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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科42巻9号

1988年09月発行

雑誌目次

図譜・555

結節性紅斑様サルコイドーシス

著者: 小林衣子 ,   高島厳 ,   平賀洋明

ページ範囲:P.788 - P.789

患 者 26歳,女性
初 診 昭和62年1月19日

原著

風疹による肝障害

著者: 袋秀平 ,   入交敏勝

ページ範囲:P.791 - P.794

 昭和62年前半に流行した風疹の患者において,肝機能異常を呈する症例を多数経験した.いずれも全身倦怠感以外には肝炎を思わせる症状を認めなかったが,生化学的検査でGOT,GPT,LDHの上昇を確認した.ほかに肝障害の原因となるものは発見できず,風疹ウイルスによる肝障害と考えた.これまで風疹の合併症としては肝障害は余り認識されていなかったと思われるが,今後はペア血清採取時に生化学的検査を併せて行うことが必要と考えた.

アフロクァロン(アロフト)による薬疹

著者: 山元真理子

ページ範囲:P.795 - P.799

 筋弛緩剤であるアフロクァロン(商品名:アロフト)によると思われる薬疹の5例を報告した.内服3週間から4カ月後に発症し,臨床像は紅色丘疹,紅斑,多形紅斑様の浮腫状紅斑,扁平苔癬様と症例によって異なり一様ではなかったが,5例とも露出部,特に手背に好発していた.5例のうち3例は光線過敏が推測されたがアロフト錠剤末1%,5%ワセリンの光パッチテストは陰性であった.他の2例は光線とは関係なく発症し苔癬型組織反応を呈したが,このうち1例は上記抗原によるパッチテストが陽性であり,発症機序に遅延型過敏反応が関与していることが推測された.

コリン性蕁麻疹の臨床および組織学的検討

著者: 杼木真理子 ,   山口令子 ,   山下典子 ,   川上理子

ページ範囲:P.801 - P.804

 コリン性蕁麻疹10例について検討した.症例は男7例,女3例で,初発年齢は12〜27歳と青年期に多かった.皮疹は直径2〜3mmの紅暈を伴う膨疹で,自覚的には軽度の瘙痒とともにピリピリとした疼痛を伴うものが多かった.持続時間は10〜120分だった.誘因としては温熱,運動,入浴が挙げられた.既往歴では10例中3例にアトピー性皮膚炎を認めた.塩化アセチルコリン皮内反応は6例中3例が陽性であった.4例に生検を施行し全例,真皮上層の血管周囲に浮腫とリンパ球優位の細胞浸潤を認めた.うち1例では好中球を混じており,その症例では皮疹の持続時間,皮疹出現から生検までの時間が短かった.治療としては塩酸ヒドロキシジンが有効であった.

紅斑を主訴としたSubclinical Sjögren's Syndromeの2例

著者: 筒井真人 ,   岸山和敬 ,   種市幸二

ページ範囲:P.805 - P.809

 症例1は45歳女性,顔面・上肢の浮腫性紅斑,環状紅斑を主訴として,症例2は39歳女性,顔面の浮腫性紅斑を主訴として受診した.共に抗核抗体,リウマトイド因子,抗SS-A・抗SS-B抗体が陽性であったため,Sjögren's syndromeを含む自己免疫性疾患を念頭におき検査をすすめたところ,症例1では耳下腺造影でstage 2,症例2では耳下腺造影でstage 1,Schirmer's test,Rose-Bengal testで乾燥性角結膜炎の所見が得られた.2症例共,自覚的な乾燥症状を欠くため,subclinical Sjögren's syndromeと診断した.

血管炎性紫斑を伴ったHypereosinophilic Syndrome

著者: 栗原誠一 ,   天野佳子 ,   浦亜紀子 ,   飯塚卓 ,   内田耕

ページ範囲:P.811 - P.814

 血管炎性紫斑を伴った61歳,女性のhypereosinophilic syndrome (HES)症例を報告した.中小の血管病変が予想されるHESの皮疹には紫斑の記載があるが,これまで自験例ほど激しい例はない.喘息,発熱,多発性単神経炎,胸部X線上多発性小陰影などを認め,播種性好酸球性膠原病やアレルギー性肉芽腫症との関係が問題となるが,より包括的病名であるHESと診断した.治療はステロイド剤内服が好酸球増多や皮疹,全身症状に対し著効を示した.病因論的には好酸球の組織内分布から,何らかの組織傷害により好酸球が動員されたと考えるほうが自然と思われた.

Cytophagic Histiocytic Panniculitis(Winkelmann)の1例

著者: 玉木宏幸 ,   益田俊樹 ,   荒田次郎 ,   弘井誠 ,   森木利昭 ,   原弘 ,   北川隆 ,   田口博国 ,   三好勇夫

ページ範囲:P.815 - P.821

 69歳,女性.発熱と皮下結節を主症状として発症し,汎血球減少症,出血傾向,肝脾腫,進行性肝機能障害を示し死亡した.初診時の皮下結節の病理組織学的所見は小葉性脂肪織炎の像であったが,剖検時には種々の臓器に著明な赤血球貧食性の組織球を認めた.電顕では,リンパ球,組織球に明らかな異型性は認められなかった.浸潤細胞のマーカー検査では,OKT 3,0KT 4,0KT 8,S-100蛋白は陰性であったが,lysozyme,α1-antitrypsin,α1-antichymotrypsinが陽性であった.以上より本症例をcytophagichistiocytic panniculitisと診断した.

Lichen Planus Pemphigoides

著者: 大河内仁志 ,   関利仁 ,   土田哲也 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.823 - P.827

 85歳,女.顔面と両手背に粃糠様落屑を伴う紅斑が存在し,四肢,体幹に緊満性水疱が多発した.前者の皮疹は組織学的にlichen planusを呈し,後者の皮疹は組織学的,免疫学的にbullous pemphigoidに合致し,lichen planus pemphigoidesと診断した.慢性甲状腺炎による軽度の甲状腺機能低下症と早期の印環細胞癌を合併していた.過去の報告例に対して文献的考察を加えた.

Digital Mucous Cystの3例

著者: 佐藤浩子 ,   瀬戸山充 ,   田代正昭

ページ範囲:P.829 - P.834

 3例4病巣のdigital mucous cyst症例を経験し,光顕的,電顕的に検討するとともに本邦報告例51例について統計的に観察した.自験3例のうち2例が男性,1例が女性である.発生部位はいずれも手指であり,うち1例では2カ所に病巣を認めた.いずれの病巣も関節腔ないし滑液膜との連続性を認めなかった.組織学的には4病巣ともにほぼ同様の所見を呈した.即ち病巣はいずれも単房性ないし多房性の嚢腫様構築をとり,壁は無構造物質ないし層状に配列する紡錘形細胞で境され,電顕的に,これらの紡錘形細胞は線維芽細胞とみなされ,数層よりなっており,内層では,変性,扁平化がみられる一方,外層にいくに従い非常に発達,拡張した粗面小胞体を有するものが多かった.また,それらに混じて,いわゆるmyofibroblastを多数認めた.

嚢腫液中CEAが高値を呈したSolid-Cystic Hidradenomaの2例

著者: 久本和夫 ,   太田貴久 ,   高田一郎 ,   永井純子

ページ範囲:P.835 - P.838

 組織学的にsolid-cystic hidradenomaと診断した2例(66歳男,34歳女)について,嚢腫液中のCEAを測定したところ,いずれも高値を呈した.CEAは管腔を構成する腫瘍細胞により合成され嚢腫内に貯留したものと考えられた.液が貯留している腫瘍では,内容液中CEA測定を試みる価値があると思われた.

Giant Eccrine Spiradenomaの1例

著者: 宇原久 ,   松井雅彦 ,   斎田俊明 ,   橋本晋一

ページ範囲:P.839 - P.843

 66歳女性の顔面に生じた手拳大の皮膚腫瘍の1例を報告した.臨床的には今までのmalignant eccrine spiradenomaの報告例同様,初診の7〜8年前に小結節として初発したものが,1年程前より急激に増大してきたという臨床経過を持ち,肉眼的にも表面の潰瘍化を伴い,悪性腫瘍を強く疑わせた.しかし組織学的には核分裂像や異型性といった悪性所見に乏しかった.自験例の悪性度について,最近注目されているいわゆる中間群腫瘍の考え方に立って,検討を加えた.

Granular Cell Tumor—組織学的,免疫組織学的に特異な所見を示した1例の報告

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.845 - P.849

 28歳,男子,左臀部に2年来生じた小指頭大,硬のgranular cell tumor (GCT)を報告した.組織学的に神経を中心とする増殖巣が真皮中層から皮下組織にかけて存在し,エオジンに淡染する大小の顆粒が充満する大型類円形の細胞から成る.核はやや大型で軽度の大小不同あり.大型のものはクロマチンに富む.また3カ所に分裂像を認める.従来の良性および悪性のGCTと比較すると,自験例は増殖性変化がやや亢進した良性GCTと考えられた.また免疫組織学的にS−100蛋白α鎖,β鎖とも弱陽性を示したが,α鎖陽性に関してはGCT細胞の細胞内抗原性の変化によるものではないかと考えた.

Verrucous Carcinomaの1例

著者: 藤原愉高 ,   平野紀子 ,   池田光徳 ,   荒川謙三

ページ範囲:P.851 - P.854

 79歳,男性.右口角部に発生したverrucous carcinomaの1例を報告する.術前にインターロイキン2を計7,500U局注したが,むしろ腫瘤は増大したため,摘出後,欠損部を唇弁反転法(Estlander法)にて再建した.術後にPM療法(ペプレオマイシン35mg,マイトマイシンC 10mg)を施行したところ,約1カ月後には,手術時にとりきれていなかった白板症部分の消褪をみた.

Sézary症候群の1例—皮疹部と胸腺の類似性についての考察を加えて

著者: 中川俊文 ,   山本信二 ,   沼原利彦 ,   高岩堯

ページ範囲:P.855 - P.861

 59歳,男,大阪府出身.9年前より紅皮症を呈し,末梢血中には脳回転状の核を有するOKT 4陽性の異型リンパ球が大部分であった.ATLA抗体は陰性.以上よりSezary症候群と診断した.皮疹部の免疫組織学的,電顕的所見および文献的考察より,皮疹部と胸腺の各々の微小環境が極めて類似しているとの考えを述べた.

セルカリア皮膚炎の1例—パッチテストによる補助診断

著者: 佐山重敏 ,   杉本東 ,   記野秀人

ページ範囲:P.865 - P.868

 73歳,男性の両下腿・両手背に発生したセルカリァ皮膚炎の1例.皮疹は孤立性・多発性の赤色丘疹で,水田での作業中水に浸していた部分のみに限局していた.皮膚炎に罹患したと思われる水田中より採取したヒメモノアラガイから新種のセルカリアが検出された.皮膚侵入試験(皮膚炎惹起試験)では陰性であったが,ストリッピングを行った後のセルカリア虫体の超音波破砕液によるパッチテストでは陽性を示し,皮膚炎とセルカリアとの因果関係が推測された.パッチテストは簡便な方法であるので,日常診療においてセルカリア皮膚炎を疑った場合の補助診断法として威力を発揮すると思われる.

オランダにて感染,発症したスポロトリコーシスの1例—菌学的検討も含めて

著者: 仲弥 ,   原田敬之 ,   西川武二 ,   木花いづみ ,   山崎雄一郎

ページ範囲:P.869 - P.874

 オランダ滞在中に感染,発症した68歳日本人主婦の右上肢に生じたリンパ管型スポロトリコーシスの1例を報告した.自験例は潜伏期間が短く,皮疹の拡大が急速であった他,分離された菌株も集落の黒色調が強く,スライド・カルチャー所見上多数の分生子を認めるなど,臨床的および菌学的に特異な所見を有していた.この自験例より分離された菌株を他のS.schenckii株(臨床分離菌株3株および上壌分離菌株1株)と生理学的性質,発育温度,病原性などにつき比較検討した結果,本分離菌株は他の菌株に比べて高い温度で良好な発育を示すとともに,マウスに対し強い病原性を有することが示された.近年,本邦において本症報告例が増加しているのに対し,ヨーロッパでは激減し本症は稀な疾患となっている.本邦およびヨーロッパにおけるスポロトリコーシスの現況についても紹介するとともに,若干の考察を加えた.

印象記

第3回アトピー性皮膚炎国際シンポジウム(於オスロ)に参加して

著者: 滝川雅浩

ページ範囲:P.878 - P.879

 第3回アトピー性皮膚炎国際シンポジウム(Third InternationalSylnposium on Atopic Dermatitis)は,1988年5月30日から6月1日の3日間に亘り,Rajka教授の主催のもとで,ノルウェーのオスロにて開催された.Rajka教授退官記念学会ということもあり,これまでの2回の学会に比べて総参加者は多く,約160名であった.ヨーロッパからの参加者が殆どであったが,日本からは吉田彦太郎教授,田中洋一先生(長崎大),斎藤文雄先生(東京日通),山本一哉先生(国立小児),青木敏之先生,足立準先生(羽曳野),上原正巳先生,杉浦久嗣先生(滋賀医大),池澤善郎先生,佐々木哲雄先生(横浜市大),滝川(浜松医大)が参加した.会議はオスロ市街地よりバスで約30分程の山の中腹にあるHotel Soria Moriaで行われた.
 オスロは丁度.春と初夏が同時に来たという感じのさわやかな気候で,学会場に一日中こもっているのがもったいないようであった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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