icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科43巻13号

1989年12月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Benign Neonatal Hemangiomatosisの1例

著者: 高橋千恵

ページ範囲:P.1264 - P.1265

患 者 生後50日の男児
初 診 昭和62年10月23日

原著

DDS症候群の免疫学的検討

著者: 斎藤すみ ,   宮本秀明 ,   金秀澤 ,   池澤善郎 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.1267 - P.1271

 44歳,女.壊疽性膿皮症にてDDS 100mg内服を開始したところ,投与25日後より発熱,5週間後より全身に皮疹,黄疸が出現した.当院内科入院時には,肝脾腫,頸部リンパ節腫脹も認められた.一般検査にて白血球増多,異型リンパ球増多,溶血性貧血,肝機能異常あり,自験例をDDS症候群と診断し,プレドニン30mg内服投与したところ,皮疹,全身症状,検査値ともに軽快した.DDSのLSTは陽性.DDSのパッチテストは陰性.DDSの皮内テスト(0.5%,0.05%)は,6時間後,24時間後とも陽性.ABC法にて組織浸潤細胞のマーカー検索を行ったところ,Leu 2a+,Leu 4+,HLA-DR+,HLA-DQ+,T細胞の優位な浸潤が認められた.

皮膚リーシュマニア症—サウジアラビアでの感染例

著者: 土田哲也 ,   大原国章 ,   野村克己 ,   小林和代 ,   和田芳武 ,   岡本雅子 ,   山浦常 ,   松本克彦 ,   石橋康正

ページ範囲:P.1275 - P.1280

 サウジアラビアより帰国した46歳,52歳,56歳日本人男性に生じた皮膚リーシュマニア症cutaneous leishmaniasisの3例について報告した.症例1では四肢に圧痛のない,一部潰瘍を伴う径1.5cm〜6cmの暗紫褐紅色硬結を4個認め,左下肢〜鼠径部に10数個のリンパ節腫脹を伴っていた.硬結部,腫脹リンパ節のいずれからも,スタンプ標本で組織球様細胞内に,およびTobieらの培地での培養で熱帯リーシュマニアLeishmaniatropicaを検出した.アンチモン製剤は無効で病変部はすべて切除にて治療した.症例2では右下腿に径1.2cmの暗紫褐紅色硬結が単発し,スタンプ標本では虫体の存在は明瞭ではなかったが,培養で同様にLeishmania tropicaが陽性であった.症例3では下肢に萎縮性暗紫紅褐色斑が7個存在したが,培養等では虫体の存在は証明されず,自然治癒例と考えられた.若干の考察を加え,本症の外科的治療法の有用性についても言及した.

原発性全身性アミロイドーシスにおけるインターフェロンαの全身投与

著者: 平野紀子 ,   池田光徳 ,   赤木芳文 ,   多田譲治 ,   荒川謙三 ,   福代新治 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.1281 - P.1285

 患者は10年来の蛋白尿と,3年来の紫斑を主訴としており,M蛋白(BJPλ型)を伴っていた.皮膚全層,また皮膚・筋・直腸粘膜の毛細血管周囲にアミロイドの沈着がみられた.しかし,全身骨X-P,骨髄像はほぼ正常で,骨髄腫に伴うものとの境界領域にある原発性全身性アミロイドーシスと診断した.臨床症状より全身の皮膚に大量のアミロイドが沈着していることが想像されたが,その割に他臓器症状は軽く,皮膚が主な沈着部位であると思われた.1年間DMSOの内服・外用を試みたが,内服は効果がなかったため中止し,骨髄腫の治療に準じてインターフェロン(IFN)αの全身投与に切り替えた.蛋白尿の改善が開始後1カ月よりみられ,6カ月続けた.

臨床統計

Microsporum canis感染症の統計的観察

著者: 高橋泰英 ,   飯古英里子 ,   家本亥二郎 ,   黒沢伝枝 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.1287 - P.1291

 昭和54年1月から昭和63年12月まで10年間に,横浜市大皮膚科を受診したMicrosporum canis感染症患者41例について統計的観察を行った.最近10年間では明らかな増減傾向はなかった.性別では男15例(36.6%),女26例(63.4%)で女に多かった.年齢では.最年少が生後21日目(発症時14日目),最年長が52歳,平均16.4歳で,9歳までが24例(58.5%)と最も多く,特に5〜9歳が17例で41.5%を占めた.体部白癬は22例で,男6例(27.3%),女16例(72.7%)と女が約3倍で.年齢は比較的均等に分布しており,裸露部に多発する例が多かった.ケルスス禿瘡は18例で性差はなく,5〜9歳が全体の72.2%を占めた,頭部浅在性白癬は男6例,女1例で全て9歳までの症例であった.感染源としては猫が61.0%,犬が36.6%であった.家族内発症は7家族,15例にみられた.ケルスス禿瘡の77.8%がステロイド外用の既往があり,その発症誘因としてステロイド外用剤が重要と思われた.

今月の症例

特異な臨床像を呈したVerruciform Xanthomaの1例

著者: 天野佳子 ,   桜岡浩一 ,   西川武二 ,   荒木由紀夫

ページ範囲:P.1292 - P.1297

 27歳男性の陰嚢および陰茎に列序性に多発したverruciform xanthoma (以下V.X.)について報告した.結節は常色〜橙赤色,表面疣状で大型のものはカリフラワー状を呈す.組織学的には,不全角化を伴う角質増殖,乳頭腫症をみとめ,真皮乳頭層には脂肪染色陽性の泡沫細胞の浸潤がみられる.個々の結節の特徴並びに組織像は共にV.X.に一致するものであったが,幼児期より存在する点,全体の臨床像はこれまでの報告例とは異なる.自験例はV.X.の発生病理を考える上で,貴重な症例と考えられ,若干の考察を加え報告した.

症例報告

足底疣贅の合併をみた乳頭腫ウイルス抗原陽性の足底表皮嚢腫

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.1299 - P.1303

 症例:16歳男.外傷の既往なく7カ月来有痛性腫瘤出現し,近医で内容除去されるも再発・増大した.現症:中央に鱗屑を伴う直径14mmの嚢腫状腫瘤が左踵底部に単発し,圧痛が強い.その近傍に,幼少時外傷後出現し,自覚症を欠くモザイク型足底疣贅が存在する.組織所見:嚢腫は表皮と同様の壁構造を有する角質性嚢腫で,被覆表皮と連続し,内腔に空胞様構造,壁に細胞質内好酸性封入体が散在する.PAP法にて嚢腫内腔の空胞様構造,封入体を有する細胞の核に乳頭腫ウイルス抗原を認めたが,これらは嚢腫最上部にも散見された.足底疣贅はモザイク型疣贅の組織所見を示し,PAP法にて顆粒層・角質層の核に一致して乳頭腫ウイルス抗原陽性であった.単純摘出5カ月後,線状瘢痕中央部に小疣贅の続発をみた.乳頭腫ウイルス抗原陽性の足底表皮嚢腫の報告例について検討し,足底疣贅との関連について若干の考察を加えた.

後腹膜線維症を伴ったLivedo Reticularisの1例

著者: 菊池新 ,   天野佳子 ,   原田敬之 ,   西川武二

ページ範囲:P.1305 - P.1308

 後腹膜線維症を伴ったlivedo reticularisの1例を報告した.症例は46歳,男.下腿の紅斑と潰瘍を認める.血管造影にて下大静脈の完全閉塞を認め後腹膜線維症の存在が明らかになった.病理学的には血管炎の所見を認めなかったが,抗核抗体陽性その他データより膠原病をはじめとする全身疾患が下腿潰瘍と後復膜線維症の両者をひきおこしている可能性が示唆された.

Subepidermal Calcified Noduleの1例

著者: 山地一史 ,   大畑弘彰 ,   林義智 ,   石橋明 ,   久木田淳

ページ範囲:P.1309 - P.1312

 13歳,女性のsubepidermal calcified noduleの1例を経験した.この疾患の独立性について考え,統計的事項,特殊染色から得られた所見を示すとともに,若干の文献的考察を加えた.

大陰唇に発生した巨大懸垂性線維腫の2例

著者: 永井秀史 ,   寄藤和彦 ,   若林正治 ,   小林まさ子 ,   藤田優 ,   吉田道

ページ範囲:P.1313 - P.1316

 大陰唇より発生した巨大懸垂性線維腫の2例を報告した.症例1:30歳,未婚.18×25×15cmの有茎状腫瘍で幅1.5cm長さ5cmの茎により懸垂している.重量1600g.症例2:39歳.既婚.幅1cm長さ5cmの茎により懸垂する12×9×7cmの腫瘍.重量600g.組織は2例とも成熟した膠原線維と幼若な膠原線維が混在増生しており,典型的な線維腫の像を呈する.2例とも茎部より広範囲に切除,縫縮し再発をみとめていない.

くすぶり型成人T細胞白血病に生じた痂皮型疥癬(ノルウェー疥癬)の1例

著者: 濱田真世 ,   幸田衞 ,   森健一 ,   植木宏明

ページ範囲:P.1317 - P.1319

 60歳,女性.10年来,両足背,膝部,肘頭部を中心に,瘙痒を伴った紅斑,角化性皮疹が出没していた.皮疹は,灰白色の厚い痂皮を伴っており,痂皮や鱗屑の直接鏡検で多数の疥癬虫体と虫卵が認められた.末梢血液所見は,白血球数11,200,異型リンパ球14%,抗ATLA抗体陽性であったが,全身状態は良好で,臓器病変も認めないため,くすぶり型成人T細胞白血病と診断した.痂皮型疥癬(ノルウェー疥癬)は,全身的疾患を基に発生すると考えられているが,自験例では,一見健常な患者に生じており,興味深い.

有棘細胞癌を合併した劣性栄養障害型先天性表皮水疱症—自験例および文献的検討

著者: 久米井晃子 ,   禾紀子 ,   鶴町和道 ,   中山秀夫 ,   山下真彦 ,   秋山真志

ページ範囲:P.1321 - P.1325

 劣性栄養障害型先天性表皮水疱症において,棍棒手のゆえにまな板を左足背に落とし,そこが潰瘍化した後有棘細胞癌となった1例を報告した.表皮水疱症と悪性腫瘍の合併について,本邦と海外の報告を比較検討し,若干の考察を加えた.

乳癌:自験2例と免疫組織化学的検討

著者: 三浦俊祐 ,   高橋博之 ,   高橋誠

ページ範囲:P.1327 - P.1331

 原発性乳癌(症例1:74歳,女)と続発性乳癌(症例2:41歳,女)の各1例を経験し,免疫組織化学的検討を加えた.症例1はscirrhus carcinomaで皮膚科で診断された稀な例,症例2は転移性乳癌では稀なinflammatory carcinomaであった.免疫組織化学的検索の結果は以下のごとくであった.i) S−100蛋白はα,β鎖とも症例1にのみ不均一に陽性であった.ii) epithelial membrane antigen, keratin, neuron specificenolaseはいずれでも陽性であった.iii) CEAβ2—microglobulinは症例1のみ陽性であった.iv) vimentinは両症例とも陰性であった.これらの結果は両症例の上皮性腫瘍としての性格,分化度を反映しており,複数の抗体の組み合わせによる検討は鑑別診断の上で有用と考えられた.

Nocardia brasiliensisによる小児の皮膚ノカルジア症の1例

著者: 白木晴子 ,   三田哲郎 ,   安江厚子

ページ範囲:P.1333 - P.1336

 症例は6歳男児で,右膝蓋の外傷部に皮下膿瘍が生じ,抗生剤(CCL)の投与にもかかわらず,発熱と領域リンパ節の腫脹を生じた.膿培養にてノカルジアが検出され,臨床症状より皮膚リンパ型ノカルジア症と診断された.原因菌は,生理学的性状の検索結果より,N. brasiliensisと同定された.ST合剤(1.5錠/day)とミノマイシン(40mg/day)の投与に変更し,約1カ月で治癒した.小児のN. brasiliensisによる皮膚ノカルジア症につき,1988年までの本邦報告例をまとめ考察を行った.

治療

パルス波色素レーザーによる単純性血管腫の治療

著者: 坂東行洋

ページ範囲:P.1337 - P.1340

 1982年から我々は,それまで血管腫に対するレーザー治療の主流であったアルゴン・レーザーに代って,色素レーザーを治療に用い良好な結果を得ているので代表的な症例とともにこれを紹介する.この色素レーザー発振装置は,アルゴン・レーザーと比較して以下の点で優れていると考えられる.①キセノン・フラシュランプ励起のパルス照射のため,照射時間が1μsecと非常に短く無麻酔で治療を行える(アルゴン・レーザーは0.1〜0.2 sec).②ヘモグロビンの吸収率は,色素レーザーの577nmの方がはるかにアルゴン・レーザーの発振波長488nmや514.5nmより優れてあり,より選択的な治療が可能となった.③以上の特長により治療後の瘢痕や色素沈着を心配することなく治療が行える.1982年11月から1988年9月迄に治療した単純性血管腫は456例で1年以上経過観察を行えた症例は222例,242部位であった.その結果,約80%の症例において色調の消褪を認めた.

--------------------

臨床皮膚科 第43巻 事項索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?