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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科43巻11号

1989年10月発行

雑誌目次

カラーアトラス

個疹が融合することなく線状に配列した右上腕の脂腺母斑

著者: 滝野長平 ,   角田明子

ページ範囲:P.1082 - P.1083

患 者 33歳,男性,公務員
初 診 昭和62年8月8日

原著

エックリン汗腺癌の電顕学的観察—移行部分化を示す1亜型

著者: 内山紀子 ,   進藤泰子 ,   望月正子 ,   日戸平太

ページ範囲:P.1085 - P.1092

 48歳,男性の肘頭に15年間存在した結節から発生し,リンパ腺,肺,その他に転移したエックリン汗腺癌の1例を記載した.この汗腺癌は腺管構造のほか,印環型細胞と間質のヒアリン化に組織学的特徴があった.電顕的ならびに組織化学的検索により,腺管面下に,汗管・分泌部間の移行上皮に特異的な細胞接合装置—トンボ翼構造と,また印環型細胞の胞体内腔にはシアロムチンの分泌像が,それぞれ見いだされた.腫瘍細胞は移行部上皮と粘液細胞への分化を指向するものであり,エックリン腺癌の亜型の一つと考えられた.良性エックリン腫瘍の悪性化について言及した.

弾力線維性仮性黄色腫の初期像

著者: 増田智栄子 ,   石井則久 ,   中嶋弘 ,   竹内順子

ページ範囲:P.1093 - P.1096

 弾力線維性仮性黄色腫pseudoxanthoma elasticum (PXE)の若年兄弟例を報告した.自験例は7歳と3歳の男児で,共に,数カ月前に発症した新鮮例である.当初,臍囲に自覚症状のない米粒大赤色調丘疹が出現し,次第に黄褐色調に変化し扁平化してきた.病理組織学的,免疫組織化学的,電顕学的に,本症に特徴的な弾力線維の変性,石灰沈着像を認めた.また,病巣部には組織球を主体とする肉芽腫様細胞浸潤も認めた.この肉芽腫様細胞浸潤はこれまでの報告にはほとんどみられないが,初期疹に特徴的なものではないかと推察した.

今月の症例

ライム病の1例

著者: 橋本喜夫 ,   水元俊裕 ,   大熊憲崇 ,   宮本健司

ページ範囲:P.1097 - P.1100

 マダニ刺症に続発したライム病(41歳,女性)の1例を報告した.ダニが背部に咬着後数日してから遠心性に拡大する慢性遊走性紅斑(ECM)が出現し,38度台の発熱と頭痛,関節痛を伴った.血清学的検査でBorrelia burgdorferiに対する抗体が証明され,ライム病と診断した.ライム病の本邦における媒介者(vector)はIxodes persulcatus(シュルツェマダニ)であると報告されている.北海道におけるマダニの分布もシュルツェマダニが主体であり,今後北海道においてもライム病発症に注意が必要である.

ライム病の1例

著者: 田中博康 ,   田中栄 ,   田村春美 ,   牧野弘和 ,   小山啓一郎

ページ範囲:P.1101 - P.1103

 ライム病の1例を報告した.症例は54歳,女.初診の約2週間前に,八ケ岳へ行き,左背部に虫刺を受けた.その1週間後,刺口部を中心に環状紅斑が出現,全身倦怠感,発熱,関節痛を伴い,浮腫性紅斑が遠心性に拡大するため当科を受診.臨床経過より,ライム病による慢性遊走性紅斑を疑い,抗生剤内服開始し,数日後には軽快した.血清学的検査により,抗ボリレア抗体400倍陽性を示し,ライム病と確定診断した.加療後,紅斑の再発およびその他の遅発症状はみられず,経過観察中である.

ライム病の1例と慢性遊走性紅斑の1例

著者: 本間光一

ページ範囲:P.1105 - P.1108

 症例1は42歳,男.右腋窩のダニ咬着にて当科受診し,虫体除去した.直後から紅斑が出現し,3週後紅斑が急速に拡大し,4週後微熱,全身倦怠感,関節痛が出現し再診した.ダニ咬着部を中心として長径30cmにおよぶ淡紅色斑を認めた.中心部から皮膚生検したが,銀染色でスピロヘータは証明できなかった.血清Borrelia burgdorferi抗体陽性でライム病と診断した.セフェム系内服で皮疹と全身症状は消失したが,皮疹のみ再発しminocycline内服で治癒した.症例2は49歳,女.左肩のダニ咬着で他院の治療を受けたが,5週後紅斑が出現し7週後当科受診した.咬着部を中心として左上背部から左上腕にかけ径22cmの環状紅斑を認めた.ペニシリン系内服で治癒した.Borreliaburgdorferi抗体は確認されず,現時点では慢性遊走性紅斑と診断した.

Lyme Borreliosisと考えられた2例

著者: 禹仁哲 ,   馬場俊一 ,   鈴木啓之 ,   井口和幸

ページ範囲:P.1109 - P.1112

 症例1.59歳,女性.福島県三島町在住.近くの山林から帰宅後,右前腕伸側に3カ所の刺咬部を中心とする浮腫性紅斑を認めたが,その後,紅斑の拡大はなかったという.1カ月後の受診時には刺咬部に紫紅色米粒大紅斑を認めた.他の臨床症状はない.Lyme病血清反応はImmunoperoxidase法(I.P.)で800倍陽性.症例2.33歳,女性.秋田県男鹿半島真山に登山.2日後,右耳介後部の虫体に気づき除去.刺咬後,5日目に当科受診.マダニ刺咬部に米粒大の丘疹を認めた.他の臨床症状はない.Lyme病血清反応はI.P.で1,600倍陽性.これら2症例はいずれもLyme病で見られるとされる臨床所見を認めないにもかかわらずLyme病血清反応陽性を示した.特に症例2では刺咬後5日目にLyme病血清反応陽性を示し,今回の刺咬前のBorrelia感染と思われた.臨床症状の明らかでないLyme borreliosisの存在が考えられた.

症例報告

シェーグレン症候群に伴う結節性紅斑様皮疹の1例

著者: 太田幸則 ,   片山一朗 ,   西岡清

ページ範囲:P.1115 - P.1118

 結節性紅斑はその特徴的臨床像のたぬ診断はさほど困難ではない.しかしその反面,症例ひとつひとつの誘因・原因を明らかにすることは困難なことが多い.今回著者らは結節性紅斑様の急性脂肪織炎を呈したシェーグレン症候群の1例を経験し,その発症に関与するシェーグレン症候群の病態,特に免疫学的異常との関連につき若干の検討を加え,シェーグレン症候群にみられる高γ—globulin血症の結果,RA因子を中心とする免疫複合体の形成,血液粘稠度の上昇などによる結節性紅斑の形成が想定されたので,ここに報告する.

抗SS-B抗体単独陽性を示した新生児エリテマトーデスの1例

著者: 小林都江 ,   桜岡浩一 ,   仲弥 ,   西川武二 ,   宮本伸子

ページ範囲:P.1119 - P.1123

 生後70日,女児.SLEの疑いにて経過観察されている母親より生まれ,生下時より略全身に紅斑を認めた.血液学的検査にて,抗核抗体陽性.抗SS-A抗体陰性,抗SS-B抗体陽性.合併症として,血小板減少,肝機能障害を認めた.新生児エリテマトーデスと診断され,無治療にて経過観察したところ,1年の経過にてほとんどの皮疹は瘢痕を残さず消失した.新生児エリテマトーデスは,通常抗SS-A抗体との関連を強く示唆されているが,自験例は通常の二重免疫拡散法による検査で,抗SS-A抗体陰性,抗SS-B抗体陽性であり,稀と考えられ,既報告例と比較しその特徴について考察を加えた.

ルポイド型自己免疫性肝炎と慢性甲状腺炎を合併したCRST症候群の1例

著者: 沼田和代 ,   今井龍介 ,   山田裕道 ,   高森建二

ページ範囲:P.1125 - P.1128

 48歳女性,手指の皮下石灰化,レイノー現象,手指硬化,頸部から前胸部の毛細血管拡張の4症状と,免疫学的に抗セントロメア抗体が陽性であることよりCRST症候群と診断した.また,肝機能障害,高γグロブリン血症,抗核抗体・抗DNA抗体陽性,肝生検の所見などによりルポイド型自己免疫性肝炎(ルポイド型肝炎),さらにサイロイドテスト・マイクロゾームテスト陽性,甲状腺吸引生検の結果より,慢性甲状腺炎の合併も認められた.これら免疫学的異常値は,ステロイド剤によく反応し,約8カ月の治療により正常化した.CRST症候群,ルポイド型肝炎,慢性甲状腺炎という3種の自己免疫性疾患の併発は極めて稀で,我々が調べ得た限りでは本症例が本邦第1例である.

前脛骨型表皮水疱症の1例

著者: 林一弘 ,   谷昌寛 ,   澄川康祐

ページ範囲:P.1129 - P.1133

 前脛骨型表皮水疱症は栄養障害型先天性表皮水疱症の一亜型であるが,その発症年齢が比較的高く,下腿に限局する水疱形成とその後の萎縮性瘢痕を特徴とする.また,爪の変形以外にはほとんど合併症を認めず予後良好な非常に稀有な病型である.今回我々は水疱形成,糜爛,その治癒後の萎縮性瘢痕が前脛骨部に限局する8歳女児の前脛骨型表皮水疱症の1例を経験し,病理組織像および電顕的所見について報告した.自験例は電顕的にbasal lamina下方での水疱形成を認めるとともに,水疱部および水疱辺縁部でのanchoring fibrilの減少,消失を認めた.

中毒性黒色皮膚炎の1例

著者: 出光俊郎 ,   軽部幸子 ,   南波正 ,   矢尾板英夫

ページ範囲:P.1135 - P.1139

 中毒性黒色皮膚炎は切削油,防錆油,潤滑油などの反復接触による皮膚炎の結果,色素沈着を生じる稀な疾患であり,発症機序はRiehl黒皮症と同一と考えられている.本症の1例を報告し,文献的に考察を加えた.症例は62歳,男.約3年前より油のついた器械部品を月に3,4回運搬していたところ,その数カ月後から両手背,前腕に紫褐色の色素沈着が出現した.病理組織では表皮突起の減少とともに小円形細胞の表皮内への浸潤像が観察された.真皮では組織学的色素失調のほか小円形細胞浸潤に混在して好酸球も認められた.また,汗腺組織の一部に変性像もみられた.使用していた油製剤の貼布試験では防錆油のみに陽性所見が得られた.これらの所見から自験例では,接触刺激に加えて防錆油に対するアレルギー反応が発症に大きく関与していると考えた.

特異な臨床像を呈したMucha-Habermann病—環状散布疹に取り囲まれた巨大潰瘍を伴った1例

著者: 松村宜子 ,   佐々木由美子 ,   只木行啓 ,   六郷正和 ,   富田靖

ページ範囲:P.1141 - P.1144

 54歳男性に発症したMucha-Habermann病の1例を報告した.皮疹は黒色痂皮を伴う最大径3cmまでの深い潰瘍および紅色丘疹で,顔面,手掌および足背を除くほぼ全身に多数認められた.病理組織学的にMucha-Habermann病と診断した.また経過中,潰瘍部周辺に環状に瘙痒性丘疹や紅斑も認められた.潰瘍が比較的大型で多発していた点,また経過中,環状紅斑の散布疹が認められた点が特異と思われ,その病態について若干の検討を加えた.

皮膚の反転固定による開放術が奏効した膿瘍性穿掘性頭部毛嚢周囲炎

著者: 一山伸一 ,   川口とし子 ,   高野裕 ,   馬場直子 ,   中嶋弘 ,   安藤晋一郎 ,   宮本秀明 ,   澤泉健二郎

ページ範囲:P.1145 - P.1148

 31歳,男.7年前から頭頂部に有痛性の膿疱および脱毛斑が出現,漸次拡大した.某医にて慢性膿皮症と診断され,切開排膿,湿布,抗生剤内服等を行うも改善せず,紹介入院となった,入院後,切開排膿,抗生剤点滴静注にて一時軽快したが,その後再び悪化したので,「皮膚の反転固定による開放術」を施行した.術後1年になるが,皮疹は著明に改善し,再発をみない.

Nocardia brasiliensisによる皮膚リンパ型ノカルジア症の1例

著者: 原田浩史 ,   荒瀬誠治 ,   高橋収 ,   久保艶尚

ページ範囲:P.1149 - P.1152

 80歳,男性.落葉状天疱瘡のため副腎皮質ステロイド剤服用中に,外傷を契機として右肘頭部に発症した皮膚リンパ型ノカルジア症の1例を報告した.膿汁よりNo-cardia brasiliensisが得られた.ミノサイクリン無効,スルファメトキサゾール(2g×20日,1g×40日)が著効し,中止3カ月後に再発していない.皮膚ノカルジア症の本邦報告例について検討し,若干の統計的考察を加えた.

Piebaldism

著者: 菊池新 ,   秋山真志 ,   早川和人 ,   西川武二

ページ範囲:P.1153 - P.1157

 Piebaldismの1家系を経験し,このうち3名(28歳母親と5ヵ月男児,および15歳の従妹)につき精査した.母親は前頭部にwhite forelockを認めるのみだが,男児と母親の従妹はwhite forelockの他に両下肢にも脱色素斑を認めた.生検組織では,母親のwhite forelockでは表皮基底層に少量のメラニンを認め,DOPA反応弱陽性,電顕にて少数のメラノサイトが認められた.男児と従妹の下腿の脱色素斑ではメラニンは認められずDOPA反応陰性,電顕にてもメラノサイトを欠如していた.これらの所見より本症の白斑部にはメラノサイトが存在しない例と存在する例があることが判明した.

全身播種状に認められた汗管腫の1例

著者: 神谷受利 ,   工藤清孝 ,   渡辺敦子 ,   福井良昌

ページ範囲:P.1159 - P.1161

 全身播種状に認められた汗管腫の1例を報告した.58歳男性で,10歳頃より腹部を中心に粟粒大から半米粒大の淡褐色丘疹が出現し,漸次顔面・頸部・躯幹・上肢・下肢に拡大した.病理組織学的に,典型的な汗管腫の所見を示した.全身にくまなく分布する極めてまれな臨床像を呈した症例を報告し,汎発性汗管腫に関する文献的考察を加えた.

手掌に発生した表在拡大型悪性黒色腫の1例

著者: 木花いづみ ,   石河晃 ,   生冨公明 ,   岸本宏志

ページ範囲:P.1163 - P.1166

 36歳,男性の左拇指球部に発生した表在拡大型悪性黒色腫superficial spreading melanoma (SSM)の1例を報告した呈幼少時より褐色斑を認め,2〜3年前より刺激を加えていたところ,色調が黒色に変化するとともに,局面全体がわずかに盛り上がり,初診時,2×1.5cm,境界比較的明瞭な黒色局面を認めた.組織は典型的で,電顕的に類円形のプレメラノソームを多数認め,母斑細胞由来が示唆された.過去の報告例をみても,手掌に発生したSSMは,非常に稀である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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