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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科43巻10号

1989年09月発行

雑誌目次

カラーアトラス

耳介のサルコイドーシス

著者: 中村保夫

ページ範囲:P.990 - P.991

患 者 58歳,女性
初 診 昭和61年2月25日

原著

痒疹患者(Subacute to Chronic Prurigo Forms)18症例の臨床的検討

著者: 寺木祐一 ,   小粥雅明 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.993 - P.998

 当科で経験した痒疹患者18症例につき臨床的な検討を加えた.臨床像は体幹,四肢に散在性に出現する瘙痒の強い蕁麻疹様丘疹を主体とし,組織学的には真皮浅層の血管周囲のしばしば好酸球を混じるリンパ球,組織球の炎症性細胞浸潤である.臨床検査所見では,末梢血好酸球増多8例,肝胆道機能障害6例,糖尿病4例,胃炎・胃潰瘍3例,IgE上昇3例,胃癌,膵癌,高尿酸血症,腎機能低下それぞれ1例ずつであった(重複あり).好酸球増多のみを含めれば,異常を認めなかったものは7例であり,即ち18症例中11に内臓疾患等の全身性疾患を認めた.以上より痒疹では背景にある何らかの全身疾患に留意する必要があると思われた.またその発症機序に関しては不明であるが,血中に存在する種々の抗原(痒疹反応を惹起させる)に対する細胞性免疫機序によるものと推察し,上記の疾患等が直接的,ないしは間接的に関与しているのではないかと考えた.

Papulovesicular Light Eruption—症例報告と光生物学的検討

著者: 川田暁 ,   比留間政太郎 ,   成吉加代子 ,   野田俊明 ,   久木田淳

ページ範囲:P.1001 - P.1005

 Papulovesicular light eruption(以下PVLE)の3例を経験し,うち2例に光生物学的検討を行った.症例は,1)45歳,2)43歳,3)27歳,いずれも女性の3症例で,春から夏に露光後瘙痒性の皮疹が出現した.3例とも臨床的には,両上肢伸側,症例2と3は頸部にも,半米粒大までの小丘疹と漿液性丘疹が集簇し,強い瘙痒を伴っていた.病理組織学的には全例とも,表皮海綿状態,基底層液状変性,真皮上層の炎症性細胞浸潤を認めた.症例1と2に行った光線テストでは,2例ともUVBの最小紅斑量(以下MED)は正常範囲内で,2MEDの3日間反復照射後に臨床的・組織学的に異常反応を認めたが,PVLEの皮疹と完全には一致しなかった.2例ともUVAの1回および3日間反復照射では正常反応を示した.治療はステロイド剤の外用が著効を示し,予防にはbroad-spectrumのサンスクリーン剤が有効であった.

今月の症例

Elastic fiberの増生を伴ったMultiple Perifollicular Fibromasの1例

著者: 浅野さとえ ,   岡部省吾 ,   松㟢理

ページ範囲:P.1007 - P.1013

 43歳女.顔面,頸部,肩等に典型的な皮疹が多発していた.組織学的にも,毛包を同心円状にとり囲む膠原線維の増生が特徴的であったが,弾力線維の著明な点で,従来の報告と異なっていた.増生している細胞は,myofibrobrastと思われた.Perifollicularfibromaは,fibrofolliculoma,trichodiscomaと並んで毛包周囲性結合組織系腫瘍とされており,稀な疾患である.単発型と多発型があり,多発型では,家族内発生例,悪性腫瘍の合併例も報告されており,遺伝的素因が問題とされている.本症例の両親はいとこ婚であり,また肺胞壁の形成不全より発症したと思われる気管支拡張症を合併していた.Multipleperifollicular fibromasと考えられた1例を報告し,毛包周囲性結合組織系腫瘍について,文献的考察を行った.

Hereditary Angioedemaの1家系

著者: 原田晋 ,   熊谷正彦 ,   清水良輔

ページ範囲:P.1015 - P.1018

 Hereditary angioedema (以下HAEと略す)の1家系を報告した.症例は7歳,女児.4歳頃より誘因なく年に1〜2回の頻度で四肢に自覚症状のない限局性の浮腫を経験していたが,顔面に開眼不能なほどの顕著な浮腫が出現したため当科初診し,C1esterase inhibitorの著明な低値を示したためHAEと診断した.父親に3年前に足背のびまん性の浮腫の既往があり,患者の家族に関してもC1esterase inhibitor値を測定したところ,父・姉にも患者同様の著明な低値を,妹に中等度の低下を示し,HAEの1家系と考えた.

症例報告

Microcystic Adnexal Carcinomaの1例—本邦例の集計を加えて

著者: 野田淳子 ,   早川和人 ,   小松威彦 ,   清水宏 ,   原田敬之

ページ範囲:P.1019 - P.1023

 61歳,男性の右上口唇部に生じたmicrocystic adnexal carcinomaの1例を報告した.本例では初回に完全摘除しえたかと思われたが,約13年後に再発をみた.組織学的には真皮全層から皮下組織および筋層にかけて線維化を伴う間質中に大小の胞巣を認め,角質嚢腫,管腔様構造が混在していた.神経周囲への腫瘍細胞の浸潤も認められた.免疫病理学的な検索ではCEA, S−100とも概ね陰性を示した.電顕的には外毛根鞘性角化に類似する所見,ならびに汗腺細胞に類似する所見が認められた.本邦における報告例を集計するとともに若干の考按を加えた.

Adenoma of the Nippleの1例

著者: 宮川淳子 ,   加藤安彦 ,   杉本純一

ページ範囲:P.1025 - P.1028

 42歳女性.2年前から右乳頭部に瘙痒性皮疹出現.徐々に結節状となり,中心部糜爛し出血することもあったため近医受診し,当科を紹介された.腫瘍は右乳頭部に14×14×8mmの赤褐色結節として存在し,中心部に5×6mmの糜爛を認めた.組織では,周囲組織との境界明瞭な管腔腺様構造を示す腫瘍塊が認められ,悪性像はみられなかった.adenoma of the nippleの診断のもとに腫瘍切除術施行.本腫瘍はあまり注目されていない疾患であるが,臨床的にはPaget病,組織学的には汗腺系腫瘍や乳管癌などとの鑑別を必要とし,基本的には良性腫瘍であるが,最近では悪性化例の報告も認められるため,文献的に若干の考察を試みた.

円形の脱毛斑を伴った石灰化上皮腫

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.1029 - P.1032

 右後頭部皮下に生じた石灰化上皮腫に伴って,腫瘍と半分重なるようにして下方にほぼ同じ大きさの円形の脱毛斑を生じた11歳男児例を報告した.石灰化上皮腫の組織像は定型的であったが,直上の真皮下層には異物肉芽腫性炎症がみられ,有髄神経線維束周囲にも認められた.脱毛斑には軟毛様の毛がかなり多数みられたが,硬毛はなかった.組織学的にも軟毛様毛嚢と軟毛様の毛幹が認められ,毛嚢周囲には軽度の炎症性浸潤を伴っていた.脱毛斑は石灰化上皮腫摘出約3カ月後には消失し,周囲と同様の密度で硬毛が生え揃った.類似の脱毛症と比較検討したところ,自験例の脱毛斑は軽い圧迫によるものが最も考えられた。

リンパ節転移を伴ったMalignant Trichilemmomaの1例

著者: 川村邦子 ,   三浦貴子 ,   上田宏一 ,   伊東佳子 ,   松田三千雄 ,   佐々木絹子 ,   杉山貞夫 ,   高橋誠

ページ範囲:P.1033 - P.1037

 84歳男性の左大腿外側に発生し,左鼠径リンパ節に転移を生じたmalignanttrichilemmomaの1例を報告した.組織学上,腫瘍辺縁の局面部ではtrichilemmoma様の構築を示していたが,原発巣腫瘤部や転移巣では大小の分葉状胞巣を形成し,malignantproliferating trichilemmal cystの構築に類似していた.光顕的に,中心部の角化様構造を思わせた好酸性物質は,電顕的にtrichilemmal keratinizationによるものではなく,壊死の所見であった.

特異な精神神経症状を示した全身性エリテマトーデスの1例—画像学的検査の有用性と問題点

著者: 橋爪秀夫 ,   坂本泰子 ,   岩月啓氏 ,   滝川雅浩 ,   山田瑞穂 ,   鈴木康夫

ページ範囲:P.1039 - P.1042

 16歳,女性.ステロイド治療に抵抗し,経過中に特異な精神神経症状を発現したSLEの1例を経験した.精神神経症状発現後,5カ月目に画像学的に脳病変を初めて認め,CNSループスと診断した.皮診部組織所見では,核片を混じた多核球の血管周囲への浸潤を認め,血管炎の像を示した.これは,livedoid vasculitisを伴うSLEに脳侵襲が多いという報告と同様に,皮疹部組織変化が脳病変を反映しているものと考えた.また,CNSループスの診断において,画像学的検査は有用であるが,異常所見出現までにある程度の時間経過が必要な場合があり,CNSループスにおける画像診断のひとつの問題点であると思われた.

サルコイドーシスに合併した移動性血栓性静脈炎

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.1043 - P.1046

 48歳家婦.3年来両下肢に結節性紅斑様皮疹が出没,圧痛は発現後2〜3日のみ認め,以後は自覚症状を欠く.組織学的には皮下脂肪織内のかなり大きい静脈の血栓性静脈炎で,サルコイド肉芽腫や結核様結節は認められない.臨床経過・症状と併せて移動性血栓性静脈炎と診断した,本例では血中アンギオテンシン転換酵素値は正常範囲内であったが,両側肺門リンパ節腫大,ツベルクリン反応疑陽性,眼科的に間質性角膜炎と網膜下小結節を認め,サルコイドーシスの臨床診断群に相当するサルコイドーシスには皮膚血管炎としてannular vasculitis,leukocytoclastic vasculitis,移動性でない血栓性静脈炎の合併が稀にみられているが,移動性血栓性静脈炎の合併は今回が初めてと思われる.

両側に認められたPseudocyst of the Auricle

著者: 橋爪鈴男 ,   森田誠 ,   岩田博生 ,   野崎恵美子 ,   碇優子 ,   千葉紀子

ページ範囲:P.1047 - P.1051

 82歳,男性.昭和60年7月頃右耳介上半部に腫瘤出現.切開にて黄色調の排液あり.圧迫にて再発なし.昭和62年8月頃左耳介上半部に腫瘤を認めた.Pseudocyst ofthe auricleの疑いにて生検および貯留液の生化学的分析を行なった.生検時に腫瘤が軟骨内に存在することを確認した.組織学的には軟骨内面に線維性結合織があり,軟骨細胞の変性所見を認めた.貯留液の分析で,従来の報告と同様に血清と同じ成分が含まれていることが確認され,なんらかの機序により血清由来の液が貯留したと推定されたが,定量的には血清とは異なり,単なる貯留ではないと考えられた.昭和60年右耳介発症の腫瘤も臨床症状などから同様の疾患と考えられたため自験例を両側発症例とした.治療は生検後の圧迫固定にて再発を認めず,十分圧迫することで再発を防止することが可能と考えられた.生化学的ならびに文献的検討を行なった.

神経性食欲不振症にみられた柑皮症

著者: 中川八重 ,   相場節也 ,   竹松英明

ページ範囲:P.1053 - P.1055

 神経性食欲不振症の29歳,女性で,顔面,手掌,足底の皮膚の黄染を認めた.眼球結膜に黄疸はなく,肝機能検査も正常であった.血中カロチン濃度が高値であったが,カロチノイド色素を多量に含む食物の大量摂取の習慣あるいは高脂血症はなく,神経性食欲不振症に伴うビタミンAの吸収あるいは代謝障害による柑皮症と考えた.

CD2(−),CD3(−),CD4(−),CD−8(−)の表面形質を示したAdult T Cell Leukemiaの1例

著者: 田村俊哉 ,   梶田哲 ,   松本光博 ,   飯塚一 ,   前川勲

ページ範囲:P.1057 - P.1060

 北海道出身の75歳,男性.急性型のadult T cell leukemia (ATL)の1例を報告した.顔面の浸潤性紅斑,四肢の痂皮を伴う丘疹および表在リンパ節の腫張を認める.末梢血異型リンパ球像,皮膚およびリンパ節組織像,ATLA抗体陽性からATLと診断した.末梢血リンパ球,皮膚およびリンパ節浸潤細胞について表面形質を検索したところ,CD2(−),CD3(−),CD4(−),CD8(−),CD25(+)という結果が得られた.ATL cellは一般にmature helper/inducer T cell typeを示すが,本症例は一般的なT cell markerの欠如した極めてまれな表面形質を有した症例である.

限局性白癬性肉芽腫の1例

著者: 石井完児 ,   幸田衞 ,   中川昌次郎 ,   植木宏明

ページ範囲:P.1061 - P.1065

 54歳,男性.初診の数年前より趾間白癬が出現.その後,下腹部と鼠径部に浅在性白癬,また左下腿の浅在性白癬病巣内に出現した結節を主訴として来院同部の培養でTrichophyton rubrumと同定し,病理組織所見は真皮中層から脂肪織にかけて肉芽腫の形成があり,PAS染色で肉芽腫の中心部に多数の菌要素を認めた.以上の所見より,限局性白癬性肉芽腫と診断し,同疾患について過去の本邦報告例を中心に若干の文献的考察を加えた.

稀な臨床像を呈したスポロトリコーシスの2例

著者: 高橋容子

ページ範囲:P.1067 - P.1070

要約 稀な臨床像を呈したスポロトリコーシスの2例を報告した.症例1.76歳,男,大工.鼻背には小膿疱を混ずる紅色肉芽腫様局面を,頬部,上眼瞼には多発する小膿疱と小結節などを認め,酒皶,鼻部紅色顆粒症,顔面異型白癬などを疑わせる多彩な症状を呈した.症例2.59歳,農家家婦,右耳介から耳後部にかけ糜爛,潰瘍を認めた.耳は本症の発症部位としては,きわめて稀で本邦第3例目と思われる.両例とも,病巣部よりSporothrix schenckiiを培養して診断を確定したが,このような症例では,常に本症をも含めた真菌症を念頭において検索を行うことの重要性を強調した.

印象記

第5回国際小児皮膚科学会(ミラノ)印象記

著者: 上田宏

ページ範囲:P.1071 - P.1073

 第5回国際小児皮膚科学会は本年7月11日より15日にかけてミラノで開催された.国際小児皮膚科学会は3年毎に開かれるので1983年モンテカルロ,1986年東京に続いてヨーロッパでの2回目の開催である.小児皮膚科学会は比較的歴史の浅い学会であるが,この領域に興味を持つ同好の士が多く今回の学会も500名,46力国よりの参加者がミラノに集まった,学会としてまとまり実質的に討議のできる適当な人数であろうか.今回の学会の参加者で気付いたことは韓国より数名,中華民国3名,その他タイ,シンガポールなど東南アジア各国からの参加者が多くおられ,国際学会として学問の上でも,また各国の交流の上でも喜ばしいことと思われた,日本からの参加者は55名でイタリアに次いで多いもので米国を上回った.英国から来た旧知のDr.AthertonがどうもGBは参加者が2名で少なすぎると嘆いていた.
 名誉会長はMeneghini教授で元気で毎日会場の最前列でがんばっておられた.会長は丁度私が会頭を務めた第12回日本小児皮膚科学会に特別講演をお願いしたDr.Caputoミラノ大学皮膚科教授,scientificsecretaryはお馴染の髭のDr.Gel—mettiで各会場の英語アナウンスから全てを取り仕切って走り廻っている姿が印象に残った.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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