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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科42巻7号

1988年07月発行

雑誌目次

図譜・553

嚢胞型基底細胞上皮腫

著者: 海野俊雄 ,   権丙浩 ,   長村洋三

ページ範囲:P.592 - P.593

患 者 40歳,女性
初 診 昭和62年2月4日

原著

Cutaneous Follicular Lymphomaの1例

著者: 新井栄一 ,   片山勲 ,   杉俊之 ,   中山秀夫

ページ範囲:P.595 - P.598

 79歳,女性の左腋窩孤在性の皮膚濾胞性リンパ腫,混合型の1例を経験した.皮膚病巣の濾胞構造は不明瞭であったが,光顕的に構成腫瘍細胞はcentrocyteとcentro—blastの混合と同定された.さらに,腫瘍細胞は免疫酵素組織化学的検索では,細胞質内免疫グロブリンは陰性であったが,MB−1染色に陽性で電顕的にもcentrocyte,centroblastと確認された.また,S−100蛋白染色陽性で,電顕にてdesmosomeを有するdendriticreticulum cellが証明され,濾胞性リンパ腫と確認し得た.皮膚初発濾胞性リンパ腫の頻度は,本邦では数例の報告をみるのみで,欧米諸国よりははるかに稀である.

アクリノール外用で発症した難治性下腿潰瘍の1例

著者: 林久 ,   大崎正文 ,   重見文雄 ,   武田克之

ページ範囲:P.599 - P.602

 25歳男性の,アクリノール外用で発症したと考えられる右下腿の難治性潰瘍の1症例を報告した.患者は右下腿にムカデ咬傷を受け,1カ月後に同部が発赤,腫脹したので連日アクリノール湿布を続け,1力月後に潰瘍を生じた.その後も2年以上に亘り再発を繰り返し,難治のため当科に入院した.入院後,特に積極的な加療をしないまま瘢痕治癒した.アクリノールによるパッチテストは陽性,一次刺激性は否定され,左下腿において行った15日間連続のアクリノール外用により,右下腿と類似の皮膚潰瘍を再現しえた.以上の成績から,本症例の難治性下腿潰瘍はアクリノール外用により生じたと結論した.

Lupus Erythematosus Profundusの1例

著者: 安居千賀子 ,   熊切正信 ,   森川玲子 ,   金子史男 ,   大河原章

ページ範囲:P.603 - P.607

 34歳,女性のlupus erythematosus profundusの1例を経験した.皮疹は右上腕,腰部に分布する.表面は紫赤色の萎縮性紅斑で一部に痂皮が付着する.皮下には硬結を触れ,圧痛がある.しかし,皮満面の著明な陥凹はない.病変部からカルシウムの塊状物の排泄があった.組織学的所見は表皮基底層での液状変性,真皮下層,皮下組織での膠原線維の増加とsclerotic changeである.SLEを示唆する所見としては抗核抗体陽性,抗DNA抗体陽性がある.

Combination Methodによる血漿交換療法が著効を示した水疱性類天疱瘡の1例

著者: 山田裕道 ,   三浦淳子 ,   沼田和代 ,   矢口均 ,   高森建二 ,   小川秀興

ページ範囲:P.609 - P.614

 症例は48歳女性,水疱性類天疱瘡.ステロイド剤,免疫抑制剤による治療に抵抗を示したため,我々の考案したcombination methodを用いて血漿交換療法を施行した.1日平均処理血漿量は約1,600ml,週2〜4回,2カ月間に計9回の血漿交換を行うことにより,抗体価の減少に伴って臨床症状の著明な改善を認めた.Combination methodとは,遠心分離法によって分離された血漿を濾過膜に通すことにより,血漿に含まれる旧己抗体を比較的選択的に除去し,その他残存せる自己血漿中の有用成分は,洗浄された血球成分と共に返却する方法である.本法は従来の遠心分離法と二重濾過法の欠点を補い,両者の利点を併せ有しており,今後,血漿交換適応症例に推奨されうる新しい方法と考えられる.

乾癬と高尿酸血症

著者: 井手山晋 ,   宮地良樹 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.615 - P.617

 乾癬患者83名を対象にして,その血清尿酸値を調べるとともに痛風および尿路結石症の既往ないし合併の有無を調べた.その結果,患者の血清尿酸値の平均値は対照のそれに比較して有意に高く,その20%に高尿酸血症を認めた.また,痛風および尿路結石症の既往ないし合併は患者の10%にみられ,血清尿酸値の高い者により多くみられた.本邦においては乾癬と高尿酸血症との関係はあまり注目されていないようであるが,患者を治療していく上で留意すべき点であると思われる.

アフロクァロンによる薬疹—日光過敏性皮膚炎に始まり扁平苔癬様皮疹を呈した2例

著者: 戸倉新樹 ,   小出まさよ

ページ範囲:P.619 - P.622

 67歳,女および72歳,女に発症したアフロクァロンによる扁平苔癬型薬疹を報告した.2症例は,その皮疹が日光過敏性皮膚炎として始まり,約1カ月で扁平苔癬様皮疹に変化した点が特徴的であった.内服中止により,皮膚病変は約1週間で軽快した.1例に誘発試験を施行したところ,同薬内服のみでは皮疹の再現はみられず,日光照射することが必要であった.しかし,アフロクァロン内服中の光照射試験において,UVA,UVBともMEDの低下を認めなかった.一旦生じた扁平苔癬様皮疹は,以後同部に強い口光照射を受けなくても持続するため,日光照射は最初の皮疹の誘発にとって必要であり,皮疹の存続には不要と考えられた.

頭部にBasal Cell EpitheliomaとBasosquamous Cell Carcinomaを併発した1例

著者: 金沢一也 ,   加藤英行 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.623 - P.626

 79歳,女性の右側頭部に出現した紅色丘疹が約10年の経過で易出血性腫瘤となり,また,この間に初診の半年前より左前側頭部に半球状,直径10mmの硬い結節が出現した.組織学的にはともに基底細胞上皮腫であり,特に左前側頭部の結節は基底細胞上皮腫としては特異な外観を呈し,組織学的にも有棘細胞様の細胞塊を認め,通常の基底細胞上皮腫より異型性の強い細胞を有するbasosquamous cell carcinomaであった.治療は外科的に切除し,中間層遊離皮弁形成植皮術を行った.術後1年半を経過するが,局所再発,領域リンパ節転移,また遠隔転移は認められていない.

外陰部にみられた基底細胞腫の3例

著者: 赤松徹 ,   永井秀史 ,   伊藤達也

ページ範囲:P.627 - P.631

 発生部位として稀な外陰部に生じた基底細胞腫の3例を報告し,昭和40年から昭和61年までに本邦皮膚科領域で報告された48例について検討を加えた.その結果,基底細胞腫が外陰部に発生する頻度は低いこと,発生頻度や発生時平均年齢に性差がないこと,男性では陰嚢,女性では大陰唇に好発し,男女とも臨床上は結節潰瘍型や表在型,組織学的には充実型,表在型が多いこと,しばしば自覚症状として瘙痒を伴うこと,治療は外科的治療を確実に行うことが良いことなどが判った.

成人T細胞白血病の1例

著者: 小栗知子 ,   入交珪子 ,   山田実 ,   中林康青 ,   斉藤恒博 ,   高梨利一郎 ,   山崎家春

ページ範囲:P.633 - P.637

 44歳,女性,岩手県出身の成人T細胞自血病の1例を報告した.自験例は皮疹として,自覚症の殆どない浸潤性紅斑,多発性皮膚結節を有し,リンパ節腫脹,肝脾腫は認めなかった.病理組織学的には,結節部の稠密な細胞浸潤がみられるが,基底層や表皮内への浸潤はみられなかった.末梢血および皮膚結節部には深い切れ込みのある核を有する異型細胞が認められた.免疫学的には,ATLA抗体陽性,ヘルパー・サプレッサーT細胞の性格を持ち,また,サザンプロット法により,HTLV-Iが染色体上に組み込まれた感染細胞のmonoclonalな増殖があることを証明した.

上咽頭癌を合併した皮膚筋炎の1例—旭川医大皮膚科における皮膚筋炎・悪性腫瘍合併例の検討

著者: 梶田哲 ,   橋本喜夫 ,   飯塚一

ページ範囲:P.639 - P.644

 19歳女性,皮膚筋炎の診断約1年後に,上咽頭癌の存在が確認された症例を報告した.各種鎮痛剤・神経ブロックなどに抵抗性の三叉神経痛様の疼痛が初発症状と考えられる上咽頭癌であったが,その疼痛の悪化と筋炎症状は必ずしも一致しなかった.また,全経過を通じ血清LDHの高値が続いた.本症例を含め,過去10年間に旭川医大皮膚科で観察した皮膚筋炎の症例を集計したが,特に悪性腫瘍を合併した症例において,LDHの異常がその経過をみる上で重要と思われた.

Acquired Digital Fibrokeratomaの2例

著者: 瀬川郁雄 ,   赤坂俊英 ,   下田肇 ,   伊崎誠一 ,   昆宰市

ページ範囲:P.645 - P.650

 70歳女性の足底および54歳男性の右第4趾に生じたacquired digital fibro—keratomaの2例を報告した.第1例はKintらの報告したtypeⅢに相当し,圧迫による変形のため典型例と異なる扁平ドーム状を呈し,組織像は膠原線維の変性と線維間浮腫を示した.第2例はKintらの報告したtype Ⅰに相当し,典型的なドーム状の臨床像を示したが,腫瘍部の真皮内に本症では稀な脂肪組織を認めた.さらに,組織学的,電顕的検討からKintらの分類によるtypeⅢは,type Ⅰが二次的に変化しているものと推察された.

Granuloma Inguinaleの1例

著者: 河野正恒 ,   原田晴美 ,   高田善雄 ,   川田陽弘 ,   斎木茂樹

ページ範囲:P.651 - P.656

 40歳男性のgranuloma inguinaleを経験し,病理組織学的にパラフィン標本にて,Warthin-Starry染色,ギムザ染色を用いてドノバン小体を証明し得た.本症は本邦においてはきわめて稀な性病であるため,臨床症状,組織学的細菌検索,治療などについて考察を加えた.

掌蹠点状角化症の1例

著者: 山地一史 ,   比留間政太郎 ,   久木田淳

ページ範囲:P.657 - P.661

 42歳,主婦.初診の約20年前に両手掌の角化性小丘疹に気づいた.皮疹は次第に増加し両足底にも拡大.初診時,両掌蹠に2mmから4mmまでの,中央に陥凹を有する,角化性小丘疹を認めた.組織学的所見から,掌蹠点状角化症と診断.娘の掌蹠に類症と思われる小丘疹あり.エトレチネート内服により,丘疹の扁平化,陥凹の縮小が認められた.自験例を含む,本邦報告例29例について若干の考察を加えた.

Mycobacterium kansasiiが原因であった皮下膿瘍の1例

著者: 楠田茂 ,   北川來美 ,   原田正 ,   栗本圭久 ,   吉田正己 ,   手塚正 ,   池口滋 ,   小山道子 ,   小西與承

ページ範囲:P.663 - P.666

 46歳,男性の右肩甲部および右上腕内側部に出現した非定型抗酸菌による皮下膿瘍の1例を報告した.組織学的に膿瘍は肉芽組織からなる壁で構成されており,細菌学的検査で内容液中から,Mycobacterium kansasiiが分離同定された.感染経路は不明だが,基礎疾患に骨髄異形成症候群のrefractory anemia with excess of blast (RAEB)があり.これはいわゆる前白血病状態で,そのため免疫抵抗力が低下しており,opportunisticinfectionとして発症したものと推察された,治療経過は抗結核剤に比較的よく反応し,良好であった,本菌による皮下膿瘍のみで発症した症例は,本邦では極めて稀なものと思われる.

都立台東病院における最近7年間のSTDの統計的観察

著者: 木村太紀 ,   広谷哲也 ,   小川秀興

ページ範囲:P.667 - P.672

 昭和55年より昭和61年に至る7年間に都立台東病院皮膚科を受診したSTD患者を集計し,考察を加えた.全外来受診者中,STD患者の占める割合は,年平均4.7〜11.4%に達し,当院の特殊性を示した,梅毒は,最近2年間の増加が著しく,特に初期症状を呈するものの比率が高くなる傾向を示した.尖圭コンジロームも,同様に,最近の増加が著しく,昭和55年,56年に比し,昭和61年では約10倍の増加が認められた.一方,欧米で急上昇の陰部ヘルペスは,予想に反して微増状態であり,軟性下疳は,昭和57年を最後に見られていない.

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編集室だより

ページ範囲:P.602 - P.602

雑誌名の省略について
 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある雑誌の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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