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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科42巻8号

1988年08月発行

雑誌目次

図譜・554

特異な臨床像を呈した後頭部リウマチ結節

著者: 繁益弘志 ,   木村俊次

ページ範囲:P.680 - P.681

患 者 76歳,女性
初 診 昭和62年2月24日

原著

DDS投与が奏効したアナフィラクトイド紫斑の3例

著者: 秋山真志 ,   北川佳代子 ,   増田光喜 ,   仲弥 ,   原田敬之 ,   西川武二

ページ範囲:P.683 - P.688

 24歳女,25歳男,27歳男の3例のアナフィラクトイド紫斑に対しdiamino-diphe—nyl-sulfone (DDS)50〜75mg/day内服を行い全例で皮疹の消失がみられ,さらに腎症状,腹部症状,関節症状を伴った2例でそれらの改善を認めた.アナフィラクトイド紫斑にDDSが有効であることは成書に記載されているものの,その報告は少ない.自験例3例を含め,DDSが有効であった本症7例中6例において症状改善後再発を認めないことから,DDSは本症の有力な治療薬と思われる.

水疱性類天疱瘡に対するニコチン酸アミド大量療法—テトラサイクリンとの併用を行った4例についての検討

著者: 金本昭紀子 ,   赤木理

ページ範囲:P.689 - P.694

 4例の水疱性類天疱瘡患者にテトラサイクリンとともに,ニコチン酸アミドの大量療法を試みた.著効2例,やや有効2例.効果は約1週間で発現し,副作用として,2例に悪心,嘔吐,食欲不振がみられたが,テトラサイクリンによるものと思われた.著効の2例では,ニコチン酸アミドのみの内服継続にて経過良好で,主にニコチン酸アミドがその効果発現に与っているものと考えた.重篤な副作用のないニコチン酸アミドは,水疱性類天疱瘡に対して,今後とも試みる価値のある薬剤であろう.

Pseudoxanthoma Elasticumの2例

著者: 大野佐代子 ,   横尾正 ,   太田深雪 ,   山本昌充 ,   段野貴一郎 ,   小泉俊三 ,   高北晋一 ,   寺内博夫 ,   沖波聡 ,   梶山徹

ページ範囲:P.695 - P.699

 典型的な皮疹と眼底所見を呈したpseudoxanthoma elasticum(PXE)の2症例を報告した.症例1は高血圧を呈していた.症例1ではPXEによる腹部症状は呈していなかったが,直腸動脈壁にもPXEによる血管変化が及んでいた.2症例とも腹部エコーにて腎にstrong echoを認め,PXEの血管性変化と考えられた.

Fabry病の1例

著者: 山田晴義 ,   大山克巳 ,   清水宏 ,   仲弥 ,   原田敬之

ページ範囲:P.701 - P.707

 22歳,男.10歳頃,左大腿に点状の紅色皮疹が出現.12歳頃から運動時に発汗量が少なく,体温が容易に上昇し,同時に手足の関節痛も出現した.初診時左下肢に粟粒大の暗赤紫色斑および丘疹が散在性に多発していた.光顕的には表皮に軽度の過角化,真皮上層の毛細血管の若干の増生を認めるのみであったが,電顕的観察では真皮の殆どの血管内皮細胞胞体内に高電子密度のミエリン様物質の豊富な沈着が証明され,同様の物質は線維芽細胞および神経周細胞胞体内にも認められた.また患者末梢血中の白血球α-galactosidase活性の著明な低下を認め,発汗テストにて発汗量の著明な低下がみられた.自験例は皮疹は非典型的であったものの,疼痛発作,発汗低下を伴い,電顕および酵素学的に特異な所見を呈しFabry病と診断しえた.多発する点状の血管腫をみた場合,Fabry病をも考慮した検索が必要である点を強調するとともに,本症に関して若干の文献的考察を行った.

多発性骨髄腫に伴う全身性アミロイドーシスの1例

著者: 松本和彦 ,   松井雅彦 ,   斎田俊明 ,   石田文宏

ページ範囲:P.709 - P.712

 70歳,女性.軽度の外力により全身に出血斑が生じるIgG (λ)型の多発性骨髄腫の患者.皮膚の生検組織像にて表皮下,血管壁,血管周囲,皮膚付属器周囲に多量のアミロイド物質を認め,骨髄腫に伴う全身性アミロイドーシスと診断した.自験例は多量のアミロイドの沈着の程度に比べ,出血斑以外に特別な皮疹は存在しなかった.皮疹を認めない多発性骨髄腫患者にもアミロイド物質の沈着が皮膚に証明される症例もあるのではないかと推論した.

Chronic Graft-Versus-Host Disease—電顕的検索

著者: 増子倫樹 ,   伊藤雅章 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.713 - P.719

 白血病の治療のために骨髄移植を施行し,急性graft-versus-host disease(GVHD)の既往のある慢性GVHDの2例を報告.第1例では頬粘膜部の隆起性白色の粘膜疹を,第2例では,手掌部の色素沈着を伴う角化性皮疹を電顕的に観察した.光顕的に,いずれの例でも,急性型に比べ,上皮および表皮の著明な肥厚を認める.微細構造的には,慢性型でも基本的に急性GVHDに類似の所見をみるが,急性型にみるような上皮および表皮細胞のミトコンドリアの空胞化を殆ど認めず,また,intracytoplasmic des—mosomeの形成も少ない.慢性型では基底板の不整,断裂,多層化が認められた.第2例では,メラノソームtransferの障害と多数のメラノファージをみる.慢性GVHDは,急性GVHDの遷延化したものと考えられるが,明らかな病理組織学的差異が存在する.

Congenital Constriction Band Syndromeの1例

著者: 赤坂俊英 ,   千葉純子 ,   昆宰市

ページ範囲:P.721 - P.726

 生後4日目,女児のcongenital constriction band syndrome(CCBS)の1例を報告した.左手II・III・IV・V指,右足I・II・III趾,左足I・II・III・IV趾,左足関節部に絞扼輪を認め,さらに指趾の自然切断,絞扼輪部の末梢指趾のリンパ浮腫,指趾の偏位,窓形成などの絞扼輪に付随する多彩な症状を示した.絞扼輪の深さはさまざまで,その組織像は,皮膚付属器の減少と真皮深層の膠原線維の束状の増生が認められ,表皮の萎縮を欠くことを除けば,瘢痕組織に類似していた.したがって,CCBSの病因は羊膜破綻による外因説を支持するものと考えた.

Myiasisを伴ったケルスス禿瘡

著者: 近江正人 ,   田沼弘之 ,   荒井亮 ,   梅澤明

ページ範囲:P.727 - P.731

 5歳,男児.頭頂部の柔らかい隆起性病変に対し,近医にてステロイド軟膏による治療を受け,徐々に病巣が拡大.同時に膿汁分泌がみられ,圧痛,易抜毛性が著明となったため当科受診.膿汁,毛髪,鱗屑および病巣部皮膚の組織片の真菌培養にて,M. gypseumを証明し,ケルスス禿瘡と診断.グリセオフルビン内服による治療を開始.治療経過中(治療開始6日目)に同病巣よりクロバエ科キンバエ類のヒロズキンバエと思われるウジを排出.ケルスス禿瘡の病巣部の悪臭に引きつけられ,蝿が病巣周囲あるいは病巣を被うガーゼ上に産卵し発症したmyiasisと考えられた.

汎発性白癬性肉芽腫の1例

著者: 関口かおる ,   西山千秋

ページ範囲:P.733 - P.739

 患者:65歳,男.19歳頃より所謂いんきんたむしを生じ,加療していたにも拘らず,漸次肉芽腫を形成.昭和54年初診時には体幹,四肢の表在白癬に加えて左上肢,右上背,右腋窩に大小の潰瘍ないし肉芽腫病変が存在した.以後,グリセオフルビンの継続投与にて肉芽腫病変は残存するも,潰瘍は一度上皮化した.しかし,その後も潰瘍病変は再発,寛解を繰り返していた.昭和60年,上記3カ所の潰瘍はさらに増悪し,グリセオフルビンに反応しないためケトコナゾールに変更したところ次第に軽快におもむいた.自験例より分離されたT. rubrumの培養所見,発育温度,薬剤に対する感受性などについて経時的に検討した結果,起因菌であるT. rubrumの生物学的環境に対する幅広い適応能が本症の肉芽腫病変内での増殖を可能にすると推察された.

Oral Florid Papillomatosisの1例—その治療について

著者: 伊藤篤 ,   小幡秀一

ページ範囲:P.741 - P.745

 60歳,女性,5年前より生じたoral florid papillomatosisにCO2レーザーとetretinateの併用療法を試み,一応の効果をみたので報告した.Oral florid papilloma—tosisは難治で再発性が高く,治療に窮する疾患である.成因から見ても長期間観察すべき疾患であるため,副作用の少ない治療が望ましいと思われ,この治療方針を述べた.

Trichilemmal Carcinomaの2例

著者: 小林まさ子 ,   藤田優 ,   寄藤和彦

ページ範囲:P.747 - P.750

 症例1:70歳,男,症例2:86歳,女のそれぞれ頬部に生じたtrichilemmalcarcinomaを報告した.症例1はBowen病様の細胞の異型性を認めたが浸潤性の増殖はなく,in situの所見であった.連続した1個の腫瘍の中に,明瞭に境された2種の構築をもち,毛包狭部の上部と下部の分化を示すものと考えた.症例2はほぼclear cellのみからなる腫瘍で,辺縁ではtrichilemmomaの所見を示し細胞の異型性は軽度であったが,一部真皮深層にclear cellからなる浸潤性の増殖巣を認めた.

古典型カポジー肉腫の1例

著者: 安藤正明 ,   佐藤英嗣 ,   月永一郎 ,   小林仁 ,   熊切正信 ,   金子史男 ,   大河原章

ページ範囲:P.751 - P.755

 免疫不全を伴わない邦人の高齢者に発症した古典型カポジー肉腫の1例を報告した.臨床的・病理学的に典型例と思われる.放射線照射が著効を示し,γ-インターフェロンの局注も有効であった.HLA抗原やサイトメガロウイルスについての検索を行い,それらの結果についても論じた.

口腔粘膜原発の悪性黒色腫の1例

著者: 中川秀己 ,   今門純久 ,   松山友彦 ,   石橋康正 ,   大原国章

ページ範囲:P.757 - P.760

 69歳,女に発症した口腔粘膜原発の悪性黒色腫を報告した.病変は右頬粘膜から上顎歯肉,口蓋に及ぶ黒褐色濃淡のある色素斑で,一部にわずかに浸潤を触れる.組織像では異型メラノサイトが基底層に沿って増殖するlentiginous proliferation patternを示した.また一部,腫瘍細胞が基底膜を破壊し,粘膜固有層の乳頭層に浸潤しているlevelⅡの部分も認められた.治療はcryosurgeryを施行し,現在経過観察中.口腔粘膜原発の悪性黒色腫の臨床病理学的特徴および予後等につき検討した.

簡単な下口唇の再建法—老人の下口唇有棘細胞癌の2例

著者: 谷田泰男 ,   橋本久美子 ,   松田俊樹

ページ範囲:P.761 - P.764

 老人の下口唇中央部に生じた有棘細胞癌の2治療例を報告した.欠損部は,両側の頬部伸展皮弁を利用するBurow法に基づいて再建した.この手術法は,簡単かつ簡便な方法で,患者の早期社会復帰につながる有用な方法と考え紹介する.

絶縁針脱毛術による多毛症の治療

著者: 小林敏男

ページ範囲:P.765 - P.770

 著者はこの5年間で215名の多毛症患者に対して,絶縁針を使用した電気凝圏法脱毛術を試みた.針は皮膚表面下0.5mm〜1.0mmに接する基部を絶縁し,それ以下の深部(2〜4mm)を非絶縁とした.脱毛に当たっては,初回ないし初めの2〜3回はまびき脱毛を行い,その後は毎回生えている毛をすべて脱毛した.その結果,5回以上脱毛し半年以上経過した患者63名において,瘢痕形成なく発毛は著しく減少ないし殆ど見られなかった.基部が絶縁された針を使用したことにより,皮膚表面は温存されたまま長い通電時間,強い通電強度のもとにて十分に毛乳頭が電気凝固破壊された結果によるものと思われる.

印象記

第87回日本皮膚科学会印象記

著者: 谷口滋 ,   高田実

ページ範囲:P.772 - P.775

 第87回日本皮膚科学会総会および学術大会は昭和63年4月1〜3日の3日間,熊本大学皮膚科・荒尾龍喜教授を会頭に,また,中村家政名誉教授を名誉会頭として白川河畔の熊本市ニュースカイホテルで開催された.約1,600人の参加者があり,1日目の午前には会頭によるプレジデンシャル・アドレス,国際皮膚科学交換講座(土肥記念講演),皆見賞受賞記念講演が行われた.午後より7つの会場に分かれて特別講演(4席),招請講演(4席),教育講演(10席),ワークショップ3(33題),シンポジウム2(16題),CPC 12題と文字通り盛り沢山の企画と,一般演題スライド供覧,学術展示を合わせて330題を上回る発表が行われた.7会場とも同じホテル内にあり,会場間の移動は容易であった.企画されたものを中心に見聞したが,各種講演,シンポジウム,ワークショップが3つの会場で同時に進行することが多く,どちらの会場に行くか迷うこともしばしばであった.したがって,一人ではとても全体の印象を記すことは不可能であり,二人の印象を合わせて述べさせて頂きたい.

第50回米国研究皮膚科学会に参加して

著者: 橋本隆

ページ範囲:P.776 - P.779

 筆者は,今回,慶應義塾小泉基金の援助を受け,1988年4月 27 日(水)〜30日(土)の4日間,米国ワシントンD.C.で開かれた第50回米国研究皮膚科学会(The 50th Na—tional Meeting of the Society forInvestigative Dermatology)に参加,発表する機会を得た.会場となったシェラトン・ワシントンホテルは,新緑の美しいワシントンD.C.の中心部から北へ約2km程の静かなたたずまいの中に位置していたが,一歩会場内に入ると,開会前にもかかわらず,多数の研究者があちこちで討論の輪を作っており,年一回のこの学会に対する各研究者の意気込みが伝わってきた.今年は,SID発足50周年の記念すべき学会ということで,米国国内はもちろんヨーロッパや日本を中心に多数の皮膚科研究者が参加,プログラムによれば,参加者数は1,500人以上で,その内100人を超す日本人の名前が見られた.日本では,折からゴールデンウィークのため,ワシントン行きの安い航空券を入手するのにだいぶ苦労された先生方も多かったことと思う.日本人参加者の中には,日本の各人学から米国各地へ留学されている若い研究者も多く含まれ,殆どがそれぞれの発表のtop nameであった.すでに長く米国で活躍されている Ken Hashimoto, KimieFukuyama, Kenzo Satoの諸先生方はもちろん,米国における日本人皮膚科研究者の奮闘ぶりが各分野で浮彫りになった感があった.
 学会は,運営会議が4月27日朝8:00から行われ,同日夕方5:45より学術会議が始まったが,ほぼ毎日朝8:00から夜9:00まで,びっしりと綿密な計画がたてられていた(表).学術会議は15題の特別講義,20の演題を扱う全員出席のplenarysession,230題のテーマに分かれてのconcurrent sessionおよび238題の学術展示により構成されていた.かなりハードなスケジュールであるにもかかわらず,各会場は常に盛況で活発な討議が続いた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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