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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科43巻2号

1989年02月発行

雑誌目次

カラーアトラス

瘢痕性類天疱瘡

著者: 小出まさよ ,   戸倉新樹

ページ範囲:P.102 - P.103

患 者 67歳,女
初 診 昭和62年7月29日

原著

足底表皮嚢腫—乳頭腫ウイルス抗原陽性2例の追加報告と自験10例の検討

著者: 山田晴義 ,   木村俊次

ページ範囲:P.105 - P.109

 乳頭腫ウイルス抗原(PVA)陽性を示した足底表皮嚢腫(ECS)の2例を追加報告し,最近2年間に当科で経験したECS10例の検討を行った.症例1:34歳,女.PAP法にて壁の細胞核の一部と内腔の空胞様構造のすべてにPVA陽性.症例2:14歳,男.内容物にのみPVA陽性.当科のECS10例中4例(40%)にPVA陽性,うち2例は嚢腫壁にも陽性.陽性例,陰性例で性差,年齢に差異はなかったが,発生部位は陽性例ではすべて利き足(右足)発生であった.また罹患期間は陽性例はすべて半年以内であったが,陰性例では7〜8年に及ぶものも存在した.また陽性例は全例圧痛を認めたのに対し,陰性例では6例中3例のみに認めた.即ち陽性例は圧痛を伴うほど急激な増大傾向を示すものと思われた.PVA陽性表皮嚢腫のかなりのものは,足底の小疣贅に小外傷が加わり真皮内に持ち込まれ形成されるものと考えた.

症例報告

足底表皮嚢腫とヒト乳頭腫ウイルス感染—特異なウイルス性足底疣贅合併例を中心として

著者: 鈴木秀明 ,   森嶋隆文 ,   花輪滋 ,   今川一郎

ページ範囲:P.111 - P.116

 ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)抗原陽性の表皮嚢腫の13歳女例と20歳,男例を報告した.本邦報告例について統計的観察を試み,本症の特徴は次のごとく要約された.1)臨床所見:若年者の足底,殊に右側で,外力が加わり易い中足骨骨頭周辺,踵底面や拇趾球部に好発する嚢腫病変である.周囲にウイルス性疣贅を合併する例がある.2)病理組織学的所見:嚢腫内腔の角層内に多数の空胞細胞様構造物と,顆粒層ないし有棘層中層に好酸性封入体を有する細胞の出現がみられる.3)免疫組織化学的所見:HPV抗原は空胞細胞様構造物と顆粒層およびその直下の好酸性封入体を有する細胞の核に局在していた.興味あることは13歳,女例では嚢腫病変周辺部に臨床的には通常の足底疣贅と異なり,病理組織学的,免疫組織化学的には嚢腫壁と同様所見を呈する角化性小斑がみられたことである.HPV抗原陽性の足底表皮嚢腫の発症機序は,HPV感染表皮が外力で真皮内に埋没し,形成されたものと考えられた.

Primary Mucinous Carcinoma of the Skin—同一病理組織標本にTrichofolliculomaの認められた症例

著者: 麻生和雄 ,   佐藤紀嗣

ページ範囲:P.117 - P.120

 53歳,女,右鼻唇溝外方の半球状皮下腫瘤,病理組織学的に同一標本中にprimarymucinous carcinoma of the skinとtrichofolliculomaの認められた症例を報告した.Pri-mary mucinous carcinoma of the skinについて文献的に考察,自験例でのtrichofollicu-lomaとの併発,発生部位から,これまでエクリン腺由来とされた腫瘍ではあるが,trichofol-liculomaと共通起原を有するアポクリン腺由来腫瘍を示唆するものがあることを論じた.

指のBowen病の2例—乳頭腫ウイルス抗原陽性例と外陰部Bowenoid Papulosis様病変併発例

著者: 鈴木秀明 ,   森嶋隆文 ,   花輪滋 ,   兼松秀一

ページ範囲:P.121 - P.125

 比較的稀と思われる指発症のBowen病の73歳,男例(症例1)と35歳,男例(症例2)を報告した.症例1で注目すべきことは,免疫組織化学的に顆粒層の空胞化細胞の核に一致して乳頭腫ウイルス抗原が陽性であったことと胃癌を合併していたことである.症例2で興味あることは,免疫組織化学的に乳頭腫ウイルス抗原は陰性であったが,外陰部にbowenoid papulosis様病変が合併していたことである.以上の2症例の経験から,指のBowen病の発症にヒト乳頭腫ウイルスの関与が示唆された.

限局性多発性神経線維腫—自験5例と本邦例の集計

著者: 川島淳子 ,   秋山真志 ,   増田光喜 ,   仲弥 ,   西川武二

ページ範囲:P.127 - P.132

 限局性多発性神経線維腫の5例を報告した.第1例は39歳女,10年来左上肢に大豆大までの小結節が20数個多発.第2例は53歳男,5年来背部に半米粒大から大豆大までの小結節が10個多発.第3例は26歳男,3年来左前腕に米粒大から小豆大までの小結節が7個多発.第4例は51歳男,10年来右上腕に小豆大までの小結節が6個多発.第5例は53歳女,20年来右前腕に小指頭大までの小結節が6個多発.5例とも自覚症状を欠き,他にレックリングハウゼン病の症候は認めなかった.これらの腫瘤は組織学的に神経線維腫であった.以上の5例を含めた本邦例30例につき若干の文献的考察を試みた.

Nerve Sheath Myxomaの1例

著者: 根本治 ,   小野塚仡

ページ範囲:P.133 - P.135

 29歳,女.約2年前から右肩に有痛性皮下腫瘤を触れる.摘出した腫瘍は粘液変性が強く,線維性被膜に包まれ,アルシャンブルー染色陽性,ボーディアン染色にて軸索,神経線維を認め,S−100蛋白染色陰性であった.

多指症,合指症を伴ったEpidermal Nevus Syndrome

著者: 高橋美千代 ,   丸山友裕 ,   伊藤雅章 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.137 - P.144

 片側性,広範囲に分布する表皮母斑と骨異常,高口蓋,陰嚢水腫などを合併したepidermal nevus syndromeを経験した,症例は,1カ月,男.満期産,成熟児,正常分娩.生下時より,左半身に白色扁平隆起性ないし褐色疣状の皮疹が認められる.また,左手第1指および左足第1趾の重複拇指,左第2,3,4趾の合趾症,右第2,3趾の合趾症を合併する.痙攣発作等の中枢神経系の異常を示す所見はない.組織学的に,皮疹部の表皮は不規則な肥厚と過角化を示すが,orthokeratoticであり,N-(7-imethylamino-4-methyl-3-coumarinyl) maleimide染色では,ほぼ正常のSH基,SS結合の分布を示す.電顕的に,表皮細胞の細胞質中に膜変性物を認め,ケラトヒアリン顆粒は一部,不整形,粗大である.本症とlinear sebaceous nevus syndromeの本邦報告例を検討し,本症の概念について考察した.

Chlorpromazineによる光アレルギー性皮膚炎

著者: 服部邦之 ,   高田実

ページ範囲:P.145 - P.148

 31歳,女.Chlorpromazine (CPZ)25mg筋注を受け,その2日後頸部に紅斑が出現した.5日後から日光を避けたが,15日後まで紅斑は新生し,最終的には露光部全体に及び,さらに非露光部にも少数の紅斑が生じた.CPZ注射10〜12日後の光照射試験ではUV-A照射部のみが陽性反応を示した(MED2.4J/cm2以下).光過敏性消失後,UV-A4.32J/cm2照射した光貼布試験ではCPZ1%〜1×10−4%で陽性反応が認められた.単色光照射による光貼布試験でCPZの作用波長は320〜360nmであった.感作時期は不明であったが,臨床症状と検査成績から本症例をCPZによる光アレルギー性皮膚炎と診断した.

内服中止後速やかにMEDの改善をみたフトラフールによる日光過敏症型薬疹の1例

著者: 門馬和子 ,   城内陽子 ,   飯島正文

ページ範囲:P.149 - P.152

 59歳,男.膵嚢胞腺癌術後,フトラフール1日800mg内服.約40日後より,日光裸露部に激しい瘙痒を伴う紅斑出現.光貼布試験陽性.フトラフール内服中,著明に低下していたMEDは内服中止14日後にはすでに正常化していた.

ピロキシカムによる光線過敏症型薬疹の3例

著者: 杉山朝美 ,   林正幸 ,   大沢純子 ,   吉田貞夫 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.153 - P.158

 ピロキシカムによる光線過敏症型薬疹の3例を報告した.症例1:56歳,女性.変形性膝関節症のためピロキシカム60mgを内服したところ光線過敏症発症.症例2:77歳,男性.左手指疼痛のためピロキシカム80mgを内服したところ光線過敏症発症.症例3:44歳,女性.頸部痛のためピロキシカム20mgを内服したところ光線過敏症発症.いずれの症例もピロキシカムによるパッチテスト陰性,光パッチテスト陽性であり,作用波長はUVAであった.

マレイン酸エナラプリル(レニベース®)による薬疹

著者: 斎藤すみ ,   長谷哲男 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.159 - P.163

 69歳の男性.全身の多形滲出性紅斑様皮疹,発熱にて発症のAILD. VP療法2クールにて寛解導入し,プレドニン20mgにて維持していた.47歳より高血圧があり,当院内科よりマレイン酸エナラプリル投与を開始されたところ,投与開始12日目より下腹部に軽度瘙痒を伴う紅斑が出現した.パッチテストはエナラプリルおよび同様のアンギオテンシン変換酵素阻害剤であるカプトプリルとも陰性,内服テストは1日1.25mgより開始し,7日目で総量13.75mgの時点で下腹部に同様の皮疹が出現した.ただし,カプトプリルの内服では皮疹は出現しなかった.自験例を,基礎疾患にAILDを伴ったマレイン酸エナラプリルによる薬疹と診断し,若干の考察を加えて報告する.

全身性エリテマトーデスに合併した乾癬の1例

著者: 斎藤すみ ,   池澤善郎 ,   高梨雄蔵

ページ範囲:P.165 - P.170

 全身性エリテマトーデス(SLE)と診断,加療をうけていた51歳女性に合併した乾癬の症例を経験した.19年前より多関節痛,レイノー,紫斑,瀰漫性脱毛が見られた.12年前より顔面,手指,手背の紅斑,光線過敏症が見られ,SLEと診断された.内科にてfollow中,全身に瘙痒性皮疹が出現した.現症,組織所見より,全身に出現した皮疹は,乾癬と診断した.筆者の調べたところによると,本邦での両者の合併例の報告は,自験例を含め5例しかなく,合併の原因も明らかにされていない.しかしながら,SLEおよび乾癬の病因として免疫異常が挙げられることから,両者の合併には何らかの免疫学的な関与の可能性もあると考え,若干の考察を加えて報告する.

肝障害を伴ったErythropoietic Protoporphyriaとその家族例

著者: 牧三樹子 ,   西川律子 ,   山口文雄 ,   松岡芳隆 ,   西脇宗一 ,   長沼雅子

ページ範囲:P.171 - P.177

 Erythropoietic protoporphyriaの母娘例を報告した.症例1:20歳,女.8歳頃より日光過敏症状あり遮光に注意していた.昭和61年8月,日光過敏症状と共に肝機能異常が出現した.GOT,GPT,γ-GTP,ALP,LAP上昇.症例2:44歳,女.症例1の母親,軽度の日光過敏症状あり.症例1,2共に血中のprotoporphyrin値高値を示し,赤血球蛍光を認め光溶血現象も陽性であった.この疾患概念と肝機能障害を伴った例について若干の文献的考察を加えた.

高血圧性潰瘍の1例

著者: 山田美奈 ,   大江麻里子 ,   山下典子 ,   肥田野信 ,   酒井吉郎 ,   雨宮邦子

ページ範囲:P.179 - P.183

 47歳,男性.10数年来高血圧を有するも放置していたところ,昭和61年3月,左足背に淡褐色斑が出現し,潰瘍化した.その後,アキレス腱部にも激烈な疼痛を伴う潰瘍が出現した.両下腿動脈造影では異常なく,組織学的には細動脈硬化による内腔狭窄を認めた.血圧のコントロールと種々の外用療法で治癒し,再発をみない.

Blastomycosis-like Pyodermaの1例

著者: 川岸郁朗

ページ範囲:P.185 - P.188

 33歳,女性.初診の7カ月前から,両下肢に毛嚢炎様小丘疹が出現し,しだいに遠心性に拡大し,暗紅色浮腫状隆起性局面となり,中心部が治癒して周辺堤防状を呈し,小膿疱,表皮乳嘴状増殖を伴う.組織像では,偽癌性表皮増殖と好中球主体の表皮内,表皮下の膿瘍を認める.黄色ブドウ状球菌を培養同定し,合成ペニシリン内服約4カ月で略治した.自験例をblastomycosis-like pyodermaと診断し,慢性乳嘴状潰瘍性膿皮症の乳嘴腫状型と同症と考えた.

薬剤

早期顕症梅毒,早期潜伏梅毒に対するラタモキセフナトリウム療法

著者: 皆見紀久男

ページ範囲:P.191 - P.199

1)早期顕症梅毒および早期潜伏梅毒ともに昭和59年より急激に増加してきた.2)ラタモキセフナトリウム1g筋注10日間の治療法では,硬性下疳17人,バラ疹5人,丘疹9人,早期潜伏梅毒34人の合計65人に治療を行い全例に有効であった.3)分画TPHA-IgM,IgM-EIAともに第1期では著明に増加し,第2期ではIgMよりIgGが著明に増加して,治療により減少してきた.

印象記

光皮膚科学シンポジウム(於,東独)に参加して

著者: 堀尾武

ページ範囲:P.200 - P.202

 東ドイツのJ. Barth教授(Me-dizinische Akademie,Dresden)の招きにより,筆者は"Photoderma-tologisches Kolloquium mit inter-nationaler Beteiligung"に参加する機会を与えられた.最近,東ドイツに関しては,旅行記の類を読むことはあるが,東ドイツ主催の学会に参加する機会は比較的少ないと思われるのでここに紹介したい.
 本シンポジウムは,東欧における光皮膚科学のリーダーであるBarth教授を会頭として3年に1回,東ドイツで開催されており,毎回,西側からguest speakerが招請されている.過去にはK.Wolff教授(ウイーン),I. Magnus教授(ロンドン),P. Thune教授(オスロー)等が招かれたとのことであった,今回は第4回目に当たり,Dresden郊外のWilthenで1988年10月10日から12日まで開催され,筆者は段野貴一郎先生(天理よろづ病院),岡本祐之先生(倉敷中央病院)とともに参加した.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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