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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科42巻6号

1988年06月発行

雑誌目次

図譜・552

脛骨前粘液水腫

著者: 田中友紀子 ,   長島正治 ,   吉元勝彦 ,   村川章一郎

ページ範囲:P.498 - P.499

患 者 72歳,男性
初 診 昭和60年4月26日

原著

Microcystic Adnexal Carcinomaの1例

著者: 大西一德 ,   石川英一

ページ範囲:P.501 - P.504

 45歳男性の上口唇に認められた,microcystic adnexal carcinornaの1例を報告した.臨床的に通常のsquamous cell carcinomaと異なり,明瞭な潰瘍形成がなく,組織学的に表皮と殆ど連続しない異型性の少ない重層扁平上皮が角質嚢腫を形成し,さらに神経周囲や筋肉内に浸潤性に増殖する像を認めた.外科的に上口唇の全層切除の後,再建したが局所に再発を認めたため,さらにMohs' chemosurgeryにて加療した.

潰瘍を伴う瘢痕性局面を呈した陰嚢(肉様膜)平滑筋腫

著者: 木村俊次 ,   小板橋定夫

ページ範囲:P.505 - P.509

 60歳,男.陰嚢左側に10カ月来出現した13×12mm,多角形,境界ほぼ明瞭,一部黒色調,全体として淡紅灰白色瘢痕性の扁平局面で,中心部に糜燗ないし浅い潰瘍を伴い,下床と可動性の浸潤を触れる.組織学的に下方および側方の肉様膜と連続して境界ほぼ明瞭な成熟平滑筋束の増殖を認める.表層には表皮欠損と不規則な表皮肥厚に加えて,汗管の索状および嚢腫状増殖を認めた.Dartoic leiomyomaの内外報告例について検討を加えるとともに,皮膚疾患に伴う汗管の変化について考察を加えた.

Perifollicular Fibroma—その発生母地と発生機序について

著者: 岸本三郎 ,   在田継久 ,   坂上佐知子 ,   筏淳二

ページ範囲:P.511 - P.515

 33歳,女性の前頭部に生じたperifollicular fibromaの1例を報告した.組織学的には,膠原線維が毛包を中心に同心円状,密に増生していた.腫瘍内にみられた毛包は脂腺開口部前後までであり,しかも毛包周囲にリンパ球の密な浸潤がみられた.一部には毛幹に対する異物反応もみられたが,毛包上皮の索状増殖・吻合などはみられなかった.さらに,細胞骨格を構成する中間径フィラメントの一種であるデスミンを免疫組織化学的に染色すると,大多数の腫瘍細胞は陽性で,円形から超紡錘形まで各種の形態を示した.我々がすでに報告したように,この形態学的特徴から本腫瘍細胞はmyofibroblastの可能性が極めて高い.Pinkusは,本症をpure periadnexal adventitial tumorsと記しているが,我々は,さらに押し進めて毛包周囲のadventitia dermisを構成するmyo—fibroblastの腫瘍と考えた.さらに,前述した密なリンパ球浸潤により,円形脱毛症時と同様に毛包上皮の再生が抑制され,perifollicular fibromaの組織学的特徴が形成されるものと考えた.

結節性紅斑様皮疹を呈した急性前骨髄球性白血病

著者: 安江厚子 ,   三田哲郎 ,   三田一彰

ページ範囲:P.517 - P.520

 64歳,女性.発熱と四肢の有痛性結節性紅斑様皮疹のため来院末梢血中に14%の異型骨髄芽球を認め,骨髄検査にて急性前骨髄球性白血病と診断された.皮疹部の病理組織検査では,真皮および皮下脂肪織の血管周囲性に好中球,リンパ球,類上皮細胞に混じって,ナフトール・ASD・クロールアセテートエステラーゼ染色陽性の異型細胞の浸潤が認められた.患者は,約1.5カ月後に敗血症性ショックにて死亡した.

単球性白血病の1例

著者: 松村和子 ,   花田勝美 ,   相原守夫

ページ範囲:P.521 - P.525

 54歳,男性.薬疹と思われる全身の紅斑を主訴として来院した際,背部の自覚症状を欠く,多発性の扁平小丘疹を指摘された.その組織学的所見から皮膚白血病が疑われ,骨髄穿刺を行ったところ,acute monocytic leukemiaと診断された.皮膚浸潤白血病細胞の細胞質内には,電顕的にfibrillar formationが認められた.免疫組織学的検索では,治療に伴って浸潤白血病細胞のリゾチームは陰性化した.

くすぶり型ATLの1例

著者: 前田和男 ,   川村正昭 ,   倉増隆司 ,   前田香折 ,   阿久津裕 ,   堀越貴志 ,   高橋誠

ページ範囲:P.527 - P.532

要約 83歳,女性.北海道出身.両親は徳島県出身.昭和47年頃より前腕に瘙痒を伴う紅斑が出現し,消褪を繰り返していた.昭和60年頃より紅皮症状態を呈し,しばしば不明熱を伴うようになった.初診時,躯幹から両下肢にかけ厚い鱗屑が付着する角化性紅斑局面を呈し,一部に出血斑を伴い,足底,爪には白癬菌感染を認めた.白血球数は11,000,異型リンパ球は4%,抗ATLA抗体陽性,一部に出血斑を伴う角化傾向が強い紅皮症,臨床経過,生検皮膚組織より,くすぶり型ATLと診断した.

Warty Dyskeratomaの1例

著者: 安岐敏行 ,   阿曽三樹 ,   島雄周平

ページ範囲:P.533 - P.536

 58歳,女性の頭部に生じたwarty dyskeratomaの再発例について報告した.組織所見では,嚢腫状構造とDarier病様変化が同一組織内で多発性に発生しており,ほかにsquamous eddy様構造なども認められた.免疫組織学的検査では,CEA, S−100蛋白,ヒト・パピローマウイルスは,いずれも陰性であった.またDACM染色では,SH基でcorps rondsの一部で強陽性,SS結合でcorps rondsにおいて陽性所見が得られ,いわゆる早期のSS化をみた.以上より,本症の発生起源として毛嚢由来が示唆され,細胞骨格をつくる蛋白の合成異常により,特異な角化様式が生じるものと推測された.

自家骨髄移植に伴う急性GVHDの1例

著者: 大沢純子 ,   高橋泰英 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.537 - P.541

 5歳,男児.Neuroblastomaの再発のため自家骨髄移植を施行されたが,移植後9日目より発熱,下痢とともに腋窩,陰股部を中心として皮疹が出現し,3〜4日で全身に拡大した.病理組織学的には軽度リンパ球浸潤を伴う表皮基底細胞の空胞変性と表皮細胞の好酸性変性壊死,真皮上層の軽度のリンパ球浸潤が認められた.検査所見では著明な白血球減少および軽度の肝障害,腎障害がみられた.GVHDに対する治療ができないまま,術後19日目にはDICを併発して死亡した.一卵性双生児間の骨髄移植や自家骨髄移植においても急性graft-versus-host病(GVHD)が欧米の文献に既に報告されているが,この場合graftとhostが遺伝的に同一なため確定診断ができないという問題がある.しかしながら,本症例も皮疹を含む臨床経過が急性GVHDによく一致すること,ならびに皮疹の組織所見より,自家骨髄移植に伴う急性GVHDとしてよい症例と思われる.

Linear IgA Bullous Dermatosis—ASO,ASKの上昇した1例

著者: 佐野隆夫 ,   御藤良裕 ,   川田暁 ,   加藤卓朗 ,   角田克博

ページ範囲:P.543 - P.546

 先行する溶連菌感染の存在が示唆され,血清IgAが高値であったlinear IgAbullous dermatosisの1例を報告し,本邦既報告例54例を集計し検討を加えた.症例は12歳男児で,鼻孔に痒みを伴う小水疱が出現し全身に拡大した.鶏卵大まで緊満する水疱と拇指頭大までの紅斑があり,紅斑上に米粒大までの小水疱を有した.ASO 833,ASK20,480,IgA 407 mg/dlと高値であった.KI貼付試験,HLA B8は陰性.組織は好中球の微小膿瘍を伴う表皮下水疱.JunctionにlinearなIgAの沈着を認めた.DDS 50mg/日とプレドニゾロン35mg/日内服にて治癒中止後も再発はない.ASO,ASK,血清IgA値は正常となった.なお内臓悪性腫瘍の合併はなかった.

腎透析患者に発症したPorphyria Cutanea Tarda

著者: 格谷敦子 ,   中川浩一 ,   辻卓夫 ,   小林裕美 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.547 - P.553

 51歳,女性.慢性腎不全のため,6年前より透析療法を受けている.約1年前より顔面,手背に水疱が出現するようになった.同部の皮膚は粗?で色素沈着を伴い,直径5mm前後の水疱,糜燗,瘢痕が多数散在する.家族歴,飲酒歴や,フロセミド,アルミニウムハイドロキシドゲル,ナリジクス酸などの内服歴はない.血清鉄中等度上昇.ポルフィリン体検査では尿中ウロポルフィリン高値,赤血球ポルフィリン体正常.瘢痕部の病理組織像では真皮乳頭層の軽度浮腫,小円形細胞浸潤と血管周囲PAS陽性物質の沈着を認める.螢光抗体法では表皮真皮境界部と毛細血管周囲にfibrinogenとtype IV col—lagenの螢光を認める.電顕像では内皮細胞の外側に1層のbasal laminaとそれを囲むように幅広く無構造に見える部分があり,その中にcollagen fibrilも散見される.また,collagen fibrilを包むように多量の微細網状ないし微細顆粒状物質が認められる.

亜急性皮膚エリテマトーデスの1例

著者: 田村敦志 ,   石川英一

ページ範囲:P.555 - P.560

 30歳,女性.初診の10年前より日光過敏,3年前よりレイノー現象,関節痛を有する女性に約1年前より日光露出部に瘙痒を伴う紫紅色斑,丘疹が多発するようになった.皮疹は色素沈着を残しながら周辺に拡大し,出没を繰り返した.皮疹部の組織像は,表皮基底層の液状変性と真皮上層に限局した小円形細胞浸潤より成り立っていた.以上の皮疹の特徴より本例をSontheimerらの提唱した亜急性皮膚エリテマトーデスに合致すると考えた.検査上,リウマチ因子は陽性であったが,抗核抗体,抗DNA抗体,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体はいずれも陰性であった.他に,涙液分泌軽度低下,角膜糜爛を認めた.治療として,非ステロイド系消炎剤,プレドニソロン,DDSなどの内服を試みたが効果なく,アザチオプリン50mg内服でよくコントロールされた.

EMO症候群の1例

著者: 麻生和雄 ,   安斎真一 ,   斉藤恭一

ページ範囲:P.561 - P.565

 眼球突出,限局性前脛骨部粘液水腫,肥厚性骨関節症の3症候を備えたEMO症候群の1症例を報告した.68歳,男,20年前甲状腺亜全摘出手術を受け,4〜5年前から前脛骨部,左手背に限局性粘液水腫,前後して右手関節痛を生じた.甲状腺検査で機能低下所見と,甲状腺レセプター抗体価の著明な上昇をみた.これまでに本邦でEMO症候群は自験例を含めて17症例が報告されている.それらの臨床,甲状腺レセプター抗体の関連について考察した.

硬化性萎縮性苔癬の電顕的観察

著者: 松田真弓 ,   大熊真治 ,   赤坂俊英 ,   昆宰市

ページ範囲:P.567 - P.572

 63歳,女子の外陰部に限局した硬化性萎縮性苔癬の1例を報告するとともに,電顕的観察を行った.その結果,真皮上層の膠原線維の変性,弾性線維の減少などの従来の報告と一致する所見に加えて,elaunin線維に相当する弾性線維にアミロイド様線維の沈着とelectron denseな物質の出現をみた.前者の線維につき光顕的にDylon-orcein染色を行い,アミロイドの検索を行ったが不定であった.後者の物質については,文献的に辻らの報告にみられるelectron dense granuleに相当するものであると思われた.これらの所見につき若干の文献的考察を行った.

陰茎白癬の7例

著者: 佐々木一夫 ,   望月隆 ,   伊豆蔵るり子 ,   渡辺昌平

ページ範囲:P.573 - P.577

 7例の陰茎白癬を経験した.本症の特徴として,①臨床上,中心治癒傾向のない鱗屑を伴う浸潤の浅い紅斑を呈し,②陰股部白癬あるいは陰嚢白癬の合併が多く,③鏡検にて多数の菌要素を認め,④原因菌として,T.rubrumが殆どである,ことがあげられる.また,基礎疾患を有するもの,ステロイド剤の外用および内服に伴い発症したと考えられる症例も散見された.

歩行困難を来した掌蹠膿疱症—仙腸関節炎併発例

著者: 川浪耐子 ,   花輪滋 ,   森嶋隆文 ,   森嶋和子

ページ範囲:P.579 - P.583

 掌蹠膿疱症性骨関節炎は一般に胸肋鎖骨間部にみられるが,仔細に検索すると,これら患者の約10%に仙腸関節炎の合併がみられる.仙腸関節炎による臨床症状は圧痛,運動時痛,下肢痛などである.最近,我々は掌蹠膿疱症の治療中,腰痛のため,歩行困難となった30歳,女性例を経験した.自験例で興味あることは,歩行困難の原因が掌蹠膿疱症性仙腸関節炎であったこと,扁摘によって皮膚症状および骨関節症状が消失したことである.この症例の経験から,掌蹠膿疱症と骨関節病変が共通の病因,殊に病巣感染に関連して発症すること,治療に際し,感染病巣の検索とその除去,殊に扁摘を積極的に行うべきものと考えた.

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編集室だより

ページ範囲:P.515 - P.515

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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