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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科42巻5号

1988年05月発行

雑誌目次

図譜・551

黒色調を呈した乳房外Paget病

著者: 幸田衞 ,   植木宏明 ,   森本接夫

ページ範囲:P.394 - P.395

患 者 84歳,女性
初 診 昭和61年8月27日

原著

両側腋窩Paget病を伴った外陰Paget病の1例

著者: 高槻覚 ,   田中友紀子 ,   大草康弘 ,   長島正治

ページ範囲:P.397 - P.401

 55歳,男性の両側腋窩Paget病を伴った外陰Paget病の1例を報告した,外陰部,左腋窩では臨床的に紅斑性病変を認めたが,右腋窩では淡い色素沈着のみであった.組織学的にはいずれにもPaget細胞を確認した.またCEA染色,レクチンDBA染色で,すべての病変に陽性を得た.電顕的にはsecretory cell, nonsecretory cellの両者が混在して認められた.両側腋窩Paget病を伴った外陰Paget病の本邦報告例20例を総括するとともに,外陰Paget病では腋窩病変に十分留意し積極的な生検が必要なことを述べた.

疣贅状表皮発育異常症の1例—免疫学的,ウイルス学的検討

著者: 大河内仁志 ,   関利仁 ,   土田哲也 ,   川島真 ,   本田まりこ ,   新村眞人 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.403 - P.407

 疣贅状表皮発育異常症(EV)で皮膚悪性腫瘍が多発した患者に対して免疫学的,ウイルス学的に検討した,免疫学的には,DNCB感作不成立とリンパ球サブセットでOKT 4, Leu 3 aの軽度低下とOKT 9,0KT 10,OKIA 1の増加を認めたが,免疫グロブリンに異常なく,リンパ球分画,NK細胞活性は正常範囲であった.この患者のボーエン病様皮疹と基底細胞上皮腫様皮疹においてhuman papilloma virus (HPV) DNAの存在を検索したところ,HPV 5型とhomologyを有するHPV DNAを検出したが,既存のHPVとは異なる可能性が示唆された.患者末梢血リンパ球中にはHPV DNAは検出されなかった.

扁平苔癬および扁平苔癬型薬疹40例の統計的観察と免疫組織学的検討

著者: 佐々木由美子 ,   相場節也 ,   加藤泰三

ページ範囲:P.409 - P.413

 昭和51年から60年までの過去10年間に東北大学皮膚科を受診した扁平苔癬および扁平苔癬型薬疹の40例について,臨床的,組織学的に比較検討を加え報告した.また扁平苔癬型薬疹の一部の症例については,モノクローナル抗体を用いた酵素抗体法を施行し,浸潤細胞の性格を調べた.扁平苔癬型薬疹では,皮疹の分布が広範囲に及ぶ傾向が顕著であったが,その他の臨床像や組織像については,特に扁平苔癬と比較し大差なかった.免疫組織学的には,表皮内における浸潤細胞は従来の報告とは異なり,Leu 2a+細胞とLeu 3a+細胞がほぼ同率に,真皮内における浸潤細胞はLeu 3a+細胞が優位に認められた.また,全例においてケラチノサイト表面にHLA-DR抗原の発現が認められた.

膿疱性乾癬と類天疱瘡の合併例

著者: 伊豆蔵るり子 ,   杉浦久嗣 ,   宮内東光 ,   上原正巳

ページ範囲:P.415 - P.418

 膿疱性乾癬に類天疱瘡を合併した57歳男性例を報告した.尋常性乾癬を20年間ステロイド外用のみで治療していたところ,急性増悪を来し膿疱性乾癬の像を呈した.組織学的には,小膿疱部ではKogojの海綿状膿疱を認めた.引き続き,乾癬皮疹の辺縁部に大小の水疱が生じた.水疱は表皮下水疱であり,螢光抗体法では表皮真皮境界部にIgG,C3の線状沈着を認めた.本例においては,膿疱性乾癬の増悪そのものが類天疱瘡発症の誘因となっていると思われる.

急性リンパ性白血病に合併した多発性成人型Xanthogranuloma

著者: 高橋正明 ,   千代谷成史 ,   花田勝美 ,   河村節子 ,   岩村秀輝

ページ範囲:P.419 - P.424

 46歳,男性.急性リンパ性白血病の寛解中に生じた多発性の成人型xanthogranu—lomaについて報告した.本邦では成人型xanthogranulomaの多発例の報告はきわめて稀であり,また急性リンパ性白血病に合併した点も興味深い.鑑別を必要とする疾患にnon-X histiocytosisとして包括されている疾患があげられるが,特にnon-Altman型の播種状黄色腫との異同について若千の考察を加えた.

Pseudoxanthoma Elasticumに続発したElastosis Perforans Serpiginosaの1例

著者: 金沢一也 ,   狩野俊幸 ,   加藤英行 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.425 - P.430

 頸部にpseudoxanthoma elasticum (PXE)の皮疹を持ち,初診の約半年前より右側頸部にelastosis perforans serpiginosa (EPS)を続発したと考えられる24歳男性例を報告した.臨床検査成績では,指尖容積脈波で細動脈の弾性低下を認める所見があり,眼底検査ではangioid streaks, aventurine fundusの所見が認められた.組織所見では,PXE部において真皮中層に異常弾力線維の集塊が認められ(オルセイン染色),この部に一致してコッサ染色陽性,アルシアンブルー染色陽性物質が認められた.EPS部では異常弾力線維のtransepidermal eliminationの過程が観察された.治療はEPSには夜間のステロイド剤含有テープ貼布が効果を示し,瘡様丘疹の扁平化,拡大傾向抑制がみられた.しかし,PXEについてはステロイド軟膏塗擦,ビタミンE内服ともに効果は認められなかった.文献的に昭和51年以後,最近10年間のEPS本邦報告例を集計し検討した.

Perforating Granuloma Annulare—症例報告

著者: 山崎龍彦 ,   松崎照樹 ,   山口茂光 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.431 - P.435

 18歳男性の両手背から手指にかけて発症したperforating granuloma annulareを報告した.皮疹は径数mm大までの正常皮膚色ないし淡紅色の小丘疹が多発し,中央が陥凹し,痂皮を有するものも認められた.組織学的には,真皮内のpalisading granulorna,および表皮直下のほぼ壊死に陥った肉芽腫が痂皮を形成しつつ体外へ排出される像,いわゆるperforationの像が認められた.また現在までの報告例43例を集計するとともに,elimination現象につき,特にfibronectinと好中球について,その役割の重要性を考察した.

特発性陰嚢石灰沈着症の1例

著者: 海老原全 ,   桜岡浩一 ,   清水宏 ,   西川武二

ページ範囲:P.437 - P.441

 51歳男に発症した特発性陰嚢石灰沈着症の1例を報告した.病変部を一塊として摘出し検討を加えたところ,光顕にて真皮内に境界明瞭な結節性病変を認め,結節内には顆粒状,塊状の沈若物質を認めた,電顕では,結節内容物は針状結晶状高電子密度物質により構成されていた.またX線分析を行ったところ,結節内でCaとPのピークが高値に検出され,内容物を生化学的に定量したところ,乾燥重量100mg中,Ca 14.4mg,IP 30.9mgが含有され,Ca3(PO42の結晶と推測された.さらに結節周囲の電顕的検討により,活動性の線維芽細胞が多数集積している像が認められ,胞体内に,結節内に認められた針状結晶状高電子密度物質と同様の物質が認められた.以上の所見より本症の石灰化の機序に活動性の線維芽細胞が関与している可能性が示唆された.

汎発性黒子症候群の1例

著者: 今井龍介 ,   沼田和代 ,   三浦淳子 ,   高森建二

ページ範囲:P.443 - P.448

 汎発性黒子症候群は,汎発する黒子の他に多彩な全身的合併症を伴う一症候群である.今回我々は,全身的に汎発する黒子のほか,肥大型心筋症,指間の蹼様所見,爪甲の軽度形成異常,漏斗胸,側彎,扁平頭蓋など,多彩な症候を伴った典型的な本症を経験したので,その詳細を報告する.また,我国における報告例25例を集計・対比して,本症について若干の考察を加えた.

嚢腫状の臨床・組織像を呈した石灰化上皮腫

著者: 繁益弘志 ,   木村俊次

ページ範囲:P.449 - P.453

 56歳男.約1カ月前より出現,増大してきた.現症:右顳?に被覆皮膚の一部が淡紅色調光沢を有する嚢腫様半球状腫瘤が単発.自覚症なし.組織所見:腫瘍は真皮浅層から皮下組織にかけて単一の嚢腫状に存在し,内腔に好酸性均一無構造の液状物質が充満する.嚢腫壁は主に好塩基性細胞,一部陰影細胞より成る.下部の一部では壁が破壊し,異物肉芽腫と置換している.腫瘍周囲間質には,酸性粘液多糖類に富む種々の厚さの結合織性被膜が存在するが,リンパ管,血管の明らかな拡張は認められない.PAS染色では嚢腫内容はジアスターゼ抵抗性PAS陽性,コッサ染色一部陽性.本例では,石灰化上皮腫が,下部の異物反応部より血液成分が入り込んで嚢腫を形成したと考えられた.類似症例について検討を加えた.

植皮部に皮疹の再発を認めた家族性良性慢性天疱瘡—電子顕微鏡的観察

著者: 河井一浩 ,   伊藤雅章 ,   坂本ふみ子 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.455 - P.460

 植皮術施行部に皮疹の再発をみた家族性良性慢性天疱瘡の52歳,男性例について,その皮疹部および無疹部の生検材料を電顕的に観察した.症例は,43歳頃より肛囲,鼠径部,臍窩,腋窩に瘙痒性皮疹を生じ,48歳時に皮疹部に分層植皮術を施行した.3年後,植皮部に皮疹が再発し,その皮疹は組織学的に表皮細胞間に棘融解性裂隙の形成をみる家族性良性慢性天疱瘡の定型的な所見を示した.電顕的には表皮細胞のデスモゾームの減少と崩壊像および張原線維の分布異常などを認めた.一方,大腿伸側の無疹部でも,光顕的には異常を認めなかったが,電顕的にデスモゾームと張原線維の分布異常が認められた.以上より,本症では,生来,表皮細胞自体に細胞骨格や細胞間接着の異常が存在し,そこに局所の環境因子が加わり,病変が出現すると推測された.

Desmoplastic Trichoepitheliomaの2例

著者: 原田玲子 ,   中村絹代 ,   橋本隆 ,   稲本伸子 ,   荒木由紀夫

ページ範囲:P.461 - P.467

 55歳および25歳の女性に認められた典型的なdesmoplastlc trichoepitheliomaの2例を報告した.症例1は,10年来,右頬部下方に境界明瞭な楕円形局面があり,辺縁には淡黄白色小丘疹が環状に配列する。症例2は,4〜5年来,前額部やや右寄りに淡黄色調,扁平隆起性の円形局面を認めた.病理組織所見は2例ともほぼ同様で,真皮浅層から深層に存在する大小多数の角質嚢腫および基底細胞様細胞の索状配列が病変の主体をなし,周囲を豊富な線維性間質が取り囲む.今回,著者らはPAP法によるCEA染色等を行い病理組織学的検討を加えるとともに,本邦報告例を中心に文献的考察を行った.

多発性Granular Cell Tumorの1例

著者: 山田耕次 ,   関根万里 ,   権丙浩 ,   小野田進 ,   長村洋三 ,   増谷衛

ページ範囲:P.469 - P.475

 35歳男性に生じた多発性granular cell tumorの1例を報告した.腫瘍は右前腕屈側,右手背,左肘頭,左肩,右臀,右下腿に計6個認められた.組織像はいずれも典型的で,酵素抗体法によるS−100蛋白染色では腫瘍細胞は陽性を示した,電顕的に,腫瘍細胞はライソゾーム様顆粒を豊富に含み,basal laminaで囲繞されているようにみえた.また,fibrous long spacing collagen (Luse body)やangulate body (PAS-stainedacicular body)とaxon様構造も存在していた.それらのことから,神経由来が示唆された.

エックリン汗管癌の2例

著者: 前田香折 ,   前田和男 ,   佐々木絹子 ,   小野寺英夫 ,   本間光一 ,   神保孝一

ページ範囲:P.477 - P.481

 エックリン汗管由来と考えられるeccrine porocarcinoma (症例1:74歳,女性)とeccrine poro-duct carcinoma (症例2:89歳,女性)の2症例を報告する.症例1は足背の赤色結節で,組織学的に表皮との連続性,cleft様構造,真皮内汗管との連続性,汗口様構造,PAS陽性所見および顕著な核の異型性を示した.症例2は大腿後面の赤色結節で灰黒色角化性局面を伴い,表皮との連続性,汗口様構造などの表皮内汗管の性質と真皮内汗管由来を思わせる増殖形態を併せ持っていた,エックリン汗管癌に関する文献的考察を試みる.

虫刺様皮疹が全身に多発したMicrosporum canisによる体部白癬の家族内発生例

著者: 志水達也 ,   比留間政太郎 ,   久木田淳

ページ範囲:P.483 - P.488

 45歳の母親,19歳および11歳の息子の3人の家族にみられた,虫刺様の粟粒大紅色丘疹が全身に無数に多発したMicrosporum canisによる体部白癬の症例を報告した.M. canis感染の蔓延に伴って,従来の本症の定型的臨床像を示さない症例が増加している点を指摘するとともに,本菌のcarrierとなる猫の感染状況をも検討した.

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編集室だより

ページ範囲:P.475 - P.475

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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