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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科43巻1号

1989年01月発行

雑誌目次

カラーアトラス

有茎状を呈したMalignant Trichilemmoma

著者: 久本和夫 ,   小笠原万里枝 ,   中野純二 ,   麻上千鳥

ページ範囲:P.6 - P.7

患 者 88歳,男
初 診 昭和61年9月19日

原著

皮膚線維腫に伴う表皮変化について—基底細胞腫様変化を中心として

著者: 石河晃 ,   仲弥 ,   原田敬之

ページ範囲:P.9 - P.13

 47歳,男性,左下腿に生じた皮膚線維腫に組織学的に基底細胞腫様表皮変化を伴った1例を報告した.過去8年間に慶大皮膚科で経験した皮膚線維腫131例133検体の主に表皮変化につき組織学的に検討したところ,角質増殖,表皮肥厚,基底層色素沈着は多くみられたが,基底細胞腫様変化を認めるものはなかった.また腫瘍が表皮に近接しているものほど角質増殖が著明になる傾向が認められた.基底細胞腫様変化を伴う皮膚線維腫報告例52例につき検討した結果,かかる皮膚線維腫は通常の皮膚線維腫と比べて切除までの期間が長いこと,切除年齢がより高齢であること,下肢に好発すること,臨床的に小潰瘍,痂皮,紅量,瘙痒を伴うことが多いことが特徴と思われた.

Naevus Naevocellularis Partim Lipomatodes—自験2例と教室例の検討

著者: 五味俊彦 ,   大草康弘 ,   長島正治

ページ範囲:P.15 - P.19

 47歳女性の鼻背部および28歳女性の両側頭部にみられたnaevus naevocel—lularis partim lipomatodesの2例を報告した.HE染色による光顕所見およびS−100蛋白染色の免疫組織学的検討により,母斑細胞母斑の組織中に認められた脂肪細胞様細胞は母斑細胞由来と考えられた.また自験例および当教室において母斑細胞母斑と診断された症例の合計150個について検討し,42個(28.0%)に脂肪細胞様細胞が認められた.年齢としては20歳以上に多く,臨床的には常色に近く,隆起度が高いものにこれが認められた.組織学的には殆どが真皮内母斑で,浸潤性構造を呈するものに多く認められた.

臨床統計

小丘疹性日光疹(Micropapular Light Eruption)についてのアンケート調査

著者: 八木沼健利 ,   澤田俊一 ,   山岸玲子 ,   上出良一

ページ範囲:P.21 - P.24

 小丘疹性日光疹の発生頻度,病像,および患者の意識を検討する目的で一般成人1,383名(男性788名,女性595名)を対象にアンケート調査を行った.男性の2.3%,女性の5.0%が小丘疹性日光疹に合致する症状を経験していた.皮膚色については患者群のほうが白いと答えたものが多かった.紫外線に対する反応性(skin type)は,患者群でsunburnしやすくsuntanしにくいと答えたものが多かった.臨床像としては,10〜40歳代に初発し,毎年4,5月から始まり,7,8月にピークに達し,hardening現象を示したものは14.3%であった.30分〜3時間の日光照射で,おもに前腕伸側に瘙痒性粟粒大紅色丘疹を生じ,1週間以内に消失する.約15%に平均6年で自然治癒が認められた.本症により半数のものが日常生活に不便を感じており,医治を必要としたものは約30%であった.

症例報告

抗SS-B再発性紅斑

著者: 寺木祐一 ,   杉浦丹 ,   秋山真志 ,   西川武二

ページ範囲:P.25 - P.31

 55歳,男で,浮腫性の再発性環状紅斑(組織学的に表皮に著変はなく,真皮の血管および汗腺周囲の小円形細胞浸潤を示す)と白血球減少,高IgG,RA陽性,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体陽性を示し,自覚的に乾燥症状を示さないが,唾液腺造影で軽度のapple tree patternを認める,いわゆるsubclinical Sjögren's syndromeの症例と,31歳,女で,上記と同様の再発性紅斑と血清学的異常が見られたが,自覚的にも客観的にも腺機能異常が認められない症例を報告した.このような特徴ある再発性紅斑を腺機能異常の有無にかかわらず一括して,抗SS-B抗体陽性という免疫血清学的所見と併せて,「抗SS-B再発性紅斑」と呼ぶことを提案した.

ミノサイクリンによる色素沈着の1例

著者: 沢辺元和 ,   辻卓夫 ,   國行秀一 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.33 - P.38

 症例:51歳,男性.初診の約1年前より前立腺炎にて,ミノサイクリン1日300mgの経口投与を受ける,同8ヵ月前より,顔面,項部,前腕等の日光曝露部を中心に,全身に瀰漫性に,茶褐色から黒褐色の色素沈着が徐々に出現してきた.なお,クロルプロマジンやキナクリン,重金属塩等の内服の既往はなく,血液検査等にても特に異常を認めなかった.組織学的には,表皮基底層のメラニン顆粒の増加と,真皮上層の結合織内と血管周囲に多数のメラノファージを認めた.以上の臨床的,組織学的特徴より,本例をミノサイクリンによる色素沈着,特に1979年にSauerが報告した,いわゆるmuddy skinsyndromeに該当する1例と考え報告した.

Etretinateの内服が奏効したGenodermatoseとしてのAcanthosis Nigricans

著者: 刀祢毅 ,   上村雅子 ,   斎藤降三 ,   上村仁夫

ページ範囲:P.39 - P.42

 24歳,男性.皮膚症状および病理組織学的所見よりacanthosis nigricansと診断した.小児期より皮膚症状が出現していること,さらに外胚葉系の疾患である錐体路障害を伴っていることより,Genodermatoseとしてのacanthosis nigricansと思われる.治療はsteroidやetretinateの外用するも皮疹は軽快せず,etretinateの内服療法が奏効した.

Multiple Dermatofibromasの1例

著者: 松本光博 ,   岸山和敬

ページ範囲:P.43 - P.46

 45歳女性.ほぼ全身に29個の結節を認めたmultiple dermatofibromasの1例を報告した.6,7歳の頃に顔面,頭部を除くほぼ全身に小結節が出現してきた.組織学的には単発の皮膚線維腫と基本的に差異は認められなかったが,腫瘍を構成する細胞が線維芽細胞類似の細胞が優位なものと,いわゆる組織球様細胞を主体とするものとがあり,個個の結節によってその組織像に若干の差異がみられた.以上の症例を報告するとともに,本症と考えられる主だった報告例に検討を加え,本症の特徴につき若干の考察を加えた.

Lichen Striatusを合併したCutaneous Ciliated Cyst

著者: 須藤成章 ,   猪股成美

ページ範囲:P.47 - P.51

 24歳,女性.2週問前より大腿部に線状に配列する小丘疹が出現した.組織像では角質層や顆粒層の肥厚は認められず,真皮上層から中層にかけての細胞浸潤が中等度認められた.浸潤細胞はリンパ球を主体として一部基底層に及んでいるが,血管中心性に認められた.以上の所見よりlichen striatusと診断した.一方,10歳頃より右臀部に皮下腫瘤があり,栂指頭大で弾性軟の腫瘤を触知した.組織学的には真皮下層から皮下にかけて嚢腫が認められた.この嚢腫は1層の円柱上皮よりなり,多数の線毛を有することが特徴で,一部PAS陽性の顆粒が認められたがdiastase消化性であった.以上の所見より,この腫瘤はcutaneous ciliated cystと診断した.Cutaneous ciliated cystは稀有な疾患で,過去の報告例について総括するとともにlichen striatusとの合併の意義などについて若干の考察を加えた.

前腕に生じた単発性グロムス腫瘍における交感神経の分布について

著者: 岸本三郎 ,   秋月みわ子 ,   小林和夫 ,   前田基彰

ページ範囲:P.53 - P.56

 68歳,男性の左前腕に生じた単発性グロムス腫瘍の1例を報告した.同腫瘍における交感神経の分布を検討すると共に電顕的にも観察した.腫瘍実質内への密な交感神経線維の分布と発芽現象がみられた.電顕的には細線維が少なくdense bodyがみられないことなどより,自験例は比較的未分化な腫瘍であった.さらに腫瘍内によく発達した弾性線維の存在と密な交感神経線維の分布等より,自験例はグロムス器宮のうち輸入動脈からSucquet-Hoyer管への移行部より生じたものと考えた.

下腿に発生したEccrine Spiradenoma—病理組織学的,免疫組織学的検討と本邦例の文献的考察

著者: 横川眞弓 ,   鈴木伸典 ,   茶之木美也子 ,   寺尾淳子 ,   中川浩一 ,   濱田稔夫 ,   吉原渡

ページ範囲:P.57 - P.62

 16歳,女子.初診の約1年前より,左下腿伸側下部に,表面淡褐色の弾性硬の皮下小結節を認める.圧痛はあるが,自発痛はない.生検を兼ねて切除した.病理組織学的には,真皮下層から皮下織にかけて結合織被膜に囲まれた腫瘍塊が10数個存在する.腫瘍細胞は,明るい核をもつ大型の細胞と,濃染する核をもつ小型の細胞の2種類が認められ,腫瘍塊の中央部には前者,辺縁部には後者の細胞が多い.これらの細胞が,索状,偽管状に配列し,一部では管腔をなす.PAS染色は腫瘍細胞は陰性,間質に陽性.Bodian染色では神経線維は認められない.PAP法にて,CEAは管腔に沿って陽性,S−100蛋白は腫瘍細胞の一部に陽性を呈した.併せて,本邦報告例56例について検討した.

Acral Lentiginous Melanoma in Situの4例

著者: 斎田俊明 ,   石原八州司 ,   吉田永子 ,   河内繁雄 ,   斉木実 ,   望月正子

ページ範囲:P.63 - P.68

 足底部に生じたacral lentiginous melanoma in situ (ALM in situ)の4例を報告した.いずれも,先に我々がALM in situの臨床的診断基準として提出した5項目を満たし,病理組織学的には,我々のいうphaseⅠ,Ⅱ,Ⅲの所見を不規則に混在した状態で呈する典型的な症例であった.これらの症例に既報告例などを加えてALM in situの臨床所見を詳しく検討することにより,臨床的診断基準の各項目につき,さらに詳しく解説した.このようにして,ALM in situの臨床的特徴をより明確に提示した.また,足底に生じる良性の色素細胞性病変との鑑別についても考察し,特にALM in situと通常の後天性色素細胞母斑ないしは単純性黒子との臨床的鑑別表を作成して,提示した.ALMin situの如き早期の段階の悪性黒色腫を正しく診断することは,その予後の改善に役立つのみならず,治療上の便宜性という面からも大いに意義あることと思われる.

前立腺由来と思われる転移性皮膚癌の1例

著者: 柴山律子 ,   徳橋至 ,   碇優子 ,   原本泉 ,   相原満里子 ,   下田祥由 ,   黒子幸一 ,   高桑俊文

ページ範囲:P.69 - P.73

 78歳,男.初診10カ月前より左水腎症および左尿管を取り囲む腫瘤を認めた.1カ月前に急激な腎機能低下を来し両側水腎症を呈し泌尿器科へ入院となった.同時期より左鼠径部の無症候性小結節に気付いた。転移性皮膚癌を疑い生検したところ,比較的低分化な腺癌の像を得た.前立腺からの転移を疑いneedle biopsyを施行した.高分化な腫瘍細胞と低分化な腫瘍細胞とが混在する腺癌であり,前立腺癌からの皮膚転移と診断した.転移性皮膚癌の中でも前立腺からのものは比較的少なく,ここに報告し文献的考察を加えた.

肛門周囲に発生した乳房外Paget病の1例

著者: 江口弘晃 ,   上田宏一 ,   伊東佳子 ,   高橋博之 ,   高橋誠

ページ範囲:P.75 - P.79

 肛門周囲Paget病の1例を報告した.症例は60歳女性.昭和59年頃より肛門周囲に瘙痒を伴う紅斑が出現,徐々に拡大した.昭和62年4月当科を受診し生検にてPaget病と診断,外科的切除を行った.手術標本に対し各種組織染色,免疫組織化学的検索を施行した.併せて文献的検索を行いPaget細胞の起源について考察を加えた.

汎発性強皮症に併発した悪性脈管内皮細胞腫の1例

著者: 伊藤信夫 ,   斎藤英二 ,   島田耕司 ,   鈴木正夫 ,   佐藤紀夫 ,   長尾貞紀

ページ範囲:P.81 - P.84

 汎発性強皮症に悪性脈管内皮細胞腫を併発した1例を文献的考察を加え報告した.症例は56歳,女性.41歳より汎発性強皮症があった.54歳頃より前額部に腫瘤が生じ徐々に増加したとして受診.初診2カ月後,多臓器に転移を来して死亡.汎発性強皮症に併発する皮膚悪性腫瘍について述べた.

初期にはサルコイド反応を呈し,その後自然消褪傾向を示したCutaneous T Cell Lymphoma(CTCL)の1例

著者: 稲冨徹 ,   落合豊子 ,   松岡孝

ページ範囲:P.85 - P.89

 58歳,男子のcutaneous T cell lymphoma(CTCL)について報告した.初診の1年半前から頸部,下肢に殆ど自覚症のない結節が多発してきた.皮膚生検にて,当初乾酪壊死を伴わない肉芽腫を認め,サルコイド反応と診断した.入院後,40℃台の発熱と共に全身に粟粒大の紅色丘疹を生じ,解熱後腫瘤の多くは色素沈着となって自然消褪した.皮疹消褪後約1カ月ごろから,以前皮疹のあった部位とほぼ一致して腫瘤の再発を認めた.2度目の皮膚生検では,真皮のほぼ全層に亘って大型のlymphoblastic cellが多数浸潤し,この浸潤細胞はLeu 3 aに100%陽性であることからhelper/inducer T cellの表面形質を持つCTCLと診断した.化学療法抵抗性で,治療に苦慮している.CTCLの診断基準および自験例における自然消褪の機序につき,若干の考察を加えた.

印象記

CUTANEOUS LYMPHOMA 1988—皮膚リンホーマ国際シンポジウム印象記

著者: 滝川雅浩

ページ範囲:P.90 - P.92

 単クローン抗体の開発,遺伝子工学の導入等により免疫学は著しい発展を遂げつつあるが,それに伴い悪性リンパ腫の研究も大きく変遷した.皮膚悪性リンパ腫の分野も,skin-associated lymphoid tissues(SALT)という概念の中でのリンパ腫の位置付け,cutaneous T-celllymphoma (CTCL)という分類法の出現などにより,古典的な理解からより近代的な解析へと進みつつある.
 このような状況のもとで開催されたlnternational Symposium on Cutaneous Lymphomaは,皮膚悪性リンパ腫のこれまでの進歩を総括し,さらにその将来を展望するものであった.デンマークのDrs. WantzinとThomsonおよびオランダのDrs.van VlotenとWillemzeが本シンポジウムの組織委員となり,ESDRのスポンサーのもとにコペンハーゲンにて,10月28〜30日にわたり開催された.本来は,コペンハーゲンとオランダで別個に開かれる予定の皮膚悪性リンパ腫の研究会を,合同かつinternationalにしたものということであった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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