しい疾患概念に含めるのが適当であると考えた.

Vesiculobullous Systemic Lupus Erythematosus

著者: 米元康蔵 ,   尾立朱実 ,   木下正子 ,   田所昌夫

ページ範囲:P.319 - P.323

 蛋白尿,胸痛を初発症状として発症,経過中に水疱性皮疹を生じ,加療により6年間寛解導入していたが,水疱の再発とともに急速に腎障害が進行したvesiculobullousSLEの女性例を報告した.水疱は表皮下水疱で,水疱底部および真皮上層に好中球を主体とする細胞浸潤,螢光抗体法直接法にて基底膜部にIgG,IgM,IgAならびにC3,C1qの線状沈着を認めた.血中抗基底膜抗体は陰性.治療としてステロイド増量と免疫抑制剤の併用を試みたが,腎機能・皮疹ともに改善せず,ステロイドのパルス療法により,皮疹は消失するも腎障害は進行し全身状態不良となった.木症はSLEの特殊型と考えられるが,重症度・予後との関係については今後症例を重ね,長期経過観察と詳細な免疫学的検討が必要と思われる.

Ofloxacinによる薬剤誘発性類天疱瘡の1例

著者: 藤本篤夫 ,   荒瀬誠治 ,   渡部泰守 ,   武田克之

ページ範囲:P.325 - P.328

 線条体黒質変性症で長期間に亘り各種薬剤を投与されていた62歳,男に四肢を中心として胡桃大までの緊満性水疱が多発した.組織学的には表皮下水疱,また螢光抗体法直接法で基底膜部にIgG,C3の沈着がみられ,間接法では抗基底膜抗体が320倍陽性であった.皮疹の消長がofloxacin (OFLX)の投与,中止と関連するという臨床経過およびOFLXによるリンパ球幼若化試験陽性よりOFLXによって誘発された類天疱瘡と考えた.

軽症汎発性萎縮型表皮水疱症の1例

著者: 羽生田久美子 ,   斎田俊明 ,   大久保正己

ページ範囲:P.329 - P.334

 軽症汎発性萎縮型表皮水疱症の20歳,女性例を報告した.生下時より,軽微な外力によって全身に水疱が生じた.水疱は色素沈着を残して治癒し,明らかな瘢痕は形成しない.頭部,腋窩および陰部に萎縮性脱毛を伴う.本例は遺伝学的ならびに臨床的に典型例と考えられた.本例では,ビタミンEおよびフェニトインは無効であったが,経口避妊薬で水疱新生の抑制がわずかにみられた.

泌尿器症状を伴った接合部型表皮水疱症(軽症汎発性萎縮型)の1例

著者: 秋山真志 ,   清水宏 ,   多島新吾 ,   原田敬之 ,   西川武二

ページ範囲:P.335 - P.343

 22歳男性にみられた泌尿器症状を合併した軽症汎発性萎縮型(Disentis型)表皮水疱症の1例を報告した.軽症汎発性萎縮型(Disentis型)は接合部型表皮水疱症に属する非常に稀な病型であり,これまで同病型の報告例は著者らが調べ得た限りでは世界で25例のみである.自験例は当初,優性栄養障害型表皮水疱症と考えられていたが,発生問もない新しい水疱部皮疹を電顕的に詳細に検索した結果,lamina lucidaでの水疱形成が証明され,接合部型と診断し得るに至ったものである.また先天性表皮水疱症に泌尿器症状を伴うことは比較的稀であり,現在まで泌尿器症状の合併の報告は12例を数えるのみである.そのうち,軽症汎発性萎縮型の報告例は1例に過ぎない.自験例は詳細な電顕的検索により,稀な病型である軽症汎発性萎縮型と診断し得た点,および軽症汎発性萎縮型(Disentis型)表皮水疱症にも慢性の泌尿器症状を合併する可能性を示唆した点で興味深いものと思われた.

Butyrophenone系向精神薬の長期服用により惹起されたと思われる異常色素沈着症例

著者: 関いづみ ,   池谷田鶴子

ページ範囲:P.345 - P.350

 Butyrophenone系向精神薬pipamperone (以下PP)内服により惹起されたと思われる露光部皮膚スレート色色素沈着症の2症例につき報告した.2例とも精神分裂病として初診時までに数年間の長期に亘りPPの内服歴があり,いずれも皮膚の炎症症状の既往がなく,徐々に露光部の色素沈着を呈してきたものである.病理組織所見では,表皮の軽度の萎縮と変性および真皮に担色細胞の集簇が認められた.皮疹の分布および貼布試験,光貼布試験の結果から,この色素沈着の発症にはPPおよび光の関与が考えられた.恒常的に向精神薬を服用している4つの精神科専門病院入院中の740名の患者のうち467名の精神分裂病患者の調査ではchlorpromazine長期(3カ月以上)内服者が163名,PP内服者が40名いた.しかし同様の色素沈着を呈した症例はなく,この2例は極めて稀な症例であることが示された.

著明なElastophagiaがみられた環状肉芽腫の1例

著者: 野本正志 ,   白井志郎 ,   岩田克美 ,   重見文雄

ページ範囲:P.351 - P.354

 53歳,男性.左肘部に自覚症状のない扁平隆起性皮疹が出現.皮疹は直径約3cmの環状,中央はやや陥凹し表面は淡紅色を呈した.組織像では真皮上層から中層に結節状に肉芽腫を認め,多核巨細胞が散在する.一部ではnecrobiosis,palisading granulomaを示し,コロイド鉄,Alcian-blue染色でムチンの沈着を認めた.Elastica-Masson染色では正常部にsolar elastosisの所見を認めず,病変部では弾力線維が断裂・消失し,巨細胞内に貧食されている像が多数みられた.以上より,elastophagiaを伴った環状肉芽腫と診断した.環状肉芽腫におけるelastophagiaについては殆ど報告されていない.また,actinic granulomaと環状肉芽腫との関係についても考察を加えた.

Warty Dyskeratomaの3例

著者: 矢島千穂 ,   熊切正信

ページ範囲:P.355 - P.361

 症例1:81歳女,症例2:55歳男,症例3:65歳女のwarty dyskeratomaの3例を経験した.症例1,2は被髪頭部,症例3は腹部に単発性に発症し,いずれも組織学的に定型であった.本症の発症起原に関して,諸外国では毛包脂腺系説や老人性角化症説を主張する報告が多いが,自験例3例からは連続切片,PAS染色によっても,これらの説を示唆する所見は得られなかった.また同時に,これまでの本症本邦報告例22例に文献的考察を加えたが,これらの説を積極的に支持する所見を有する症例は比較的少ないようであった.

多発性脂漏性角化症を伴ったSporadic Dysplastic Neviの若年成人男子例

著者: 木村俊次 ,   繁益弘志

ページ範囲:P.363 - P.367

 小型の多発性脂漏性角化症を併発したsporadic dysplastic neviの若年成人男子例を報告した.3カ月来,躯幹上部に小型の脂漏性角化症が100個以上多発し,これを主訴として来院したが,一方,幼少時より数個の黒子があり,最近1,2年の間に増加・増大して,顔面・躯幹上部などに約40個存在する.切除した黒子の8個中6個は,やや小型とはいえ,臨床的・組織学的にdysplastic neviに一致する.検索の限りでは内臓悪性腫瘍は見出しえなかった.両者の合併は初めてと思われ,その意義を中心に考察した.

下口唇に生じた線維性脂肪腫の1例

著者: 大岡亜夕子 ,   岩井雅彦 ,   安木良博

ページ範囲:P.369 - P.372

 55歳,男.初診の約5年前に出現し,半年前から徐々に増大してきた下口唇左寄りの径8mm,半球状の柔軟な腫瘍,病理組織所見では,真皮中層から下層にかけて脂肪細胞の集団がみられ,その周囲に膠原線維が増生し,線維性脂肪腫と診断された.調べ得た限りでは,本症の口唇発生例は,本邦ではまだ報告例はない,症例を報告するとともに,自験例を含む本邦における口腔領域の線維性脂肪腫22例について概要を記載した.

Acquired Fibrokeratoma—3例の報告

著者: 繁益弘志 ,   木村俊次

ページ範囲:P.373 - P.377

 症例1:28歳,男.左環指側縁の指状突起性小結節.症例2:30歳,男.右中指指腹の指状突出性角化性小結節.症例3:56歳,男.左第1趾屈側の淡紅色,有茎性,先端部角化性の小結節.臨床的,組織学的に3例ともacquired fibrokeratoma (AFK)に一致する.しかしながらまた,全例に小血管の増生,拡張を認めるほか,症例2および3では肥満細胞が軽度増加し,症例3では増加した結合織細胞中に多核の結合織細胞が認められるなど,3例ともangiofibromaの組織学的特徴を多少とも示し,特に症例3はan—giofibromaに最も近かった.AFKには正常結合織に類する組織像を示すものと,an—giofibromaに類似するものとの少なくとも2型あること,およびその間に種々の段階のものが存在することを指摘した.

成人T細胞白血病—顔面・四肢にのみ皮疹のみられた1例

著者: 川内勉 ,   岡田奈津子 ,   欠田良児 ,   小林與市 ,   吉川邦彦

ページ範囲:P.379 - P.382

 53歳,男性,佐賀県生まれ.四肢,顔面に限局する紅色丘疹や潰瘍を伴う結節等,多彩な皮疹を呈し,指趾,耳介,口唇に著明な潰瘍,壊死が認められた成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia:ATL)の1例を報告した.皮膚組織像では,真皮への異型リンパ球浸潤とPautrier's microabscessがみられた.抗ATLA抗体陽性で,末梢血に核の分葉した異型リンパ球を30〜40%認め,その膜表面形質ではOKT 4の増加とOKT 8の減少を認め,Tac抗原陽性を呈した.

膿疱性梅毒疹の1例

著者: 今田吏津子 ,   田崎理子 ,   三上幸子 ,   野村和夫 ,   八木橋信夫

ページ範囲:P.383 - P.386

 膿疱性梅毒疹の52歳,男性例を報告した.皮疹は米粒大から胡桃大までの汚穢な痂皮,膿疱を伴う丘疹・小結節を呈し,陰部には糜爛を伴う硬結が存在し,梅毒血清反応ではガラス板法245倍,緒方法640倍,TPHA20,480倍,皮疹部の組織像では角層内に微小膿瘍が見られ,真皮には血管内皮細胞腫大,血管・付属器周囲に形質細胞を主体とする稠密な細胞浸潤が認められた.

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編集室だより

ページ範囲:P.343 - P.343

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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